契約実務

発注書とは?目的と役割、作成する際の注意点などを解説

企業間や個人同士での取引で商品や製品、サービスなどを発注する場合、発注書が必要となるシーンがあります。通常の売買契約において発注書の発行義務はありませんが、一部の取引では法律上発行が義務づけられている文書です。

本記事では、ビジネスシーンにおける発注書の目的や役割、作成する際の注意点などを、ひな形(テンプレート)を紹介しながら解説します。なお、発注書・発注請書のひな形(テンプレート)を探している皆様のために、無料でダウンロードできるWordファイルも提供いたしますので、ぜひダウンロードしてご活用ください。

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発注書とは

発注書とは、商品やサービスなどを注文する際に、受注者に対して発行する文書です。

商品またはサービスの数量や納期、金額などを記載し、「たしかに注文を行った」という意思表示のために発行します。

たとえば、工事現場で使用する材料や工具などを仕入れる場合や、商店から販売用の商品を購入する場合、Webページのデザインを個人や企業に依頼する場合など、さまざまなシーンで利用されます。

一般的な商取引において、発注書の発行義務はなく、企業間の取引でも発注書を発行することなく取引が進められるケースも少なくありません。

ただし、後述する通り「下請代金支払遅延等防止法(通称:下請法)」に該当する取引の場合には「書面の交付義務」があるため、発注書などの発行が必要です。下請法に違反した場合、何らかの罰則・処分を受けることになるため、取引先への発注を担当している人は十分に理解しておきましょう。

発注書の目的と役割

発注書を発行する目的と役割は、主に以下の3つです。

  • 依頼内容をお互いに明確にしトラブルを防止するため
  • 業務フローを可視化し取引を円滑に進めるため
  • 下請代金支払遅延防止法を遵守するため

それぞれ解説しますので、既に発注書を作成している方も改めて確認しておきましょう。

依頼内容をお互いに明確にしトラブルを防止するため

企業間や個人同士での取引において、発注書の発行に法的義務はありません。

しかし、口約束での依頼では、注文内容や納期・金額などに相違が生まれ、後々トラブルになるリスクもあります。

相手方に商品やサービスを依頼する際に、発注の内容をお互いが確認できる形で残して、トラブルを回避する目的で発注書を発行するケースが多いです。

特に、個人間での取引では、企業のように業務フローが明確になっていないために「言った言わない」の認識違いが生まれる可能性もあります。

そのため、フリーランスで仕事を受注している方などは、相手から発注書を受け取ることで不安を解消でき、業務に集中できるでしょう。

業務フローを可視化し取引を円滑に進めるため

発注業務は、一般的に以下のような文書のやりとりによって進みます。

【発注業務の一般的な流れ】

取引の流れ 発行する文書
①発注者が見積もりを依頼する 見積書
②発注者が商品・サービスを発注する意思を伝える 発注書
③受注者が商品・サービスを納品する 納品書
④発注者が商品・サービスを受け取った事実を伝える 受領書
⑤受注者が代金の支払いを依頼する 請求書
⑥受注者が代金の受領を伝える 領収書

上記の流れのように、発注者が受注者から見積書を受け取ったタイミングで発注書を発行します。

発注者と受注者が、依頼内容が明確に記載された文書を通じてやりとりをすることで「現在発注業務がどの段階にあるのか」「どのフローでどのくらい時間がかかったか」を可視化できます。

発注書や受領書などを発行せずに取引が進んでいくケースもありますが、これらの文書をお互いにやりとりすることで取引を円滑に進められるでしょう。

下請代金支払遅延等防止法を遵守するため

商取引のなかには、「下請代金支払遅延等防止法(通称:下請法)」が適用されるケースがあります。下請法とは、業務委託契約の際に、親事業者に比べて立場が弱くなりやすい下請事業者が公正な取引をできるように定められている法律です。

下請法が適用される取引においては、発注書の発行が義務づけられているので注意しましょう。

具体的には、以下の4つの委託契約で、親事業者が下請事業者よりも資本金が大きい場合は発注書を発行する必要があります。

【下請法が適用される取引】

名称 具体例
製造委託 自動車メーカーが自動車部品を部品メーカーに発注する
修理委託 自動車ディーラーが車の修理を外部に委託する
情報成果物作成委託 出版社が雑誌に載せる原稿の執筆を外部に依頼する
役務提供委託 ビルメンテナンス業社が請け負った業務の一部を外部に委託する

これらの取引では、取引の性質上、親事業者が下請事業者よりも強い立場になりやすいです。そのため、下請事業者にとって公正な取引ができるように下請法が適用され、依頼内容を透明化するために発注書を発行しなければなりません。

※参考:下請法の概要 - 公正取引委員会

発注書のひな形(テンプレート)と記入例

発注書には、以下の事項を記載しましょう。

  • 発注者の会社名/氏名、住所、電話番号
  • 受注者の会社名/氏名、住所、電話番号
  • 発注内容の品名、数量
  • 発注の単価および合計金額
  • 納品期限
  • 特記事項

発注書は、発注者と受注者が互いに取引の内容を確認できるように発行する文書です。注文内容の品名や金額はもちろんのこと、納品期限などについても記載しておけば、トラブル防止に役立つでしょう。

また、このひな形(テンプレート)は「発注書 兼 発注請書」と件名がつけられていますが、このように双方が発注書に署名をすることで契約書として扱われるケースもあります。

なお、発注書の書き方を詳しく知りたい方は「発注書・発注請書(注文書・注文請書)の書き方と書式|Word版ひな形ダウンロード付」もご一読ください。

発注書と他の文書との相違点

発注書と似た名称の文書に、「注文書」「発注請書」「契約書」があります。それぞれの文書と発注書との相違点について簡単に紹介していきますので、業務上発注書の作成に関わっている方は改めて確認しておきましょう。

注文書との違い

注文書は、発注書と同じ役割をもつ文書です。発注書と注文書は法律上同じ文書として扱われ、企業における慣習によって「発注書」と「注文書」のいずれかを用います。

一般的には、商品など有形のものを受け取る際には「注文書」を用いて、サービスなど無形のものを受け取る際には「発注書」を用いるケースが多いです。

発注書と注文書のどちらの名称を用いても法律上問題はありませんが、企業内や取引先同士で表記揺れがあると、混乱を招く恐れがあります。チームやプロジェクトごとに発注書と注文書のどちらの名称を用いるか統一するようにしましょう。

発注請書との違い

発注請書とは、商品やサービスの注文を受けた側(受注者)が、発注者に対して「たしかに注文を受け付けた」と意思表示をするために発行する文書です。

発注者と受注者の相互で取引内容を確認するために発行する文書であるため、発注請書と発注書の内容は全く同じものになります。発注者が複写式の書類を用いて発注書と発注請書を作成し、発注請書に受注者が署名した上で返送してもらうという形式をとることもあるでしょう。

なお、発注書と発注請書を兼ねた文書として「発注書兼発注請書」を発行し、当事者双方が署名押印をすることで、双方の意思が確認できる契約書として利用されるシーンもあります。

契約書との違い

発注書は、発注者が受注者に対して「商品・サービスの注文をする」という意思表示を示す文書です。

一方の契約書は発注者と受注者双方の「商品・サービスの注文をする」「商品・サービスの注文を受ける」という意思を表す文書です。つまり、契約書は双方の合意のもと作成し、双方が署名押印することによって契約の成立を証明する文書となります。

対して発注書は、発注側の一方的な意思表示のために発行する書類のため、発注書の発行のみで相手側の了承をとらずに契約が成立することは基本的にありません。そのため、双方の意思を確認する目的で、受注者に発注書を確認してもらった上で契約書を発行するケースがあります。

発注書にまつわる注意点

発注書を発行する際は、以下の4点に注意してください。

  • 税法により保管期間が決められている
  • 下請法の対象になる取引では発注書発行が義務付けられている
  • 収入印紙が必要となるケースがある
  • 発注書は信書にあたるので送付方法に気を付ける

万が一作成した発注書に不備が生じた場合、取引先や顧客からの信頼を損ねる可能性もあるため、それぞれ確認しておきましょう。

税法により保管期間が決められている

発注書は、帳票書類として税法により以下のように保管期間が定められています。

【発注書の保管期間】

発行者 保管期間
法人 ・事業年度の確定申告書類提出期限翌日から7年間

・欠損金が発生した事業年度においては10年間

個人 ・事業年度の確定申告書類提出期限翌日から5年間

保管期間が過ぎる前に発注書を破棄してしまうと、以下のようなリスクが生じます。

  • 100万円以下の過料が課される可能性がある
  • 仕入税額控除が適用されない
  • 個人事業主の場合は青色申告の承認が取り消される

発注書は電子データでの保管も認められているので、保管期間を守らず破棄してしまうリスクを回避するためにも電子化がおすすめです。

下請法の対象になる取引では発注書発行が義務付けられている

一部の委託契約においては、下請事業者にとって不利な取引とならないように、親事業者による発注書の発行が義務づけられています。発注書発行の義務を怠ると、下請法違反となり公正取引員会より勧告を受けたり、罰則を受けたりする恐れがあるので注意してください。

収入印紙が必要となるケースがある

以下の3つのケースに当てはまる場合は、発注書が「契約書」とみなされ、収入印紙の貼付が必要となる可能性があります。

  • 個別契約において、発注書の発行をもって契約が成立する旨が定められている場合
  • 受注者から見積書を受領しており、発注書の発行をもって契約の申込みと承諾が合致する場合
  • 発注者および受注者が、いずれも発注書に署名または押印等を行う場合

これらのうち、発注内容を鑑みて発注書が印紙税の課税文書に該当する場合のみ、収入印紙が必要となります。

なお、PDFや電子メールなどの電磁的記録で発注書を交付する場合は収入印紙が必要ないため、特別な事情がない限り電子ファイルでやりとりするのがおすすめです。

※参考:課税文書に該当するかの判断 - 国税庁

発注書は信書にあたるので送付方法に気を付ける

信書とは「特定の受取人に対し、差出人の意思を表示し、又は事実を通知する文書」です。発注書をはじめとして、契約書や見積書などの請求書の類や、免許証や認定状などの許可書、印鑑証明書や住民票の写しなどの証明書が信書に含まれます。

信書は、日本郵便の「ゆうパック」「ゆうメール」「ゆうパケット」「クリックポスト」で送付することはできません。

また、ヤマト運輸ではどの郵送方法でも信書を送付することはできません。

決められた郵送方法以外で発注書などの信書を送付することは違法となるので、紙媒体で発注書を送付する際は郵送方法に注意してください。その上で、リスク回避および到着スピードの観点からも、発注書は電子化してメールで送付するのがおすすめです。

※参考:信書の送付について - 日本郵便

発注書(注文書)を電子化して管理することで業務効率化できる

発注書を電子化して管理することで、次のようなメリットがあります。

  • 見積もり〜発注〜納品〜支払といった発注業務フローを明確に可視化できる
  • 電子化して管理すれば、過去の取引の管理や検索も簡単にできる
  • 発注書と違い、電子化すればメールで迅速かつ確実に届けられる
  • 保管期間の管理も容易になり、紛失や情報漏洩などのリスクも回避できる

発注書などの帳票類は、発注業務が発生する度に手書きやPC入力をしていると莫大な人的コストがかかるうえ、ミスや漏れ等も発生しやすくなります。

書類を電子化することで人的コストのカットや作業効率化に繋がるため、特別な事情がない限りは発注書は電子化して発行・管理するとよいでしょう。

なお、紙の書類を電子化する場合は電子契約サービスを用意するやり方が一般的です。電子契約サービスとは、契約を締結するために必要な過程をクラウド上で完結できるように作られたサービスです。

実際に「企業IT利活用動向調査2024」(一般財団法人日本情報経済社会推進協会・株式会社アイ・ティ・アール)によれば、何らかの電子契約サービスを利用している企業の割合は2024年1月時点の調査結果で77.9%と8割近い結果となっています。

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まとめ

一般的な商取引において発注書の法的な発行義務はありませんが、下請法の対象になる取引では発注書発行が義務付けられています。

また、発注書を発行することで取引先とのトラブル防止にもつながるため、発行が義務付けられていない場合でも作成しておくと良いでしょう。

適切な方法・タイミングで発注書を発行すれば受注者との信頼関係も築きやすくなるため、ぜひ有効的に活用してください。

なお、クラウドサインでは「発注書・発注請書のひな形」を無料配布しております。入手したい方は下記のダウンロードフォームに必要情報を入力の上、ダウンロードしてご活用ください。

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監修者紹介

加藤高明(かとう たかあき)

2008年関西学院大学大学院情報科学専攻修了。法科大学院を経て、2011年司法試験合格、2012年弁護士登録、2022年Adam法律事務所設立。「街のかかりつけ弁護士」であることをモットーに幅広い案件に対応。岡山弁護士会所属、登録番号47482。

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この記事を書いたライター

弁護士ドットコム クラウドサインブログ編集部

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