キヤノンマーケティングジャパン株式会社
ビジネス法務部 ビジネス法務第一課 大林紘司様
ビジネス法務部 ビジネス法務第一課 御手洗夏帆様
ビジネス法務部 ビジネス法務第一課 菊池菜百様
「社会・お客さまの課題をICTと人の力で解決するプロフェッショナルな企業グループ」をビジョンに掲げ、キヤノングループの日本国内のマーケティング活動を中心に市場やお客様のニーズにあわせたソリューションを展開しているキヤノンマーケティングジャパン株式会社様。
市場の急激な変化の中、自社でも業務プロセスの変革を行いながらDXを推進しており、そのノウハウや経験も取り入れ、業種や業務にあわせたデジタルソリューションを展開することで、中小から大企業のお客さまのバックオフィス業務のDXを支援されています。
今回クラウドサイン導入に至った経緯や活用方法、導入後の変化についてお話を伺いました。
紙の契約書が効率化の妨げに。契約業務の完全電子化へ。
さっそくですが、電子契約を導入した目的を教えて下さい。
大林様
大きく分けて2つあります。1つは契約業務のフローをすべて電子化するためです。当社では以前から契約書の作成やレビューなどにおいて、法務部門と事業部門との間でやりとりする際に独自の契約管理システムを利用していました。しかし、この契約管理システムでは、処理のなかで連携できず、どうしても紙書類が介在してしまう部分があり、その部分も電子化して業務効率化を図るべきだと感じていました。
2つ目は紙での管理の負担とリスクを減らすためです。紙の契約を管理するための手間も大きく、必要なときに紙がなかなか見つからない、といったリスクもあるため、その対策も必要だと考えていました。
電子契約の導入はいつ頃から検討を始めたのですか?
大林様
電子契約サービスの導入検討を始めたのは2019年頃のことです。コロナ前から検討していたわけですが、当時は「いま電子契約サービスを入れるニーズ」というものがやはり顕在化していなかったのが実情です。「紙でやった方が楽だよね」という固定観念があるなかで、「その山をどうやって越えようか」と頭を悩ませていました。ところがそこにコロナ禍がやってきて、電子化のニーズが顕在化したことで、検討が一気に進んだという形です。
経営陣からは「スモールスタートではなく全社での利用を」
数ある電子契約サービスのなかからクラウドサインを選ぶ決め手となったのは何ですか。
大林様
大きなポイントとなったのは、直感的に使いやすいかどうかです。利用する部門や契約書を限定するつもりはなかったので、どの部門のどんな人でも直感的に使えるUIであることが1つ。また、利用者が多くなる可能性があったので、利用者数に依存しない料金体系であるところも大事でした。
電子契約の準備を進めるにあたってはさまざまな情報を参考にしながら検討を進めていました。弁護士ドットコムが電子契約についてたくさん情報発信されていて、そういった情報発信の頻度やクラウドサイン法律ガイドをはじめとした発信情報の内容の信頼性の高さ、というところも選定要因の1つになっています。
クラウドサインの導入を進めることについて、経営陣にはなにか説明などをする機会はあったのでしょうか?
大林様
社内システムの導入のためには一定の決裁が必要になります。色々な部門が利用する前提だったので、経営会議やシステム導入の審議会などで、経営陣に導入の目的などを説明しました。
具体的にどのような話し合いをされたのでしょうか。
大林様
導入検討の段階から経営陣に報告していく中で、そもそもその経営層から「スモールスタートでちまちまやるんじゃない、どんとやれ」と言われていました。スモールスタートで小さく進めていくとその分スピードが遅くなる。今まさにコロナ禍で出社できなくて困っているのに、なぜのんびり進めるの、と。そんな風に助言を受けながら、決裁を取ったうえで進めています。
もちろん、全体のどれぐらいを電子契約に移行できそうかという目標数値みたいなものも立てましたし、コスト試算と投資効果についても確認しています。一方で、電子化することで業務プロセスがかえって複雑になる契約形態もありますので、それについては無理に電子化を進めるのではなく、丁寧に検討を進める、ということも含めて承認してもらっています。
重要なのはクラウドサインを使う「前工程」と「後工程」の整理
クラウドサインの活用状況について簡単に教えていただけますか。
大林様
私が所属しているビジネス法務部では契約書の作成や審査、訴訟対応などのリスクマネジメントを担当しており、日常的な業務でも契約書の作成やレビューが仕事の大半ですので。実際の契約フローでは、事業部門それぞれがクラウドサインを利用する形にしています。
今のところクラウドサインの利用が最も多いのは、全国にいらっしゃるキヤノン製品、事務機器の販売パートナーであるディーラーさんとの間で交わす、販促に関する取り決め文書です。次に多いのは調達部門が仕入れ先様と結ぶ基本契約書、あとは我々グループ内企業同士の業務委託契約ですね。
クラウドサインの導入はどのように進められたのでしょうか?
大林様
クラウドサインの社内導入は、私が所属するビジネス法務部と社内の情報システムを管理しているIT本部が主導で行いました。ビジネス法務部では実際の運用フローまわりを、クラウドサインに関するシステム的な問い合わせはIT本部がそれぞれ担当しています。
当社にはいろいろな部門が存在しています。大手企業に複合機を販売している部門もあれば、カメラを量販店に卸す部門、事務機器の販売代理店に対して商品を卸す部門もあって、チャネルも商材もバラバラです。しかしクラウドサインの導入にあたっては、特定の部門に限定して導入しようとはせず、利用を希望する部門にはみんな使っていただく、という形で進めました。
そのためまず我々法務部門では、クラウドサインの利用を始めるにあたって「取引先様と何を調整しなければいけないのか」といったような「前工程」の部分と、「契約締結後の文書をどこで管理するのか」といったような「後工程」の部分を整理しました。また、こちら側から相手に電子契約を求める場合、反対に相手方から電子契約を求められた場合、クラウドサインではなく他の電子契約サービスの利用を求められた場合などに、当社側で何をしなければいけないのかを1つのマニュアルにまとめて、誰でも対応できるようにしました。
たとえば「前工程」では「相手方の締結名義人のメールアドレスまできちんと確認しましょう」というような確認事項もあります。能動的に我々の方でそこまで確認することで、締結名義の確かさや契約の有効性を担保できるように、という工夫です。このあたりはクラウドサイン単体だけだとカバーしにくい部分でしたので、人力でまかなうフローを組み上げてマニュアルに落とし込むなど、時間をかけて準備してきましたね。
導入がスムーズにいったポイントとしては何だったと思いますか?
大林様
やはりメールアドレスの確認フローや「前工程」の部分を細かくルール決めして、実際にクラウドサインを操作する事業部の人間が迷わないようにマニュアル化できたのが良かったのだと思います。ただし、決して手放しでスムーズに事が進んだわけではありません。たとえばIT環境は企業によって三者三様です。1人1個のメールアドレスがない取引先様もいて、事前に想定したフローで契約書をやり取りできなかったりします。
そこの対応で事業部が苦慮したり、電子契約に慣れていない取引先様に電子化の趣旨が理解いただけない、というようなケースがあったと聞いています。そういった場合の社内のサポート体制として専用のメーリングリストを用意して、そちらにまとめて質問が届くようにしています。そこでいくつか集まってきた質問をFAQのページにどんどん入れていく形にして社内全員で共有できるような仕組みをとっています。
しかし、電子化は結局のところ慣れの問題だったのだと思います。導入から半年ほどたって、徐々に取引先からの戸惑いの声みたいなものは減ってきていますので。
それと、弁護士ドットコムが提供している「導入コンサルティングサービス」も利用させていただき、他社における導入方法の実例などを伺えたのは非常に助かりました。それを踏まえて実務的な業務フローを我々の方でしっかり検討できたと思います。
リードタイムの削減はもちろん、進捗の見える化と集中管理がクラウドサインのメリット
クラウドサインを利用していくなかで、変化や成果を実感しているところはありますか。
大林様
やはり契約締結のリードタイムが短縮されている、という点に尽きると思います。紙の契約書だと締結完了まで2~3週間かかっていたのが、クラウドサインであれば遅くとも3、4日で終わります。業務の効率化を図れているのは間違いないですよね。
紙の契約書だとどこかのタイミングでデータ化しようにも、人手をかけなければなりません。しかし電子契約になっていれば、最初からクラウドサイン上で契約締結の進捗がわかり、データでの閲覧も可能なので、「後工程」にもつなげやすい。数値化しにくい部分ではありますが、定性的な効果は高いと感じています。
社内の利用者の皆様からの評判という意味ではいかがでしょう。
菊地様
私としては、クラウドサインはきわめて直感的に使用できると感じました。複雑な操作は必要なく、事前に使い方を詳しく調べなくてもすぐに利用できるのは、私のような法務部門にとっても、各事業部のスタッフにとっても良かったと思います。
御手洗様
社内から質問があってそれを回答しようとしたときに、クラウドサインのオウンドメディアが大変参考になり、それをすぐに共有できるのがありがたかったですね。そのおかげか「操作方法がわかりにくい」という要望はほとんどありませんでした。
社内システムとの連携でリスクマネジメントをより強固なものに
今後、クラウドサインをどう活用していきたいと考えていますか。
大林様
とにかく社内での利用率を上げて、どんどん普及させていきたいですね。そのためにもマニュアルをバージョンアップして、もう少し利用のハードルを下げていきたいです。利用実績もある程度積み上がってきていますので、より一層使いやすいようにブラッシュアップしつつ、「こういった業務フローでより活用できるよ」というように利用を後押しできる形になればと。
また、契約数と印紙の使用が多い部門など、電子契約によるメリットが大きいと考えられる部門と連携し、能動的に利用促進することを考えています。活用にあたって何が障壁になっているのか、取引先が電子契約に消極的な場合、その理由は何なのかなど、リアルなところの課題をヒアリングしながら利用を推進していくつもりです。
あとは、契約管理システムとクラウドサインをシームレスに連携させるなど、業務フローの全体をシステム連携で効率的に管理できるようにしたいと思っています。
それによりリスクマネジメントへの寄与も狙っていきたいと思っています。
部門ごとの個別の事情に応じて最適な活用方法を考えていく、ということになるわけですね。
大林様
私の感覚としては、多くの企業がつまずきがちな一般的な課題よりは、我々の会社ならではと思える課題が体感として多いんです。一般的な課題についてはブログなどでフォローしていただけているように思いますので、そうではなく我々が会社の実業に落とし込むところ、我々の現場ならではの困りごとをどうフォローしていくかが普及拡大の鍵になると思っています。
経営層にも協力をしてもらえる体制づくりが推進の秘訣に
最後にクラウドサインの導入や活用を検討している企業に向けて、何かアドバイスやメッセージをいただければ。
大林様
クラウドサインはとても便利だ、というのが率直な感想です。印紙が不要になって直接的なコスト減を図れる場合もありますし、リードタイムが早くなって業務効率化につながる場合もあります。成果が見えやすいですよね。ただ、スムーズに運用していくには、自分たちユーザー側で工夫しなければならないところも、特に「前工程」の部分であるかもしれません。「前工程」と「後工程」も含めた業務効率化を念頭に入れて業務プロセスをデザインする、といった観点から活用するのがおすすめですね。
また、経営層にもきちんと協力してもらえる体制作りも重要だと思います。弊社では契約書によっては社長にクラウドサインをクリックしてもらうシーンもあるのですが、そういった経営層にもきちんと協力してもらえる会社としての体制をお取引先様や社内にも周知を行うことで電子契約の導入がスムーズになるのではないかと思います。