貴社の事業内容について教えてください。
当社は、人材紹介・人材派遣・求人広告などを手掛ける総合人材サービス会社です。私が所属するキャリアディビジョンでは、「DODA」をブランドとしたキャリア転職領域を担当しています。
クラウドサインを利用しているのは「DODA」の人材紹介サービスです。これは人材紹介コンサルタントが、求人企業に対して条件にあった求職者を紹介するものです。
人材紹介サービスの一連の業務の流れを教えてください。
「DODA」では以下の手順でサービスを提供しています。
- 営業:
営業担当が求人企業に対して、人材紹介サービスを提案します。 - 契約締結:
求人企業と当社間で、人材紹介サービスの利用に関する申込書(基本契約書)を締結します。 - 人選・推薦:
当社にて求職者の人選を行い、求人企業へ求職者を推薦し面接を設定します。 - 紹介料の請求・回収:
内定承諾後、入社が決まれば、年収の35%が紹介料として発生します。求人企業に請求内容を確定していただき、請求・回収します。
そのうちクラウドサインを利用しているのは、2の「契約締結」です。
なお、現時点では「すべての契約」ではなく、特定エリアの契約のみを対象としております。
求人企業との申込書(基本契約書)でご利用いただいているのですね。以前はどのような方法で契約を締結していましたか。
一般的な「紙と印鑑」です。求人企業に対して契約書を郵送し、必要事項の記入および押印の上、返送していただいていました。
クラウドサインの導入前にかかえていた課題をお聞かせください。
人材紹介サービスは、求職者の個人情報を取り扱う性格上、実際の人選や推薦を開始する前に契約を締結することが厳格に求められます。
紙の契約書を郵送するフローだと、契約を締結するだけで少なくとも1週間はかかっていました。また「不備戻り」と呼んでいますが、求人企業での記入の不備があれば、さらに時間がかかります。
その間、人選を行うことができず、機会損失が発生していました。
クラウドサインの導入によって、どのような効果がありましたか。
これまで7〜10日間をみていた契約締結のリードタイムですが、契約書を送信して1日以内に締結に至る割合が約70%となりました。これは当社内でも衝撃的な結果でした。
以後、導入の意思決定について詳しく伺いたいのですが、なぜ他のツールではなくクラウドサインを選んだのでしょうか。
導入が簡単で、コストがリーズナブルだったためです。
またサービスの仕様に関する要望を出した際に、柔軟に取り入れて貰えるところも大きかったです。業務はPDCAをまわすことが重要ですので、システムもそれに伴って改善される必要があります。
新しい試みをするには会社を説得する必要があると思いますが、どのように説得されましたか。
一番の懸念は、求人企業が「ウェブで契約する」という行為を受け入れてくださるか、でした。人材紹介サービスというのは、一人の求職者を紹介することで100万円以上の報酬が支払われる高額商材です。そのような契約をウェブで手軽にするのは、心理的な抵抗があるのではないかと懸念していました。
しかし、実際には一部のケースを除き、ほとんどはクラウドサインでの契約締結に応じていただいています。クライアントには地方の中小企業が多いのですが、それだけ日本中でウェブが一般化している、ということだと思います。
「紙の契約と電子契約が共存するのは、二重管理になって非効率」という意見もあります。
当社の場合、二重管理にはなりません。なぜなら、紙も含めてすべての契約書をPDFで管理しているからです。
私見ですが、すべての契約書が電子化されることはありません。紙と電子は共存しつつ、そのシェアが電子に寄っていくだけです。それでも、管理をする際にどちらかに寄せれば問題はないと思います。
運用で工夫していることがあれば教えてください。
あまりにも手軽な仕組みなので、契約書の文面を熟読せずに合意してしまうケースが想定されました。そこで元々利用していた契約書のフォーマットをそのまま使用せず、クラウドサイン用にフォントを大きくして、読みやすい契約書を用意しました。
あとは、決裁権限者に対して送ることを徹底しています。印鑑であれば社内のしかるべき承認ルートを通った上で押印されたものと推定できますが、クラウドサインの場合は推定の度合いがやや弱まると考えています。
そのため、商談において営業が求人企業の担当の方から決裁権限者の連絡先をきちんと確認し、その連絡先宛に契約書を送ることで法的リスクをヘッジしています。
最後ですが、貴社は人材業界の中でも業務のIT化が進んでいると伺ったことがあります。IT化一般についてはどのようにお考えでしょうか。
人材業界の競争力の源泉は「人」です。そのため人が「個の力」を発揮しやすいように、適宜ビジネスプロセスの見直し、設計を行う必要があります。IT化は人のエネルギーを無駄に消費しないための有効な手段です。
もちろんお客さまの意向などもありますので、すべてが当社の思い通りになるわけではありません。しかし、可能性があればまずはトライすべきだと考えます。