契約実務

契約書に収入印紙を貼り忘れた場合の罰則は?貼る条件や貼り忘れた場合の罰則を解説

契約書に収入印紙を貼り忘れてしまった場合、果たしてどのような罰則が課されるのでしょうか?収入印紙に関するルールや条件を知らないまま契約を締結することは、意図しない法的トラブルを引き起こす可能性があります。

当記事では、収入印紙の必要性や貼り忘れた際の罰則について解説します。また、収入印紙が不要になるケースについても解説しますので、契約書の作成や送付前に参考にしてみてください。

収入印紙とは

収入印紙とは、印紙税に代表される租税・手数料その他の収納金の徴収のため、国(政府)が発行する証票です。印紙税法では、課税対象になる書類については規定の金額の収入印紙を貼り付けることが定められています。

『法律学小辞典』(有斐閣、2016年)によれば、収入印紙について下記のとおり説明されています。

歳入金の一定額を表章する証票で、その形式等は財務省の告示で定められている。国に納付する手数料・罰金・科料・過料・刑事追徴金・訴訟費用・非訟事件の費用及び少年法31条1項の規定により徴収する費用は印紙をもって納付することができるとされており(略)、租税の中にも原則として印紙で納付するもの(印紙税)と印紙で納付できるものとがある(印紙納付)。

収入印紙が必要になる契約書の種類

収入印紙が必要になる契約書の種類は国税庁の「印紙税の手引」にある「印紙税額一覧表」から確認できます。この表から抜粋した契約書の種類は下表の通りです。自社で作成することのある文書が課税文書に含まれているかどうか、改めて確認しておきましょう。

【収入印紙が必要になる契約書】

番号 契約書の種類
第1号 ・不動産・鉱業権・無体財産権・船舶・航空機また営業の譲渡に関する契約書
・地上権・土地の貸借権の設定や譲渡に関する契約書
・消費貸借に関する契約書
・運送に関する契約書
第2号 請負に関する契約書
(例) 工事請負契約書、工事注文請書、物品加工注文請書、広告契約書、映画俳優専属契約書、請負金額変更契約書など
第5号 合併契約書又は吸収分割契約書若しくは新設分割計画書
第7号 継続的取引の基本となる契約書
(例) 売買取引基本契約書、特約店契約書、代 理店契約書、業務委託契約書、銀行取引約 定書など
第12号 信託行為に関する契約書
第13号 債務の保証に関する契約書
第14号 金銭又は有価証券の預託に関する契約書
第15号 債権譲渡又は債務引受けに関する契約書

参考:印紙税額一覧表|国税庁

注意点として、課税文書に該当するかどうかの判断基準は、文書のタイトルではなくその内容になるという点があげられます(参考:No.7100 課税文書に該当するかどうかの判断|国税庁)。

契約書のタイトルが印紙税額一覧表に該当しなかった場合でも、内容から明らかに契約書であることがわかる場合には課税文書として取り扱われます。

収入印紙が必要になる契約書以外の文書の種類

収入印紙が必要になる契約書以外の文書の種類は下表の通りです。

【収入印紙が必要になる契約書以外の文書】

番号 文書の種類
第3号 約束手形、為替手形
第4号 株券、出資証券若しくは社債券又は投資信託、貸付信託、特定目的信託若しくは受益証券発行信託の受益証券
第6号 定款
第8号 預金証書、貯金証書
第9号 倉荷証券、船荷証券、複合運送証券
第10号 保険証券
第11号 信用状
第16号 配当金領収書、配当金振込通知書
第17号 売上代金に係る金銭又は有価証券の受取書、売上代金以外の金銭又は有価証券の受取書
第18号 預金通帳、貯金通帳、信託通帳、掛金通帳、保険料通帳
第19号 消費賃借通帳、請負通帳、有価証券の預かり通帳、金銭の受取帳などの通帳
第20号 判取帳

参考:印紙税額一覧表|国税庁

特に注意したいのは、記載金額が5万円以上の請求書兼領収書には収入印紙が必要になるという点です。国税庁の「印紙税額一覧表」第17号に記載されている通り、請求書が領収書の役割も果たす場合には、印紙税法に定める課税文書にあたり、記載金額が5万円以上の場合には収入印紙を貼る必要があります。

請求書に収入印紙を貼るケースについて詳しく確認したい方は「請求書に収入印紙を貼る必要はあるのか?必要なケースを解説」もご一読ください。

収入印紙を貼り忘れた時の罰則

収入印紙を貼り忘れた場合、税務調査を受ける前に自主的に申し出た場合と、税務調査を受けた際に発覚した場合で罰則が異なります。まず、税務調査を受ける前に自主的に収入印紙の貼り忘れを申し出た場合です。この場合、税務署は実際に貼り付けるべきだった収入印紙の1.1倍の遅延税金を徴収します。

一方、税務調査を受けた際に収入印紙の貼り忘れが発覚した場合は、実際に貼り付けるべきだった収入印紙の3倍に相当する額が過怠税として徴収されます。

また、収入印紙に消印がなかった場合には、消印されていない印紙の額面に相当する金額の過怠税が徴収されます。

契約書を作成する際は、あらかじめ収入印紙が必要かどうかを確認し、必要に応じて印紙税法に定められた額面の収入印紙を貼り付けるようにしましょう。

電子契約サービスで書類を送信すれば収入印紙は不要になる

契約締結業務をオンライン上で完結できる「電子契約サービス」を利用する場合には、収入印紙の貼付は不要になります。印紙税において課税文書の作成は用紙への記載によるものと定義されており、電子契約書に対しては印紙税はかからないためです。

また、電子契約サービスを利用することで、印紙代だけでなく紙代や印刷費、郵送費も削減できる上、契約締結までのリードタイムも削減可能です。収入印紙の貼り忘れや貼り間違いのリスクを回避しつつ、スムーズな契約プロセスを実現するために、電子契約の活用を検討してみてはいかがでしょうか。

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この記事を書いたライター

弁護士ドットコム クラウドサインブログ編集部

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