【初心者必見】RPAとは何か?今更聞けない基本と導入のポイント
業務の効率化を検討している方であれば、一度はRPA(正式名称:Robotic Process Automation)という言葉を耳にしたことがある方もいらっしゃるでしょう。RPAは人間が行う様々なルーティーン業務を自動化する仕組みのことです。DX推進や働き方改革の一環として、近年様々な業界でRPAの導入が進んでいます。
RPAで業務を自動化できるといっても、すべての業務を人間の代わりにできるわけではなく、向き不向きがあるのも事実です。
そこで当記事では、具体例を挙げながら、RPAの意味やそのメリット・デメリット、導入することでどのように業務が変わるのかをわかりやすく解説します。業務効率化の取り組みの一環としてRPAの導入を検討している方はぜひご一読ください。
目次
RPAとは?
RPA(読み方:アールピーエー)とは、「ロボティックプロセスオートメーション(Robotic Process Automation)」の略称です。
一言で言えば「パソコンで行う事務作業を自動化する技術」を意味します。書類作成、メール送信、Webサイトからの情報収集など、これまで人間がパソコン上で行っていた様々な作業をRPAツールと呼ばれるソフトウェアを使ってロボットに代行させることができます。
具体的には、RPAのロボットは、人間がパソコンを操作するのと同じように、マウスやキーボードの操作、クリック、コピー&ペーストなどの作業を順番に記憶し、それを再現することも可能です。
身近な例で言えば、「請求書データを開き、指定の項目をコピーして、会計システムに貼り付ける」という作業をRPAに覚えさせれば、その後はロボットが自動でこの作業を繰り返してくれるようになり、業務の効率化が実現できます。
スターティアホールディングス株式会社が2024年に実施した「【2024年度版】RPAツールの導入・活用に関するアンケート調査」では、国内全体のRPA導入率は13.04%、中小企業では8.51%、大企業では27.69%という結果が示されており、RPA導入は国内企業に浸透し始めていることがうかがえます。
RPAを導入するメリットと注意点
業務効率化の文脈で導入企業が増えているRPAですが、実際に導入後どのようなメリットを期待できるのか、また導入することによる注意点も確認しておきましょう。
RPA導入のメリット
RPA導入の大きなメリットは、業務効率化と生産性向上です。定型的な事務作業を自動化することで、人間はより創造的で高度な業務に集中できます。まるで優秀なアシスタントが増えたかのように、時間と労力を大幅に削減し、人的ミスを減らすことも期待できるでしょう。
例えば、データ入力、請求書処理、レポート作成など、繰り返し行う作業をRPAに任せることで、従業員はより戦略的な業務に時間を費やすことができます。
また、24時間365日稼働できるRPAは、業務スピードを向上させ、処理能力を飛躍的に高めます。誰でもできる業務をRPAに代行させることで、業務の属人化を防ぐ観点でも有用です。
さらに、RPAはコスト削減にも貢献します。人件費や事務処理コストの削減に加え、人的ミスの削減による手戻りコストの削減にも効果的と言えるでしょう。
RPA導入時の注意点
RPA導入は、企業の生産性向上に大きく貢献する可能性を秘めています。しかし、導入にあたっては、メリットだけでなく、デメリットやリスクも十分に理解し、慎重に検討する必要があります。
まず、RPAツールのライセンス費用や導入コンサルティング費用、運用・保守費用など、初期投資が必要となります。また、RPAはシステム環境に依存するため、システム改修費用が発生する可能性もあります。
次に、セキュリティリスクがあります。不正アクセスによる情報漏洩や、誤操作によるシステム停止など、RPA特有のリスクを考慮する必要があります。
また、RPA導入には業務プロセスの見直しが不可欠です。RPAに適した業務を見極め、業務プロセスを標準化する必要があります。この過程で、従業員の抵抗や混乱を招く可能性もゼロではないため、関係者からの理解を得られるように事前の社内調整も重要になるでしょう。
RPAツールの種類
RPA(Robotic Process Automation)は、ソフトウェアロボットを使って業務を自動化する技術ですが、その導入形態によって次の3種類に分けられます。
- サーバー型
- クラウド型
- デスクトップ型
なお、サーバー型とデスクトップ型は、どちらも自社で機器やソフトウェアを保有するオンプレミス型としてまとめられることもあります。
【RPAの種類の概要】
種類 | サーバー型 | クラウド型 | デスクトップ型 |
---|---|---|---|
特徴 | 企業内のサーバーに RPAソフトウェアを インストールして運用するタイプ |
インターネット経由で RPAサービスを利用するタイプ |
個々のパソコンにRPAソフトウェアを インストールして利用するタイプ |
適した運用規模 | 大企業 | 中小企業 | 個人事業主〜小規模企業 |
導入ハードル | 高 | 低 | 低 |
作業難易度 | 高 | 低 | 低〜中 |
導入費用 | 高額 | 比較的低額 | 低額~高額 |
サーバー型RPAは、企業内のサーバーにRPAソフトウェアをインストールして運用するタイプです。大規模な自動化や、複数部門でのロボットの共有、セキュリティの強化などに適しています。
クラウド型RPAはインターネット経由でRPAサービスを利用するタイプで、サーバーの構築やメンテナンスが不要なため、導入が容易でコストも抑えやすいというメリットがあります。また、場所を選ばずにアクセスできるため、テレワークなど柔軟な働き方にも対応できます。
デスクトップ型RPAは個々のパソコンにRPAソフトウェアをインストールして利用するタイプです。導入コストが比較的低く、小規模な自動化や個人単位の業務効率化に適しています。
それぞれのRPAの種類には、メリットとデメリットがあります。導入を検討する際は、自動化したい業務の内容や規模感、セキュリティ要件、予算などを考慮して、最適なRPAの種類を選ぶことが重要です。
RPAツールの選び方
RPAツールの導入により、定型的な事務作業を自動化し、人間の手を介さずに一連の業務が完結できるようになります。ここでは、RPAツールの選び方・ポイントを解説しますので、ツールの導入を検討している方は確認しておきましょう。
RPAツールを選ぶ上で大切にしたい5つのポイント
- 自動化する対象業務の範囲を明確にする
- 要件と必要な機能を照らし合わせる
- 操作性と必要な開発スキルを確認する
- セキュリティ対策を確認する
- ベンダーのサポート体制を確認する
1. 自動化する対象業務の範囲を明確にする
どの業務を自動化するのか、具体的な範囲を明確にし、RPA導入の目的や期待される効果を具体的にしましょう。どこまでを対象業務とするかによって、必要なRPAツールの機能も異なってくるためです。
とくに、自動化する業務の範囲を広げすぎると、高度な処理が必要になり、ツールの導入コストが想定を上回ることもあり得ます。どこまでの業務を自動化する必要があるのかをコストと合わせて見極めるのが良いでしょう。
2. 要件と必要な機能を照らし合わせる
自動化したい業務の要件を明確にし、その要件を満たすRPAツールを選ぶ必要があります。各RPAツールには、それぞれ特徴や得意な機能があります。例えば、特定のシステムとの連携が必要な場合や、複雑な判断処理が必要な場合など、業務要件に応じて適切なツールを選ぶ必要があります。
連携したいシステムによっても、クラウド型・サーバー型・デスクトップ型のどのツールが適切かの相性が異なるため、システムとツールの適合性を確認するようにしてください。
3. 操作性と必要な開発スキルを確認する
RPAツールの操作性や、ロボット開発に必要なスキルを確認することも重要です。直感的な操作が可能なツールや、プログラミング知識がなくても開発できるツールもある一方で、より高度な処理を行うためには、プログラミングスキルが必要なツールもあります。
「せっかくRPAツールをいれたものの、社内で実装可能な人材がいなかった」という事態を避けるためにも、自社の担当者のスキルレベルや、外部のサポート体制なども考慮してツールを選びましょう。
4. セキュリティ対策を確認する
RPAツールは、機密性の高いデータを取り扱う場合もあるため、セキュリティ対策が十分に施されているかを確認しましょう。
アクセス権限の管理や、データの暗号化、ログ管理など、セキュリティに関する機能に加えて、RPAツール上の動作や作業内容をモニターできるセキュリティ体制が整っているかを確認しましょう。
近年はマルウェアなどによって甚大な被害を受けた企業の報告が後を絶たないため、ネットセキュリティが強固である点も条件に、安心して使用できるRPAツールを選びましょう。
5. ベンダーのサポート体制を確認する
RPAツール導入後も、スムーズな運用を継続するためには、ベンダーのサポート体制が重要になります。導入後のサポート体制も重要な要素です。トラブル発生時の対応や、アップデート情報などを確認しておきましょう。
また、RPAツールに関するトレーニングや、導入後のコンサルティングサービスを提供しているベンダーもあります。自社のニーズに合わせて、適切なサポート体制を提供してくれるベンダーを選びましょう。
国内で主に利用されているRPAツール3選
既に多くの企業で導入されているRPAツールですが、MM総研が2024年3月に実施した「RPA国内利活用動向調査2024」によると、中堅・大手企業で上位シェアを占めているベンダーは次の3つであることが明らかになっています。ツールによって特徴が異なるので、自動化したい業務内容や業務環境に適したツールを選ぶようにしましょう。
【中堅・大手企業におけるベンダーシェア上位のRPAツール(MM総研調べ,複数回答)】
順位 | 製品名 | シェア |
---|---|---|
1 | Microsoft Power Automate(マイクロソフト パワー・オートメイト) | 24% |
2 | WinActor(ウィンアクター) | 21% |
3 | UiPath(ユーアイパス) | 16% |
1.Microsoft Power Automate(マイクロソフト パワー・オートメイト)
Microsoft Power Automate(マイクロソフト パワー・オートメイト)は、マイクロソフトが2020年4月から提供開始したデスクトップ型RPAツールです。
Microsoft Power Automateの大きな特徴としては、次の3点が挙げられます。
- WordやExcelといった約40あるMicrosoft各種アプリとの連携に強みがある
- Microsoftアカウント(無料版含む)があれば無料で使用できる
- 自動化を処理できるテンプレートが数多く用意されている
Microsoft Power AutomateはMicrosoft社が提供している上、無料で利用開始できることもあり、シェアを伸ばしています。日頃Microsoft各種アプリで行っている単純作業の自動化が可能になるため、データ処理の正確性・スピードの向上を目指している方には向いているツールと言えるでしょう。
サービスの詳細を知りたい方は、公式サイトをご覧ください。
2.WinActor(ウィンアクター)
WinActor(ウィンアクター)は、NTTグループが開発している純国産のデスクトップ型RPAソリューションで、7,000社を超える導入実績を誇る国内シェアNo1.のRPAツールです。
WinActorは、ExcelやWebブラウザーなど、Windowsデスクトップ上で操作できるさまざまなアプリケーションに対して、定型的な業務の自動化が可能です。
WinActorの大きな特徴としては、次の3点が挙げられます。
- 純国産ツールであること
- プログラミング知識がなくてもシナリオ作成が可能であること
- 操作が直感的で分かりやすいこと
その他にも、AI連携機能が搭載されており、より高度な業務の自動化にも対応できます。
より詳しい情報や導入事例を知りたい場合は公式サイトをご覧ください。
3. UiPath(ユーアイパス)
UiPath(ユーアイパス)は、世界中で広く利用されているRPAツールの代表格です。大企業から中小企業、個人まで、幅広いユーザーに支持されています。海外製品ですが、日本語サポートも充実しているので、安心して導入できます。
UiPathの大きな特徴としては、次の2点が挙げられます。
- プログラミングの知識がなくても、誰でも簡単に自動化を実現できる
- eラーニングコンテンツなどによる、充実したサポート体制
サービスの詳細を知りたい方は、公式サイトをご覧ください。
RPAの活用事例
RPAは既に様々な業界や業務で活用されており、今後もその需要はますます高まっていくことが予想されます。業務別の活用事例を解説しますので、ご自身の組織・部署内でどのようにRPAを活用できそうかをイメージするための参考材料にしてみてください。
財務・会計業務
経理部門で定期的に発生する業務として、「ネットバンキングにログインして入金確認し、担当者に金額を送信する」「入金データの会計ソフトへの取り込み」といった転記作業や確認作業があります。RPAではこのようなルーティン業務を自動化できるため、業務時間の大幅削減が期待できます。
たとえば、A社の経理部門では、ネットバンキングへのログイン後、指定日時の新着入金を確認し、担当者へメールで日時・入金額・振込元情報を送信するといった業務が日常的に発生していました。
そこで、一連の業務をRPAによって自動化することで、担当者は入金が必要な時にのみ対応すれば業務を完結できるようになり、1週間で約100分もの余剰時間を生み出すことに成功しました。
書類・画像作成業務
書類・画像作成は部門を問わず発生しやすい業務ですが、繰り返しの単純作業が多いため、自動化しやすい領域です。
たとえば、B社では、Excelマクロを使用して行っていた受注書と見積書の作成業務を、RPAツールにより自動化しました。以前は3〜4人で月間数百件の処理を行っていましたが、導入後は1人で月間数千件を処理できるようになり、人件費削減につながっています。
また、画像加工業務においては、RPA導入前は従業員がフォトショップソフトを使用して1枚ずつ手作業で約数千枚の画像を処理していましたが、導入後はこの作業を深夜に実行できるように自動化し、日中3人で担当していた作業時間をゼロにしました。
メール送信業務
メールは顧客や取引先との連絡を行う重要なツールですが、単純な通知メールや定期的に送信するメールのような自動化しやすい業務も含まれるため、RPAにより効率化できるケースも少なくありません。
たとえば、C社では、これまで手動で作成していた週次の販売実績レポートやBIシステムで分析された定型レポートのメール配信をRPAツールにより自動化し、メール送信にかかっていた時間をまるごと削減しました。
「定時に必ず送らなければならない」という業務は担当者に精神的な負担をかける面もあるため、RPAにこれらの業務を任せることで、担当者は時間や場所にとらわれず自由に働くことができ、精神的な負担からも解放されます。
RPAの最新トレンド
RPA(Robotic Process Automation)は、定型業務を自動化するツールとして多くの企業で導入されていますが、近年、AI(人工知能)との連携により、より複雑なタスクに対応できるよう進化を遂げています。
実際に、大手企業向けのRPAツールを提供していた米Automation Anywhere(オートメーション・エニウェア)、米SS&C Blue Prism(SS&Cブループリズム)、米UiPath(ユーアイパス)などのITベンダーが、生成AIの機能を使った作業自動化のロボット開発支援に取り組んでいることがわかっています(出典:生成AI入りのRPAが「超・自動化」ツールに進化、ローコードで開発可能に|日経クロステック)。
従来型のロボットはデータ入力の手作業を自動化する機能が主でしたが、生成AIを組み込むことで以前のロボットが不可能だった処理を実行したり、精度を高めたりすることが可能になります。
生成AIの発展に伴い、RPAツールも今後さらに高度な処理が可能になり、これまで自動化が難しかった作業も効率化が期待できるでしょう。
RPAツールとクラウドサインの連携で、契約業務が効率的に
RPAを導入することでさまざまな定型業務を自動化でき、業務効率化やコスト削減に繋がることがわかりました。
契約管理業務においても例外ではなく、RPAツールを活用することで大幅な効率化が可能です。電子契約サービス「クラウドサイン」は、API連携により様々なRPAツールと連携することができます。
例えば、契約書の作成や締結、管理といった一連のプロセスをRPAで自動化することができます。具体的には、クラウドサインで締結した書類のPDFをGoogleドライブやDropboxといったオンラインストレージへ自動的に格納したり、基幹システムとクラウドサインをRPAを通じて連携し、一連の契約プロセスを自動化したりといった利用例が挙げられます。
電子契約サービスとRPAツールとの連携により、契約業務の効率化だけでなく、人的ミスの削減やセキュリティ強化にも繋がります。業務効率化を検討されている企業様は、ぜひクラウドサインとRPAツールの連携をご検討ください。
>連携できる外部サービスについてはこちら
なお、クラウドサインではこれから電子契約サービスを比較検討する方に向けて「電子契約の始め方完全ガイド」をご用意しています。
「電子契約を社内導入するための手順」や「クラウドサインの利用手順」「よくあるご質問」など、導入前に知っておきたい情報を網羅して解説しているため、導入検討時に抱いている疑問や不安を解消することが可能です。下記リンクから無料でご入手できますので、ぜひご活用ください。
無料ダウンロード
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クラウドサインではこれから電子契約サービスを検討する方に向けた「電子契約の始め方完全ガイド」をご用意しました。電子契約サービスの導入を検討している方はダウンロードしてご活用ください。
この記事を書いたライター
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弁護士ドットコム クラウドサインブログ編集部
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