インターネット業

コロナ禍とリーガルテックのトレンドに合わせ、導入を前倒し

  • 2020年11月19日(木)

インクリメントP株式会社
事業サポート本部 管理部 法務グループ
マネージャー 城﨑慶子様 安ヶ平徹様 藤枝典明様

 

電子契約にアレルギーをもつ会社は減り、使わせてほしいと言う会社が一気に増えました。

インクリメントP様は、やはり“地図の会社”というイメージが強いと思うのですが、改めて御社の事業について教えていただけますか。

藤枝様
当社インクリメントPは、日本全国の地図データベース整備からサービス提供まで一貫して手掛け、カーナビをはじめ、法人及び個人向けに「MapFan」ブランドで様々な地図サービスを提供している会社です。

従業員数は約450名で、カーナビなどの自動車関連機器で知られるパイオニアグループ企業として、国内外のカーナビメーカー、物流業界、IT業界(SIer)、官公庁等を含めた幅広いお客様に地図データを含む各種位置情報コンテンツを提供するのが主な事業となります。また、将来自動運転等の導入された社会を見据えて高精度地図の整備も進めております。

最近では「トリマ」というスマートフォン向けアプリをリリースしました。スマートフォンを持って歩いたり、電車等で移動したりすると、歩数や移動距離に応じて「マイル」が貯まり、各種ポイントに交換できる、いわゆる「ポイント活動(ポイ活)」ができるアプリです。

地図サービスの会社ですので、位置情報と「ポイ活」を結び付け、後で活動履歴(ログ)として見ることができるという点で、他の類似アプリとは差別化しています。ベータ版が約2カ月で10万件ダウンロードされました(※)ので、それなりに話題にしていただいているかなと思います。

※記事発表時点では正式版がリリースされております。

ワークスタイルの面で、新型コロナウイルスの影響はありますでしょうか。

藤枝様
緊急事態宣言後の4月からは、東京の拠点はほぼ全社テレワークに移行しました。出社している社員がいるとしても、管理職が数名程度といった感じです。緊急事態宣言が解除されてからはテレワークと出社の両方が認められていますが、出社しているのはだいたい3~4割でしょうか。我々法務グループの場合は日によって誰が出社するかを毎週決めて、半分程度のメンバーがオフィスにいるような形ですね。

電子契約サービスの導入を検討し始めたのはいつ頃ですか。

藤枝様
2019年の春頃です。ちょうど「リーガルテック」という言葉が広がり始めた頃ですね。リーガルテックに関連するセミナーへの参加や関連文献の調査をしたり、サービスを提供している企業に直接ヒアリングしたりしながら、電子署名サービス、AI契約審査サービスや契約管理サービスなどの情報を仕入れるところから始めました。

特に電子署名サービスについては、人件費や印紙代、紙書類のやりとりに要するコストなど、いろいろな部分でコスト削減の効果が得られることが確信できたので、導入を優先的に検討することになりました。

当社では、契約書の管理や押印・署名手続きなどは我々法務グループが一括で担当しています。紙書類の契約ではやりとりに時間がかかるので、契約締結のスピードをもっと早めたい。そのために電子署名サービスや契約審査サービスが有効になるだろうとも考えました。

城﨑様
特に海外企業との契約では、書類を郵送でやりとりしていると時間がかかってしまいます。さらに社内各部署から契約業務の時間短縮の要請があり、管理部門の業務の効率化も求められていたのが、取っかかりとしては大きかったですね。

競合サービスもあるなかでクラウドサインを選んだ理由はなんでしょう。

藤枝様
サービスの内容を丁寧に説明していただいた、というのがまず1つ。特に法律やセキュリティに関わる部分については、公式ホームページの情報(特に「サインのリ・デザイン」)やご担当者の説明がものすごくわかりやすかったですね。関連する資料が充実していて我々が理解しやすくまとめられていますし、アフターサポートもしっかりしています。あとは実際に使い始めた後ではありますが、感覚的、直感的な使いやすさも印象的でした。

海外企業との契約締結でネックに感じるところはありませんか。

藤枝様
海外の企業では別の電子署名サービスを利用しているところも多いのですが、そもそもPDFのやりとりだけで済ませたい、という会社も少なくありません。コピーをやりとりする形になるのでセキュリティや偽造の面でリスクは残るものの、スピード優先で「本紙への署名は要らないからPDFのやり取りで終わらせてほしい」といった要望は何年も前からありますね。

城﨑様
単純にPDFをメール添付して締結する方法よりも、クラウドサインの仕組みを利用して締結する方が安心感はあると思います。

クラウドサインは具体的にはどの部分で活用されているのでしょうか。

藤枝様
当社は地図データを含む位置情報コンテンツを扱っていますから、それらのデータを他の企業に提供する際のライセンス契約や秘密保持契約、地図データの一部コンテンツの整備を依頼するときの業務委託契約などに利用することが多いです。

印紙代を削減できることもありますので、最近では印紙代が高くつきやすい取引の業務委託契約では、積極的に利用するようこちらから依頼部門や相手方に働きかけることもあります。

クラウドサインを利用した契約件数はどれくらいのボリュームになっていますか。

安ヶ平様
今のところは契約件数全体のだいたい1~2割がクラウドサインです。正式に導入を開始したのが2020年6月で、まだ大々的には社内に利用の働きかけはしていませんし、すでに紙書類で手続きが進んでいる契約を無理に電子にしようとも考えていません。利用率が低いのはそういう理由です。今は増えつつある状況ですので、これからまだまだ増やせると思っています。

相手方企業の反応としてはどんな感じでしょう。

安ヶ平様
最近では電子契約というものにアレルギーをもつ会社は減ってきたのかなと思います。むしろ「電子契約サービスを使わせてほしい」と要望する会社が増えました。昨年度はほぼ皆無だったのですが、今年は一気に増えましたね。

コロナ禍の影響ももちろん要素としてあると思いますが、リーガルテックがここしばらくブームで、2019年後半あたりからはその認知度が大きくアップしました。リーガルテックの黎明期とコロナ禍がちょうど重なったのが大きいのではないでしょうか。

まだ紙の書類がいい、という企業もありますか。

安ヶ平様
歴史の長い企業様や大企業様などはまだ受け入れ難いところがあるようです。中堅規模の企業様が電子契約に一番積極的ですね。

城﨑様
社会情勢も変わってきていますので、まだ受け入れていない企業様にもいずれはクラウドサインを利用していただけるとは思います。ただ、自分たちも含めて無理に変えていくのではなく、流れの中で変わっていければいいのかなと思っています。

導入を開始した6月は、まさにコロナ禍のまっただ中かと思いますが、元々その時期に導入を予定していたのでしょうか。

安ヶ平様
実は2020年の今期の目標として、リーガルテックの一環で電子契約のシステムを導入することと、年間利用件数の計画を立てていたのですが、元々の予定よりは前倒しで導入した形になります。社内説明用の資料などを準備して、自分たちでも念入りにテストして、そこから大々的に社内向けにアナウンスしようと思っていました。ところがこういう状況ですので、まずは導入して、トライアンドエラーでとりあえず進めようと。

城﨑様
本来なら「もう少し後に」と思っていたのですが、数カ月早まることになりました。当時は何が起こるかわからないような空気がありましたし、選択肢を増やしておきたいというのもあって、せっかくならこのタイミングで役立たせようと考えたのです。

クラウドサインにしたことで、時間や費用などの面でコストメリットは感じていますか。

藤枝様
時間はすごく短縮できました。紙の契約書だとやりとりするのに1週間から10日間かかることもありますが、クラウドサインにしてからは、早いときは1日どころか数時間で完了する場合もあります。

費用については、まずは郵送費用が削減されるのはもちろん、紙書類のやりとりに要する人件費もなくなりました。あとは印紙代ですね。これがかからないのはインパクトがあります。業務委託契約では場合によっては数万円かかることもありますので。

城﨑様
あとは私たちの社内でも、相手方の社内でも、紙書類の受け渡しのためだけに出社しなければいけない、ということがなくなるのは気持ちが楽ですよね。

業務効率向上を目的に活用されている、もしくは導入を検討しているクラウドサービスは他に何かありますか。

安ヶ平様
技術部門ではSlackを使っていますし、我々管理部門でも社内コミュニケーションにMicrosoft TeamsやSkype、Zoomを利用しています。契約書のレビューを自動化するサービスも検討中です。AIを用いて契約書の内容をチェックするもので、近いうちにトライアルを始めようと考えています。

今後はどんな風にクラウドサインの活用を広げていきたいと考えていますか。

安ヶ平様
社内にあるワークフローのシステムにクラウドサインを連携させる形にして、契約書の社内承認プロセスの電子化を進める計画です。今まさにその準備をしているところで、完成すれば社内のクラウドサイン利用はさらに進むと思います。

ただ電子化がこの先進んでも、紙の契約書自体は相当続くと思っています。我々としては、いかにして紙の比率を下げるか、デジタルと上手に併存するための仕組みをいかにして構築していくか、というところを今後も考えていく必要があると思っています。

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