第一工業製薬株式会社
取締役 管理統括 河村一二様
管理本部 総務法務部 法務グループ 専門課長 玉谷尚子様
管理本部 総務法務部 総務グループ 主任スタッフ 高橋知子様
第一工業製薬様は、京都に本拠を構える1909年創業の化学メーカー。絹糸の原料、蚕の繭を洗う薬剤の製造からスタートし、当時、日本で急成長していた繊維産業の発展に貢献しました。現在は界面活性剤やトンネル工事で使われる岩盤固結剤などの工業用薬剤、ライフサイエンス関連製品の製造・販売を手がけるほか、高速モバイル通信技術である5Gにも同社の製品が用いられているなど、人々の生活を科学の力で支えています。
一方で、工場設備におけるIoT機器や解析ツールを用いた予防安全の取り組みを行い、早くから生産現場でデジタル化およびDXを進めてきた同社は、管理部門にもその範囲を広げ、契約書の電子化を推進。数あるICTツールのなかでも、容易に使いこなせることから、社内のDXを一段と加速させるための「DX実感ツール」としてクラウドサインを導入しました。
スピード重視の組織体制の下、導入を素早く決断
電子契約の導入を検討し始めたきっかけは何だったのでしょうか。
玉谷様
海外の取引先から、電子で契約したいという要請があったのがきっかけの1つでした。それまでは当社に電子契約の際の規程なども存在しなかったので、どのように導入して利用すべきかをそこから勉強し始めました。
河村様
私は、海外ビジネスに携わる機会も多かったので、近いうちに日本も同じように本格的に電子化に向かうだろうと予測していましたし、実際、コンプライアンスに厳しい銀行でも今や電子化が進みつつあります。そうしたなかで、電子で契約したいという海外のお客様、国内のお客様も増えてきました。これは、できるだけ早く導入したほうがいいだろうな、と思いましたね。
電子契約サービスを選ぶにあたり、クラウドサインは何が決め手になりましたか。
高橋様
いくつかある電子契約サービスのなかでも、国内シェアが一番大きいことですね。相手があっての契約ですから、より広く知られているサービスの方がスムーズに話を進められます。
また、契約業務は締結前の社内決裁から最後の保管まで、一元的に管理できるようにすべきものです。当社では契約管理にリコー様の法務支援クラウド「RICOH Contract Workflow Service」を使用していますので、これとシステム的に連携できるかどうかも重要でした。その条件も満たしていたことが、クラウドサインを選んだ理由になります。
御社は従業員数が1000名を超える規模ですが、検討開始から導入決定まで、かなりスピーディに進んだと伺っています。
河村様
元々、当社の会長がそういう企業文化を作り上げてきているところもあり、会社としてはスピードを重視していて、意志決定も早い方だと思います。従業員と役員がフラットに連携を取って情報共有し、横断的にフレキシブルに動ける組織づくりを目指してきました。クラウドサインの導入も、そういった社内体制のおかげですぐに決めることができたのだと考えています。
「すべての契約を電子に」を合言葉に全社導入。eラーニングの活用で理解もスムーズに
利用されている契約類型と、導入を進めていくうえで工夫されたところがあれば教えてください。
玉谷様
クラウドサインは、取引に関わる基本契約書をメインに、銀行との金銭消費貸借契約にも利用していますし、派遣社員や契約社員との契約など、人事・労務系の契約書類も電子契約を利用するように進めています。
導入にあたってのポイントとしては、現在の法律上、紙でなければいけないもの以外は、原則すべての契約を電子にする、と決めたことです。「紙でもできるけれど、できれば電子で」という言い方だと、「じゃあ今まで通り紙で」ということになってしまいますので。社外との契約締結の際にも、電子契約で進めたい旨を必ず取引先に打診するところから始めています。
高橋様
もちろん、いきなり「電子契約を導入します」とただ宣言しても混乱するだけですので、まずはeラーニングの仕組みを利用して、電子契約の概要や注意点、運用にあたって知っておくべきところなどを全社員が学習できるようにしました。クラウドサインの導入にともなって、法務支援クラウドの運用にも見直しが入りましたので、それを踏まえた内容にして、さらに手順書などのマニュアルも作成しています。
eラーニングでは、「クラウドサインで契約する場合」と「相手先が希望する電子契約サービスで締結する場合」、そして「紙で契約する場合」といったパターンごとに想定フローを用意して、各ケースにおける処理の進め方も学べるようにしました。学んだ内容を基にしたテストも用意して、理解度を測れるようにもしています。電子契約を締結する方法を説明した動画や、電子契約を締結するにあたって出てきた質問をQ&Aにまとめたものを全社公開しております。
電子に移行することについて、社内から反発のようなものは特にありませんでしたか。
河村様
そうですね。各部門の役員が経営会議できちんと議論して、全員が合意し、会社として導入を決めた以上、あとはそれに向かってみんな一丸となってやっていくだけですから。DXを進めていくという意識をもって、みんな意欲的に使おうとしてくれています。
クラウドサインは社員のDXへの意識をより高めるツールになる
電子化したことによって、変化や効果を実感しているところはありますか。
高橋様
これまでの紙の契約書では、最初に社内で契約内容の審議をして、内容に問題ないかの決裁を行い、その後、紙書類を相手方に送付して双方が押印し、回収した契約書をスキャンしてPDF化していました。PDFは法務支援クラウドに保存し、さらに紙の方もキャビネットに保管するという流れです。
これを電子化したことで、最初の契約内容の審議までは同じですが、それ以降はクラウドサインで契約書を送信して、相手側が承認すれば契約完了となります。データはクラウドサインと法務支援クラウドの両方に保管することになります。クラウドサインは使い勝手が非常にいいですし、相手方に送信される承認依頼のメールの内容もわかりやすいので、混乱なく契約が進みますね。
河村様
導入して間もないですが、すでに社員の多くが電子契約に慣れ始めています。紙の契約書だと発送や押印、受領などの作業をするために出社しなければなりませんが、電子なら出社することなく対応できるのもありがたいですよね。ワークスタイルの多様化が進んだ今、当社もテレワーク、在宅勤務を導入していますし、おそらくコロナ以前の働き方に100%戻ることはもうないでしょうから、リモートで契約業務が進められるこの仕組みは必須です。
御社が進めているDXにおいて、クラウドサインはどんな位置付けにあるのでしょうか。
河村様
DXの目的は、業務における無駄の削減と、提供価値の向上にあると考えています。無駄をなくして効率化することで、顧客に対して短納期で製品を提供できるようになる、といったような価値提供ができるわけですね。ですから、DXは会社として欠かせない活動ですが、当社の従業員は年齢層が高めで、DXに抵抗感がある人もいます。しかし、具体的なツールに触れることで、そんな後ろ向きの意識が変わることもあります。
そういう意味で、比較的容易に導入でき、使いこなせるクラウドサインのようなツールは、社員のDXへの意識をより高めるきっかけの1つになり得るものです。クラウドサインに慣れれば、今度は別のツールもアレルギーなく受け入れる可能性も高まるでしょう。社内のDXをさらに加速させる「DX実感ツール」として、クラウドサインは大いに役立っていると思いますね。
「電子契約が当たり前」という共通認識を広げるためにも積極的な導入を
最後に、クラウドサインの導入を検討している、もしくはさらに活用していきたいと考えている企業に向けてアドバイスをいただければ。
玉谷様
私たちが電子契約を進めるにあたっては、当然ながら契約相手となる取引先にも了承していただけないといけません。しかし、「電子契約が当たり前」という共通認識ができた方が互いの利益になりますから、みなさんにも積極的にクラウドサインを導入していただけたら、と思います。
高橋様
電子契約については、多くの企業が関心を持ってはいるものの、まだ様子見しているところも多いようです。法的な部分で迷われていることもあるのかもしれませんが、そのあたりは弁護士ドットコムさんがきちんと担保していますし、安心して利用できるサービスだということをみなさんに知ってほしいですね。
河村様
日本の企業でDXがなかなか進まないのは、経営者の多くが「どうやってDXしていけばいいのか」がわからないからではないかと思っています。経営者がどういうアクションをし、具体的に社員に何を学ばせればいいのか、ということに悩んでいるのではないかと。
そういう企業が意識変革を起こす取っかかりとして、クラウドサインはちょうどいい。DXを進める最初の入口のツールにもなり得るでしょう。もし導入してみて、合わなければすぐにやめて元に戻すこともできます。ですから、とにかくまずは試してみてほしいですね。