準委任契約と請負契約の違いとは?メリット・デメリット、注意点を解説
準委任契約と請負契約はどちらも業務委託契約の一種ですが、契約の目的や責任範囲に違いがあります。
当記事では、準委任契約と請負契約の違いをわかりやすく解説し、それぞれのメリットや注意点について詳しく紹介します。
準委任契約と請負契約の違いを理解し、自社にとって適切な契約を見極めるための判断材料としてみてください。
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目次
準委任契約と請負契約
まずは、民法の条文を見ながら、準委任契約と請負契約がどのように違うのか説明します。
準委任契約とは
準委任契約とは、冒頭で説明したとおり、特定の業務の遂行を目的とした契約のことをいいます。準委任契約については民法の条文で次のように記載されています。
(委任)
第六百四十三条 委任は、当事者の一方が法律行為をすることを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって、その効力を生ずる。(準委任)
第六百五十六条 この節の規定は、法律行為でない事務の委託について準用する。
【引用:民法 e-gov】
委任契約とは、弁護士などの専門家が法律に関わる業務を行うことであり、準委任契約は、法律に関わらないそれ以外の業務を委託することをいいます。
準委任契約は以下のようなケースで用いられます。
・システムエンジニアが引き受ける運用管理
・コンサルティング業務
・会計業務の一部委託 など
準委任契約には、善管注意義務(契約における適切な注意を払う義務)が求められる一方、成果物に対する責任は発生しません。
準委任契約の基礎知識について知りたい方はこちらの記事もご確認ください。
請負契約とは
請負契約は、民法第632条に基づき、特定の成果物の完成を目的とする契約です。この契約では、成果物の品質や完成に対する責任が求められます。
民法632条には次のように記載されています。
(請負)
第六百三十二条 請負は、当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。
【引用:民法 e-gov】
準委任契約と違い、成果物を納品しなければならない点において、請負契約は内容が明確になりやすいです。
請負契約の例は以下のとおりです。
・建築工事
・ソフトウェア開発
・製品製造
完成物に不備がある場合、請負人が修繕や作り直しなどの責任を負う必要があります。
準委任契約と請負契約の違いや、そもそも業務委託契約の基礎知識について詳しく知りたい方は、こちらの記事もご参照ください。
準委任契約と請負契約の違い
準委任契約は、特定の業務の遂行を目的とした契約で、請負契約は仕事の完成や、成果物の納品を求めることを目的とした契約です。両者は混同されやすいですが、目的や責任の範囲が異なるため、それぞれの特徴を正しく理解しておく必要があります。
以下では、5つの視点からその違いを詳しく解説します。
- 成果物の有無
- 責任範囲
- 報酬の支払い時期
- 契約解除のタイミング
- 再委託の可否
①成果物の有無
準委任契約においては、契約の達成に成果物は必要ありません。業務そのものが重視されるため、具体的な形に残る成果がなくても契約は履行されたと見なされます。
これに対して、請負契約では成果物が契約の主たる要素です。依頼者は、明確な形で成果物を受け取ることを期待しており、それが契約履行の証明となります。
②責任の範囲
準委任契約では、受任者が善管注意義務を果たすことが求められます。これは、受任者が業務遂行に際して必要な注意を払う責任を指しますが、成果物に関する責任は負いません。
一方、請負契約では成果物が契約の中心であるため、その完成物に瑕疵(不良)があれば請負人が責任を負います。これは、瑕疵担保責任と呼ばれるもので、契約内容に基づき成果物の質や完全性が保証されます。
③報酬の支払い時期
準委任契約では、業務の遂行状況に応じて報酬が支払われることが一般的です。業務が進行中であっても、事前に合意された頻度や基準に基づいて報酬が分割して支払われます。例えば、後払い一括の場合もあれば、毎月一度支払われる場合もあります。
一方、請負契約の場合、報酬は成果物が完成し、それが依頼者に引き渡された時点で支払われます。成果物の完成が報酬支払いの前提条件となるため、支払い時期が業務の進行状況に影響されることはありません。
④契約解除のタイミング
準委任契約では、発注者および受注者が自由に契約を解除することが可能です。これは、契約の性質上、柔軟性を求められる場面が多いためです。
しかし、請負契約においては契約解除には一定の制限があります。とくに、契約解除によって依頼者や請負人に不利益が生じる場合には、受注者が損害賠償請求を受ける可能性があります。
⑤再委託の可否
請負契約の場合、受注者は下請け業者に再委託可能ですが、準委任契約の場合、基本的に再委託は認められていません。
請負契約は、仕事の完成や成果物の納品が目的であるため、誰が業務を遂行するかはそこまで重要視されないのです。
準委任契約は発注者と受注者の関係や信頼によって結ばれる契約なので、双方が合意に至らない限り、再委託は認められません。
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準委任契約・請負契約のメリット、デメリット比較
どちらの契約を締結するのが自社に最適なのかを判断するために、準委任契約と請負契約のメリットとデメリットを比較してみましょう。
メリット | デメリット | |
準委託契約 | ・業務遂行における柔軟性が高い
・契約解除が比較的容易 |
・業務の成果が不明確になるリスクがある |
請負契約 | ・成果物が明確
・責任範囲が明確 |
・柔軟性は低い
・請負人は成果物に責任を持つ必要がある |
準委任契約のメリット、デメリット
準委任契約の最大のメリットは、業務遂行における柔軟性の高さです。
この契約形態では、依頼された業務の成果物を必ずしも求められないため、成果を形にするよりも、業務そのものを円滑に進めることが重視されます。業務内容が変動しやすいプロジェクトや短期間で解決が求められる課題において、この柔軟性が強みとなります。
さらに、契約解除が比較的容易である点も特徴です。
一方、デメリットは、成果物が契約の対象にならないため、業務の成果が不明確になるリスクがあるという点です。
これにより、依頼者が期待する結果と受任者が提供する業務内容との間にギャップが生じる可能性があります。また、業務の範囲が広すぎたり曖昧であったりすると、依頼者側が求める業務遂行の水準を正確に伝えられず、双方にとって納得のいかない結果となる場合もあります。
これを避けるためには、事前に詳細な業務範囲や進捗確認の方法を取り決めることが重要です。
請負契約のメリット、デメリット
請負契約のメリットは、成果物が明確である点です。この契約形態では、完成物を提供することが目的となるため、依頼者と請負人の間で達成すべき基準が契約書に明確に定められます。
たとえば、建築工事やソフトウェア開発のように具体的な成果物が必要なプロジェクトでは、請負契約の性質が非常に適しています。また、成果物が完成基準として設定されているため、依頼者は必要な品質や機能を確保しやすくなります。
同時に、責任範囲が明確である点もメリットの一つです。成果物の完成に不備がある場合、その責任は請負人に帰属するため、依頼者は安心して契約内容を依頼できます。
デメリットは、業務の柔軟性が低い点が挙げられます。契約時に定めた内容に基づいて業務を進める必要があるため、プロジェクトの途中で変更が生じた場合には、契約内容を再交渉する必要があることが多いです。
さらに、成果物に不備があった場合には、請負人がその責任を負う必要があります。依頼者の期待と成果物の内容に差異がある場合、請負人は修正や再作業を求められることがあります。
準委任契約を結ぶときの注意点
準委任契約を結ぶ時の注意点を紹介します。事前に理解しておかないと、後々トラブルになる可能性もあるので注意しましょう。
業務の範囲を明確にする
準委任契約を結ぶ際には、業務の範囲を具体的に記載することが重要です。対象となる作業や範囲を曖昧にしたまま契約を進めると、受任者が何をどこまで行うべきかわからず、依頼者の期待と実際の業務内容が一致しない可能性があります。
たとえば、「運用管理業務」とだけ記載すると、その範囲が広すぎて適切な業務進行が行われない恐れがあります。
具体的な業務内容を文書化し、どのような作業を行うのか詳細に指示することで、双方の認識を一致させ、後々のトラブルを防ぐことができます。
報酬の支払い条件を決める
準委任契約では、業務の遂行に応じて報酬が支払われるケースが多いため、報酬の支払い条件を明確にすることが欠かせません。
時間単位や成果に応じた支払い基準を設定し、あらかじめ契約書に詳細を記載することで、支払いに関するトラブルを防ぐことができます。
また、支払いのタイミングやスケジュールも明記し、双方が納得できる形にしておくことが重要です。
とくに、長期にわたる契約では、定期的な支払いを取り決めておくと、受任者が安定した業務を行いやすくなります。
契約の解除条件を明確にする
契約解除の条件についても、事前に明確にしておく必要があります。準委任契約では、比較的自由に解除できる特性がありますが、どのような状況で解除が可能なのか、具体的な手続きや条件を契約書に記載しておくことが重要です。
とくに、解除時の費用精算や業務引き継ぎについても取り決めておくことで、契約終了後のトラブルを未然に防ぐことができます。
受任者の責任を明確にする
準委任契約では、受任者に善管注意義務が求められますが、その範囲や内容を契約書に明確に記載しておくことが重要です。
業務遂行において何が求められるかを具体的に示すことで、受任者が適切に業務を進めやすくなります。
また、不備が生じた場合の責任の所在についても明確化しておくことで、トラブル発生時にスムーズな対応が可能になります。
とくに、受任者がどの程度の責任を負うのかをあらかじめ取り決めておくことで、双方が安心して契約を結べるでしょう。
請負契約を結ぶときの注意点
次に、請負契約を結ぶ時の注意点を紹介します。とくに、表向きは請負契約でも、実質的に雇用契約となってしまうことがあるため、注意が必要です。
偽装請負をしない
請負契約を結ぶ際には、偽装請負を行わないよう注意する必要があります。
偽装請負とは、請負契約を装いつつ実際には発注者が労働者に直接指揮命令を行う形態を指します。これは、実質的には雇用契約と見なされ、労働基準法違反となるリスクを伴います。
そのため、請負契約を締結する際には、業務の指揮命令権が請負事業者に完全に属する形を維持し、適切な契約形態を遵守することが求められます。
労働者の選定をしない
請負契約では、発注者が労働者の選定や管理に介入してはなりません。
労働者の選定や業務遂行の詳細な管理は請負事業者の責任範囲であり、発注者がこれに干渉すると、請負契約が偽装と見なされる可能性があります。
発注者は請負事業者が独立した責任を持って業務を遂行する仕組みを尊重し、適切な関係を維持することが重要です。
成果物の具体的な定義をする
請負契約では、完成すべき成果物の仕様や条件を明確に定める必要があります。
成果物が曖昧だと、完成基準や品質について認識の相違が生じる可能性があります。そのため、具体的な仕様や要件を契約書に詳細に記載し、双方が合意したうえで進めることが重要です。
成果物の定義が明確であるほど、納品時のトラブルを防ぐことができます。
納期と遅延時の対応を決める
納期の設定は請負契約において非常に重要な要素です。具体的な納期を契約書に明記するとともに、遅延が発生した場合の対応策も事前に取り決めておく必要があります。たとえば、損害賠償や納期延長の条件などを設定しておくことで、予期せぬ遅延によるトラブルを防ぐことができます。
また、進捗状況の報告を義務化する条項を盛り込むことで、進行中のリスクを早期に把握することが可能になります。
費用と追加費用の取り決めをする
請負契約では、契約時に費用を明確にすることが欠かせません。基本的な費用だけでなく、追加作業が発生した場合の対応についても取り決めておく必要があります。
費用の増減条件や請求方法を契約書に詳細に記載し、トラブルを未然に防ぐことが重要です。
追加費用の取り決めが不明確だと、双方の認識がずれてしまい、後々の紛争の原因となります。
引き渡し後の責任の所在を明確にする
成果物を引き渡した後の責任範囲についても契約書で明確に定める必要があります。具体的には、成果物に瑕疵があった場合の対応や保証期間について取り決め、双方が納得する形で契約を締結することが重要です。
責任の所在が曖昧だと、引き渡し後に問題が発生した際に双方の間で争いが生じるリスクがあります。
契約の解除条件を明確にする
契約解除の条件や手続きを文書化しておくことも、請負契約を締結する上で重要なポイントです。解除が可能な状況やその際の具体的な手順、さらに解除時の費用や業務精算方法についても明文化しておく必要があります。
これにより、契約解除時の混乱を最小限に抑えることができます。
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準委任契約と請負契約の違いは、前者が業務遂行を目的とし、成果物に責任を負わないのに対し、後者は成果物の完成を目的とし、その品質に責任を負う点です。
契約形態を取り違えると、責任範囲の不一致や法的トラブルのリスクがあります。取り違えを防ぐには、契約前に業務の目的や成果物の有無、責任範囲を明確化し、契約書に具体的に記載することが重要です。契約内容に不安がある場合は、必要に応じて専門家のアドバイスを受けるとよいでしょう。
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この記事を書いたライター

弁護士ドットコム クラウドサインブログ編集部
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