三井ホーム株式会社
オーナーサポート推進部 小堀和美様
三井ホームエステート株式会社
営業推進部 営業推進課 小柳和洋様
三井ホームで施工したすべての建物をサポートするため、リフォーム工事などのオーナーサポート事業を展開する三井ホームオーナーサポート推進部と、賃貸住宅の管理・運営、メンテナンスなどを手がける100%子会社の三井ホームエステート。両社はリフォーム工事の発注等に関わる書類のやりとりを電子化するため、クラウドサインの活用をスタートさせました。
課題となっていたのは、あらゆる場面の“無駄”の多さ。工事1件ごとに紙書類のやりとりが発生し、そのための社員の移動に時間やコストがかかっていました。クラウドサインの導入によってどんな変化があったのか、両社の担当者に伺いました。
どんなに小さな工事・修繕でも書類作成が必要になるリフォーム事業
以前はどのような課題を抱えていたのでしょうか。
三井ホーム 小堀様
住宅のリフォーム工事は大小さまざまで、かかる費用にも幅があります。しかし、規模にかかわらず全ての工事において同様に発注書や工事完了承諾書などの書類が必要になります。すぐに終わる数万円の工事でも、何週間、何か月もかかる数千万円の工事でも必要な書類は同じです。書類の受け渡しもほとんどの場合は対面になります。
リフォーム工事をしている場所は公共交通機関の整った大都市ばかりではありません。郊外での工事も多いので、そのために営業担当者が車で1時間以上かけて移動しなければならなかったり、スケジュール調整して先方と待ち合わせたりする必要もあります。
どうしても対面でやりとりできないときは郵送しますが、郵便局やポストまで投函しに行く手間がかかりますし、1000円、2000円の利益しか見込めないような工事の場合、郵送代だけで利益が相殺されてしまうこともありました。
当社では2019年頃からiPadを使って手書きで電子サインするような仕組みも導入していたのですが、あくまでも対面で使うものなので、現地まで移動が必要なことには変わりありませんでした。いろいろと人力に頼っているところが少なくないので、業務のDXを進めるという意味でも、非対面でやりとりできる電子契約の仕組みがあるといいよね、という議論をしていました。
三井ホームエステート 小柳様
当社が運営・管理する賃貸住宅では、年間の賃貸借契約の件数が約7000件発生します。入居者が退居する際は原状回復工事が必要になりますし、入居中であってもエアコンが故障した、または給湯器が故障してお湯が出なくなった、ということになれば都度工事を行います。都合年間1万件を超える工事が発生していたのですが、その注文書や工事完了報告書、工事完了承認書など全てを紙の書類でやりとりしていたため、大きな手間になっていました。
また、工事はスピードも重要です。オーナー様との契約条件にもよりますが、退居後にリフォームを始めて、それが終わってから次の入居者が決まるまでの期間、オーナー様は家賃収入が得られません。できる限り早く工事を完了できるように、書類のやりとりをいかにスピードアップするかも課題でした。
社内システムとのAPI連携で違和感なくスムーズな契約締結を実現
クラウドサイン導入の決め手は何でしたか。
三井ホーム 小堀様
親会社の三井不動産で過去にクラウドサインを使用している実績があったのが一番の理由です。当社はセキュリティなどの基準が厳しいのですが、すでに利用実績があるならば、導入しやすいだろうと考えました。
また、クラウドサインと当社のリフォーム事業で使用している社内システムをAPI連携できることも決め手のひとつになりました。現場に「新しいツールが導入された」と意識させず、いつも利用している社内システムの中から「そのまま使える」ようにできるというのが良いと思いました。クラウドサインという別のツールをわざわざ使わなくてはいけないのではなく、いつも通りの操作の延長線上で完結できるようにすることで、現場に違和感なく浸透するのではないかと考えました。
三井ホームエステート 小柳様
当社の事業は国内取引ですので、国内ベンダーのセキュアな電子契約サービスを探していたときにクラウドサインを見つけました。ちょうど三井ホームが導入しようとしていたタイミングで、しかも私たちと同じリフォームの領域で活用するということでしたので、クラウドサインを導入することに決めました。
当社が管理する物件のなかには三井ホームで建てられたオーナー様もいらっしゃいますから、オーナー様側から見てツールの一本化を図ることにもメリットがあるだろうと思いました。
導入の過程で難しかったこと、苦労したことはありましたか。
三井ホーム 小堀様
特定商取引法のクーリングオフに関する契約をどうするか、というところで悩みました。特定商取引法が絡む部分で紙での交付が必要な書類があることがわかったため、電子化したとしてもどこで紙にするのか、本当に電子契約にして問題ないのかが議論の的になりました。最終的には契約書類の控えを紙書類で郵送することにしましたが、そこに行き着くまでに時間がかかり運用開始が若干遅れてしまいました。
とはいえ、こういった新しいシステムを導入するときには現場から質問が殺到しがちなのに、今回はそれがほとんどなかった印象です。やはりAPI連携で実装したので、社内システムの延長上で自然に使えたこともあるのかもしれません。オーナーサポート事業のメンバーは年齢層が高めで、新しいシステムを使いたがらなかったりするのですが、クラウドサインは「便利ですね」と言って積極的に使ってくれています。オーナー様にも手順書を作ってお渡ししたのですが、こちらも想定していたほどの問い合わせはありませんでしたね。
三井ホームエステート 小柳様
当社の場合はすでに入居申込の部分を他のサービスで電子化していて、その結果当社だけでなくステークホルダーや仲介業者様、入居者様もみんな楽になったという成功体験がありましたから、事業者様との電子契約サービス利用にも最初から前向きでした。地主の方など、高齢な不動産オーナー様から受け入れられるだろうかという不安はございましたが、実際にあるオーナー様から「紙の書類が多すぎるので、電子化を進めてほしい」という声もいただいておりました。三井ホームと違ってクーリングオフが絡まない事業者とのやりとりなので特定商取引法には当てはまらず、そういった部分で悩むこともありませんでした。
ただし、いつから運用を始められるのか、コストメリットがどれくらい得られるのか、実際に業務の効率化を図れるのか、といった役員説得のための材料は必要になりました。そのあたりは弁護士ドットコムの担当の方に協力していただき、決裁を得るのに必要な資料を用意してもらえたので助かりましたね。
オーナーの方にはクラウドサインの導入についてどう案内しましたか。またどんな反応があったでしょうか。
三井ホームエステート 小柳様
オーナー様向けに発行している会報誌がありますので、それにクラウドサイン利用開始の案内書類を同封したのと、コーポレートサイトにクラウドサインの利用ガイドページも作成してお知らせしました。オーナー様からは「書類を受け取った後、返送のためにわざわざ投函しに行く手間がなくなったので楽になりました」という感想が届いています。とりわけ、投資家機質のオーナー様は新しいものに敏感な傾向があるせいか「どんどん電子化を進めてほしい」とポジティブな意見をいただけました。
「導入支援コンサルティング」で業務プロセスを見直したことで社員の意思統一も図れた
三井ホームエステート様にはクラウドサインの「導入支援コンサルティング」もご利用いただきました。
三井ホームエステート 小柳様
「導入支援コンサルティング」を受けて一番良かったのは、私たちの従来の業務プロセスを見直すことができ、ガバナンス強化にもつなげられた点です。「これまでの仕事のやり方を変えなければいけない」「時代のニーズに合わせなければいけない」ということを社員それぞれが自覚し、社内で意思統一を図ることもできました。
現場のメンバーも集めてタスクフォースを組織し、実際の現場における業務を分解して再構築するなど、メンバー全員が自分ごととしてしっかり前向きに取り組んでもらえたのがうれしかったです。現場向けの社内説明会では前向きな質問が多数あり、「営業マンの感情が動いている!」と実感できたことは印象的でしたね。すごく良い経験ができたなと思います。
ちなみに弁護士ドットコムの担当の方には、「当社の社員になったつもりで関わってほしい」と最初に要望したのですが、その通りに動いていただき、当社の業務内容をご理解いただいたうえで、社内推進においても非常に頑張っていただけて、本当にありがたかったなと思います。
契約締結までのリードタイムを5日から約1.5日に短縮
導入の効果を実感しているところはあるでしょうか。
三井ホーム 小堀様
現在は月数百件のペースで利用していますので、それを郵送せずに済んだと仮定すると、かなりのコストメリットが出ていると思います。郵送の場合は準備作業に時間が取られますし、今どこでどういう状況にあるかも把握が困難ですが、クラウドサインだと進捗が目に見える利点もあります。
最近は2~3月の繁忙期に向けて、電子契約が利用可能な発注金額上限をこれまでの100万円未満から500万円未満にまで引き上げましたので、今後さらに利用件数は増えそうです。
また、書類のやりとりのために現場まで行く必要がなくなったおかげで、先方とのスケジュール調整が不要になり、車を使って移動するときの高速道路料金、ガソリン代、駐車場代など、かなりの部分で経費削減もできているようです。それによって社員が経費精算の作業にかかる時間も減っているかもしれません。
当社ではテレワークで契約書周りの業務をしている社員もいます。比較的女性の多い職場ですが、小さいお子さんがいる家庭や、子供の参観日で出社が難しい場面では、テレワークをうまく活用してもらっています。そういった場面で契約書が必要になっても、わざわざ出社せずに済むので、業務効率は上がっていると思いますね。
三井ホームエステート 小柳様
私たちの方では、契約の合意から締結まで今まで5日間くらいかかっていたのが、クラウドサインの導入で約1.5日にまで縮まりました。リマインドがワンクリックでできる点も郵送コスト削減につながっています。
書類紛失のリスクがなくなるなど定性的な面でもメリットを感じていますし、クラウドサインにログインすると締結済の一覧から契約書を絞り込み検索できるので、内容確認にかかる工数も減りました。
当社で発生している工事全体のうち、電子契約で締結しているのは20%ほどです。まだまだという感じではありますが、電子契約から紙の契約に戻したいという人は今のところ出てきていませんので、これからもどんどん電子化を推進していきたいですね。
電子化の対象書類を広げることで今後さらなる業務効率化を推進
今後の活用方針について考えているところがありましたら教えてください。
三井ホーム 小堀様
ここ最近は、過去に建築資材として使われていた石綿関連法律が厳しくなり、やりとりしなければいけない書類が増えています。コンプライアンスにも関わってくる部分ですので確実に対応しなければいけませんが、紙書類だと大変な手間がかかります。こういった石綿関連書類に限らず、電子化できる書類は社内システムを通じてクラウドサインでどんどんやりとりできるようにしていくつもりです。
三井ホームエステート 小柳様
私たちはリフォーム工事の部分でクラウドサインを活用させていただいていますが、来期2024年度はそれに加えて、オーナー様から賃貸物件をお預かりする際の新規契約、その後の更新・改定も含めたオーナー様との契約書類全般にもクラウドサインを利用していく計画です。
業務の効率化を目指すという意味では、三井ホームエステートではまだ社内システムとは連携せずクラウドサイン単体で使っているので、たとえば既存の見積書作成システムや契約書作成システムなどと連携するようにして、抜け・漏れがない仕組みを作りたいですね。少ない手間で、できるだけスムーズに使えるような工夫を考えたいと思います。
最後に、電子契約サービスの導入を検討している不動産関係の企業に向けてメッセージをいただければ。
三井ホーム 小堀様
住宅のリフォーム事業は、現場に行ったり、お客様に会ったりすることが必要なため、どうしても「足で稼ぐ」というイメージが強いものですが、クラウドサインを利用することでそうした無駄を省ける可能性があります。システムが苦手な方でも想像以上にしっかり使えていますから、クラウドサインは本当に使いやすいツールです。そんなにハードルは高くないですよ、ということをお伝えしたいですね。
三井ホームエステート 小柳様
不動産業界は年齢層が高めで、IT投資が少なく、それに伴って労働生産性も低い、といった課題があると思います。そのあたりはみなさん意識はしていても、具体的にどう動けばいいか分からないのが現状なのではないでしょうか。
その意味で一番良かったのはクラウドサインの導入支援コンサルティングで従来の業務のやり方を見直す機会を作れたことです。「これは非効率だ」という認識をみんなが持っていても、実際どうしなければいけないのかがわからなかった。そこを弁護士ドットコムに伴走してもらって助けてもらえたのは心強かったです。
※掲載内容は取材当時のものです。