長野県高森町
総務課 財務係 松島健司様
総務課 DX推進係 伊藤健様
長野県の南部、中央アルプスと南アルプスに挟まれた特徴的な河岸段丘で、市田柿などの果樹栽培が盛んな高森町。およそ1万3000人が暮らす同町の職員数は100名以下で、これは人口比から見て一般の自治体より少ない人数です。いわば「行政効率のいい自治体」を実現している理由の1つは、50代前半の比較的若い町長が音頭を取り、ICT環境の整備を積極的に行っていること。さらなる効率化、住民サービスの向上を図るため、2022年よりクラウドサインの導入も進めました。
電子契約の導入によって、町民・事業者とのコミュニケーションを増やす
電子契約サービスの導入を検討することになったきっかけを教えてください。
伊藤様
まず、現職の壬生照玄町長が公約として、「ICT環境を整備して行政効率を向上させる」と掲げていたことが挙げられます。その公約に沿って、町として導入する電子決裁、電子契約などのシステム選定を進めてきました。主な狙いは「職員が机に向かっている時間を減らす」というものです。その分、町民のみなさまや事業者の方とコミュニケーションする時間を増やして、課題を伺い、それに対して政策を打っていく。そのためにはICTを高度化して職員のデスクワークをスピーディにこなせるようシステム化する必要があります。
近隣市町村の動向ももちろんチェックしていました。電子契約サービスをすでに導入している自治体も全国的にはいくつかあり、次年度の予算を検討している2021年12月からのタイミングでは電子契約に関わる法整備もかなり進んでいる状況(※)でしたので、当自治体としても電子契約サービスの導入を推進していくことになりました。
※参考:電子契約のグレーゾーン解消回答解説 —国・地方自治体もクラウド型電子署名を利用開始
その時点で1年間に締結する契約がどれくらいあるか調べたところ、契約書として交わしている見積額30万円超の案件だけで700件ほどありました。職員が100名に満たない小さな組織なので契約業務を専属で担当する課はありませんから、職員1人1人が契約処理を行っている状況です。各々の押印や郵送の手間を考えると、電子化することによるメリットは大きいのではないかと思いました。
クラウドサインを選んだ決め手はなんでしたか。
伊藤様
大きく分けて3つあります。1つ目はサポート体制が充実していることです。クラウドサインの導入、運用、効果測定まで手厚くサポートしていただける点が非常に魅力的でした。今お話ししたように専属の契約担当がいないので、本業の傍ら、ある意味片手間で導入を進めるしかありません。ですので、私たちにはどうしてもサポートが必要でしたし、実際にスムーズな導入・運用を実現するための例規やワークフローの見直しなど、1から10まで相談に乗っていただけました。
2つ目は操作のわかりやすさです。ひと目見て、直感的に使えそうだという印象を最初にもちました。複雑だと使い方がわからず、私たち導入担当者に問い合わせが殺到してしまう恐れがあり、それこそ片手間では導入できないことになってしまいます。クラウドサインは直感的に使えるので質問が来ることは少なそうでしたし、ちょっとした疑問があるときはクラウドサインのチャットサポートで質問できます。
最後の3つ目は適法性の見極めが不要であることです。専門家がいないため電子契約サービスの適法性を独自に確認するのはほぼ不可能でしたので、きちんとグレーゾーン解消制度を利用して国のお墨付きが得られているクラウドサインは、安心して導入に踏み切れる貴重なサービスでした。
事業者側にもメリットがあるため、地元の小さな企業も電子契約は積極的
現在はどの用途でクラウドサインを利用していますか。また、契約締結のフローも簡単に教えていただければ。
松島様
事業者様に契約の電子化に関する説明をした後、本格的に運用を開始したのは2022年5月でした。主に建設・道路工事など、金額30万円以上の全ての契約案件を対象にクラウドサインを活用しています。紙の契約書にしたいという事業者様もまだいらっしゃいますので、可能な契約書から順次電子化しているところです。
伊藤様
フローとしては、紙での契約締結の際は、まず契約書案を作成し双方で確認します。町側はその時点で庁内決裁を取り、問題がなければ事業者印のある契約書を2部送付いただき、町側が押印して1部を事業者に返送し、1部は手元で保管します。
一方、クラウドサインを使う場合は、契約書の電子データをメールなどで事業者様から送っていただき、その状態で庁内決裁して、PDF化します。あとはそれをクラウドサインにアップロードして、確認のために上長を経由する形で送信し、最後に先方が承認すれば完了となります。
現在の電子化率と、導入の効果を実感するところがありましたら教えてください。
松島様
5月から運用を開始して、8月末までの約4カ月間で、130件をクラウドサインで締結しました。今のところ、毎月過半数を超える割合の契約を電子化できています。紙だと契約書の準備から締結まで4、5日はかかっていましたが、クラウドサインではそれが1、2日に短縮しています。庁内の決裁にはある程度時間がかかりますが、それを含めての1、2日ですので、スピードアップの度合いは大きいですね。
また、締結済み契約書の検索もかなり楽になりました。今までは紙の契約書をキャビネットに保管するという手間もかかっていましたし、必要になったときにはそこから書類をひっくり返すようにして探していましたが、クラウドサインはキーワード検索すれば一発で見つけられて中身を確認できますので。
伊藤様
個人的には、思った以上に地元の建設会社様や、従業員数人規模の企業様にも使っていただけているように感じます。印紙代がかからないこともあって事業者様側にもメリットが大きいことから、地元企業様の「できるだけ電子契約にしたい」という声もよく耳にしますね。
片手間でも導入ができる、弁護士ドットコムによる手厚いサポート
導入・運用していくところで苦労はありませんでしたか。
伊藤様
はっきり言って苦労したことはないですね。導入前には説明会を開いて、弁護士ドットコムの担当の方に使い方などを詳しく説明していただいたので、大方の疑問はそこで解決できました。職員はパソコンを毎日使っていますから、クラウドサインの使い方もわかるだろうと考えてマニュアルは特に作っていません。そもそもクラウドサインの操作方法はわかりやすいので。
実際、運用開始後も使い方がわからないという質問は1つも来ていません。いざとなればチャットサポートですぐに解決できるのも心強いですよね。
庁内外からはどんな声が届いているでしょう。
伊藤様
庁内からは、押印をしなくて済むようになったことで、手間が大幅に減ったと喜んでもらえています。郵送代ももちろん削減でき、費用の面でもメリットしかない、という声も上がっています。
また、クラウドサインで契約書を送ると、クラウドサイン上で進捗の確認や、リマインド機能で再通知することもできます。Web上で状況を一覧できるので、紙と比べて圧倒的に進捗管理はしやすくなっていますね。
締結のスピードが上がったという話もよく聞きますね。役場は「何をするにも動きが遅い」とよく言われます。庁内決裁をとる必要があり、1日のなかで押印できる時間帯が限られていたりすることも、時間がかかっていた理由でした。それが今やクラウドサインの導入で大幅に改善されています。楽になることを目指していった結果、スピードアップしたという感じですね。何千回も押印していた作業がなくなって、働き方自体が変わってきているようにも思います。
松島様
建設業者の方とお話ししたときには、郵送代・印紙代などのコストがかからなくなってとてもありがたい、とのことでした。しかも、その会社自身でも電子契約サービスの導入を検討しているところだそうです。クラウドサインを町として導入したことで、地域のDXが進んだような感覚もあります。こうした建設業の方々をはじめ中小規模の企業様がクラウドサインになじんでもらえたことが、何よりも大きな成果かもしれません。
弁護士ドットコムからのサポートはいかがでしたか。
伊藤様
クラウドサインを選んだ理由でもありますが、手厚いサポートをいただき、おかげで期待通り片手間でも導入ができました。特に例規の見直しの際に、親身に対応してもらえたのはありがたかったです。大きな自治体だと例規担当者がいるのですが、高森町はそうではなく、職員が各自で調べたりしていますので。事業者向けのそれぞれの説明会のときには、弁護士ドットコムの担当の方に役場にお越しいただき、電子契約の仕組みに関して詳細な説明をしてもらえたため、我々からは事業者様に対して利用の流れを簡単に説明するだけで済みました。業務のスピードが上がり、事業者様からの満足度も高く、高森町と地域の事業者様の双方にメリットがある取り組みになったと実感しています。
自治体だけでなく事業者の電子化も進むことで地域としての魅力も高まる
クラウドサインの活用をどう広げていきたいかなど、今後の展望について教えてください。
伊藤様
電子化率はもちろん100%に近づけたいですね。今は契約書が必要になる見積額30万円以上の契約で利用していますが、年間数千件ある30万円未満の案件についても同じように電子化してペーパーレスを進めていくことも考えられます。それに、町民個人の方との間でも使えますよね。他にも紙の契約書や手続書類はたくさんありますので、クラウドサインの活用範囲をもっと広げていければと思っています。
事業者の方がIT化を進めれば、企業価値の向上にも繋がると思います。そして、それが町の商業地としての魅力を高めることにもなり、もしかすると、拠点や工場を作りたいという事業者様が増えるかもしれません。今回、役場との取引を通してクラウドサインの利用を体験し、自社での導入検討のきっかけになった事業者様もいらっしゃいました。
このように、クラウドサインのさらなる普及はもちろん、役場は職員向けのDXだけでなく、住民・事業者向けのDXをどんどん進めることで、町全体として発展していく可能性があることも意識してきたいと思います。
これからクラウドサインを活用したいと考えている企業に向けてメッセージがありましたら。
伊藤様
本業の片手間でもスムーズに導入できるのが個人的にありがたく、運用を始めてみても本当にメリットしかありませんでした。地域の方、事業者の方にも喜ばれるものですから、日本に数多くある私たちのような中小規模の自治体、あるいは人口1万人に満たないような小さな自治体こそ、クラウドサインを導入してほしいです。
松島様
私も全く同じ意見です。私たちのような中小規模の自治体だと、1人でいろいろな仕事を兼務することが多いものです。契約業務の電子化やペーパーレス化によって、アナログの手間を減らすことで自分自身が楽になりますし、無駄を減らして住民サービスの向上にもつなげられると思います。