千葉県浦安市
財務部 契約課 課長 秋本豊様
財務部 契約課 契約係 係長 彦田真一様
ベッドタウンとして高い人気を誇り、東京ディズニーリゾートという国内有数のエンターテイメント施設を擁することで知られる千葉県浦安市。もともとは漁師町でしたが、埋め立てが進み住宅開発が盛んになったことで居住者が増え、2022年現在、人口は約17万人強となっています。
そのため近年は、人口増による成長から、「街としていかに成熟させていくか」へと方向性をシフトさせています。その一環としてDXを推し進めており、2022年4月から契約書の電子化に踏み切りました。クラウド型サービスを利用するにあたり、浦安市が着目したのはクラウドサインの信頼性と安全性。国のグレーゾーン解消制度を利用して電子契約の有効性や安全性を確認していることに加え、自治体が利用している閉域ネットワーク「LGWAN」を介して各種サービスを利用できるようにする「LGWAN-ASP」に、クラウドサインが対応したこともポイントでした。
※グレーゾーン解消制度:産業競争力強化法に基づき、事業者が、現行の規制の適用範囲が不明確な場合においても、安心して新事業活動を行い得るよう、具体的な事業計画に即して、あらかじめ規制の適用の有無を確認できる制度
※LGWAN:総合行政ネットワーク。地方公共団体の組織内ネットワーク(庁内LAN)を相互接続する行政専用ネットワークであり、安全確実な電子文書交換、電子メール、情報共有および多様な業務支援システムの共同利用を可能にする電子自治体の基盤。
電子契約のメリットがあまりにも大きい
電子契約サービスの導入を検討することになったきっかけを教えてください。
秋本様
1つ大きなところとしては、内田悦嗣市長が公約で「クラウドを活用した電子契約の導入」を掲げていたことが挙げられます。また、押印の見直しをはじめとするデジタル化、DXの推進は社会的な流れになっていますので、電子契約サービスの導入は、そのような意味でも必然であったと思います。
もちろん新型コロナウイルスの影響も、そうしたデジタル化が加速した要因の1つだと思います。市民の方の手続きも電子化して来庁の必要がなくなれば、感染症対策にもなります。経費や人件費の節減のため、市役所における事務作業のさらなる効率化も求められていますので、デジタルの活用は待ったなしでした。
彦田様
2022年3月には、今後の市のデジタル化に向けた基本方針となる「浦安市デジタル化推進計画」を策定しました。そこではデジタル化による業務内容の見直しについても言及しています。たとえば今まで人の手で行っていた作業でも、機械でまかなえるものは機械に置き換えていきます。業務の効率化を目指すには、契約書などの電子化も欠かせないと考えていました。
これまで紙の契約業務において課題を感じるところもあったのでしょうか。
秋本様
紙の契約業務に課題があったというより、電子契約のメリットしかない、と思いました。業務の効率化やコスト削減の難しさなど、それが今になって思えば紙契約の課題だったのかもしれませんが、電子契約を一度試してみて、その難しかった部分をITツールを活用すれば簡単に解決できるんだな、という気付きが得られたんです。
2020年に、電子契約サービスを導入することで削減できる経費の検証も行いました。電子化した場合とそうでない場合の人件費などを割り出したんです。試算の結果によれば、契約業務にかかる人件費とその他経費を年間約200万円ほど削減できると。電子化の効果が明白であることがわかりました。
高いセキュリティを担保する「LGWAN-ASP」対応にも期待
数ある電子契約サービスのなかからクラウドサインを選んだのは何が理由でしたか。
秋本様
クラウドサービスを利用した契約業務の場合、セキュリティ面が一番気になる部分です。そこをどのように担保していくか考えるなかで、国のグレーゾーン解消制度を利用して電子契約の有効性や安全性を確認している事業者やサービスがいくつかあることがわかり、その1つがクラウドサインでした。
市として公平性を保つため、最終的には「グレーゾーン解消制度の適用を受けているクラウドシステム」という条件で入札によって決めましたが、結果的に費用感がマッチしたクラウドサインを選択させていただきました。
クラウドサインが「LGWAN-ASP」に対応しているという点についてはどのように考えてらっしゃいますか。
秋本様
導入する電子契約サービスを決定する際には「LGWAN-ASP」対応かどうかは考慮に入れていませんでした。しかし、普段から利用しているLGWAN経由でアクセスできるのは、電子契約サービスをより安全に活用できるという意味で大変重要です。強固なセキュリティを維持したまま不安なく使い続けられるところには、改めて高い期待感を抱いています。
契約の電子化で、事業者側のコスト削減にも効果
事前調査で年間200万円のコスト削減を見込んだとのことですが、それ以外のところで電子化による効果はありそうですか。
秋本様
なんといっても敏速な契約ですね。市役所内部の決裁が終わりさえすれば、すぐに契約締結できてしまいます。これまでは決裁後、事業者様に契約書のデータをメールで送り、事業者様の方でそれを2部、印刷・製本して社印を押したうえで市役所まで持参していただくか、郵送していただいていました。それから市の方で市長印を押し、1部だけ事業者様に郵送するという流れです。
一連の作業で最低でも1週間はかかっていたわけですが、クラウドサインで電子化することによって時間がギュッと短縮され、1日もあれば契約締結に至れます。このスピードのおかげで案件をその分早く進められる、という効果もありそうです。
契約相手となる事業者側にもメリットはありそうですか。
秋本様
事業者様の方は印紙税が不要になるので、コスト削減の効果はもっと高くなると思います。契約書は事業者様の方でわざわざ背表紙をつけるなどして手間をかけて作っていただいていましたから、電子契約になればそうした製本の手間もなくなります。市側よりも事業者様の方が電子化のメリットは大きいはずです。
紙ではなくクラウド上のデータを扱うことになる、という意識の切り替えが必要
クラウドサインはどういった用途・契約で活用されますか。
秋本様
契約書に限らず、たとえば協定書や覚書、請書など、電子契約で締結できる種類の書類はすべてクラウドサインを活用していきます。もちろん法律上まだ電子契約ができないものもあります。ですから全てを電子化するのは無理だとしても、可能な限り100%を目指して電子化率を高めていければと思っています。
紙だったところから電子へ移行するということで、戸惑いや苦労したところはありませんでしたか。
秋本様
これまでは「押印されているものが締結済の契約書である」という意識が職員全員のなかにあったと思います。それがこれからは印影のない電子ファイルになって、クラウド上に存在することになりますので、そのあたりの感覚を切り替えていくのに慣れが必要だと感じています。
2022年3月には職員向けに説明会を開き、クラウドサインの基本的な操作方法などをレクチャーしました。簡単に使えるツールですので戸惑うところはなさそうですが、クラウドサインの運用が本格化してから課題が見つかる可能性もありますし、そのときは1つずつ根気よく対応しながら解決していくしかありません。ただ、何の問題もなくスムーズに運用できるかもしれませんし、そういう意味では期待と不安の両方がありますね。
当社からは、浦安市様と取引のある事業者の方を対象にしたオンライン説明会も実施させていただきましたが、反響はいかがでしたか。
秋本様
280人もの方が参加した大きな説明会になりましたが、内容はとても良かったですし、説明もすごくわかりやすかったですね。本来ならみなさんに会議室に集まっていただいてその場で質疑応答などができればよかったんですけども、コロナウイルスの感染拡大もあり叶わずでした。そんな中でも弁護士ドットコムからは最大限にサポートをいただけて、ありがたかったです。おかげさまで多くの事業者様から契約の電子化に前向きなコメントをいただいています。実際に運用を開始した2022年4月は、契約課で行う入札案件に限った数ではありますが、クラウドサインでの締結割合が6割を超える数字となっているので、順調に電子化が進んでいます。
多くの自治体で導入してもらい、よりよい運用方法を一緒に模索したい
クラウドサインのさらなる活用について将来的に考えていることがありましたらお聞かせください。
秋本様
市では電子契約サービス以外にも電子入札システムや財務会計システムも導入しており、これらはすべて別々のシステムとして動いていますが、将来的にはクラウドサインと連携できるようにして、業務効率を一段と高めていければと思っています。
また、クラウドサインを使うことで、公印を省略した行政文書を複数の事業者に一括送信することも可能とのことですので、そうしたところにも活用の幅を広げていきたいですね。
彦田様
先ほどお話しした「浦安市デジタル化推進計画」では、行政手続きのオンライン化の推進、オープンデータの推進、マイナンバーカードの普及、デジタルディバイドの解消、さらには情報システム基盤の強化、システム管理の適正化など、さまざまな目標が設定されています。それらに向かって業務に関わるあらゆる部分を見直していくことになるはずですので、そこではクラウドサインのより一層の活用も鍵になるだろうと考えています。
これからクラウドサインを導入しようと考えている自治体に向けて、メッセージがありましたら。
秋本様
最初は紙から電子契約に切り替えるというところで、職員の意識変化がなかなか追いつかないかもしれません。ただ、電子契約によって合理的かつ効率的な契約業務が可能になるのは間違いのないことです。電子契約を利用する自治体がどんどん増えていくことで、私たちとしても相談や情報共有ができる機会も増えていきますので、より良い運用方法があれば互いにそれを取り入れつつ、一緒に業務の効率化を進めていければと考えています。
彦田様
クラウドサインは、一度触れただけで、これに慣れればもうやめられないだろうな、と思うほど簡単で効果的なものでした。難しい操作をすることなく契約業務のスピードアップを図れますし、紙書類をあちこち持ち運んで確認や押印をしてもらう必要もないので、他の仕事をしているうちに裏側で勝手に契約処理が進んでいます。契約に関わる業務を担当している職員や事業者様にも、きっと喜んでもらえるツールだと思いますね。