不動産業

不動産の契約に付いて回る「移動」を省略。電子契約解禁はワークスタイル変革にも。

  • 2022年7月21日(木)

株式会社タープ不動産情報
代表取締役 三浦孝志様
TECH事業部 岡田昌己様

 

工場や倉庫など、事業用の物件を中心に取り扱う不動産仲介のタープ不動産情報。一般の不動産会社があまり手がけない領域において、日本全国に取扱物件を抱え、入居率も98%を超えるという圧倒的な強みをもっています。そんな同社では、設立から20年以上続けてきた紙書類によるアナログな契約業務をデジタルへ転換すべく舵を切りました。

オンラインで重要事項説明を行う「IT重説」に加え、さらに宅地建物取引業法(宅建業法)の改正により2022年5月から不動産関連の契約書の電子化も可能となりました。クラウドサインを採用し、不動産の契約を電子化することには同社にとってどんなメリットがあるのか、話を伺いました。

法改正を受け、不動産契約の電子化に向けて動き出す

電子契約サービスの導入検討のきっかけと、クラウドサインにした決め手を教えてください。

岡田様

数年前、世の中に「電子契約」というワードが出始めたとき、今後、明らかに契約業務がデジタルに移り変わっていくだろうという確信がありました。不動産は契約業務の多い業界ですから、電子化して紙をなくし、印紙税などを省くことができれば、直接・間接の大幅なコストカットが可能になります。これはすぐにでも導入しなければ、と思い、具体的に取り組んできました。

普段からIT関連の展示会にも参加して情報収集しつつ、デジタル化に乗り遅れないようアンテナを張り続けていたところで、電子契約サービスの中でも国内でいち早くリリースされていたクラウドサインに注目しました。とにかく直感的に扱えることから、ITツールが苦手な人でもすぐに使いこなせるだろうと感じて導入を決めました。

TECH事業部 岡田昌己様

現時点の契約業務の電子化はどのような状況ですか。

岡田様

社内の雇用関連の契約書はすべてクラウドサインで電子化済みです。以前からIT重説は導入しており、宅建業法の改正・施行を受けて、不動産関連の契約も電子化すべく動いているところです。事業者用物件の売買は、法人同士の契約が多いため電子契約にしやすいところもあり、着々と準備を進めています。ただ、たとえば我々仲介会社、物件の売主であるオーナー様、借主となるテナント様の三者の合意が必要な場合は、オーナー様が従来通り書面での保管を希望されることも少なくありませんので、電子化は様子を見ながら進めています。

社内ではどのような準備をしていますか。

岡田様

お客様に電子契約について理解していただくためには、紙契約から電子契約に変わることによって何がどうなるのか、まず当社のスタッフ自身がしっかり把握していなければなりません。そこは私の部署が、お客様とやりとりする営業担当者にきちんと話をしていますし、仮想のお客様を立てて契約の場を再現するロールプレイも行っています。

それと、クラウドサインで契約するには相手方のメールアドレスも必要ですから、そのメールアドレスの取得方法も考えなければなりませんでした。今まで紙で契約していたときには当然なかった情報ですし、取得するプロセスもありませんでした。ですので、当社が物件をお預かりする際の媒介契約書を結ぶタイミングで、新たにメールアドレスを確認させていただく手順を追加する、という変更をワークフローに加えています。

現地での対面契約が不要になり、移動時間・コストがゼロに

クラウドサインによってどのような効果が得られると考えていますか。

岡田様

雇用関連の契約書はすでにクラウドサインを活用していますので、締結のスピードアップや紙書類を作成・郵送する手間の削減につながることは把握しています。そのうえで不動産関連の契約を電子化した場合、これまで20年以上ずっとやってきた紙の契約書の保管作業がなくなる、というのが大きいです。締結済みの契約書を後で振り返るときも、クラウドサイン上で簡単に検索して見つけられます。

紙の契約書は今もきちんと整理して保管はしていますが、その保管場所へ行き、鍵を開けて過去の書類を1枚1枚探すのは本当に大変な作業です。電子化されることでクラウドサイン上で検索でき、圧倒的に楽になる、そういった管理の省力化が一番のメリットですね。過去の紙書類の契約書も、いずれはすべて電子化していきたいと考えています。

また、不動産の契約は2、3年ごとの長期のものが多いのですが、それでも契約更新は毎月発生しています。これが仮に全て電子化されたとすれば、今は1人月ほどかかっている業務量を半分以下に削減できると見込んでおります。

三浦様

我々のように、工場・倉庫を主に取り扱っている場合は特に、契約業務の電子化の恩恵は計り知れません。工場や倉庫は通常、郊外に建てられていることが多いため、訪問するには移動コストが大きくかかります。当社の営業スタッフは、たとえば午前中に千葉の物件の契約に行き、午後は相模原、次に埼玉へ、といった形で、契約のために物件のある現地まで出向くことが多々あります。これだと、たった3件しか回っていないのに疲れきってしまい、非効率です。

たしかにお客様とお会いすることはとてもいいことですが、契約のためにオーナー様、借主様も含め、関係者全員で一箇所に集まるのは非常に無駄な時間の使い方になりかねません。また、当社グループはリゾート地にある別荘の物件も取り扱っていますが、沖縄や石垣島に別荘をもつ売主の人は、実際には東京に住んでいたりします。そして、買主の方は北海道や軽井沢に住んでいることがある。我々は東京にいるわけで、待ち合わせするだけで大変です。

しかしクラウドサインで電子契約できれば、みんな移動しなくて済みます。オンライン会議ツールでIT重説をしつつ、最後はクラウドサインで契約する、というスタイルが理想です。クラウドサインによって印紙税だけでなく、移動にかかる交通費や時間も省けるようになるわけです。

代表取締役 三浦孝志様

IT重説とクラウドサインでワークスタイルが変わり、人材採用も有利に

クラウドサインを社内外に浸透させていくにあたって工夫していることがあれば教えてください。

岡田様

私は前職がシステムエンジニアでしたので、顧客に新しくシステムを導入してきた経験を今に活かしています。新たに導入するシステムは、お客様が疑問を残したままだと普及しませんので、しっかりと理解していただけるまで説明をします。

その際注意すべきことは、例えばシステムエンジニア経験のある自分にとっては簡単なことでも、システムに詳しくない相手にとっては難しく感じるということがある点です。電子契約についても同様で、我々がしっかり説明したつもりでも、お客様が必ずしも理解できているとは限りません。お客様が消極的な方の場合は、理解できなかったところを質問できず、うやむやなままにしてしまうこともあります。

説明にどれだけ時間がかかっても、しっかりとお客様に手を差し伸べて、疑問点があればすべて吐き出してもらい、解決するよう意識しています。

三浦様

私は宅建文京支部の常任理事もやっているのですが、契約の電子化解禁に関する会員同士の協議を実施した際、参加者でディスカッションを行うと、皆が疑問をあげていきました。例えば「裁判になった時、もし電子契約をした不動産業者が倒産していたら契約の原本提出はどうすればいいのか?」などですが、こうした素朴な疑問や不安を解消してあげることが、電子契約の普及につながるのではないかと思いました。

クラウドサインを導入することで御社の事業がどう変わっていきそうか、今後の展望について伺えれば。

三浦様

クラウドサインで契約業務の効率が上がることで、他の業務に割ける時間が増え、仕事の質が向上し、時間にも余裕ができるだろうと期待しています。コロナ禍以降、当社では在宅勤務が常態化していて、営業スタッフはお客様のところへ行くとしても、ほぼ直行直帰です。そうやって通勤時間が減ったことともあわせ、時間を有効活用できるようになれば、極端な話、2拠点生活も成り立つと思います。

IT重説とクラウドサインの2つがあれば、オンラインで契約を完結できますので、常に会社のある都心近くに住んでいる必要はありません。仕事の仕方、生活の仕方がガラッと変わってくるでしょう。人材不足が叫ばれる昨今ですが、こうしたフレキシブルなワークスタイルは採用においても有利に働くはずです。その意味でクラウドサインが果たす役割はすごく大きいなと感じていますね。

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