官公庁・自治体

導入のきっかけは“移住者”!? 地域創生のトップランナー、島根県海士町のクラウドサイン活用状況に迫る

  • 2024年3月14日(木)

島根県 海士町役場 交流促進課
岩見しおり様
清瀬りほ様

 

日本海に浮かぶ隠岐諸島のひとつ、人口2300人ほどの小さな島・島根県海士町(あまちょう)。山内道雄前町長の強いリーダーシップのもと、2000年代から徹底した行財政改革と産業創出に取り組んだ結果、多くのUターン・Iターンの移住者が定着するなどして急速に進行していた人口減少が横ばいに。同じく少子高齢化に悩む日本中の地方自治体に光をもたらす“地域創生のトップランナー”として名を馳せてきました。

デジタル化やDXへの意識も高く、2023年4月から町役場の一部でクラウドサインの使用を開始。2024年1月現在、町村では全国でも随一の契約送信件数を誇っています。今回は海士町役場 交流促進課の岩見しおり様と清瀬りほ様に導入の経緯や今後の展望をお伺いしました。また送信者だけではなく、役場と電子契約を交わす受信者側である"大人の島留学生"の常峰菜生様と安田明日香様、海士町と協働する事業者を代表して、株式会社FoundingBase 夏川戸大智様にもお話を伺いました。

海士町でも紆余曲折のあった、クラウドサイン導入までの道のり

海士町役場 交流促進課 岩見しおり様

まずは、海士町役場では現在どのようなかたちでクラウドサインを利用しているか教えていただけますでしょうか。

岩見様

いま私が業務を担当しているふるさと納税では、おもにふるさと納税のポータルサイトを運営している事業者や海士町内の中間事業者との契約に利用しています。それから、同じ課の清瀬が担当している「大人の島留学」事業において大人の島留学生との諸契約の際にも利用しています。その他には観光の担当者や教育委員会が町内の事業者と契約する際にも利用していますね。

クラウドサイン導入のきっかけは?

岩見様

「大人の島留学」に関わる業務です。昨年は私も清瀬と一緒に「大人の島留学」の業務を担当していたのですが、海士町にやって来る“大人の島留学生”たちと交わす紙の契約書を清瀬がつくる様子が本当に大変そうで。一度に50人分の契約書を作成して印刷し、山のような書類に一枚ずつ印鑑を押していくといった、アニメや漫画でしか見たことがないような作業をしていたんです(笑)。

「大人の島留学」の参加者は年々増加していましたから、今後、さらに書類作業に時間を奪われてしまう可能性が高い。それを回避したいと考えたときに思い浮かんだのがクラウドサインでした。前職でIT企業に在籍していた時に、事務スタッフがクラウドサインを導入する動きを見ていました。役場でも同じことができないかと思い、まずは情報システム担当者や自治体規約の管理者へ相談することからはじめました。

海士町役場 交流促進課 清瀬りほ様

ちなみに「大人の島留学」とはどのような制度ですか?

清瀬様

ひとことで言うと、就労型のお試し移住制度です。そもそも知らない土地への移住自体が簡単なことではありませんが、移住先が離島となると、本土の地域間の移動に比べてよりハードルが上がってしまいます。そこで、まずは全国の若い人たちに期間限定で島へ来てもらい、現地の暮らしや仕事を経験していただくことを目的としています。

1年間滞在する「大人の島留学」と、3カ月の「島体験」の2つがあり、現在、隠岐諸島の「島前」と呼ばれる海士町・西ノ島町・知夫村の3つの島に100名ほどの島留学生・体験生が暮らしています。

100名も! 役場としては、それだけの数の島留学生や島体験生と個別に契約を交わす必要があるわけですね。

清瀬様

はい。就労型の制度なので業務委託契約を結ぶのに加え、シェアハウスとシェアオフィスの契約、それからE-bikeの貸出の契約。少なくともこの4つの契約は必ず参加者全員と締結します。

つまり1人につき4つの契約書が必要になりますから、仮に50名が海士町へ来るとした場合、契約書は最低200通必要ですね。それを役場のマンパワーが不足するなか、清瀬様がひとりで作成し、契約を交わしていたと。たしかに電子契約サービスの導入を検討するのもうなずけます。その後、導入はスムーズに進んだのでしょうか?

岩見様

海士町役場では2〜3年前に、DX推進準備室が立ち上がっていました。そちらで電子契約や電子決裁等を検討していたのと同じ時期に、たまたま私が「大人の島留学」事業でクラウドサインを使いたいと要望を出したことで、話がスムーズに進んでいきました。

とはいえ導入に至るまでには紆余曲折がありました。なかでも難しかったポイントのひとつが「電子契約とは何か」というところを課長や町長、副町長に伝えることでした。DX推進準備室の職員と一緒に丁寧な資料をつくり、当時の「大人の島留学」の担当課長、町長、副町長、総務課長に説明にあがりました。

長年にわたって紙の契約書でやってこられた方々ですから、電子契約の利点を理解したうえで、紙の契約書ならではのフレキシビリティが失われるのではないかとはじめ心配されていました。そうした不安や疑問にも一つずつ答え、最終的に承認をいただくことができました。

もうひとつ懸念していたのは法的な問題です。すべての自治体に言えることだと思いますが、決裁、契約、文章管理などの例規が定められているため、電子契約サービスを導入するには契約にかかる規定を変えなければならないと思っていたんですね。

結果的には条例を改正する必要はなく、現行の規程に加えて電子契約実施規程を新設すれば問題ないとわかりましたが、そのために分厚い例規集を読み込んだり、他の自治体の事例を調べたりと、結論にたどり着くまでの行程に量を取り組む必要がありました。

それだけのことをひとりで対応されたのはすごいですね。

岩見様

もちろん、ひとりで対応したわけではなく、周りの人にたくさん助けてもらいました。課長にアドバイスを仰いだり、クラウドサインのご担当者の方にもお力添えをいただきながら、なんとかできたという感じです。最終的にクラウドサインを導入できた要因としては、やはり役場の上司が理解してくれたのが大きかったですね。新しい取り組みや挑戦を後押しする海士町の風土は、デジタル化・DXの文脈でも変わらないと再確認することができました。

クラウドサインは「送り手」と「受け手」の双方にとって嬉しいサービス

クラウドサイン導入後、清瀬様の業務にはどんな変化がありました?

清瀬様

それはもう劇的に変わりました。先ほども言ったように島留学生50名分、それぞれに4つある契約書を作成して印刷し、稟議に回して公印を押す工数をかなり省けるようになりましたし、それを大人の島留学生のみなさんに配って契約説明し、印鑑を押してもらって回収する時間も短縮されました。

紙の契約書を紛失されるリスクもなくなりましたし、契約締結後の書類はすべてクラウド上に保管しているので、必要になったときに検索すればすぐに出てきます。万が一、契約書に不備があった場合の対応もメール1本で済みます。

おかげで、これまで事務作業に費やしていた時間を、大人の島留学生・島体験生たちの研修や島の現場での体験により多く費やすことができるようになりました。時間を有効的に使えている実感があって、個人的にはそれがいちばんうれしい変化です。

大人の島留学生 (左)安田明日香様、 (右)常峰菜生様

他方、海士町と契約する側である大人の島留学生の常峰さんと安田さんはいかがでしょう。電子契約サービスを使ってみて感じた率直な感想は?

常峰様

島には判子を持ってきてくださいと言われていたから持参したのに、契約に判子を使わないんだと思いました(笑)。

清瀬様

実際のところ、島留学生のみなさんが島滞在中に判子を使うことはないのですが、何かあったときのために持ってきてくださいとお願いしています。離島では必要な時にすぐに認印を用意することが難しいので。

安田様

私は電子契約サービスの存在は知っていたものの、利用したのは今回が初めてです。実際に使ってみると、「これで大丈夫なの?」と思うくらい簡単だったので驚きました。

海士町役場 交流促進課 岩見しおり様

デジタルとアナログは対立関係ではなく、補完し合う関係

海士町として、電子契約のさらなる活用やデジタル化への意気込みなど、今後の展望をお聞かせください。

岩見様

現状は私の所属する課がクラウドサイン利用実績のほとんどを占めるので、他の課にもどんどん波及させていきたいです。それから、今日こうしてお話ししていて改めて感じたのは、クラウドサインは事業者や島留学生との契約だけでなく、電子署名サービスとして庁内の稟議等にも活用できる可能性があるのではないかということです。

その用途も含め、今後は特に全庁的にどのような契約行為や合意の必要なやりとりが発生しているのかを確認し、そのうえで、それらにクラウドサインが最適なのか、使う上で法的に問題がないのか、あるいはどのようなステークホルダーが想定され、その人たちとどのような会話をしていくのがよいか、課題を想定して丁寧に検討することが必要だと思います。

折しも、いま海士町全体で本腰を入れてデジタル化・DXをやろうという機運が高まっているので、電子契約も流れに乗って一気に進めることができるかもしれません。その機会が訪れたとき、みなさんに納得して導入が進められるように準備を進めていきたいと思っています。

最後に、これからクラウドサインの導入・活用を検討している自治体に向けてメッセージをお願いします。

岩見様

私がクラウドサインの導入を進めていた時、「アナログにもデジタルにもそれぞれの良さがあるから、両者の長所は活かしつつ、短所を補完するための新しい手段として電子契約サービスを導入したい」と伝えたところ、耳を傾けてもらえたと感じています。これからクラウドサインの導入・活用を検討している自治体の担当者さんに向けては、デジタルは今の仕事をより快適にする新しい手段であり、目的ではないと伝えること、アナログか、デジタル化の二元論ではなく両者良いとこ取りしましょうという視点が重要だとお伝えできれば嬉しいです。


自治体による積極的なクラウドサイン活用、事業者はどう見る?

海士町役場内でも今後ますます利用の範囲が広がっていくことが予想される電子契約サービス。一方、海士町と取引のある町内事業者は役場のクラウドサイン活用をどう見ているのでしょうか。町内で地域づくりプロジェクトを手がける株式会社FoundingBaseの夏川戸大智様にうかがいました。

株式会社FoundingBase 夏川戸大智様

夏川戸様

FoundingBaseは地方をフィールドに、その地に必要な事業をカスタマイズし、企画から事業化まで一環して行う地方共創ベンチャー企業です。「エリア価値向上」を実現するため、全国21拠点で交流人口・関係人口・定住人口の3つの領域に事業(観光・教育・一次産業・関係人口事業)を展開しています。

同様の事業を展開する企業は他にもありますが、他社にない弊社の大きな特徴は、社員が地域に移住し、自分たちが主体者となりながら、地域・地元の方々と共創し、その地に根ざした事業創出を行っていることです。私自身も2022年から海士町に移住し、地域活性化起業人制度を活用して、遊休地を活用した観光プロジェクトをに従事しています。具体的には2023年 5月にオープンした自然体験型のグランピング施設「TADAYOI(ただよい)」の立ち上げに携わり、オープン後の施設運営も現地のメンバーとともにおこなっているところです。

海士町との契約にはクラウドサインを使っているそうですが、具体的にはどういった契約を交わしているのでしょう。

夏川戸様

主に3つの契約を締結していて、1つは先ほど申し上げた地域活性化企業人制度に関する委託契約です。2つ目は私以外の弊社メンバーに適用している地域おこし協力隊制度に関する委託契約、そして3つ目が施設運営に関わる契約。そのすべてにクラウドサインを使っています。

契約を締結するにあたり、海士町側から御社にクラウドサインの使用を打診したと伺っています。電子契約サービスを使うことに抵抗はなかったですか?

夏川戸様:企業同士の契約で利用することはありましたので、クラウドサイン自体には抵抗は無かったです。ただし、自治体との契約でクラウドサインを利用する事はあまり無いので、たしかに驚きはありました。

クラウドサインでタスクを削減し、価値の創出を

ということは、御社が事業を展開する他の自治体ではいまも紙の契約書が主流なのですね。御社として、自治体と電子契約を交わすことのメリットは何でしょう?

夏川戸様

弊社の場合、メンバーの大半が全国の拠点に散らばっているため、書類のやり取りが発生すると、通常の企業よりも煩雑な作業になってしまいます。
例えば、海士町のような離島ですと、天候の都合で船が欠航し、郵便の配達が滞る事も考えられます。
そういった事務手続きにかけるコストを削減することで、目の前で向き合っている事業や課題に対して向き合う時間を増やし、更なる価値の創出に繋がると思っております。

それでは最後に、電子契約サービスの導入を検討している他の自治体に向けてメッセージをいただけますでしょうか。

夏川戸様

日本全体で人口問題への解決策が模索されている中、地方はより顕著に人口減少による影響を受けると言われています。しかし、プラスに捉えると1人1人が町に対して与える影響がより大きくなるとも考えられます。

その視点で見ると、時間削減できる業務(タスク)を減らすことが、1人1人が付加価値の高いコト(事業)を創出する事に繋がり、結果として町の価値が向上することに繋がります。

個人の価値が最大化することで、町(エリア)の価値が最大化される。そんなワクワクする未来を地域で見てみたいと思っています。

※掲載内容は取材当時のものです。

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