電子契約の運用ノウハウ

DX推進、社内浸透を成功させるには?法務・DX担当者必見の電子契約導入ストーリー

2023年7月21日、弁護士ドットコム・クラウドサイン主催で開催されたエグゼクティブ向けラウンドテーブルにて、クラウドサイン導入企業2社によるトークセッション『法務ユーザーに聞く 電子契約導入秘話』を開催しました。クラウドサイン導入の最前線に携わった法務ユーザーが今だからこそ語れる、成功の秘訣や困難を感じた場面について、2社の事例を踏まえてお話しいただきました。

この記事では、およそ20分のトークセッションの内容をまとめました。大企業での電子契約サービス導入検討や、利用促進のためのヒントを得る機会として、ぜひご活用ください。

トークセッション登壇者

キヤノンマーケティングジャパン株式会社
法務・知的財産本部 本部長
内尾 裕一氏

ディップ株式会社
経営統括本部 法務部 ビジネス法務課 課長
佐藤 望氏

モデレーター
弁護士ドットコム株式会社
クラウドサイン事業本部 エンタープライズカスタマーサクセスチーム マネージャー
朝倉 知代

ー朝倉
クラウドサインでエンタープライズカスタマーサクセスマネージャーを担当しております朝倉と申します。本日はモデレーターを務めます。よろしくお願いいたします。

ー内尾様
キヤノンマーケティングジャパン株式会社法務・知的財産本部の内尾と申します。キヤノンには35年前に入社し、一貫して知的財産の専門分野に従事してきました。
2010年ごろからは法務の業務も担当させていただくようになり、現在に至っています。クラウドサインの皆さんには3年以上お世話になっておりますが、本日は私の活動について少しお話しさせていただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

ー佐藤様
ディップ株式会社経営統括本部法務部に所属する佐藤望と申します。私はロースクールを卒業後、1年ほど営業の仕事を経験し、その後2015年ごろから法務の分野で働いています。クラウドサインは2018年のコロナ禍前に導入し、当時私は導入に関するフロント業務に携わりました。
今日は裏側のエピソードや苦労話なども交えつつ、少しでも皆さんにお話しできればと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。

DX推進を成功させるには社員の意識改革が大きな課題となる

ー朝倉
1つ目のディスカッションテーマです。こちらの2社様では、クラウドサインをご導入いただいたタイミングが大きく異なります。コロナの前からご導入いただいたのがディップ様、そしてコロナ禍となって電子化の舵を切っていただいたのがキヤノンマーケティングジャパン様といった違いがありますが、当時の導入経緯を教えていただけますか。

ー内尾様
キヤノンマーケティングジャパンでは、2020年にクラウドサインを導入しました。私の上司でもあった当時の社長から、非対面の業務プロセスを導入しようという指示があり、私たち法務部もその推進役として取り組むこととなりました。コロナ禍に入った2020年8月に経営会議でプロジェクトが承認され、その際にクラウドサインを含むいくつかの電子契約サービスを検討しました。

法的な裏付けや理論的な側面を重視する中、クラウドサインが最も適していると判断し、そのままロケットスタートで導入を始めました。コロナをきっかけに非対面の業務への移行が始まった形で、現在のところ概ね当初の目標に達しております。

ー朝倉
ありがとうございます。社内調整の際に特に力を注いだ点や、困難を感じた点はありましたか?

ー内尾様
今回は、経営会議での承認で一斉に導入を進めるというアプローチでした。法務部は通常、会社の安全な運営を担当する役割を果たす部署であり、新しい取り組みを始めるということにはあまり慣れていなかったため、ここがなかなか難しい点でした。

こういったDXは意識改革がほぼ8割、9割を占めます。いかに社員の意識を変えて新しい取り組みを受け入れてもらうかということが、最も大きな課題でした。全社で一律スタートしようと思ったところは少し難しかったかもしれないと感じています。

キヤノンマーケティングジャパン株式会社 法務・知的財産本部 本部長 内尾 裕一氏

ー朝倉
大変重みのあるコメントをありがとうございます。
ディップ様では、当時佐藤様が社内で「電子契約をやりましょう」と声を上げていただいたのが始まりと伺っていますが、その時のお話を伺わせてください。

ー佐藤様
ディップでは、コロナ前の2018年にクラウドサインの導入を検討しました。当時、弊社は「バイトル」や「はたらこねっと」といった求人広告を主に扱う事業と、「DX事業」というバックオフィスの業務改善を推進する新しい事業を展開していましたが、DX事業をお客様に対して提案する以上、自社のバックオフィス業務の改善は急務だと感じていました。

特に法務部で実務を担当していた私は、契約書を紙で印刷し、製本し、失敗したらやり直し、承認を得るためにはんこを押してもらうといった手続きの煩雑さに不満を抱いていました。その時、クラウドサインのサービスを知り、「これだ」と思いました。そして、「うちがやらなくてどうするんだ」というような強い思いを社内の関係各所に伝えたのが始まりでした

ー朝倉
ありがとうございます。コロナ前に導入されていたことが、コロナ時代の社内の反応にどのような影響を与えたか、教えていただけますか。

ー佐藤様
非常に好感触を得られました。コロナの影響で全員リモートワークとなり、紙の契約書の取り扱いについて議論が生じた際、既に導入していたクラウドサインを示して「これを使えば解決できます」と伝えると、社内や取引先からも好意的な反応が得られました
コロナの影響により、従来であれば2~3週間かかっていた契約締結のプロセスが1日2日で完了し、迅速なサービス提供が可能となりました。このような面でもクラウドサインの導入は大成功だったと思います。

社内展開の際は最初に浸透までのロードマップを描くのが重要

ー朝倉
次のテーマです。導入後、どのように社内に展開していったのかというテーマですが、キヤノンマーケティングジャパン様は、社長の方針でスモールスタートではなく全社で始めるという進め方をされました。一方でディップ様では、まず法務部門から始めていただき、その後他の部門へと広げていただきました。この進め方という点に関してのご意見をお聞かせいただけますか。

ー内尾様
振り返りますと、スモールスタートという進め方もあったのかもしれないと感じています。というのは、推進をするにあたってはどこかで障害が起こります。全社で一律に導入を始めようとすると、その障害に対してあちこちで手を尽くさないといけないため、入念な準備が必要でした。例えば局所的に、一番電子契約化のメリットが大きい所から始めるというやり方もあったかもしれません。最近では少し進め方についての方針を転換しています。

ー佐藤様
ディップではスモールスタートでクラウドサインの導入を進めました。まず、法務部から利用を始めて、その後事業部ごとにどの部署で利用するかを検討した際、代理店を扱う事業部が候補になりました。この事業部では、代理店契約書を必ず締結する必要があるのですが、この契約における収入印紙のコストを削減できるという点で大きなコストメリットが見込まれる部署でした。

ただ、当初は電子契約という概念自体がまだ一般的でなかったため、「電子契約って何?」という社内からの疑問や抵抗感もありました。そのため、お客様との信頼関係のある部署で最初に導入してみて、反応を見ることにしました。
代理店事業部の部長からは、「代理店さんには自分が説明するから安心して」との言葉ももらい、約300社の代理店に向けて導入の説明を行いました。

ー朝倉
社内に強力な味方がいらっしゃったのも社内展開の1つのポイントだったのですね。最初に法務部門から利用開始した段階で「次はきっとあの事業部が興味を示しそうだな」という感触はお持ちでしたか。

ー佐藤様
そうですね。特に収入印紙の部分や、契約書の締結が多いような所は絶対に食い付くだろうなと思い、ロードマップのようなものを引いて「ここは感触良かったから、次はここにアタックしてみよう」といった感じで進めていきました。

ディップ株式会社 経営統括本部 法務部 ビジネス法務課 課長 佐藤 望氏

ー朝倉
ありがとうございます。キヤノンマーケティングジャパン様では、導入当初は全社での利用についてどんなイメージを描いておられましたか。

ー内尾様
当社は事業部門がいくつかに分かれておりますので、各部門の責任者主導で利用を進めてもらうということを考えていました。ただ、当社がやりたくても、契約というものは相手がいるものですので、相手方へのアプローチに少し障壁があり、なかなか難しかったかもしれません。むしろ、電子契約の対象について少し間口を狭くして、集中的に電子化を進めて行った方が効果的だったかもしれないと思います。

ー朝倉
ありがとうございます。我々もクラウドサインのご提案をする時には、「まずはここから始めましょう。最終的にここまでの書類を電子化していきましょう」というように、まず最初に青写真を描いたうえで、最終的な理想像に向かって一緒に伴走するような取り組みをしています。

ー佐藤様
ディップでの導入初期は、当時のカスタマーサクセス担当の方に非常にご尽力いただきました。当社の組織体制を踏まえた社内展開のアドバイスや、業務フローの改善提案をしていただいたことで、運用が本当にスムーズに進みました。
また、クラウドサインはユーザー側の要望がかなり取り入れられていると感じています。他の類似サービスと比較しても、UI・UXが非常に優れており、使いやすいと思います。
他社の電子契約サービスで締結を求められることもありますが、やはり最も使いやすいのはクラウドサインだと感じています。

法務の立場から感じるクラウドサイン導入による効果

ー朝倉
それでは最後のテーマです。現在電子契約の導入を検討している企業の皆様に向けて、メッセージをお願いします。

ー内尾様
私も実際にクラウドサインを使って契約を行なっていますが、その利便性や契約プロセスのトラッキングができるという点が法務の立場から見ても非常に使いやすいと感じています。
これからも電子契約はますます進展していくと思いますので、業務効率化のために早めに導入することをおすすめします。個人的にもその効果を実感しています。

ー佐藤様
私も法務の人間として、導入時にセキュリティや法的な証拠力などへの懸念が発生することはとてもよく理解できます。当社の導入時も時間をかけて検証しました。ただ、当社の法務は、会社の一部として事業部門をサポートし、企業価値を向上させるための一翼を担っているという意識があります。「契約書の作成に手間取っているので待ってください」ということは言えません。

クラウドサインの導入によって契約書をスピーディーに締結でき、その契約に基づいて迅速に事業が開始できるので、企業の成長スピードに貢献しますし、企業価値向上にも寄与します。私自身、その効果を実感していますので、私は非常に導入して良かったなと思っています。

ー朝倉
非常に嬉しく、励みになるコメントをいただき、ありがとうございます。内尾様、佐藤様、本日は貴重なお時間をありがとうございました。今後ともクラウドサインをどうぞよろしくお願いいたします。

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この記事を書いたライター

弁護士ドットコム クラウドサインブログ編集部

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