株式会社サンマーク出版
翻訳書編集部 プロデューサー 武田 伊智朗様
後回しになりがちな契約書作成もさっとこなせてしまいます。
まずは事業内容について、出版社としてはどんな特色のある会社になりますでしょうか。
当社サンマーク出版は、自己啓発書、実用書をメインに発行している1971年創業の出版社です。代表的なベストセラーには、1995年に出版して400万部を突破した『脳内革命』があります。「こんまりさん」こと近藤麻理恵さんの『人生がときめく片づけの魔法』は2010年から出版し、国内だけでなくアメリカを始め世界でもシリーズ累計約800万部という大ヒットを記録しました。最近では健康やエクササイズ系の書籍も人気が高まっています。この20年ほどで8つのミリオンセラーを出しているのは、他の出版社にはない強みだと思います。
武田さんご自身は翻訳書編集部に所属されていますが、具体的にはどういった業務に携わっていますか。
現在は翻訳書を中心とした編集業務を行っていますが、最近まで海外の版権販売にも関わっていました。海外で出版された本の出版の権利を購入し翻訳したり、サンマーク出版で出版した本の翻訳権を海外の出版社に販売したり、出版権の買いと売りを両方行っていたのです。
クラウドサインの導入にあたっては武田さんが中心的な役割を果たしたと伺っています。翻訳関係の業務で電子契約が必要になった、ということなのでしょうか。
もともとは海外の版権販売で契約書を結ぶのに電子契約が使えないか、というところから始まりました。通常、海外と版権の売買を行うときは紙の契約書に互いに手書きのサインをしてやりとりするのですが、非常に時間がかかっていたんです。原則的に契約が終わらないと編集作業は進められませんのでサインを迅速に行いたいと以前から考えていました。
海外との契約だと何週間もかかる場合がありますよね。
そうなんです。ただ、海外から版権を買うときに、先方が導入している他社の電子契約サービスを利用することもありました。それだとかかる時間も手間も少ないので、当社から海外に版権を売るときにも同じように電子契約が使えないだろうか、と思って顧問弁護士に相談しました。
弁護士の方が言うには、メールでも、承諾や送受信の履歴をきちんと残している形であればPDFファイルにした契約書をやりとりする形でも大丈夫、とのことでした。しかし、それよりもシステム化された安心して使えるツールとして、電子契約サービスも利用できると。それでクラウドサインともう1つの他社サービスを教えていただきました。
他社サービスではなくクラウドサインを選んだ理由は?
顧問弁護士の方から、クラウドサインは弁護士ドットコムさんが提供していて、ここは間違いないですよ、という話があったのが1つ。もう1つは、他社サービスの特に初期費用が高かったから。クラウドサインは初期費用も月額料金も安価ですし、問い合わせたときのレスポンスもとても早かった。直接伺ってご説明します、とまで言っていただけたんですよね。
それでクラウドサインを導入された。
実は、当初僕が想定していた海外に版権を売るときの海外権利者との契約では、結局クラウドサインはまだ使っていません。PDFにした契約書をメールに添付してやりとりする形で問題なかったのと、海外の契約先となるエージェントがメールの方が都合がいい、ということでしたので。
その代わり、導入を検討している間に、クラウドサインは日本の著者の方との契約にも便利そうだなと思い始めました。今後は事務的な部分でもデジタル化が進むことは間違いなく、会社としても将来的にはデジタル化が必須になるだろうと判断して、電子契約にクラウドサインを導入したわけです。
そうしますと、現在クラウドサインを利用されているのは?
今は日本の著者の方との国内における出版契約ですね。あとは、それを翻訳して海外で出版するとき、出版先の国ごとに覚書の形で著者と契約を交わす、という部分でクラウドサインを利用することが徐々に増えてきています。まだ紙の契約書を使っていところもありますが、出版契約では全体の3割ほど、翻訳出版の覚書では全体の5割以上でクラウドサインを利用していて、毎月10件以上やりとりしていますね。
契約書の作成は編集者が担当しています。クラウドサインの承認フローで総務部のスタッフが内容をチェックした後、著者に送信する流れです。最後、契約締結が完了したときには、書類管理権限をもっている総務部長や私の方にメールで通知が来るようになっていますので、きちんと契約処理が進んでいるかどうかもしっかり確認できています。
クラウドサインの導入にあたって戸惑うところはありませんでしたか。
今申し上げたように契約書の作成は編集者の仕事ですので、編集者が集まる編集会議でクラウドサインの導入について周知したんですが、利用は強制していません。導入するから積極的に使ってほしいけれど、必ず全部を電子契約でしなければいけない、というわけではない。編集者自身もそうですが、契約相手である著者にも電子契約に慣れない方はいらっしゃいますので。
しかし、紙で契約するときはMicrosoft Wordで作られた契約書のひな形を元に、名前や印税の率、連絡先などを記入し、著者に郵送して、返送されてこなかったら催促する、というような手間が発生します。最初は紙でやった方がいい、と思っていた編集者も、隣の人がクラウドサインですぐに締結を完了させているのを見て、「これは便利そうだな」と感じて使い始めることが増えていきました。
著者の方に対しては、クラウドサインで契約する際に、信頼性のうえで問題がないことと、具体的な使い方を説明するためのお手紙もしたためて、電子契約についてご理解いただけるようにしました。そのおかげか、ほぼすべてのあらゆる年代の著者の方が契約するときも問題なく対応してくださいますね。契約相手が会社だと社内確認が必要な分、時間がかかることもありますが。
2019年1月に導入して1年たちます。導入の効果として実感できる部分はありますでしょうか。
少なくとも郵送に関わる部分の費用は削減できていますね。契約書を送付してから締結するまでにかかる時間も、紙の契約書では1~2週間かかっていたのが、クラウドサインだとおおよそ2、3日、早ければ当日中に終わることもあります。時間は確実に短縮できていますし、「これはいい」「簡単だな」と言ってくれる編集者も多いです。クラウドサインは直感的に操作できるので、こちらから最低限のことを教えただけで、悩むことなく使ってもらえています。
紙で契約するときと比べて時間短縮になっているとのことですが、その分の時間を本来の仕事に回すなど、何かプラスの効果はありましたか。
個人的には、精神的なところですね。本業とは関係のない契約書作成という業務は、書籍の企画を考えたり編集したりするのとは違って、取りかかるまでどうしても腰が重くなりますし、後回しになりがちなんです。それがさっとこなせてしまうクラウドサインは、本当に楽ですよね。忙しくてつい契約書のことを忘れて帰宅したとしても、いつでもどこでも対応できるのも大きいと思います。
今後クラウドサインの利用範囲を拡大していくことは考えていますか。
当初目的としていた海外に版権を売るときの契約で、クラウドサインを利用できたらなあと感じています。将来的にはそのあたりがクラウドサインでできたら時間も含めてコストの削減につながるのではないでしょうか。
社内からは具体的な要望は出てきてはいないものの、書籍制作の過程でクラウドサインを活用できるところがあるかもしれないですし、まだ著者との契約でも全部クラウドサインに切り替わっているわけではないので、これから活用の幅をどんどん広げていければと考えています。
クラウドサインは現在、英語と中国語にも対応していますが、いずれスペイン語、ドイツ語、イタリア語など、当社が翻訳出版でお付き合いのある国の言語や、海外ではなじみのいい手書きサインに対応していただけるとうれしいですね。
ところで、クラウドサイン以外に業務のデジタル化を進めていく上で活用されているツールはありますか。
経費精算ツールの「楽楽精算」を導入しています。あれはすごく楽で、1週間に一度のペースでこまめに処理するようになりました。あとはMicrosoft Teamsの導入を進めているところです。
紙媒体がこれからどうなっていくのかわかりませんが、危機感を僕らはもっています。電子書籍にも早くから取り組んでいて、売上も大きくなってきました。会社としてはあらゆる面で迅速かつ積極的にデジタル化を推進していくというスタンスでいますね。
これからクラウドサインを導入しようと考えている方に向けてメッセージがありましたら。
契約件数が多い会社は、クラウドサインを導入すれば確実に楽になりますよね。おそらく一番大変なのは、契約相手にクラウドサインを使ってもらえるように説得できるかどうかというところ。ですが、電子契約サービスとしてクラウドサインは間違いのないツールですから、気軽に試してみたらいいんじゃないかなと思います。