飲食業

働き方改革の事例 – 労働契約を完全電子化

  • 2019年2月27日(水)
BOTEJYU®Groupホールディングス株式会社
代表取締役 社長 栗田英人様
取締役 危機管理本部長 コンプライアンス担当役員 山本克三様

ぼてぢゅうを100年企業にしていくために、大切な人材との契約からしっかり足元を固めたい

お好み焼き店などで知られるBOTEJYU®Groupの会社の1つ、ジーエフサポート株式会社が今回クラウドサインを導入されました。まずはジーエフサポート株式会社とグループ会社の関係、それと事業内容について教えていただけますか。

栗田様
ジーエフサポート株式会社を含むBOTEJYU®Groupは、元々は昭和21年、「ぼてぢゅう」というお好み焼の店から始まった大阪発祥の企業です。昭和40年には東京渋谷で初のお好み焼専門店として出店し、お好み焼の認知度を広げました。

現在では、BOTEJYU®Groupホールディングス株式会社として持ち株会社化し、お好み焼に限らず、鉄板焼、うどん、丼といった日本全国のご当地グルメ、大衆料理の店舗なども展開しています。

BOTEJYU®Groupには、関東の直営店舗を運営する株式会社東京フードと、同じく関西の直営店舗を運営する株式会社大阪フードという会社があり、さらにジーエフサポート株式会社があります。ジー エフ サポートはグローバル・フード・サポートの略で、グローバルに食に関することをサポートする会社となっています。グループ内の株式会社東京フードや株式会社大阪フードを主な取引先として、食材の一元仕入れや、グループ全体のシステムの開発、管理を行っています。

BOTEJYU®Groupホールディングス株式会社 代表取締役 社長 栗田英人様

なぜクラウドサインのような電子契約の仕組みが必要になったのでしょうか。

栗田様
今のビジネス環境において一番大きな課題が、『ライフ・シフト』(英リンダ・グラットンら著作の書籍)で語られているように、これからの「人生100年時代」における働き方です。「働き方改革」が声高に叫ばれ、2019年4月からは労働基準法の改正も行われるなど、社会が著しく変化してきています。会社としてはこれに合わせてコンプライアンスを徹底していかなければいけません。

そんな中で我々としては、会社にとっての財産である「人」に、安心して長く働いてもらえる環境を作っていくことが重要な使命だと考えました。

今や定年まで務めればライフステージが終わり、というわけではなく、現代ではその先も含めて長いスパンで見ていく必要が出てきています。学生アルバイトから始まって、社員となり、キャリアアップを図って、定年退職後、再雇用する。そうすると、16歳頃から70歳以上までの幅広い年齢の男女、あるいは多種多様な国籍の方々と一緒に働く職場になります。さまざまな点で異なる従業員が、それぞれ自分に合う働き方、自分にとって働きやすい場所を求めるなかで、会社としてはそれに応えるために仕事環境を整備しなければなりません。

たとえば、従業員1人1人に合わせたキャリアプランを作っていく必要があるでしょう。そのキャリアプランの検討をどのタイミングでやるべきか。アルバイトやパートなら雇用契約を更新し、人事評価するタイミングで見直していくべきかもしれません。我々は今、それを3カ月ごとに実施しています。つまり1年に4回、キャリア制度に合わせた評価をしていく。そのたびに時給が変わったり、スキルや評価内容に応じて雇用条件が変わったりすることもあります。

アルバイトやパートなどとして働いている従業員は東京と大阪合わせて約800名いますから、全員の雇用契約を紙で交わすのは非現実的です。しかしクラウドサインを使って電子契約するのでれば、それも可能になると考えて、2018年9月から本格運用を開始しました。

外食業界にとって、労働基準法の改正は大きなインパクトがありそうですね。

栗田様
働き方改革もそうですが、2019年は元号が変わり、消費税も上がる。4月からは労働基準法の改正によって一定以上の年次有給休暇の取得が義務づけられることになりました。

とはいえ、夏休みシーズンや年末年始といった繁忙期に有給休暇を大量に取られると会社としては困ってしまうのも実情です。それ以外の時期に有給休暇を取ってもらわなければなりません。そうなると直近の予定だけでなく、年間の予定をあらかじめ組んでおくことが望ましい。

ある程度決まった年間の固定シフトを組むためには、1週間のうち何曜日のいつ働くのか、といったベースとなる就業パターンを雇用契約のなかで規定しておく必要があります。そうしないと有給休暇の付与や計算もできないし、事業予測も立てられない。従業員の環境変化もありますから、我々としては3カ月の短期間で雇用契約を見直す、ということをやっているわけです。

労働力についても今以上に外国人に頼らざるを得なくなるでしょう。そうは言っても、外国人留学生は1週間に28時間以上働いてはいけないなどさまざまな制約があって、企業はそれをエビデンスとして用意して管理しなければなりません。そして、外国人の方に通知して、本人に理解して合意してもらわなければならない。これは当たり前のことなのですが、それを正しく手続きしなければいけない責任が企業にはあります。

紙の契約書だとそういったところを担保するのが難しい。それを解決する第一歩としても、クラウドサインによる電子契約が適していると考えました。

ぼてぢゅうグループでは、ブランド戦略を軸に海外展開も進めている

クラウドサインを選んだ理由は何ですか。

栗田様
1年ほど前、今お話ししたような流れで人事系のシステムを全面的に見直さなければならない、と考えていたとき、とある展示会で見かけたのがクラウドサインでした。

電子契約についてはそれ以前から注目していたのですが、費用対効果を考えるとフィットするものがなかなかありませんでした。独自のシステムも検討したものの、運用面やシステム面での不安が多い。

それに比べてクラウドサインは非常にシンプルだし、管理が楽になるという点で優れていると思いましたね。

クラウドサインにしたことで、具体的にどんな効果がありましたか。

山本様
従来は契約書絡みの業務は社会保険労務士事務所に依頼していました。1人当たり最大6ページにもなる労働契約書を製本して、各店舗にまとめて約800名分を送付し、その後店長が契約書を従業員に手渡しして、本人に署名・捺印してもらい、再び労務士事務所で回収するという流れです。そうした契約に関わる業務は、ひと通り完了するまで長い時は数ヶ月かかっていました。

クラウドサインを導入したことで、どんなに長くてもこの期間を約1/3ほどに短縮できています。

クラウドサインを利用するにあたり、従業員1人1人のメールアドレスを漏れなく収集して、人事部門にあるデータマスタで個人の情報を一元管理するようシステムを整備し直しました。データマスタから契約書に必要なデータを抽出し、クラウドサインのシステムに読み込み、いくつかある雇用契約書のフォーマットに情報を流し込めるようにしています。その後PDF化して従業員1人1人にメール送付する形です。

BOTEJYU®Groupホールディングス株式会社 取締役 危機管理本部長 コンプライアンス担当役員 山本克三様

契約書類をスタッフに手渡ししていた店長の負担も少なくなかったのでは?

栗田様
たしかに、クラウドサインにしたことで店長の負担軽減にも間違いなく貢献しているだろうと思います。労務士事務所にお願いしていた契約書類絡みの間接コストも削減でき、自分たちだけで契約業務をコントロールできるようになったことも大きいと感じています。

山本様
以前は本社の人事部が、契約書が戻ってきていない従業員に対する催促などの最終的な確認作業を担っていました。それが私の危機管理本部でシステム的に対応できるようになりましたから、人事部の業務負担もかなり軽減されていますね。これまで延べ何十人ものスタッフで取り組んでいた契約業務が、部署毎にわずかな作業でこなせるようになったのは本当に有難いことです。

一方で、外注していた契約書の回収作業に関わる部分は、我々としては新たな業務になりましたので、その部分で少し戸惑っているのは正直なところあります。

けれども、これから回を重ねていくごとにスムーズになっていくと思います。いずれにしても、クラウドサインのおかげでコンプライアンスを徹底できるようになるのは会社にとって重要なことですし、従業員にとっても自分自身を守れるということにもつながるはずです。

今後、他の業務でクラウドサインを利用する予定はありますか。

栗田様
まずは雇用契約書の回収のスピードをもっと上げるところにフォーカスしたい。そのためには会社としてどのように仕組み化するか。新たにクラウドサインと連携させて、チャットツールを活用して未回収の従業員と店長に毎日通知する仕組みも考えられるでしょう。

また、当社では現在、社員の独立支援制度を構築しているところです。いわば『のれん分け』みたいなものですが、その制度を利用する人が増えてきたときには、クラウドサインを使った電子契約は非常に有効な手段の1つになるかと思います。

山本様
最近では、取引先からクラウドサインで契約したいという要望もいただいています。クラウドサインで取引先とも契約する形に変えていければ、事業のスピードアップや管理負担の軽減にもつながりそうです。

栗田様
ぼてぢゅうを100年企業にしていくためにも、クラウドサインのようなツールを活用して企業としてのベースを積み上げて、しっかり足元を固めたいですね。

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