株式会社あいず
取締役 森下充浩様
全国に訪問看護ステーションを54か所、ケアプランセンターを8か所運営するとともに、介護タクシーや民間救急などの事業も手がける株式会社あいず。2024年春からは訪問介護事業や新たな施設運営の開始も予定しているなど、事業を急拡大しています。
そうしたなかで課題となっていたのが、サービス利用者との契約手続きでした。高齢の方に大量の契約書に何度も手書きでサインしてもらわなければならず、体力的、精神的な負担を強いている状況。同社は「利用者の負担を減らせるなら、コストが上がるとしてもシステムを導入すべき」という基本方針のもと、「クラウドサイン for 介護DX」の導入を決めました。
代表自身が現場で実感した負担の大きな紙契約
電子契約導入以前はどういった課題を抱えていましたか。
森下様
訪問看護の契約においては、基本契約書、個人情報保護に関する同意書、重要事項説明書、緊急時連絡先に関する書面など5、6種類あり、さらに控えも必要ですのでそれぞれ2部ずつに氏名などを手書きしていただくことになります。もちろん各書類には押印も必要です。
ところが、契約相手となる方は基本的に高齢の方です。なかには病気にかかっている方もいらっしゃいます。そうした方々に契約書1枚1枚に氏名などを手書きしていただき、さらに押印もしていただかなければなりません。入院されていてご本人の対応が難しい場合は、ご家族・ご親族の方や法定代理人の方と郵送でやり取りしますが、いずれにしても契約行為が手間も多く時間もかかる、人に優しくないやり方になっていました。
そんななかでクラウドサインを選択したきっかけはなんだったのでしょうか。
以前、当社代表のお父様の終末期ケア・在宅看取りを自社あいず訪問看護ステーションで担うことになったのですが、高齢で体調の良くないお客様に対して大きな負荷をかけて契約行為を行なっている実態に気付かされ、なんとか負担を軽減できないものかと強く思ったそうです。それをきっかけに電子契約サービスを検討しはじめたとき、クラウドサインから「介護・福祉業界に特化」した電子契約サービスがリリースされていたことを知り、導入することにしました。
まず、通常のクラウドサイン含め、多くの電子契約サービスは「メール」で契約書をやり取りしますが、高齢の方ですとメールアドレスを持っていなかったり、メールを確認できる状況になかったりもします。ですので、タブレット端末にサインするタイプの電子契約を探していました。いくつか候補があった中で、「一ヶ所に、一度だけ」手書きでサインをするだけで良いという「クラウドサイン for 介護DX」の仕様は、ご高齢の方々にとって最も楽であり、我々にとってベストなソリューションだと判断しました。
【クラウドサイン for 介護DX 利用の流れ】
導入した当時は訪問看護において電子契約が法律的に可能という認識があまり広がっておらず、ある地域の行政には「電子契約はできない」と言われたのですが、弁護士ドットコムの営業の方に説得してもらって事なきを得た、ということもありましたね。
説明には紙も使うなど高齢者にわかりやすい方法で運用
2022年9月1日から本格利用を開始されました。導入までのスケジュール感と、現在のクラウドサインの利用状況を教えてください。
導入を決めてから利用開始まではかなり早かったと思います。Salesforceとの連携などカスタマイズも含めて1~2か月程度でしょうか。カスタマイズする部分については弁護士ドットコムのエンジニアの方と直接やりとりしながら進めていったので、短期間で導入できましたね。
現在は当社が運営している訪問看護ステーションにおける契約の全てを「クラウドサイン for 介護DX」で行っています。先ほどお話しした基本契約書、同意書、重要事項説明書などですね。また、私自身の業務では他社様との契約も発生しますので、そこでは通常のクラウドサインを活用しています。
iPadを使った契約締結をしていくうえで、運用上の工夫は何かされていますか。
iPadのようなタブレットを使って契約することに対して、利用者様には抵抗感はないようです。ただ、契約締結にあたっては契約内容を説明する必要があり、一緒に読んでいただくことになるのですが、それがタブレット画面だと高齢者の方にとっては辛いところがあります。
ですので、契約書の控えをあらかじめ紙に印刷しておき、それをお渡しして読んでいただく形にしました。最初はiPadだけ使っていたのですが、2人一緒に画面を見るのが難しいですし、寝たきりの方もいらっしゃいます。説明に紙書類を使うようになったのは、そういった現場の実情に合わせて、というのが理由です。
ご本人やご家族などからも特に反発なく移行できたわけですね。
もちろん電子契約がどういうものかについてはしっかり説明するようにしています。「保険の契約をするときや、美容室を利用するときに名前を手書きしますよね? あれと一緒ですよ」とご説明すると通じやすいですね。利用者様にとっては、契約がスピーディーに終わって手間も少なくなれば拒む要素はない、ということもあると思います。紙の契約書がいいとおっしゃる方が多いのでは、という予想をしていたのですが、今のところそういう話は聞かないですね。
手書きに関わる手間は半分以下、契約管理も効率化
導入したことによって効果を実感している部分があれば教えてください。
契約書1つ1つに手書きする必要がなくなったのは、利用者様にとって大きなメリットになっていますよね。その場での説明は必要なので契約にかかる時間が劇的に減っているわけではありませんが、署名・捺印の作業はかなり省力化されています。体感的には半分以下になっているのではないでしょうか。
社内的には契約管理においても効果を発揮しています。事業所が全国にあるので、各事業所で管理体制がまちまちだったりするところもありますが、それを全国的に統一でき、本社にいながらにしてすべての契約状況や契約内容をすぐに確認できます。また、関連会社との契約が変わるようなときは契約書の中身を全部書き換えなければいけませんが、電子契約なら紙書類を大量に印刷する必要もないので、利便性が高いうえにスピーディーにこなせるのも大きいですね。
導入・運用していくところで苦労したことはあるでしょうか。
導入にあたって社内では「無理です」というネガティブな意見が少なくありませんでした。締結日までに契約書のデータに必要事項を記入して、PDF化して、ファイルとしてアップロードしておかなければいけない。そのために事前に情報を集めるのが大変で、かえって時間がかかるのでは、というイメージがあったようです。
そこで、契約締結に関わる管理者をオンライン会議で全員集めて、私から難しくないこと、利便性が高いことを丁寧に説明し、全員からOKを得ました。最も苦労したのはそのあたりでしたね。
紙とクラウドサインの2種類を併用できるようにしてほしい、という要望も出たのですが、あえて「クラウドサインだけにする」と私が決めました。今まで通り紙でも契約できるようにしてしまうと、きっとみんな紙を選んでしまう、それでは電子化が進まないと思ったからです。
事前に情報を集める必要がある点についても、そもそも契約前に準備するのが当たり前です。なので、これまでは看護師らが訪問して、その場で聞き取って住所や緊急連絡先などの情報を記入していたのを、前もってヒアリングするようにしました。クラウドサインにした今では「こんな便利なものならもっと早くに導入してほしかった」とみんな言っています(笑)。
最初から「できない」「無理です」と言うのをやめて、利用者様の視点に立つことが重要
最後に「クラウドサイン for 介護DX」の導入を検討している事業者様に向けてアドバイスをいただければ。
介護・福祉業界の皆さんは、アナログな業務に慣れているのと、日々忙しいこともあって、「導入は無理です」とおっしゃいます。ところが実際の画面を見せてデモするとみなさん納得してくれます。「こんなに簡単なんだ」ということをすぐにわかっていただけるのです。
ですので、まずはクラウドサインがどういうものかを見せてしまうのが一番だと思います。それと、最初から「できない」「無理です」と言うのをやめて、利用者様の視点に立って考えてください、とも話しています。若い健康な人ならなんでもないことでも、高齢で病気だったり寝たきりだったりする方にとっては何度もサインするのは本当に大変なことですから。
また、先ほども申し上げた通り、紙との併用は不可にすることも大事です。併用をOKにすると、どうしても慣れた紙の方に逃げてしまいますし、保管に伴う管理の手間も2倍になります。もし併用可にしていたら、我々もきっと紙に戻っていたと思います。でも実際のところ、クラウドサイン導入後に紙を希望する方は今のところ1人もいらっしゃいません。
最後に、導入するだけであればITスキルは不要です。手書きでサインする箇所がどれだけあるか、画面に表示する特別な文言があるか、といった簡単なポイントだけ決めれば、あとは弁護士ドットコムのエンジニアの方が実装してくれます。ぜひ気軽に相談してみてほしいですね。
※掲載内容は取材当時のものです。