シューペルブリアン株式会社
人材サービス事業部 拠点長 宗久昌明様
マーケティング担当 亀井隆幸様
特定の業界・業種によらない幅広い人材の派遣、紹介を行う人材サービス事業を主軸に、介護事業なども展開しているシューペルブリアン。広島県で創業して20年、地域に住む人材や企業に寄り添って困りごとを解決してきたこともあって、独自の退職金積み立て制度や派遣スタッフの資格取得支援制度など、ユニークな福利厚生を整備しているのが特徴です。
同社はデジタル化・DXに向け、基幹業務システムとして2019年にSalesforceを導入しましたが、活用が思ったように進まなかったため、考え方や社内体制を見直すことに。その後2021年1月の労働者派遣法の改正を機に、Salesforceと連携可能なクラウドサイン Salesforce版で一気に契約の電子化を果たしました。一度はつまずきかけたDXを再び軌道に乗せるまでにはどんな工夫があり、結果的にどんな成果が得られたのか、担当者に話を伺いました。
Salesforceに向き合うために契約の電子化からスタート、SDGsも意識
はじめに電子契約サービスの導入を検討することになった経緯を教えていただけますか。
宗久様
当社では2019年に社内業務の効率化を目的にSalesforceを導入しました。ところが、全社的にはあまりうまく機能していなかったのが実態だったんです。Salesforceは非常に柔軟なシステムだからこそ、我々自身、業務のDXは「こうあるべき」という姿をきちんと思い描いて導入を進めないと、もったいない使い方になる、ということが反省すべき点として残りました。
そこで、改めてSalesforceの役割を見直し、会社の組織体制をSalesforceを通じて変えていこうと考えました。それからしばらくして2021年1月に労働者派遣法の改正があり、スタッフの派遣先となるクライアント企業様との間で結ぶ労働者派遣契約の電子化が可能になったことが、電子契約導入を考える大きなきっかけになりました。派遣スタッフとの雇用契約についてはすでに電子化が可能な状況でしたが、労働者派遣契約も電子化できるようになったことで、電子契約サービスの導入検討を本格化し、2021年6月から運用を開始したということになります。
亀井様
Salesforceは営業部門での活用はまだ進んでいたのですが、管理部門の方がしっかりSalesforceに向き合いきれておらず、表計算ソフトを使ってオフラインで様々なデータを管理しているような状態でした。なんとかして管理部門の業務もSalesforceの中に落とし込んでいけないか、と考えるなかで、契約の電子化であれば取り組みやすいのではないか、と考えたところもあります。
紙で契約していたときにはどんな課題がありましたか。
宗久様
クライアント企業様と労働者派遣契約を結ぶ際には、紙の契約書を営業担当者が直接お届けに上がっていたり、郵送していたりして、人的にも通信費的にもコストがかかっていました。また、我々が会社としてSDGsに取り組んでいることもあって、紙を減らして資源や環境の保護に貢献したいという思いもありました。電子化が従業員の生産性にも寄与すると考えられましたから、電子契約サービスの導入に向けては反発もなく、スムーズに進められたと思っています。
Salesforceとの連携も考えればクラウドサインは割安
他の電子契約サービスとは比較されましたか。また、そのうえでクラウドサイン Salesforce版を選ばれた理由を教えてください。
亀井様
私自身、一番最初に頭に浮かんだのは、認知度が高いクラウドサインでした。ただ、そのときはまだSalesfoceと連携させて使うところまで考えが及んでいなかったこともあって、利用料金を見たときに少し高いなと感じるところがあった、というのが正直なところです。
いくつか他の電子契約サービスも検討していて、人材派遣業との相性や価格の面で魅力的なツールもありましたが、無料トライアルで現場の人たちと一緒に試していったときに、現場がスムーズに運用するのに必要な機能が当時は不足していることがわかりました。そもそもSalesforceという基幹システムがあるにもかかわらず、それとは別に運用することで現場にかなりのストレスを強いていて、これは定着しないかも、と感じたんです。
そこでSalesforceの担当の方に相談したときに、Salesforceと連携できる電子契約サービスとしてクラウドサイン Salesforce版を紹介していただきました。国産のツールで、弁護士ドットコムという国内の法律にも詳しい信頼のおける企業が運営元であることから、クラウドサインなら間違いないだろうと。最初は料金が少し高いかもと思っていましたが、Salesforceと連携して生産性を向上できるのであれば、むしろ安いなと思いましたね。
現場の業務を理解し、現場の視点で導入方法を検討
現在どのような契約書でクラウドサイン Salesforce版を利用されていらっしゃいますか?
宗久様
現在は派遣スタッフと結ぶ雇用契約書と、クライアント企業様と結ぶ労働者派遣契約書の主に2つでクラウドサイン Salesforce版を利用しています。
どのようなフローで契約書を送信されていらっしゃるのでしょうか?
亀井様
別システムで作成した契約書を、Salesforceにアップロードし、Salesforce上から派遣スタッフ、クライアント企業様宛にそれぞれクラウドサインを送信しています。
送信後はダッシュボードで契約書の進捗を追えるようにしているので、管理部門が簡単にステータスを確認できるようになっていますし、締結後は契約書のPDFがSalesforceに自動で保管されているので、Salesforceだけで契約業務が完結できるようになっています。
導入を進めていくうえで、Salesforceとの連携も含めて、苦労されたところや工夫されたところはあるでしょうか。
亀井様
とにかく管理部門の業務をSalesforceに取り込むことができていなかったので、いきなりSalesforceにクラウドサインをつなげて使えるようにする、と言ったところで、その便利さをイメージすることが難しい。なので、どんな風に便利になるのかがわかるように、どうやって伝えていけばいいだろう、と悩んだりしました。
私自身は現場で契約業務やクライアント企業との折衝をするような立場ではありませんが、導入を推進する立場上、まずは私自身がその便利さを実感できるよう試しつつ環境を整えていく、という工夫をしました。現場の業務を私も理解して、どういう流れでクラウドサイン Salesforce版のフローを作っていくのがいいのか、というところに焦点を合わせていました。
現場の業務を理解して導入をすすめたおかげで、導入後に現場の混乱はほとんどありませんでした。予想していたよりも早く社内浸透が進んだように思います。連携自体も非常にシームレスですし、操作が簡単ということも大きかったと思います。
また営業担当者が派遣スタッフに電子契約を説明するための簡易的な資料は作成しました。電子契約に馴染みのない方が読んでも分かりやすいよう、スクリーンショットなどを載せて操作をイメージしていただける資料にしました。なるべく情報量を少なくシンプルにしようと心がけました。
宗久様
現在は派遣スタッフと結ぶ雇用契約書と、クライアント企業様と結ぶ労働者派遣契約書の2つでクラウドサイン Salesforce版を利用していますが、前者の雇用契約書を交わすにあたってはスタッフの連絡用メールアドレスが必要で、改めて情報として整備し直す必要がありましたので、その確認作業が現場としては少し苦労したところになるかと思います。
クライアント企業様のなかには、使い方や電子化に対して漠然とした不安がある方もいらっしゃったようでしたが、それに対しては当社の営業担当者が個別に対応させていただきました。弁護士ドットコムの記事など共有して、法的な安心感の部分についてはご説明しました。でも、実際に1度使えばほとんどの企業様が受け入れてくれるだろうという我々なりの予感もありましたし、実際に使っていただいた結果、やはり問題なく移行できましたね。
9割以上を電子に移行。情報へのアクセス性の高さもメリット
導入したことによる効果について実感されている点はありますでしょうか。
亀井様
定量的なデータは自社ではまだ整理できていませんが、紙の契約書のときにあった封入作業や郵送の手間、コストは、間違いなく削減できています。これまでに半年間で送信した契約書は1,300件ほどで、クラウドサインからメールで届くレポートによると、紙契約では1件当たり730円かかっていた試算になっていましたから、それに当てはめると1カ月あたり15万円ほどのコストを省けていることになります。
契約書の送信後は、Salesforce上のダッシュボードで、現在のステータスがわかるように作り込みましたので、それに基づいて進捗管理することもできています。締結済みの契約書はSalesforce上で人と企業にひもづいた形で格納されていて、情報のアクセス性の面でも利便性が高いですし、しかもそれをシンプルな形で実装できています。これによって管理部門がSalesforceと向き合わないと業務ができなくなったので、社内のデジタル化、DXにも貢献できたかなと思っているところです。
宗久様
派遣事業における契約書の電子化は90%以上になっていますが、一番のメリットはやはり圧倒的な工数の削減ですよね。紙のときは契約締結まで1週間から10日間はかかっていたところ、クラウドサイン Salesforce版導入後は早ければ1日かからず完了するようになりました。営業部門では、急いで契約したいというクライアント企業様の要望にも速やかに応えられるようになり、営業担当者の心理的負担もかなり減っています。
それと、紙の契約書は保管庫にファイリングしていて、そのスペースがちょうど一杯になりつつあったので、電子化はちょうどいいタイミングでもありました。締結済みの契約書はSalesforce上で検索できますから、契約更新の時期やクライアント企業様からの要望で過去の契約書を確認したいときでも、いちいち保管庫から探し出すことなく、すぐに対応できるようになったのもうれしいですね。
デジタル化に必要なのは「点」ではなく「線」でのツール導入
今後、クラウドサイン Salesforce版の活用をどのように広げていきたいか、考えているところがありましたら教えてください。
亀井様
現在は派遣事業のなかでクラウドサイン Salesforce版を使っているわけですが、当社は派遣事業の介護事業なども行っていて、他に経営的なところでも多くの契約書が発生しています。当然ながら今は紙の契約書で、ファイリングしているのが溜まっていっている状況ですので、そういった派遣事業以外のところでの契約の電子化も進めたいですね。もちろんそのときはSalesforce上の情報とひも付けした形で、たとえば顧客管理というところもセットにして、データベースとしてアクセスしやすい形で導入できればと思っています。
また、今のところSalesforceとは別に契約書自体を作成するためのシステムがあって、そこで契約書ファイルを作成後、Salesforceに取り込んで、相手方に送付するという流れになっています。この部分も課題を感じているところですので、1つのシステムでまかなえるように改善していきたいと考えています。
宗久様
派遣事業の中でも、労働者派遣契約や雇用契約書といった、すごくベーシックなところでまずは社内浸透を図れたとは思います。ただ、最近では派遣労働者の方の在宅勤務に対する覚書のようなものがクライアント企業様によっては必要になってきていたりしますので、そういうものもクラウドサイン Salesforce版を利用できるようにしたいと思っています。
先ほど亀井が申し上げたような全社的な契約書の電子化は、人的リソースの問題もありますし、部分的にデジタル化を進めることによる弊害も考えられますので、少しずつ時間をかけながら実現していくことになりそうです。さまざまな領域のクライアント企業様と、いい形で連携が図れるようなDXをなしえることが理想で、我々もまだまだ知見を深めながら進めていく必要があるのかなと感じています。
クラウドサイン Salesforce版もしくはクラウドサインを、今後活用していきたいと考えている他の企業に対してメッセージがありましたら。
亀井様
派遣業界はまだそこまでデジタル化が進んでいないように思います。業界の特性として、何らかの既存ツールを導入してもそのままでは使いにくかったりします。ただ、私としては同じ業界のライバルかどうかは関係なく、派遣会社のみなさんはどんどん電子契約サービスを導入してほしいと思っています。そのときには、業務内容ごとに別々のツールを使うような「点」の導入ではなく、ツールをできるだけ統一して連携させて使う「線」でのデジタル化を推進してほしいですね。そういった派遣会社が増えていけば、業界全体がDXでもっと盛り上がるんじゃないかなと考えています。
宗久様
派遣先となるクライアント企業様のなかには、電子化しているところもあれば、まだ紙の契約書を使っているところもあって、対応が難しい場面もあるとは思いますが、結果的にはクライアント企業様にとってもメリットがあることですので、電子契約が当たり前の世の中になるよう、他の派遣会社のみなさんもぜひクラウドサインを導入してほしいですね。
契約の相手方から電子契約の理解が得られにくい場合でも、SDGsの観点だとクラウドサインを導入しやすいケースもあります。業務の効率化や法改正に則って、といったところももちろん大事ですが、会社としてSDGsに取り組んでいて、環境への配慮という部分もアピールすることで、相手の電子化に対する捉え方が変わってくるのではないかとも思います。