株式会社ぐるなび
法務コンプライアンス部 コンプライアンス・リスク管理セクション
池原 淳五様
城野 愛様
ハンコを使わず無駄な決裁フローを減らす。それがスムーズなテレワーク移行につながります。
ぐるなび様にはクラウドサインを導入した2018年にも一度取材させていただきました。それから2年近くが経過して、この2020年4月の時点では新型コロナウイルスの影響もあり当時とは状況が大きく変わってきているかと思います。まずは現在の事業環境について教えていただけますか。
池原様
当社ぐるなびでは、2月27日から原則としてテレワークを開始しています。全国に21拠点ありますが、3月26日からは東京本社を含む関東圏で原則出社停止、緊急事態宣言が出たことで大阪など全国の拠点も順次出社停止となりました。
御社はレストランなど飲食店の情報を扱っている関係上、そうした外食産業の厳しいビジネス環境も肌で感じられているかと思います。
池原様
このような状況ですので、営業時間を制限したり、テイクアウトのみ営業されていたりする飲食店様も増えています。また、テイクアウトだけでは利益が見込めず、やむを得ず完全に休業されている飲食店様も多くいらっしゃるのが現状です。
3月時点では、個人で経営されているお店については、常連のお客様がお店への応援の気持ちも込めて足を運ばれ、大きな売り上げ減になっていないお店もありました。ただ、3月は送別会シーズンでもありますので、大きな宴会のキャンセルが相次ぎ、団体でのお客様での売り上げが大きいお店については、売り上げの落ち込みが大変大きくなりました。緊急事態宣言が全国に広がったことで状況はさらに厳しくなり、飲食業界にはかつてない大きな影響が出ていると言っていいと思います。
御社の業務についてはいかがでしょうか。
池原様
もともと弊社にはテレワークの環境は整っていましたが、全社員に適用されていたわけではないので、人事部や情報システム部は全従業員のテレワーク環境を整えるために2月末から対応に追われていました。また、紙での書類の処理や配送物の処理など、やむを得ず出社せざるを得ない部署の社員については現在もリスクを最低限にとどめつつ、業務に当たってもらっています。
当社はぐるなびのサイトにお店の情報を掲載いただいている加盟飲食店様とのビジネスが基本で、営業部隊が中心の会社です。しかし、緊急事態宣言が出てからは、お店に足を運んで営業活動することが実質できなくなっているので、営業部隊は自宅から担当のお店に電話をかけて、お店の方が今困っていらっしゃることや復興フェーズに向けて今から準備できることなどを一緒に考えながらサポートさせていただいております。
御社としてできるお店への協力や支援というのは、具体的にはたとえばどういったものがありますか。
池原様
この4月には食事のテイクアウトが可能な全国のお店のまとめページを作り、そこでユーザーの方にご自身のお住まいの近くからお店を見つけやすくする等の取り組みを始めています。お店側で、ぐるなびのページに「テイクアウト可」として表示する設定は以前からあったのですが、このタイミングで改めてテイクアウト可能なお店を集約し、検索機能も強化しました。
また、当社では「ぐるなび大学」という飲食店経営者向けのセミナーを年間を通じて全国で実施していまして、これを3月以降は無料で動画配信するようにしました。
お店の販促・営業に対する支援に取り組んでいるわけですね。ところで、これまでの2年間で、御社のなかでクラウドサインの利用について何か変化はありましたか。
池原様
クラウドサインは最初の段階から導入がとてもスムーズにできていましたし、社内への宣伝活動もかなりしていました。そうやって導入時に電子化という“穴”を空けたわけですが、それを2年かけて大きく広げてきたところです。
当社では部署ごとに複数のアカウントを契約して、加盟店となるお店と取り交わす契約約款や、パートナー様などの法人と結ぶ秘密保持契約書(NDA)、業務委託契約書を扱っています。各アカウントでそれら契約書の送信件数は増えてきていますし、クラウドサインを利用する書類の範囲も広がっています。
城野様
法人契約についてはこの2年で大幅に件数が拡大しました。今まで紙の契約書にこだわっていたようなところも、新型コロナウイルスの影響でクラウドサインをスムーズに受け入れてくれるようになり、ここ最近はまた急激に増えていますね。
増えている理由は、やはり多くの企業がテレワークを採用し始めているからなのでしょうか。
池原様
テレワークの影響は圧倒的に大きいと思います。テレワークを阻害する大きな要因はおそらく2つあって、1つが経費請求などの精算業務と、もう1つが押印事務です。クラウドサインを利用しているところは比較的スムーズにテレワーク環境に移行できているでしょうし、逆にクラウドサインを導入できていないところは、押印のためにおそらく毎日出社しているのではないでしょうか。
その意味で、クラウドサインは一種のBCP(事業継続計画)につながるものと考えています。クラウドサインがあればいちいち決裁者へ書類を持って行って審査・許諾を経てハンコを押す、という作業がなくなり、すべてデジタルで、リモートでできるようになる。世の中のテレワークへの移行において、クラウドサインが果たしている役割は大きいのではないかと思いますね。
営業の仕方として、対面ではなく電話が多くなってきているというお話が先ほどありました。テレワークへの移行は、御社のビジネスやワークフローに対する影響も少なくないと思うのですが。
池原様
営業部門について言えば、遠いエリアを担当しているスタッフもいるので、クラウドサインを導入する前から電話によるアポイントをメインにしていたスタッフもいますし、対面で契約を取ってくることを得意としていたスタッフもいるでしょう。人によっていろいろな営業スタイルがあったかと思います。しかし、電話で商談がまとまったとしても、クラウドサイン導入前は結局紙の契約書類を送っていました。
ところがクラウドサインの導入後は、少なくとも対面での営業ができなくなっているこういう非常時においても、契約手続きが一瞬で終わるというすばらしいメリットが得られています。電話で提案し、契約書類をクラウドサインで送って、契約内容や重要事項について説明した上で、電話越しでクラウドサインの操作方法などをフォローしながら契約を交わす方法もとれます。
テレワーク導入前でもそういうスタイルが得意だったスタッフは、今のテレワーク下においても同じようにやっているでしょうし、そうでない対面メインだったスタッフも、電話とクラウドサインに問題なくシフトしていっています。
全体としてはそれまでの延長のような形で、原則テレワークになっても混乱することなくスムーズに移行できたと。
池原様
まさにその通りです。当社としては、前もってクラウドサインを導入しておいて良かったと本当に思います。まさかこんな状況になるとは予想していませんでしたが、今この段階になって「オンライン契約システムがない」ということだとどうなっていたか……。契約書類を郵送するにしても近所のポストまで持って行かなければならないし、封筒や切手などの購入費用、発送費用をいちいち営業スタッフが負担して後で経費精算するのか、などなど、そういうことは、あまり考えたくないのが正直な気持ちです。
前もってクラウドサインを導入し、営業スタッフ全員が使える状態にして、決裁者が契約書締結をオンラインで決裁できる環境を作っておけたというのは、今の状況からすると、本当によかったと思っています。テレワークに至ったときに、事業やワークフローに大きなダメージなく進められたことについて、クラウドサインには非常に感謝している、というのが率直な気持ちです。
この2年間、クラウドサインを全社的に運用していくなかで戸惑いなどはなかったでしょうか。
池原様
最初はクラウドサインを導入しながらも、アナログ的な使い方をしているところもありました。営業部門では、クラウドサインで締結した契約書をわざわざ印刷して事務フローに乗せる、みたいなことをしていた部分もあったようです。しかし、「紙媒体を使わない取り組みをしていこう」というプロジェクトが社内で立ち上がり、紙を使わない事務フローに向けて着実に準備を重ねてきました。
城野様
当初はクラウドサインの使い方がよくわからなかったり、2018年当時はクラウドサインの一般への認知度がまだ低かったこともあってお客様に提案しにくく、導入がなかなかスムーズにいかないところもありました。それでも2年の月日を経てフローを改善しながら社内ポータル上でクラウドサインの使い方を詳しく説明するガイドを用意するなどして、運用はスムーズになっていきました。
どうしても紙の申請書が必要だったNDAの締結フローにも少し変化がありました。これまでNDAを結ぶときは、押印申請書に決裁者の承認印をもらう形でしたが、新型コロナウイルスの問題があってからは、決裁者に直接会って紙を渡し、ハンコを押してもらって承認を得ることが難しくなりました。そこで、決裁者によるメールでの承認も可として、そのメールを転送するか、Google フォームでクラウドサインの申請フォームに添付すれば契約締結を進められる、という運用に変えています。
池原様
少なくともBtoBの契約に関しては、今はGoogle フォームに必要事項を記入するだけでクラウドサインによる契約処理が進むようになっています。アナログな要素を一切排除して、世界中どこにいてもクラウドサインがあれば契約書締結ができるオペレーションを実現できていますね。
営業スタッフがやりとりするお店との契約約款の方は、まだ若干アナログ要素が残っています。ここはぐるなびが誕生してからの20年間以上、何百万件、何千万件もこなしてきた手順ですのでアナログ要素を排除するのは難しいところですが、そこに関しても今後はすべてデジタル化できればいいなと思っています。
過去の紙の契約書類をクラウドサインに取り込んでデジタル化していくような計画はありますか。
池原様
BtoBの契約書については過去のものも含めて電子化したいと思っています。PDF化して取り込み、契約の更新時期や書類保存期間を正しく管理して、契約書管理に関わるコストを減らしていきたいですね。お店と交わす契約約款の方はかなりのボリュームの紙書類がありますので、関係各所とディスカッションして今後の管理フローを決めていくことにしています。
今でも押印や紙書類をやりとりするために従業員が出社している企業も少なくないと思います。そうした企業がテレワークへ移行するためには何が重要だと思いますか。
池原様
どうしてもハンコを押さなければいけない業務はまだあるわけですが、クラウドサインはこういうときに想像以上に力を発揮してくれます。営業の動きも止まっているところはありませんし、本当に導入しておいて良かったなと。
そのなかで感じたのは、テレワークに向けたデジタル化には2つ重要なポイントがあるということ。それは物理的なハンコを使わないことと、無駄な決裁フローを減らすことです。それを両輪で進めていくことが本当のデジタル化、スムーズなテレワーク移行につながると信じています。
当社もこれを機会にもっと勉強し、システムとインフラに投資をしてより適正なワークフローを入れ、無駄な決裁フローや二重決裁はないか、その業務を本当にアナログでやる必要があるのかなどを見直し、迅速に意思決定できるようにしていく必要があります。当社はこういうところで勉強していく機運があるので、逆境をバネにお取引先様や従業員の生産性向上にさらに努めていきたいと思います。