雇用契約書を作成しないのは違法か?用意がない場合のトラブルや必要性を解説
雇用契約書は、企業と労働者の間で合意された労働条件を明確にする上で重要な書面です。しかし、なかには雇用契約書を作成しない企業も存在します。では、雇用契約書を作成しないのは違法なのでしょうか?本記事では、雇用契約書の必要性や交付しないことで生じるトラブルについて解説します。
目次
雇用契約書を作成しない状態は違法か?
まず、雇用契約書を作成する法的な義務があるかどうかを見ていきましょう。結論から言えば、雇用契約書は法的に義務化された書類ではないため、作成しない場合も違法ではありません。雇用契約書を作成する義務について言及している法律は存在しないため、作成していないことに対する罰則は設けられていないということです。
労働契約法第六条で「労働契約は、労働者が使用者に使用されて労働し、使用者がこれに対して賃金を支払うことについて、労働者及び使用者が合意することによって成立する。」と定められているため、書面を残さない口約束であっても、企業と労働者の双方が合意していれば雇用契約は成立することになります。
雇用契約書の役割をより詳しく知りたい方は「雇用契約書とは?労働条件通知書との違いや書き方と記載項目を解説」も参考にしてみてください。
法的に交付する必要がある書面は「労働条件通知書」
雇用契約書の作成が法的に義務化されていない一方、労働基準法第15条、労働準法施行規則第5条の規定により、雇用関係が成立した場合には、企業は労働者に対して労働条件を書面で通知しなければなりません。具体的には、「労働条件通知書」という書面を作成し、従業員に交付する必要があります。労働条件通知書には、就業時間、休日、給与、昇給制度、退職手続きなど、重要な労働条件を記載します。
労働条件通知書を交付することで、労働者は自身の労働条件を書面で確認できるため、納得して働くことができる上、労使間のトラブル防止にもつながります。
また、労働条件通知書の交付義務を怠った場合、労働基準監督署からの指導や是正勧告を受けるリスクもあります。労働基準監督署は、労働者の権益保護を担当しており、法令遵守のために企業の監査や指導を行う機関です。労働者とのトラブルを防止するためにも、労働条件通知書は必ず交付しましょう。
なお、労働条件通知書について詳しく知りたい方は「労働条件通知書とは?2024年4月からの変更点も解説|Word版ひな形ダウンロード付」もご一読ください。
雇用契約書を作成しないことで生じ得るトラブル
雇用契約書を作成しないことで生じる可能性のあるトラブルについて考えてみましょう。
まず、労働条件が明確に定められていないため、企業と労働者の間で意見の食い違いや不満が生じることがあります。例えば、給与や勤務時間についての合意がない場合、従業員は不当な労働条件に対して不満を抱く可能性があります。
また、就業前に労働条件を擦り合わせ、書面に残さなかった場合、解雇や雇止めに関する条件が不明確になるため、万が一従業員を解雇する際や不測の事態で従業員が退職することになった際に、話し合いが難航する可能性もあります。
雇用契約書の作成は法的に義務づけられていないものの、労働者側が安心して業務に従事できる環境を整える上ではできる限り作成を検討するのが良いでしょう。
雇用契約書と労働条件通知書をまとめる対応も可能
多くの従業員が入社する場合、雇用契約書と労働条件通知書の両方を作成・締結(交付)・保管するのは業務上の負担になり得ます。業務効率化を追求しつつ、労働条件の確認も徹底する方法として、労働条件通知書と雇用契約書を「労働条件通知書 兼 雇用契約書」というひとつの文書にまとめるのも選択肢のひとつです。
この方法を採用することで、書面が1通で済むだけでなく「企業が労働条件通知書を送付することで雇用契約を申込み」かつ「労働者がその内容を確認して承諾することで雇用契約が成立する」という法的な契約成立プロセスにも即しており、きわめて合理的な方法と考えられます。
なお、本記事の末尾に無料でダウンロードして使える「Word版 労働条件通知書 兼 雇用契約書ひな形ファイル」のダウンロードフォームを用意しているため、入社手続きの効率化を検討している方はぜひダウンロードの上参考にしてみてください。
雇用契約書を電子化するメリット
従来は、従業員の入社手続きが発生するたびに契約書の製本、双方の押印、郵送などに最低でも1〜2週間かかっていました。しかし、電子契約を導入して雇用契約書を電子化することで、これらの手続きを効率化し、採用時や契約更新時にかかる事務作業の時間を大幅に節約することができます。
また、紙の契約書を作成するためには、印刷や郵送に費用がかかりますが、電子契約ではこれらのコストを削減することができます。
さらに、紙の契約書を整理するためにはスペースや時間が必要ですが、電子契約ではクラウド上で契約書の原本を保存・管理できます。これにより、契約書の管理にかかる手間やコスト削減も期待できるでしょう。
無料でダウンロードして使える「Word版 労働条件通知書 兼 雇用契約書ひな形ファイル」を公開中
クラウドサインでは、厚生労働省による労働条件通知書ひな形をベースとして、労働条件通知書電子化の要件を満たしつつ、労働者と雇用契約を締結した証拠を確保できる書式として作成した「労働条件通知書兼雇用契約書ひな形」のWordファイルを作成しました。令和6年4月からの労働条件明示ルール改正にも対応したひな形となっています。
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