建設・建築業

お客様の手間や印紙代の負担を省き、契約書類の管理を簡単、確実に。

  • 2019年12月11日(水)

タマホーム株式会社
金融部 部長 山本紀久様
経営企画部 課長 飯田剛様
金融部 主任 中井あゆみ様

 

ハウスメーカーとして広く知られているタマホーム様ですが、改めて具体的な事業や顧客層などを教えていただけないでしょうか。

山本様
当社タマホームは、主に個人のお客様に対する戸建て住宅の建築、販売を中心に事業展開しています。戸建て住宅にはお客様のご要望に合わせて自由に設計していく「注文住宅」と、土地と建物をセットにした「戸建分譲住宅」の2種類がありますが、当社が取り扱っているのは9割が注文住宅で、木造軸組という日本古来の工法を用いた信頼性の高い木造住宅となっています。

我々は「ローコストビルダー」と呼ばれることが多いのですが、代表取締役会長の玉木康裕が1998年にタマホームを創業してから、現在の代表取締役社長の玉木伸弥が経営を担うようになった今もなお、「日本の家は高すぎる」という思いから、お客様に対し住宅を「適正価格」で販売することをかたくなに続けてきました。

現在では日本全国47都道府県に展開し、累計のお引き渡し物件は12万戸を超えました。平均的には毎年8,000~9,000棟をお引き渡ししています。昨年に、当社は創業20周年を迎えましたが、最近では、お客様も20代から30代後半くらいの、子育て世代の方々が増えてきていますね。

どれくらいの価格帯が中心になっていますか。

山本様
建物部分、いわゆる上物の平均価格は約1,700万円ですが、ローンの平均額としては全国でならすとおよそ2,700万円です。注文住宅の場合は土地や外構工事は別になりますし、場合によっては既存の建物の解体工事、地盤改良工事などもあり、上物以外の部分で1,000万円くらいかかっていることになりますね。

今後は戸建分譲住宅も多く提供していきたいと考えています。注文住宅の場合、お客様の理想に合う土地を見つけるのが特に難しく、時間がかかってしまいます。戸建分譲住宅だと、当社がおすすめできる土地にあらかじめ上物を建てた状態でお見せできるのが強みですよね。注文住宅とはまったく異なるビジネス形態です。

タマホーム株式会社 金融部 部長 山本紀久様(左)、同経営企画部 課長 飯田剛様(右)

現在、クラウドサインは御社の業務のどの部分で利用されていますか。また、クラウドサインを選んだ理由を教えてください。

飯田様
施工前に締結する上物の「工事請負契約」と、工事開始後に部分的に変更が必要になったときに締結する「一部変更合意契約」や「追加変更工事請負契約」で利用しています。当社のエンジニアがクラウドサインのAPIを活用し、独自開発のフロントエンドから利用する仕組みにしています。API連携したフロントエンドはほぼ1カ月で完成し、2018年10月から導入を開始しました。

工事請負契約では、紙の契約書だと2万円という高額な印紙が必要になります。半分の1万円が当社の負担で、残りの1万円はお客様の負担になりますが、先ほどお話ししたように年間8,000~9,000棟も建築しているわけですから、単純計算で印紙だけで毎年8000~9000万円かかることになります。

追加変更工事請負契約などでも少なくとも200円の印紙が必要になりますので、実際には1億円を超えるコストです。電子契約で印紙が不要になれば、このあたりのコスト削減効果はかなり高いと考えました。

他の電子契約サービスは検討されなかったのですか。

飯田様
似たようなサービスはいくつか比較したのですが、クラウドサインにした一番の決め手は、電子契約の有効性について国土交通省と経済産業省のお墨つきを得ていたことですね。日本発のサービスということで日本語との親和性が高く、導入費用がリーズナブルなことも理由でした。

クラウドサインを使った御社での契約の流れを簡単に教えていただけますか。

飯田様
当社の拠点は全国に約250箇所ありまして、それぞれの拠点にiPadを導入しています。契約時には、このiPadの画面上でお客様に契約書の内容を確認していただき、手書きで署名していただいています。この契約書は当社のワークフローと連携していて、社内承認を経たうえで契約締結されるものになっています。

紙の契約書ですと、何種類もの契約書に何度も署名しなければなりません。しかし電子契約にしたことで、1回だけ署名すればすべての契約書類に反映されます。お客様にとっては1万円の印紙代を省くことができ、署名の手間も最小限で済むようになりました。また、署名を手書きする画面では念のため署名したご本人様の顔写真を撮影するようにしていて、署名されたPDFはRPA(Robotic Process Automation)でスクリーンショットを残すようにしています。

顧客が契約書類を確認し、署名するiPadの画面

住宅の建築・購入時の契約では、従来はそれこそ実印が必須だったかと思います。電子契約では押印が不要になっていますが、その点はいかがですか。

山本様
高額な買い物をするときに、そもそもお客様が電子契約というものに納得していただけるのだろうか、という思いはありました。お客様によってはこの日のためだけに高価なペンを購入されるほどです。印鑑文化の日本で押印しないことに対して、お客様がどう思われるかについては社内でも議論になりました。しかしながら、実際に電子契約を導入してみたら、心配するようなことは何もありませんでしたね。当社のお客様には20~30代の若い方が多いので、なおのこと抵抗感は少ないのかもしれません。

飯田様
普段の食事や買い物で、クレジットカードで支払うときにもiPadなどの画面にサインすることがありますよね。電子的に契約することのハードルは下がってきているように思います。お客様からのクレームも今のところありません。紙書類での契約か、電子契約かは最初にお客様に選択していただいているので、一部の電子契約が利用できない金融機関様にローンを申し込まれる場合や、なんとなく電子契約に抵抗感があるという方は、紙書類での契約をお選びいただくことも可能です。

クラウドサインで締結した電子契約書が住宅ローン審査に使えるよう、多くの金融機関様に働きかけたと伺っています。

中井様
当社は地方銀行様とのお取り引きが多いのですが、各地域の店舗から300ほどの銀行様、信用金庫様、JA様にアンケートを取ったところ、クラウドサインでも問題ないとご回答いただけたのは7割ほどで、それ以外の金融機関様も前向きに検討されています。メガバンク様やネット銀行様にも受け入れていただけました。

タマホーム株式会社 金融部 主任 中井あゆみ様

山本様
ただ、クラウドサインで契約した書類をプリントアウトして提出する必要があるところもあれば、そうでないところもあって、まだ対応がまちまちです。電子契約がOKになってはいるものの、審査の際にはプリントアウトして金融機関様のところへ持って行っているのが現状です。

今後クラウドサインの活用はどのように広げていこうと考えてらっしゃいますか。

飯田様
協力会社様との間で使うEDI(電子受発注)システムのなかでクラウドサインを利用することを考えています。個人のお客様からいただく住宅建築数は年間8,000~9,000棟で、工事請負契約に関わる契約書の数はおおよそ2~3万件ですが、B to Bの受発注は全国の約4000社との間で年間50万件もあります。ここでクラウドサインを使い、効率化するのが次に目指しているところです。

あとは、他の大手住宅メーカー様もすべて電子契約に移行していただくことが我々の願いですね。そうすればまだ電子契約を採用していない金融機関様も重い腰を上げてくれるかもしれませんし、ゆくゆくは国も電子契約の適用範囲拡大に向けて動いてくれるのではないでしょうか。不動産売買契約書のように今は法律上電子契約が不可能なものも電子契約できるようになるのではないか、という期待もあります。

山本様
私としては、当初想定していたよりも電子契約が広く根付いたように思います。金融機関様の反応も早かったですね。ただ個人のお客様にとっては、電子契約にすることではっきりとした利便性を感じていただけるようにしないと、なかなか浸透していかないと思っています。それが何なのかは今後も考えていくつもりです。たとえば1万円の印紙代が不要になるという経済的なメリットはわかりやすいかと思います。しかし、電子化による重要なメリットは実は他にもあります。

住宅に関わる契約書は、そこに住み続ける限り、必要に応じて利用する場合があるのですが、10年後もすぐに取り出せるようにしっかり管理している方はそれほど多くありません。災害があって住宅設備の保証や保険について調べたくなったら当時の契約書類を確認する必要がありますし、住宅ローンの借り換えをするときは当時の契約書を全部揃える必要があります。いざという時にどこに保管されていて、そのなかのどれが必要な書類なのか、見つけたり判断したりするのが難しいときもあります。

そういった意味でも、契約書類が電子化され、きちんと一定の場所に保管されていていつでも参照できる状態になっているのは、お客様にとって非常に大きなメリットなのではないかと思うのです。家を購入したお客様はそこに何十年もお住まいになり続けますので、弊社とお客様とのつながりを作ってまた次のビジネスにつなげていく、そういう可能性を見い出せるのも、こうした電子化施策を進めてこそだと思いますね。

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