たにあい糖尿病・在宅クリニック
院長 谷合久憲様
管理栄養士 大場未来様
新型コロナウイルスによって多大な影響を受けている医療現場。秋田県でコロナ禍に開業した、たにあい糖尿病・在宅クリニックは、ワクチンや発熱外来の電話問い合わせが殺到したことにより、一時は糖尿病患者の治療や訪問診療をはじめとする本来の業務がままならない状況に陥りました。しかしながら、いくつものICTツールを駆使することで業務は正常化し、増え続けるPCR検査にも対処可能に。そこにはクラウドサインの導入による非接触・非対面の実現が大きく貢献しました。
クラウドサインで検査を受付し、感染リスクを低減
クラウドサインの導入を検討することになったきっかけを教えてください。
谷合様
当院は2020年の春、まさにコロナ禍のタイミングで開業したのですが、感染拡大に伴い電話の問い合わせや来院する患者さんが増えたり、ワクチン接種が始まったり、国からは感染防止のためのさまざまなガイドラインが示されたりと、新しい動きが矢継ぎ早に出てきて、それらに対応する必要に迫られました。効率よく対処するため、あらかじめ準備していた複数のICTツールを活用してきています。
クラウドサインもその中の1つとして、書類の電子化などに役立つだろうと考えて準備していたものです。同種の製品やサービスはできるだけ数多く見て、より良いものを選ぶようにしていますが、クラウドサインは地方自治体でも導入されていましたし、安心して使えそうだと感じたのが選択した理由になります。
コロナ禍における病院業務ではどんなことが課題になっていたのでしょうか。
谷合様
感染が拡大し始めた当初は、紙にもウイルスが残り、それを介して他の人に感染する可能性があるとも言われていました。たとえばPCR検査を受けていただく際には紙の申込書に記入していただく必要がありますが、患者さんが手書きした紙書類は感染防止の観点からそのまま院内には持ち込めないので、いったんビニール袋に入れてもらい、それを回収して写真撮影し、シュレッダーで処分後、写真データをもとに電子カルテに情報登録する、というような手間も時間もかかる方法をとらざるを得ない状況でした。そうした紙の申込書などを電子化できれば、感染リスクを低減できるだろうと思ったんです。
大場様
PCR検査の際には医師や看護士が事前に説明しなければならない内容もあり、陽性の可能性のある患者さんと対面で話すことには大変なリスクがありました。説明を非接触で行うようにするためにも、検査に関わる一連の手順を電子化することは重要なことだったと思います。また、陽性になった患者さんのうち、高齢の方や基礎疾患をもつ方にはラゲブリオという重症化予防薬を処方するための同意書も提出していただきますので、その同意書の電子化も必要でした。
谷合様
それと、当院のように人手が決して多くないクリニックは、電話問い合わせが殺到してしまうと、より緊急度の高い糖尿病患者さんへの対応が難しくなってしまいます。実際、電話回線が1つパンクしたこともあったほどです。そこで、電話自動応答システム(IVR)を一次受けとなる防波堤のような意味合いで導入したのですが、そこからの導線で、非対面でスムーズに申込書などをやりとりしようと思ったときには、クラウドサインを活用するのがベストだとも考えました。
クラウドサインは現在どの用途に、どのようなフローで活用していますか。
大場様
国が実施している「PCR等検査無料化事業」でPCR検査を受ける方の申込書や、2022年9月26日(月)より全ての新型コロナウイルス感染者を確認する「全数把握」の見直しが始まったことを受け、『新型コロナ療養ガイド』の送付にも活用しています。また、重症化予防薬を処方するときの同意書にも利用しています。
PCR検査については、電話で問い合わせてきた方に対してまず電話自動応答システムで音声案内します。その後、URLを記載したSMSを患者さん宛に送信して、Web問診システムにアクセスしてもらい、保険証やメールアドレスなど診療に必要な情報を登録していただきます。当院ではそのメールアドレス宛にクラウドサインでPCR検査の申込書を送信し、患者さん側で必要事項を記入していただいて検査を受け付ける、という流れにしています。必要な説明は電話口で行う形です。
PCR検査の申込みの電子化率は8割、スタッフの精神的な不安も取り除ける
クラウドサインの導入効果はいかがでしょうか。
大場様
クラウドサインの本格的な活用は2022年7月からです。それからおよそ1カ月の間にPCR検査の申込みが273件あり、うち約8割の216件をクラウドサインで電子化できました。ラゲブリオ処方の同意書は76件中49件で、こちらは約6割の電子化率となっています。後者の同意書は高齢の方が多いため、申込書よりは低い割合になっているのだと思います。クラウドサインが使えない方に対しては、ファックスで書類を送るなどして対応しています。
谷合様
電子化率はかなり高い方ではないかと思います。クラウドサインのようなICTツールは高齢者の方はほとんど使えないのでは、と思われがちですが、決してそうではないことがわかりました。
クラウドサイン導入のメリットは、とにかく感染リスクを低減できること。事前に患者さんに説明するのに5~10分はかかりますので、直接患者と接する医師や看護士は、対面する機会がその分減るのでほっとします。常に感染の恐怖と戦いながら仕事していると精神的にも疲弊するものですから、クラウドサインで非対面・非接触になって、その恐怖や不安を取り除けるのは本当にありがたいですね。
また、看護師が説明する時間が省けたということは、検査時間が短縮できているということでもあります。より多くの検査ができるようになったわけですね。検査数は毎月数百件、加えてワクチン接種もそれ以上に行っています。こうした数をこなす原動力になっているのがクラウドサインですし、効率的に対処して業務を回せたことでスタッフの給与にも反映できました。
導入・運用していくなかで難しかったところはありませんでしたか。また、特に便利だと感じている機能はありますか。
大場様
事務を担当する側としては、感染リスクが下がることについては歓迎していたものの、新たにクラウドサインの使い方を覚えなければならないという点で最初は戸惑いもありました。パソコンが得意なスタッフは多くないので、初めのうちは私がほぼ1人で運用しつつ、他のスタッフも使えるように少しずつ院内での普及を進めてきました。慣れるにしたがって効率よく使えるようになりましたし、電子化率も先ほど申し上げた通り高い状況ですから、総合的にはクラウドサインにして良かったと思います。機能については、送信した申込書のメールを患者さんが開封しているかどうかをクラウドサイン上で確認することができるのは助かります。未開封のままでいる場合は、迷惑メールとして処理されてしまったなど、何らかの原因で患者さんが申込書の受け取りができていない可能性がありますし、開封済みでも一定期間中に返信がない場合は操作途中で行き詰まっている可能性があることがわかります。サポートが必要そうな方が明確にわかるので、電話をかけて説明して手続きの完了を促すことができます。
お客様の反応についてはいかがでしょう。
大場様
症状のある方だと「できるだけすぐにPCR検査を受けたい」と思われることが多く、事前に必要事項の入力など多少の手間は許容していただけます。なかでも若い方は操作がすごく早いので問題ないですね。
ただ、高齢の方のなかには操作を面倒に感じる人もいらっしゃいますし、デジタルに慣れていないという理由で紙書類を選ばれる場合も少なくありません。クラウドサインで申込書などを送信するためにメールアドレスを正しく入力していただかなければなりませんが、入力ミスされるケースもあるので、そこは課題です。
最初は自分もクラウドサインの使い方を完全に理解していないところがあって、患者さんにわかりやすく説明できずご迷惑をおかけしたかもしれません。でも、数をこなしていくうちに患者さん側がこちらの説明のなかで気になりやすい部分もなんとなくわかってきて、納得してもらいやすい説明の仕方に最適化できたように思います。
すべてのクリニックで非接触・非対面の手段が必要になる
今後、クラウドサインの活用をどのように広げていきたいと考えていますか。
大場様
クラウドサインの使い方やPCR検査の説明は、今は電話口で行っているのでやはり時間がかかっています。ですので、いずれはその内容もテキストデータにまとめて申込書などと一緒にクラウドサインで送れるようにしたいと考えているところです。
谷合様
もっと大きな可能性で言いますと、今後、PCR検査やコロナの治療に対して患者さんから費用をお支払いいただくことになる場合は、非接触・非対面での決済にも対応できる手段を整えておくことも重要なポイントだと考えています。クラウドサインを応用することで、そこに対してもうまく電子化し、さらなる感染対策につなげられる可能性もあるのではないかと思っています。
これからクラウドサインを導入したいと考えているクリニックなどに向けてメッセージをお願いします。
大場様
電子化で感染リスクを減らせるのは何にも代えがたいクラウドサインのメリットです。ぜひ多くのクリニックや病院で導入してほしいですね。
谷合様
これからはインフルエンザなどと同様に、新型コロナウイルスによる感染症も当たり前の世の中になっていくはずです。現在は一部のクリニックしか対応していないPCR検査やコロナ治療ですが、いずれはすべてのクリニックが対応せざるを得ないのは間違いありませんから、そのときに非接触・非対面で診療できる手段は絶対に必要です。スタッフの雇用維持や増加、福利厚生の拡充につながる可能性もあることを考えれば、業務を電子化して安全に、かつ効率化できるクラウドサインは、医療の現場にはなくてはならない存在ではないでしょうか。