電子契約の運用ノウハウ

取締役会議事録の押印は必要か?電子化のポイントを解説

取締役会議事録とは、取締役会の内容を記録した法定文書です。そして取締役会議事録には会社法で押印が義務付けられており、取締役会のオンライン化が進む中で、出席者の「ハンコ集め」は手間や時間、コストのかかる負荷の大きな作業となっています。

そこで注目を集めているのが、取締役会議事録の電子化による押印の省略です。以前の法解釈では取締役会議事録の電子化はハードルが高く、現実的ではありませんでしたが、政府の脱ハンコ推進により新たな法解釈が示され、取締役会議事録に電子契約サービスを利用するケースが増加しています。

当記事では、取締役会議事録の押印義務と、電子契約サービスによる取締役会議事録の電子化が可能になった経緯、取締役会議事録の電子化を検討する方のための電子契約サービスの選定ポイント、企業の事例について詳しく解説していきます。

取締役会議事録作成に関わる方は参考にしてください。

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取締役会議事録の押印義務とは

まず、大前提となる取締役会議事録の押印義務について解説します。

この2点について見ていきましょう。

押印義務とは

取締役会議事録は、出席取締役・監査役が署名または記名押印することが会社法によって義務付けられています。

会社法第369条第3項には、以下のような記載があります。

(取締役会の決議)
第三百六十九条 取締役会の決議は、議決に加わることができる取締役の過半数(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)が出席し、その過半数(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)をもって行う。
2 前項の決議について特別の利害関係を有する取締役は、議決に加わることができない。
3 取締役会の議事については、法務省令で定めるところにより、議事録を作成し、議事録が書面をもって作成されているときは、出席した取締役及び監査役は、これに署名し、又は記名押印しなければならない。

この義務により、取締役会議事録が書面で作成されている場合、出席した取締役および監査役は、その議事録に署名または記名押印しなければなりません。

この押印義務は、取締役会の出席者が、取締役会の議事録の内容を確認し、その内容が正確であり、異議がないと判断したことを示すものと考えられています。取締役会議事録の信頼性を確保し、後日の紛争を防ぐことを目的としています。

押印義務の対象

取締役会議事録の押印義務の対象は、書面で議事録が作成されていた場合は、「出席した取締役及び監査役」とされています。

このため、書面で議事録を作成する際、出席した取締役及び監査役全員が押印・署名を行うことが求められます。

「取締役会議事録における押印の省略が可能なケース」とは?

原則として、取締役会議事録には出席した取締役及び監査役の署名または記名押印が義務付けられています。しかし、取締役会議事録を電磁的記録で作成した場合は、電子署名を行うことで押印を代替することが可能です。

会社法第369条では、電磁的記録をもって取締役会議事録を作成する場合について、「法務省令で定める署名又は記名押印に代わる措置を取らなければならない」としています。

(取締役会の決議)
第三百六十九条 取締役会の決議は、議決に加わることができる取締役の過半数(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)が出席し、その過半数(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)をもって行う。
(中略)
4 前項の議事録が電磁的記録をもって作成されている場合における当該電磁的記録に記録された事項については、法務省令で定める署名又は記名押印に代わる措置をとらなければならない。

さらに、会社法の施行に必要な事項を定める「会社法施行規則(かいしゃほうせこうきそく)」第225条では、そうした取締役議事録を電子化する場合には、各出席役員は記名押印の代わりに電子署名をすることが求められています。

(電子署名)
第二百二十五条 次に掲げる規定に規定する法務省令で定める署名又は記名押印に代わる措置は、電子署名とする。
一 法第二十六条第二項
二 法第百二十二条第三項
三 法第百四十九条第三項
四 法第二百五十条第三項
五 法第二百七十条第三項
六 法第三百六十九条第四項(法第四百九十条第五項において準用する場合を含む。)
七 法第三百九十三条第三項
八 法第三百九十九条の十第四項
九 法第四百十二条第四項
十 法第五百七十五条第二項
十一 法第六百八十二条第三項
十二 法第六百九十五条第三項
2 前項に規定する「電子署名」とは、電磁的記録に記録することができる情報について行われる措置であって、次の要件のいずれにも該当するものをいう。
一 当該情報が当該措置を行った者の作成に係るものであることを示すためのものであること。
二 当該情報について改変が行われていないかどうかを確認することができるものであること。

さらに、会社施行規則には、押印を代替できる電子署名の定義についても詳しく記載があります。

次項からこの電子署名の定義と、電子契約サービスがその定義に当てはまるようになった経緯について詳しく見ていきましょう。

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取締役会議事録に利用できる「電子署名」とは?

先ほど紹介した会社法施行規則225条では、取締役会議事録に利用できる「電子署名」の定義として、「一 当該情報が当該措置を行った者の作成に係るものであることを示すための者であること」「二 当該情報について改変が行われていないかどうかを確認することができるものであること」という2つの条件が記載されています。

以前は、この定義はICカードなどに署名鍵が格納されている「ローカル署名」のみが当てはまるとされ、それ以外のクラウド型の電子契約サービスなどは利用できないと考えられていました。

(電子署名)第二百二十五条 次に掲げる規定に規定する法務省令で定める署名又は記名押印に代わる措置は、電子署名とする。
(中略)
2 前項に規定する「電子署名」とは、電磁的記録に記録することができる情報について行われる措置であって、次の要件のいずれにも該当するものをいう。
一 当該情報が当該措置を行った者の作成に係るものであることを示すためのものであること。
二 当該情報について改変が行われていないかどうかを確認することができるものであること。

当事者署名型と事業者署名型、ローカル署名・リモート署名・クラウド署名の違い

当事者署名型と事業者署名型、ローカル署名・リモート署名・クラウド署名の違いを図解

しかし、2020年から2021年にかけて、状況が大きく変わりました。2020年5月31日付日本経済新聞1面に、これまでの業界の常識を覆すニュースが掲載されました。

取締役会の議事録承認 クラウドで電子署名 法務省、手続き簡素に(日本経済新聞社)

法務省が取締役会の議事録作成に必要な取締役と監査役の承認についてクラウドを使った電子署名を認める。(中略)署名と署名に必要な鍵をサーバーに保管し、全ての手続きがクラウド上で済む。当事者がネット上の書類を確認し、認証サービス事業者が代わりに電子署名するのも可能となる。

このニュースは、クラウドサインのようなクラウド型電子署名が上記会社法施行規則第225条2項を満たす電子署名であることを、法務省として初めて公に認めたものになります。

【クラウド型電子署名サービスを用いた電子契約のイメージ図】

クラウド型電子署名サービスを用いた電子契約のイメージ図

新解釈では、クラウドサインのような事業者署名型についても、署名又は記名押印に代わる措置としての電子署名として有効なものであると明確に述べています。

当該措置は,取締役会に出席した取締役又は監査役が,取締役会の議事録の内容を確認し,その内容が正確であり,異議がないと判断したことを示すものであれば足りると考えられます。したがって,いわゆるリモート署名(注 サービス提供事業者のサーバに利用者の署名鍵を設置・保管し,利用者がサーバにリモートでログインした上で自らの署名鍵で当該事業者のサーバ上で電子署名を行うもの)や サービス提供事業者が利用者の指示を受けて電子署名を行うサービスであっても,取締役会に出席した取締役又は監査役がそのように判断したことを示すものとして,当該取締役会の議事録について,その意思に基づいて当該措置がとられていれば,署名又は記名押印に代わる措置としての電子署名として有効なものである と考えられます。(2020年5月29日、法務省民事局参事官室が各経済団体へ周知した文書より一部抜粋)

当時の法務省から経済団体への新解釈通知全文はこちらの記事で解説しています。気になる方はぜひご確認ください。

取締役会議事録に用いる電子契約サービスの選定ポイント

以上の経緯を踏まえ、取締役会議事録に用いる電子契約サービスを選定する上で、注意すべきチェックポイントが2つあります。

それぞれ解説します。

署名者表示機能を備えているか

取締役会議事録を電子化する際は、署名者を表示させる機能があるサービスを選ぶようにしましょう。

クラウド型の電子契約サービスの中には、事業者が電子署名を施す際に指図者が誰であるのかがPDF署名パネルに明示されないものも存在します。そのようなサービスの場合、会社法施行規則第225条2項を満たす電子署名とは考えられない可能性があるので、注意が必要です。

先ほど紹介した会社法施行規則225条では、「電子署名」の定義として、「一 当該情報が当該措置を行った者の作成に係るものであることを示すための者であること」「二 当該情報について改変が行われていないかどうかを確認することができるものであること」という2つの条件が記載されています。

(電子署名)
第二百二十五条 次に掲げる規定に規定する法務省令で定める署名又は記名押印に代わる措置は、電子署名とする。
(中略)
2 前項に規定する「電子署名」とは、電磁的記録に記録することができる情報について行われる措置であって、次の要件のいずれにも該当するものをいう。
一 当該情報が当該措置を行った者の作成に係るものであることを示すためのものであること。
二 当該情報について改変が行われていないかどうかを確認することができるものであること。

このうち、「二 当該情報について改変が行われていないかどうかを確認することができる」については、改ざん検知機能を備えた電子署名のことをいいます。いわゆる公開鍵暗号方式を用いる一般的な電子署名であれば、問題なく充足すると考えられています。

一方、「一 当該情報が当該措置を行った者の作成に係るものであることを示すためのものであること」については、参加した取締役・監査役一人ひとりの判断の記録が当該電子ファイルに記録されている必要があるためです。

登記添付書類の要件を満たすものとして法務省の指定を受けているか

登記事項にかかわる取締役会議事録の場合、法務省が商業登記に利用可能な電子署名(電子証明書)として指定している電子署名サービスを利用しましょう。この指定を受けていない電子署名で議事録を作成すると、登記添付書類として利用できません。

商業登記は書面だけではなく、オンラインで行うことができます。ただし、その登記変動事項が発生したことを証明するために、商業登記法・商業登記規則の定めによって法務局から添付書類の提出を求められるケースがあります。たとえば、以下のような手続きが挙げられます(商業登記法46条2項)。

  • 本店移転
  • 株主名簿管理人の設置等
  • 株式の発行
  • 新株予約権の発行

こうした添付書類が必要となる登記申請をオンラインで行う場合には、単に電子ファイルを添付するだけではなく、その電子ファイルに法務省が指定する電子証明書による電子署名が必要です。

なお、2020年6月15日付で、法務省のウェブサイトの「商業・法人登記のオンライン申請について」が更新され、商業登記のオンライン申請において、クラウドサインで電子署名を施した取締役会議事録や契約書面等を添付書類とすることが可能となりました。

商業登記の添付書類に用いることができる電子署名とその場合わけについて、詳しくは法務省のウェブサイト「商業・法人登記のオンライン申請について」にまとめられていますので、ご確認ください。

クラウドサインを活用し取締役会議事録を電子化した事例

電子契約サービス国内シェアNo.1の「クラウドサイン」を活用し、取締役会議事録を電子化した事例を2つ紹介します。

  1. 東日本電信電話株式会社(NTT東日本)
  2. 九州旅客鉄道株式会社(JR九州)

1. 東日本電信電話株式会社(NTT東日本)

東日本電信電話株式会社(NTT東日本)では、「無理・無駄の削減」を目標に業務を見直す中で、取締役会の運営業務にも効率化や新しい働き方に合わせた運用を考えることにしました。そこで、書面で作成してきた取締役会議事録の電子化を検討し始めました。

クラウドサインを導入した結果、同社ではそれまで1ヶ月ほどかかってしまうこともあった取締役会議事録の押印回収が、早い時は数日で終わるようになったといいます。

同社担当者は紙の書類のためにわざわざ出社する必要がなくなり、議事録の内容を自宅で閲覧できるようになったという効果も実感しているそうです。

詳しくは、同社担当者の方が登壇したこちらのイベントレポートもご覧ください。

2.九州旅客鉄道株式会社(JR九州)

九州旅客鉄道株式会社(JR九州)では取締役会議事録の電子化をきっかけにクラウドサインを導入し、社内での電子契約利用を拡大しています。

JR九州では以前、独自に開発した契約管理システムを利用して契約書の電子化を行っていましたが、グループ間の利用に限られていたという課題があったそうです。

そこで、クラウドサインを導入し、取締役会議事録を電子化。その後、間を置かず社内規程などルールを定め、当社における契約電子化に利用を拡大しました。結果、API連携によって業務効率を格段に向上させ、コスト削減においても高い効果を発揮しています。

取締役会議事録の電子化が、全社の業務効率改善のきっかけになった好例といえるでしょう。

JR九州の詳しいストーリーはこちらの記事もご確認ください。

取締役会議事録を電子化し、業務効率化を

取締役会議事録の電子化は今後、ますます進むと考えられます。

企業の経理・総務・法務領域のペーパーレス化を進める「ペーパーロジック株式会社」による「取締役会における電子議事録の利用実態調査」(2021年実施)によると、東京都内の大企業(従業員数1,000人以上)の総務部門・経営企画部門に勤める方102名のうち、取締役会議事録において署名・押印が電子化されていると回答した企業は全体のわずか32.4%にとどまりました。

引用元:取締役会における電子議事録の利用実態調査プレスリリースより

一方、「電子化されていない」と回答した企業の担当者のうち、「取締役会議事録の電子化を望む」とする声が79%に上っています(「非常に望む」が47.4%、「やや望む」が31.6%)。

このことから、日本企業における取締役会議事録の電子化はまだまだ途上ではあるものの、現場の電子化ニーズは高いといえそうです。

取締役会議事録の電子化は、押印の手間を削減し、効率化を図るための有効な手段です。一方、電子署名が法的な押印の代替となるものであり、その要件をしっかりと理解し、適切に手続きを行うことが重要です。特に、登記申請に使用する場合には、法務省の定める要件を事前に確認するようにしてください。

なお、電子契約サービス国内シェアNo.1の「クラウドサイン」は、署名者表示機能を備え、登記添付書類の要件を満たすものとして法務省の指定も受けており、当記事で紹介した2つのチェックポイントを満たしています。

クラウドサインでは取締役会議事録の電子化を検討する方に向けて、取締役会議事録を電子化する際のポイントをまとめた資料をご用意しています。気になる方はぜひダウンロードの上、ご活用ください。

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