契約の大切さを知っている共同創業者がいてこその電子契約
貴社の事業内容について教えてください。
PLIMESは、筑波大学人工知能研究室・サイバニクス研究センター・附属病院未来医工融合研究センターの研究成果を社会に還元するため、2018年4月に創業した大学発スタートアップ企業です。
現在は人工知能が嚥下を測る「GOKURI」という製品の開発に注力しています。ほかにも人々のライフスタイルを変革する新しいテクノロジーのイノベーションと未来開拓をミッションとし、ビジョンを「少し良い未来のため人々の生活をシンプルに」と掲げています。ちなみに社名の「PLIMES」は「SIMPLE」のアナグラム。複雑化したものを単純にしよう、という会社の価値基準と、モノやコトの本質を追求していく思いが込められています。
GOKURIとは、どんな製品なんですか?
GOKURIはセンサの情報から、人工知能技術によって嚥下の音をリアルタイムで抽出するAI・IoT技術を使ったデバイスです。
今、日本人の死因は1位が癌、2位が心疾患・心筋梗塞、3位が肺炎です(2016年, 厚生労働省白書)。肺炎の中でも特に怖いのが「誤嚥性肺炎(気道に唾液や食べ物などと一緒に細菌が入ることで発症する肺炎)」です。
「GOKURI」を首に装着し、人工知能が嚥下を計測。正しい飲み込みが定量的にわかる、家庭でも使える世界初の嚥下計を目指しています。体温計は各家庭に1つはあるでしょう。血圧計を常備しているご家庭も少なくないと思います。ぼくたちは「嚥下計」を世の中に普及させ、最低でも1週間に1度は嚥下(飲み込み)を測る社会を目指しています。
嚥下能力の低下が疑われると、口から食べ物が食べられる能力がまだ残っていたとしても、予防的に流動食、ミキサー食を食べるよう、医師から指導を受ける方が少なくありません。経口摂取が可能な方には、なるべく長く好きな食事が摂れるようお手伝いしたい。そんな思いでこの事業に取り組んでいます。
クラウドサインをご検討いただいた経緯を教えてください。
私はPLIMESに参画する前に、株式会社ZINEという出版ベンチャーを立上げていました。PLIMES株式会社の創業にはこの会社でのバックオフィス経験が活きています。編集業と経営の空いた時間で契約書の締結など、バックオフィス業務も担当。バックオフィスを省力化し、定型業務を圧縮するためにクラウドサインはベータ版を使っていました。便利さを知っていたことからPLIMESでも導入することになりました。
私がはじめて会社を立ち上げて驚いたのは、オフィス内の書類保管コストの高さ。ベンチャーにはコワーキングスペースをオフィスにしている会社も多いと思うのですが、ロッカーが一つしかなかったりします。そもそも東京は土地代が高いので保管場所にかかる費用も馬鹿にはできません。しかし、多くの契約書類は廃棄せず保管しなければならないという日本のベンチャーならではのジレンマがあります。
印紙代も大きな問題です。業務委託契約書の締結には毎回4,000円もかかる。そのため、印紙を貼らないままうやむやにしてしまうベンチャーもあると聞きます。しかし、PLIMESは大学発のスタートアップ。大学と共同研究契約を結んだり、研究開発法人様から助成金もいただいています。ベンチャーといえどもバックオフィス業務はクリーンでなければなりません。それらに対し、しっかりと報告できる体制をつくることは、とても大事です。
この経験が活き、保管コストを下げ、ガバナンスを徹底するという観点から、契約書の締結にはクラウドサインしか念頭にはありませんでした。
保管場所とコストが課題だったわけですね。
さらに付け加えると、代表印の保管という問題もありました。PLIMESには私を含めて4人の役員がいますが、全員が会社に常駐しているわけではありません。特にベンチャーのシード・アーリーステージで全員が走り回っている中、紙の行き来が煩わしいもの。印鑑がどのように押されるか、というワークフローはとても大切ですが、無駄なスタンプラリーをやることには疑問を持っていました。
私たちは人工知能技術に関する業務を行っていることもあり、どんなことでも定型業務と非定型業務に分けて考えます。契約書の締結やスタンプリーは、本来人間がやるべきではない定型業務。ですので、自動化し効率化してくべきだと思います。
私たちは非定型業務に注力し、バックオフィス業務は秒単位で圧縮したかったんです。
どのようにお使いなのですか?
まだまだこれからですが、業務委託契約書や秘密保持契約書で活用しています。
今後、事業を拡大していくなかで、アメリカやヨーロッパにブランチを持つ可能性もあります。メンバーが海外拠点を移動しながらビジネスを進めることになると思います。
スタッフとのコミュニケーション、フロント業務はSlack。残るバックオフィスの契約書発行業務や管理業務をスムーズに遂行するには、紙とハンコに執着している場合ではないと思います。とはいえ、国内では取引先から電子契約を断られるケースもあります。早期にクラウド契約書の概念が普及し、より多くの企業に導入されることを大いに期待しています。
海外との契約でも使っていくのですか?
それも考えています。クラウドサインは英語と中国語に対応しています。現在、プロダクトを台湾や中国で制作していますが、契約書の締結にはクラウドサインを使うつもりです。
契約書へのこだわりはお強いと伺いました。
NDA(秘密保持契約)では、契約書があることでお互いに安心してビジネスの話を共有できます。
一方で、私の過去の経験ですが、業務受託契約書を結ばなかったために、クライアント様からギャランティを支払ってもらえず訴訟に至ったケースがありました。その意味でも契約書は大事だと認識しています。クラウドサインは証拠力も認められている。ベンチャーだからこそ、印紙代や押印の手間、契約書の管理という煩雑が故のコストとリスクを管理するために電子契約を積極的に使うべきだと思います。
また、3か月ごとに更新しなければいけない業務委託契約も、クラウドサインは設定しておけばアラートで教えてくれる。そんなところも使い勝手のよいところです。