【NTT東日本登壇】「取締役会議事録の電子化に向けたポイントと運用事例」イベントレポート|CloudSign Re:Change Japan 2024 Spring
2024年3月18日(月)、ザ・プリンス パークタワー東京にて開催された弁護士ドットコム主催のビジネスカンファレンス「CloudSign Re:Change Japan 2024 Spring」(公式サイト)。AI・DX、法務・契約業務の2つのテーマを軸に、業種・業態や部署の垣根を超え、ビジネスを活性化するヒントを得るためのさまざまなセッションがおこなわれました。
「取締役会議事録の電子化に向けたポイントと運用事例」と題したセッションは2部構成で進行され、第1部ではクラウドサインカスタマーサクセス部に所属する朝倉より電子化の法的根拠や運用の際の注意点を解説。第2部では、実際に取締役会議事録にクラウドサインを活用しているNTT東日本の市川茉耶氏に、運用を始めたきっかけから電子化の効果、運用で工夫したポイントなどをお話しいただきました。
トークセッション登壇者
東日本電信電話株式会社 総務人事部
総務部門 総務担当
市川茉耶 氏
2010年に東日本電信電話株式会社へ入社。埼玉事業部や千葉事業部、グループ会社にて人事業務に従事。2019年より、本社総務人事部にて、株主総会・取締役会の事務局や、インサイダー関連の主管等の業務を担当。
モデレーター
弁護士ドットコム株式会社 クラウドサイン事業本部 カスタマーサクセス部 エンタープライズサクセスグループ エンタープライズCSMチーム チームマネージャー
朝倉 知代
関西学院大学法学部卒業。楽天株式会社にてネットショップ運営のコンサルティングをおこなう。次に、クライアント企業へ転職し、社内IT環境の整備・活用に取り組む。その後、株式会社NIコンサルティングにて、CRM・グループウェアの提案から運用支援までを一気通貫で実施。弁護士ドットコムでは、これまでの経験を活かし、IT活用と組織体制整備の両面からクライアントの業務変革を支援するカスタマーサクセス業務に従事。
【第1部】取締役会議事録の電子化セミナー
セッションの冒頭、まずはクラウドサインの朝倉知代が登壇し、複数の企業が取締役会議事録を電子化するようになった背景を紹介しました
取締役会議事録は電子化できる? ニーズの背景と法的根拠
クラウドサインユーザーへ電子化に取り組むきっかけとして「コロナを機に取締役会がオンラインになり、ハンコを使っていた従来の方式がとれなくなった」「議事録を持って取締役を行脚するハンコのスタンプラリーをやめたい」といった声がありました。
では、取締役会議事録の電子化は法的に可能なのでしょうか。結論から言うと、答えは「イエス」。会社法施行規則101条2項には「取締役会の議事録は、書面又は電磁的記録をもって作成しなければならない」とあります。
さらに、会社法369条4項に「電磁的記録により作成されたときは、出席取締役・監査役は署名又は記名押印に代わる措置をとること」とあり、その「措置」とは「電子署名である」とされているのです(会社法施行規則225条1項6号)。
一方、クラウドサインのように事業者が代理で電子署名を付与する立会人型の電子署名サービスによる電子署名は、従来、上記の会社法施行規則225条2項で定義する“電子署名”に該当しないとされてきました。しかし、2020年5月に法務省が「立会人型電子署名サービスによる電子署名は署名として有効である」という見解を明示。現在、クラウドサインは法務省によって商業登記に利用可能な電子署名サービスに指定されています。
取締役会議事録電子化までの5つのステップ
法的な懸念を解消できれば、あとは実践あるのみです。取締役会議事録の電子化までには、大まかに以下の5つのステップがあると朝倉は言います。
最初の関門となるステップ1は、取締役に電子化を受け容れていただくための説明。この点、どの企業も実際にサービスを使うためのパソコン操作のケアに重点を置いているようで、場合によっては取締役を対象にした操作に関する説明会を開き、「マウスでここを2回クリックする」などと手厚いサポートを実施するケースもあるのだとか。電子署名サービスは簡単であると理解してもらうことで取締役会議事録の電子化が受け容れられやすくなるというわけです。
つづいてステップ2は、社内規程の変更・見直し。現行の印章管理規程や文書管理規程に「紙の書類への押印」を前提としたような表現がある場合、電子署名も対象とする表現に変更すればOKです。
ステップ3は、書類閲覧範囲の確認。クラウドサインの仕様上、書類管理者はチームで送受信した書類をすべて閲覧することができます。取締役会議事録のように秘匿性の高い書類をクラウドサインで扱う場合、書類管理者がそれを見て問題ないかどうかを確認したうえで管理者の権限を付与する必要があります。
そしてステップ4は、取締役のメールアドレス、とりわけ社外取締役のメールアドレスの確認。前述のとおりクラウドサインではメンバーが送受信したすべての書類を書類管理者が閲覧できるため、社外取締役が所属する組織でもクラウドサインを使っていた場合、その会社が発行したメールアドレスに取締役会議事録を送付すると、先方の組織の管理者も書類を閲覧できる状態になってしまうのです。
そこで社会取締役のメールアドレスの運用について、クラウドサインが推奨するのは次の2つの方法です。
- プライベートアドレスに送信する方法:社外取締役が所属する組織で発行したメールアドレスとは別のメールアドレスを用意してもらう
- 社外取締役が取締役会議事録を確認・承認するためのメールアドレスを自社で発行する方法
朝倉によると、後者で運用する企業が圧倒的に多い印象とのことでした。
【第2部】経験者に聞きたい取締役議事録電子化の気になるところ
続いて、東日本電信電話株式会社の市川茉耶氏がゲストスピーカーとして登壇。実際にクラウドサインを活用して取締役会議事録を電子化している市川氏に、クラウドサインの朝倉が「経験者に聞きたい取締役会議事録電子化の気になるところ」をテーマに対談形式でお話をうかがいました。
導入の背景と導入後のメリット
朝倉:まず、取締役会議事録を電子化していただくようになったきっかけをうかがってよろしいでしょうか。
市川氏:弊社では近年「無理・無駄の削減」を目標に、これまでの業務を見直す動きがあります。すべての業務を棚卸ししたうえで、各業務が本当に必要なものなのかどうかを見極めたり、DXの推進に取り組んだりといった内容です。また、働き方改革として、自宅勤務を原則とする「リモートスタンダード」という考え方を日々の業務に取り入れています。
そうしたことを背景に、取締役会の運営業務にも効率化や新しい働き方に合わせた運用が求められるようになりました。そこで、これまでは紙で作成してきた取締役会議事録を電子化できないか検討し、結果的にクラウドサインを活用することにしました。
朝倉:もともと御社で契約業務の際にご利用いただいていたクラウドサインを、取締役会議事録の電子化にも使っていこうと舵を切ってくださった。そんな経緯でしょうか?
市川氏:はい。これまで契約業務で使っていたクラウドサインを取締役会議事録にも使える可能性があると気づき、調べていったという流れです。
朝倉:その可能性に気づき、取締役会議事録電子化プロジェクトを牽引してくださってありがとうございます。ただ、御社のなかで「無理・無駄の削減」の機運が高まっていたとはいえ、実際にプロジェクトを進めるにあたっては社内へのご説明をはじめ、さまざまなご苦労があったのではないでしょうか。
市川氏:弊社の場合「無理・無駄の削減」は役員が中心となって全社で展開していった取り組みですので、紙の取締役会議事録を電子化すること自体にはスムーズに理解を示していただけたと思います。
ただ、先ほど朝倉さんからご説明があったように、事業者が代理で電子署名を付与する立会人型の電子署名サービスを導入し、その事業者であるクラウドサインから届くメールに役員自身が対応することについては懸念を示す方もいらっしゃいました。そこで運用を開始するまでに役員秘書の方と連携して数回テストをするなどして準備を進め、いまのところ円滑に運用できている状況です。
朝倉:丁寧にケアをしてくださったのですね。実際に運用を開始して、どのような効果があったと感じていますか?
市川氏:これまでの取締役会運営業務では、取締役会が終わったあとに紙で取締役会議事録を作成し、印刷・製本したものを役員の方々に回覧し、ひとりずつ印鑑を押してもらっていました。取締役の数が多ければ多いほど時間がかかってしまうし、私たちの場合は社外取締役もいますので、郵送対応もしていたんですね。そうすると、送ってから戻ってくるまでに1か月ほどかかってしまうこともあったんです。
クラウドサインを使うようになってからは、仮に役員が海外出張中でも、パソコンさえあればその場で確認し、電子署名をしてもらうことができます。早いときは役員全員への回覧が数日で終わるようになりました。
朝倉:たしかに、時間の短縮はいちばん分かりやすい効果を実感いただけるところかと思います。そのほか、取締役会議事録を送ったあとに誤字脱字を見つけた場合も、修正したものを再度メールで送るだけで済む点が嬉しいといったお声もよくいただいています。
取締役会議事録の電子化が社内DXの鍵を握る?
朝倉:一方、クラウドサインを取締役会議事録に活用してみて見えてきた課題があれば教えていただけますでしょうか。
市川氏:クラウドサインは複数の役員に取締役会議事録を送信できるものの、ひとりの取締役が同意してから次の取締役にメールが届き、その人が同意すればまた次の取締役へメールが届くという仕様ですよね。
たとえば登記に関連する案件など、急いで取締役会議事録を回さなければならないケースもありますので、そういったときは一斉送信できればより便利になると思います。みなさんがそれぞれのタイミングで押印できるような仕組みになれば、ますます効率的になるのではないでしょうか。
朝倉:おっしゃる通り、クラウドサインでは宛先設定を複数人にすると、受信者に割り当てられた数字の順にリレー形式で確認依頼メールが届く仕様です。取締役がたくさんいらっしゃるとリレーにいささか時間がかかってしまうので、すべての取締役に一斉にメールを届けたい。そうしたご要望は私のところにも多く届いています。ぜひ、今後の機能改修にご期待いただければと思います。
それでは最後に、取締役会議事録を電子化しようか迷っている、これから電子化する可能性があるといった方に向けて、アドバイスやメッセージをいただいてよろしいでしょうか。
市川氏:弊社の場合は比較的スムーズに導入できたとはいえ、長らく紙の取締役会議事録でやってきた歴史がありますから、電子化に不満のある人もそれなりにいたと思いますし、秘匿性の高いデータがクラウド上に残るのはどうなんだろうという懸念もありました。
けれども当初は抵抗感があった人でも一度使ってみると考えが変わるようで、導入から1年半が経った今では、クラウドサインはなくてはならないものになっていると感じます。データがクラウド上に残る点についても問題はなく、むしろ私たち取締役会事務局としては紙の書類のためにわざわざ出社する必要がなくなり、いつでも自宅で確認できることに助けられています。かつての私たちのように紙の取締役会議事録に課題のある方は、電子化の導入を検討をしてみてもいいのではないかと思いますね。
朝倉:導入前後こそご苦労いただくこともあるかもしれませんが、一度導入すると、その後の取締役事務局の業務が格段に楽になったというお声は本当によくいただいております。
加えて、いまだに契約書の電子化も進んでいないと悩んでおられる会社さまも少なくありませんが、取締役会議事録を通じて役員のみなさまに電子契約を体験していただくことで「通常の契約業務にも電子契約を使おう」と後押ししてくださるようになるケースもあります。
その意味では、取締役会の運営事務局が社内DXの鍵を握っていると言ってもいいのかもしれません。社内の業務効率化のために、みなさまに一肌脱いでいただければ私たちとしても幸いです。まだまだお話をうかがいたいところではありますが、本セッションはここまでとさせていただきます。市川さま、本日はどうもありがとうございました。
市川氏:ありがとうございました。
※掲載内容はイベント実施当時のものです。
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