契約実務

準委任契約とは?書き方と記載事項や類似した契約との違いを解説|ひな形Wordファイル付き

外部の法人や個人に対して特定の業務を依頼する際に、準委任契約を締結するケースがあります。準委任契約を締結する際には、必要事項を盛り込んだ契約書を用意しなくてはなりません。委任契約や業務委託契約のように類似した名前の契約も多いため、準委任契約の特徴や、準委任契約書の記載事項などをしっかりと理解しておく必要があります。

本記事では、準委任契約を締結する際の契約書の記載事項や注意点を、契約書のひな形(テンプレート)とともに紹介します。また、準委任契約と混同されやすい業務委託契約書の書き方については「【2024年5月最新】業務委託契約書の書き方と書式|業務委託契約のポイントとリスクを解説【Wordファイル無料DL】」をご一読ください。

準委任契約とは

準委任契約とは業務委託契約の一種であり、外部の法人や個人に対して特定の業務を依頼する際に結ぶ契約です。準委任契約は、同じく業務委託契約の一種である「請負契約」とは異なり、業務の遂行自体が目的となるため成果物の完成などの結果については契約上責任は求められません。

また、準委任契約と類似した契約である「委任契約」は、弁護士や司法書士などに法律行為を委任する際に用いられる名称です。法律行為以外の各種事務業務などについて依頼する際は「準委任契約」の名称が用いられます。

(委任)
第六百四十三条 委任は、当事者の一方が法律行為をすることを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって、その効力を生ずる。
(準委任)
第六百五十六条 この節の規定は、法律行為でない事務の委託について準用する。
【引用:民法 - e-Gov 法令検索

準委任契約を締結する代表的な例としては、医師への診療依頼やコンサルタント業務など、必ずしも具体的な成果が出るとは限らない類の業務が挙げられます。

準委任契約の種類|具体例とともに紹介

2020年4月の民法改正以後、準委任契約は「履行割合型」と「成果完成型」の2種類の契約に分かれ、以下のように区別されます。

履行割合型 成果完成型
報酬の対象 工数や作業時間 成果物の納品
報酬の支払い時期 業務の遂行が完了した時 成果物が納品された時
業務の完了義務 なし なし

それぞれの種類について、委託する業務内容の具体例も挙げながら解説します。

履行割合型

履行割合型とは、委託した業務の遂行にかかった工数や作業時間を基準として報酬が支払われる形態の準委託契約です。成果完成型と大きく異なる点としては、業務の遂行が完了したタイミングで報酬が支払われるという点が挙げられます。履行割合型においては、具体的な成果物の納品や成果目標の達成は契約上求められず、契約上あらかじめ期間が完了したタイミング(月初や月末など)で報酬が支払われます。

また、業務が完了しないまま履行の途中で履行割合型の準委任契約が終了した場合は、すでに費やされた労働時間の割合に応じて報酬を受け取れます。

第六百四十八条
3 受任者は、次に掲げる場合には、既にした履行の割合に応じて報酬を請求することができる。
一 委任者の責めに帰することができない事由によって委任事務の履行をすることができなくなったとき。
二 委任が履行の中途で終了したとき。
【引用:民法第648条第3項 - e-Gov 法令検索

履行割合型の準委任契約として、以下のような例が挙げられます。

・企業がITサポート会社に対して、月々のシステムメンテナンスやトラブルシューティングを依頼。契約期間中に提供されたサポート時間に基づいて報酬が支払われる
・マーケティング会社が企業に対して月々のコンサルティングサービスを提供する契約で、提供されたコンサルティング時間や活動に応じて報酬が支払われる

成果完成型

成果完成型とは、「具体的な成果物の納品」によって報酬が支払われる形態の準委任契約です。履行割合型のように契約上決められた期日ではなく、委託された業務の成果物の納品が済んだ時点で報酬が支払われます。

また、業務が完了しないまま当事者いずれかの都合により準委任契約が解除となった場合は、すでに完成した成果物によって発注者が受ける利益の割合に応じて報酬が支払われます。

(成果等に対する報酬)
第六百四十八条の二 委任事務の履行により得られる成果に対して報酬を支払うことを約した場合において、その成果が引渡しを要するときは、報酬は、その成果の引渡しと同時に、支払わなければならない。
2 第六百三十四条の規定は、委任事務の履行により得られる成果に対して報酬を支払うことを約した場合について準用する。
【引用: 民法第648条 - e-Gov 法令検索

(注文者が受ける利益の割合に応じた報酬)
第六百三十四条 次に掲げる場合において、請負人が既にした仕事の結果のうち可分な部分の給付によって注文者が利益を受けるときは、その部分を仕事の完成とみなす。この場合において、請負人は、注文者が受ける利益の割合に応じて報酬を請求することができる。
【引用: 民法第634条 - e-Gov 法令検索

成果完成型の準委任契約として、以下のような例が挙げられます。

・広告代理店が企業に対して特定のマーケティングキャンペーンを企画・実施し、成果(たとえば、特定の売上目標達成やキャンペーンの終了)をもって報酬が支払われる委託契約

準委任契約と類似した契約類型との違い

契約の形態や名称が類似しており、準委任契約と混同されやすい契約として、以下のような類型が挙げられます。

・委任契約
・請負契約
・派遣契約
・業務委託契約

それぞれの契約類型と準委任契約との相違点を簡単に解説します。

準委任契約と委任契約の違い

準委任契約と委任契約は、いずれも業務委託契約に含まれ、外部の法人や個人に対して特定の業務を依頼する際に用いられる契約形態です。

委任契約は、弁護士や司法書士などの専門家に法律業務を委託する際に用いられる名称です。それに対し、準委任契約は、コンサルタントやコンテンツ制作など法律行為以外の業務を委託する際に用いられます。

準委任契約と請負契約の違い

準委任契約と請負契約はともに業務委託契約に含まれる契約形態です。準委任契約は業務の遂行自体が求められ、契約上は成果物納品の義務は負いません。その一方、請負契約は成果物納品の義務を負うという違いがあります。

また、成果完成型の準委任契約は請負契約と混同されやすいですが、以下のような違いがあります。

準委任契約(成果完成型) 請負契約
期限内に成果物を納品できなかった場合 ・善管注意義務が果たされていれば、受注者が損害賠償請求を受けるリスクはない
・成果物の完成割合を基準として報酬を請求できる
契約不履行となり、発注者は受注者に対して損害賠償請求が可能
契約締結後に成果物の仕様変更があった場合 契約の続行が可能 契約内容を変更して再度契約し直さなくてはいけない
契約解除 ・発注者と受注者双方がいつでも解除可能
・契約解除によって相手方に不利益を与える場合は損害賠償責任を負う
・発注者はいつでも契約解除可能(請負人が得られる利益を埋める分の損害賠償責任は果たす必要あり)

・受注者は、発注者に契約違反がある場合や発注者と合意がとれた場合に限り契約解除可能

このように、一般的に準委任契約の方が柔軟かつ信頼関係に基づいた契約であるといえ、発注者と受注者双方にとってリスクを抑えられます。

準委任契約と派遣契約の違い

準委任契約は、仕事を依頼したい者(発注者)が、外部の法人または個人(受注者)に対して特定の業務の遂行を依頼するという契約であり、発注者と受注者のあいだで指揮命令関係は存在しません。

一方で、派遣契約とは、仕事を依頼したい者(発注者)が派遣会社(受注者)に依頼し、労働者を派遣してもらうという契約です。派遣契約における受注者は派遣会社であり、派遣契約によって派遣された労働者は、派遣先である企業の指揮命令下に入らなくてはいけません。

準委任契約と業務委託契約の違い

業務委託契約とは、委任契約や準委任契約、請負契約などを総称した契約形態であり、外部の法人や個人に対して特定の業務を委託することを総じて業務委託と呼びます。つまり、準委任契約は、業務委託のなかの一種であるといえます。

準委任契約書の記載事項

準委任契約書は、契約に関して委託先との間で齟齬が生じないようにひな形をもとに必要事項を漏らさず記載することが求められます。具体的には、以下の記載事項を盛り込みましょう。

・業務の内容
・契約期間
・委託料と支払方法
・知的財産権の帰属先
・秘密保持義務
・契約解除
・損害賠償責任

それぞれ簡単に紹介します。

業務の内容

準委任契約書には、受注者が遂行する具体的な業務内容を詳細に記載します。業務の範囲や達成すべき目標、提供されるサービスや成果物などが含まれます。また、業務を遂行する上でのルールや使用ツールなどについても記載しておくことが推奨されます。明確な記載により、双方の認識違いやトラブルを防げるでしょう。

契約期間

契約期間は、業務を遂行するための開始日と終了日を明記します。期間延長や短縮の条件も記載することが望ましいです。また、契約更新については、双方の申し出がない限り自動で同期間の契約を更新するという記載を盛り込むケースが多いです。

委託料と支払方法

委託料とその支払方法について具体的に記載します。委託料の金額、支払期日、支払方法(振込、現金など。振込の場合は銀行口座も)を明示し、分割払いの場合はその詳細も含めます。

知的財産権の帰属先

準委任契約では、成果物の納品が伴うケースも多いです。そのため、業務遂行中の成果物について知的財産権の帰属先を明記しておくべきです。契約終了後も含め、著作権、特許権などが誰に帰属するかを明確にすると、後々のトラブルを避けられるでしょう。

秘密保持義務

契約期間中および終了後における秘密保持義務を規定します。業務を通じて知り得た機密情報や個人情報の取り扱いについて、第三者への漏洩を防ぐための具体的な措置や違反時のペナルティを記載し、契約当事者の責任を明確にします。

契約解除

契約解除の条件と手続きについて明記します。一方的な解除が認められる場合や、解除の際の通知期間、解除に伴う手続きや費用負担などを具体的に定め、トラブルを未然に防ぎます。

損害賠償責任

契約違反や過失による損害賠償責任について規定します。損害賠償が生じた場合の責任の範囲、損害賠償額の上限、免責事項などを明確に記載することで、万一のトラブル発生時に迅速な解決を図れます。

準委任契約書作成時の注意点

準委任契約書を作成する際は、以下の3点について注意しましょう。

・報酬支払いのタイミングなど契約の内容を明記する
・書面で締結する場合は印紙貼付が必要になる
・偽装請負とならないように注意する

報酬支払いのタイミングなど契約の内容を明記する

準委任契約書を作成する際は、契約の内容について明記する必要がありますが、特に報酬支払いのタイミングについては双方合意のうえ明確に定めておきましょう。準委任契約には成果完成型および履行割合型の2種類が含まれ、どちらの契約の型をとるかによって報酬支払いのタイミングや基準が異なります。

また、法律上は契約の型よりも契約の具体的な条項が優先されるため、成果物が完成しなかった場合の報酬請求の可否などを含めた報酬支払いの基準について明確に取り決めをしておきましょう。

書面で締結する場合は印紙貼付が必要になる

準委任契約書を書面にて締結する場合は、契約金額に対応した額面の収入印紙の貼付が必要となります。適切な収入印紙の貼付を怠ると、後々追加で税金の支払いを命じられたり、罰金が課せられたりするリスクがあります。

一方で、電子契約サービスを利用して準委任契約を締結する場合は収入印紙は不要となるため、特別な事情がない場合には、電子契約サービスでの締結がおすすめです。

電子契約サービスで収入印紙が不要な理由を知りたい方は「電子契約で収入印紙が不要になるのはなぜか?」もご一読ください。

偽装請負とならないように注意する

「準委任契約と派遣契約の違い」で解説した通り、準委任契約において発注者と受注者のあいだには派遣契約における指揮命令関係は存在しません。準委任契約の体裁をとっていながら、受注者が発注者の指揮命令下で働いているとみなされる場合は、「偽装請負」として労働者派遣法違反などの罪に問われる可能性があります。

準委任契約を締結する場合は、受注者に対して具体的な業務遂行のスケジュールなどについて指示することは偽装請負とみなされるリスクがあるため避けるべきでしょう(参考:厚生労働省東京労働局)。

まとめ

準委任契約書は、法律業務以外の業務を外部に委託する際に締結する契約書であり、業務内容や知的財産権の帰属先などについて詳細かつ明確に記載することが求められます。委託契約におけるトラブルを避けるためにも、ひな形(テンプレート)を活用して必要事項を漏れなく盛り込んだ契約書を作成しましょう。

なお、クラウドサインでは「準委任業務委託契約書のひな形」を無料配布しております。入手したい方は下記のダウンロードフォームから必要情報を入力の上、ダウンロードしてご活用ください。

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この記事を書いたライター

弁護士ドットコム クラウドサインブログ編集部

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