契約実務

産業廃棄物処理委託契約書とは 書き方や記載内容・電子化のメリットを解説

産業廃棄物の適正な処理を行うには、「産業廃棄物処理契約書(産廃契約書)」が必要です。産廃契約書は、廃棄物の収集運搬や処分における責任範囲を明確にし、適切な処理を確保するための役割を果たします。

当記事では、産廃契約書に記載すべき内容や作成時の注意点、さらに、契約書を電子化するメリットなどについて解説します。産業廃棄物の収集運搬および処分業務を外部に委託する事業者はぜひ参考にしてみてください。

産業廃棄物処理契約書とは

産業廃棄物処理契約書は、「廃棄物の処理及び清掃に関する法律(廃棄物処理法)」に基づき、産業廃棄物を適正に処理するために作成が義務付けられています。
この契約書は、産業廃棄物を排出する事業者(排出事業者)と、その廃棄物を収集運搬・処分する処理業者の間で結ばれます。

契約書を交わすことで、廃棄物の処理責任を明確化し、不適切な処理による環境汚染や法律違反のリスクを防止する役割を果たします。

また、廃棄物処理法では、契約書に基づいて処理を委託する場合の具体的な委託基準が定められており、それに沿った内容で作成する必要があります。

・産業廃棄物処理業の許可を持った業者に委託しなければならないこと
・委託先業者が持つ許可の範囲内で、委託をしなければならないこと
・産廃委託契約書を作成し、書面で契約しなければならないこと
・特別管理産業廃棄物の処理を委託する場合は、その種類や数量、性状などについて、書面で通知しなければならないこと
・産廃委託契約書を、契約終了日から5年間保存しなければならないこと

委託基準を満たしていない契約書を作成すると、後にトラブルになる可能性があるので注意しましょう。

産廃契約書に記載すべき内容

次に、産廃契約書に記載すべき内容を紹介します。

産廃契約書には、「収集・運搬」を委託するものと、「処分」を委託するものがありますので、それぞれの契約書に必要な記載事項を紹介します。

【共通の記載内容】
・委託内容および適正処理に必要な情報
・排出事業者と受託者の責任範囲
・再委託の禁止や契約解除条件
・報酬、消費税、支払い方法
・契約の有効期間
・業務終了時の報告や機密保持

【「収集・運搬」特有の記載内容】
・運搬の最終目的地(所在地、氏名、許可番号など)
・積替保管場所の所在地と保管上限(該当する場合)

【「処分」特有の記載内容】
・処分または再生の場所、方法、処理能力
・最終処分場所、方法、処理能力
・搬入業者の情報(所在地、氏名、許可番号など)

産廃契約書の他に必要な書類

産業廃棄物処理委託契約を締結する際には、契約書だけでなく、関連書類を添付する必要があります。

これらは、収集・運搬や処分といった委託業務の種類に応じて異なりますので、それぞれのケースで必要なものを紹介します。

産業廃棄物収集運搬業許可証の写し

産業廃棄物を収集・運搬する業務を行うには、都道府県知事の許可が必須です。

この許可は、事業者が都道府県の産業資源循環協会などに申請することで、「産業廃棄物収集運搬業許可証」として交付されます。

契約時には、収集・運搬業務を担う事業者がこの許可証の写しを添付しなければなりません。

この許可証があることで、委託者は受託者が適切な手続きと能力を持っていることを確認できます。

産業廃棄物処分業許可証の写し

産業廃棄物の中間処理や最終処理を行う場合、「産業廃棄物処分業許可証」が必要です。

これは、日本産業廃棄物処理振興センター主催の講習を修了し、その後自治体に申請することで交付されます。

産業廃棄物処分を受託する際、この許可証の写しを添付することで、適法な処分を行うことを証明できます。

再生利用に係わる環境大臣の認定証の写し

環境大臣の認定を受けることで、産業廃棄物処分許可や廃棄物処理施設の設置許可を取得せずに、処分業務を行うことが可能になります。

この制度(再生利用認定制度)を活用する業者は、契約時に「再生利用に係わる環境大臣の認定証」の写しを添付しなければなりません。

これにより、再生可能な処理方法を採用していることを証明できます。

広域的処理に係わる環境大臣の認定証の写し

通常、産業廃棄物処理業務を行う場合は、業務を実施する地域ごとに都道府県や自治体の許可が必要です。

しかし、「広域認定制度」を利用すると、環境大臣からの認定を得ることで複数の自治体をまたぐ処理業務を許可不要で行えます。

この認定を受けた業者は、契約時に「広域的処理に係わる環境大臣の認定証」の写しを添付することで、合法的かつ効率的な処理を行う体制を証明します。

無害化処理に係わる環境大臣の認定証の写し

アスベストなどの有害物質を含む産業廃棄物を安全に処理する無害化処理を行う場合には、環境大臣の認可が必要です。

この認可を受けた業者は、無害化処理を業務として行う際に、「無害化処理に係わる環境大臣の認定証」の写しを添付しなければなりません。これにより、安全性と法令遵守を担保します。

産廃契約書は誰が作成する?

産業廃棄物処理委託契約書の作成は、排出事業者が主体となって行います。

産業廃棄物の適正処理を確保するため、排出事業者が契約内容を明確にし、処理業者との間で責任の所在を明確にする必要があります。処理業者が持つ専門的な知識を活用しながら、適正な記載内容を盛り込むことで、トラブルを未然に防ぐことができます。

産廃契約書の作成時の注意点

産廃契約書を作成する際の注意点を紹介します。契約書に不備があると、契約が無効になったり、罰則を受けたりする可能性があるので注意しましょう。

二者間契約をする

産業廃棄物処理における契約は、二者間で行うことが廃棄物処理法第12条で義務付けられています。このため、三者間で契約を交わすことは禁止されています。

たとえば、排出事業者が収集・運搬をA社、処分をB社に委託する場合、それぞれ個別に契約書を作成する必要があります。

具体的には、A社とは収集運搬委託契約書を、B社とは処分委託契約書を締結する形になります。

再委託は禁じられている

排出事業者が契約を結んだ処理業者が、さらに別の業者へ業務を再委託する行為は基本的に認められていません。責任の所在が不明確になり、不適切な処理を招くリスクが高まるためです。

契約締結時には、業者の処理能力を事前に十分確認し、その能力に応じた範囲で委託することが求められます。

ただし、再委託基準を遵守した手続きを行った場合や、受託者が行政命令を受けた場合などには、再委託が認められることもあります。

口約束ではなく書面で契約する

通常、契約は書面でなくとも成立するものですが、産業廃棄物処理においては例外です。

廃棄物処理法では、「一般廃棄物」の場合には書面での契約が必須とはされていない一方、「産業廃棄物」の場合には処理委託契約書を作成し、双方が署名または押印することが義務付けられています。

この規定に違反すると、3年以下の懲役または300万円以下の罰金が科される可能性があるので、注意しましょう。

5年間保存すること

排出事業者には、契約書および産業廃棄物管理表(マニフェスト)を、契約終了日から5年間保存する義務があります。

この義務を怠ると、6か月以下の懲役または50万円以下の罰金が科される場合があります。とくに、書類を破棄・紛失しないよう、適切な管理体制を整えることが大切です。

産廃契約書は電子化できる?

昨今はDXやペーパーレスの観点から、紙の書類を電子化する動きが企業内で活発になってきています。ここでは、産業廃棄物処理委託契約書の電子化が可能かどうかと、そのメリットを解説します。

2005年の法改正により産廃契約書の電子化が可能に

2005年に施行されたe-文書法(民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律)により、産業廃棄物処理の委託契約書を電子化することが可能となりました。

これまでは紙での契約が一般的でしたが、法改正により、電子契約書として合法的に取り扱うことができるようになっています。

産廃契約書を電子化する際のポイント

産廃契約書を電子化する際には、以下のポイントを抑えるようにしてください。

【電子署名の導入】
電子署名を導入することで、契約者の同意を証明し、契約書の法的効力を保証します。

【改ざん防止措置の確保】
契約書が改ざんされないように、暗号化技術やセキュリティ対策を実施して、データの信頼性を守ります。

【5年間の電子保存対応】
電子契約書は、契約終了後5年間、安全に保存できるシステムを導入して管理することが求められます。

産廃契約書を電子化するメリット

産廃契約書を電子化することで、いくつかのメリットが得られます。

まず、ペーパーレス化によって紙や郵送費用が不要となり、コストの削減が期待できます。

次に、書類の紛失リスクの低減です。電子データとして管理するため、物理的な紛失や損傷の心配がなくなります。また、改ざんもしにくくなります。

最後に、管理業務の効率化が進みます。検索機能や自動管理が可能となり、契約書管理が迅速かつ効果的に行えます。

産廃契約書を結ばないことのリスク

「面倒だから」などの理由で契約書を結ばずに廃棄物の処理を行うとどうなるのでしょうか。ここでは、産廃契約書を結ばないことのリスクを紹介します。

法律違反になるおそれがある

産業廃棄物を適切に処理するためには、廃棄物処理法に基づいた契約が必要です。

廃棄物処理法第12条では、産業廃棄物の処理委託に際して契約書の作成が義務付けられており、これを怠ると法律違反に該当します。

結果、行政指導を受けたり、罰則を科せられたりする可能性があります。

トラブル時の責任が曖昧になる

契約書を交わさなかった場合、トラブルが発生した際の責任分担が不明確になります。

不法投棄が発覚した場合、排出事業者が最終的な責任を問われる可能性が高くなります。

何かあった際、業者間で争いになるのは避けられないでしょう。

報酬や処理方法で揉める

産廃契約書がなければ、処理内容や料金についても後々揉めることが予想されます。

契約書では、廃棄物の処理方法や料金の取り決めを明確に記載しておく必要があります。

これがない場合、双方の認識にズレが生じ、処理方法や報酬に関する紛争が発生する可能性が高くなります。

環境汚染の恐れがある

契約書がない場合、産業廃棄物が適切に処理されているかを確認する仕組みが不十分になり、環境汚染のリスクが高まります。

土壌汚染や水質汚染などの環境被害を引き起こさないためにも、契約書を交わし、処理内容を確認することが大切です。

社会的信用が低下する

契約書を結ばなかったり、不適切な廃棄物処理をしていたりすることが発覚すると、企業イメージがダウンします。

結果として、取引先が減るなどして、会社の経営にも悪影響が出るでしょう。

まとめ

産業廃棄物処理契約書(産廃契約書)は、廃棄物の適正な処理を確保するために不可欠な法的文書です。排出事業者と処理業者の間で、責任の所在を明確にし、不適切な処理による環境汚染や法律違反を防ぐ役割を果たします。

産廃契約書を作成しない場合、法律違反や責任の不明確化、トラブルの発生といったリスクが伴うため、事業者は必ず契約書を作成しましょう。

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この記事を書いたライター

弁護士ドットコム クラウドサインブログ編集部

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