契約実務

金銭消費貸借契約書とは?契約の要件や記載すべき事項を解説|テンプレート付き

金銭消費貸借契約とは、将来返還することを約束したうえで金銭を受け取る契約のことを指します。

借入を行う人は、受け取ったお金を自分の目的のために消費する代わり、同等のお金を返還する約束を交わします。金銭消費貸借においては、貸金業者などのお金を貸す側は、貸した金額と同じ額(元本)だけではなく、契約書に記載された通りの利息を上乗せして支払ってもらうのが一般的です。

金銭の貸し借りにおいては、「いつまでに返済するか」「どの程度利息を支払うか」などでトラブルが起きやすいです。このようなトラブルを避けるためにも、適切な形式の契約書を作成する必要があります。

当記事では、金銭消費貸借契約書の記載事項や、金銭消費貸借契約締結の際の注意点などについて、ひな形(テンプレート)を紹介しながら詳しく解説します。

なお、クラウドサインでは金銭消費貸借契約書のひな形をご用意しました。無料でご入手できますので、金銭消費貸借契約の締結に今すぐ使えるWord形式のひな形をお探しの方は下記リンクからダウンロードしてご活用ください。

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金銭消費貸借契約書とは

金銭消費貸借契約書とは、金銭消費貸借をする際に貸主と借主の双方が署名・捺印し保管するものです。

金銭消費貸借においては、借主は貸主に対して、借りた分と同じ額の金銭を返還する義務を負います。

また、民法上は無利息が原則とされていますが、実務上は契約に基づき利息を付けるケースが大半であり、そのためにも契約書で利息に関する特約を明示する必要があります。

(利息)
第五百八十九条 貸主は、特約がなければ、借主に対して利息を請求することができない。
2 前項の特約があるときは、貸主は、借主が金銭その他の物を受け取った日以後の利息を請求することができる。

出典:民法|e-Gov法令検索

当記事では、金銭消費貸借契約において重要な役割を持つ契約書について解説しますが、まずは金銭消費貸借契約そのものの要件などを確認しておきましょう。

金銭消費貸借契約の要件

金銭消費貸借契約とは、民法第587条で定められた「消費貸借」を、金銭を対象として行う契約のことです。

(消費貸借)
第五百八十七条 消費貸借は、当事者の一方が種類、品質及び数量の同じ物をもって返還をすることを約して相手方から金銭その他の物を受け取ることによって、その効力を生ずる。

出典:民法|e-Gov法令検索

金銭の貸し借りの場合は、借りたお金は借主の使用目的のために消費してしまうのが通常であり、借りたものをそのまま返すということはできないため、借りたものと同量の金銭を返還するという約束を結びます。

その点、不動産物件の賃貸などの賃貸借契約や、無償で何らかのモノを借りる「使用貸借」とは性質が異なります。

お金のやり取りが金銭消費貸借契約とみなされる要件は、以下の2点です。

①借主が貸主に対して金銭を返還することを約束すること
②借主が金銭を受け取ること

金銭消費貸借は、あとでお金を返すことが前提となるので、借主が貸主に対して「金銭を返還すると約束すること」が要件となります。民法上返還の約束に契約書などの書面は必須とされていないため、「①借主が返還を約束して」「②金銭を受け取った」という事実があれば、口頭の約束であっても金銭消費貸借契約とみなされます。

「金銭を受け取る」という実際の物の受け渡しによって初めて成立する契約を要物契約と呼び、金銭消費貸借契約は要物契約の一種といえます。

金銭消費貸借契約は書面のみでも成立する

上述の通り、民法上の要件では金銭消費貸借契約は要物契約の一種であり、借主が金銭を受け取るまでは契約が成立しないと決められていました。

しかし、2020年の民法改正に伴い、金銭消費貸借契約書を作成して書面で契約した場合に限り、②の要件が不要となり、実際に金銭を受け取っていない状況でも消費貸借契約が成立するとみなされるようになりました。

つまり、金銭消費貸借契約は金銭その他の物を引き渡すことを約して書面のみでも成立するようになったということです(このような契約を諾成契約といいます。)。

これにより、銀行などからお金を借りる際に、書面で契約してから実際に借主の口座に振り込まれるまでの期間も契約の成立を認めることができるようになり、借主が不安定な立場に晒されるリスクが減少したといえます。逆にいえば、契約書にサインをした時点で、金銭の貸し借りという契約が成立することになるため、金銭消費貸借契約書は慎重に扱う必要があります。

金銭消費貸借契約書に記載する内容

金銭消費貸借契約を行う際は、トラブルを未然に防ぐために適切な内容を盛り込んだ契約書を作成しておくべきです。

具体的には、金銭消費貸借契約書には以下の内容を記載しましょう。

・金銭消費貸借の内容および金額
・返済期日と返済方法
・利息と遅延損害金の取り決め
・期限の利益喪失条項
・連帯保証に関する条項
・その他一般条項

金銭消費貸借の内容および金額

まずは、金銭消費貸借の内容について具体的に記載しましょう。

金銭消費貸借は、貸主と借主双方の合意によって成り立つため、「貸主がお金を貸し付けること」および「借主がそのお金を借り入れること」を明示しておきましょう。

また、貸し付けた金額はもちろんのこと、利息を計算するために貸付実行日も明記する必要があります。

以上を踏まえて、金銭消費貸借の内容については以下のように記載しておくといいでしょう。

・甲(貸主)は乙(借主)に対し、△年△月△日に金⚪️⚪️円を貸し付け、乙はこれを借り受ける

返済期日と返済方法

金銭を借り受けた借主が、「いつまでに」「どのように」返済するのかも、以下のように明記しておきましょう。

・△年△月△日まで、毎月△△日に金⚪️⚪️円ずつ(合計××回の分割払い)を支払う

・△年△月△日までに、元本全額を一括にて支払う

返済方法については、銀行振込または現金の手渡しとする場合がほとんどです。銀行振込の場合は、手数料の負担者も明示するべきですが、多くのケースで振り込む側である借主が手数料を負担するため、以下のように記載します。

・乙は甲指定の銀行口座に対し、振込送金により返済するものとする。ただし、振込手数料は乙の負担とする。

また、利息は借入の期間が長引くほど膨らんでいくため、借主としては早めに返済した方が負担が少なく済みます。

民法によっても、借主は指定の振込期限前に返済してもかまわないものとされています。

しかし、利息の回収を前提としている貸主からすると、期日前に振込をされると、予定通りの利息を受け取れないことになります。そのため、金銭消費貸借契約書には、「乙(借主)は、甲(貸主)の承諾を得た場合に限り、元本の全部または一部を期限前に弁済できる」などと期日前返済についても明記しておくと、トラブルを回避できるでしょう。

(返還の時期)

第五百九十一条 借主は、返還の時期の定めの有無にかかわらず、いつでも返還をすることができる。

 当事者が返還の時期を定めた場合において、貸主は、借主がその時期の前に返還をしたことによって損害を受けたときは、借主に対し、その賠償を請求することができる。

出典:民法|e-Gov法令検索

利息と遅延損害金の取り決め

利息

ほとんどの金銭消費貸借において、借主は元本だけの返済ではなく利息の支払いを求められます。当事者の双方が商人である場合をのぞいて、契約書の中に利息に関する規定を明記しないと、利息を請求することはできませんので注意しましょう。

(利息)
第五百八十九条 貸主は、特約がなければ、借主に対して利息を請求することができない。
2 前項の特約があるときは、貸主は、借主が金銭その他の物を受け取った日以後の利息を請求することができる。

出典:民法|e-Gov法令検索

また、利息は自由に設定することはできず、以下のように利息制限法で定められた上限利率を超えないようにしなくてはなりません。

【利息の上限利率】

元本 上限利率
10万円未満 年20%
10万円以上100万円未満 年18%
100万円以上 年15%

以上を踏まえて、利息に関しては、元本とともに返済する旨もあわせて以下のように記載しましょう。

・本金銭消費貸借契約においては、元本に対して年⚪️%の利率を適用する。

・利息の支払い時期に関しては、元本と一括とする。

遅延損害金

契約書には遅延損害金に関する規定も盛り込みましょう。遅延損害金とは、指定された期日までに借主が返済をしなかった場合に、貸主が受けた損害に対する賠償金として請求できるお金のことです。

利息は貸付日から返済日までの間に発生するのに対し、遅延損害金は返済期日の翌日から実際に返済した日までの期間で発生します。

遅延損害金の利率も利息制限法により上限が定められており、元々の利息の年利の1.46倍が上限とされています。

つまり、元本の金額によって、遅延損害金の上限利率は以下の通りになります。

【遅延損害金の上限利率】

元本 上限利率
10万円未満 年29.2%
10万円以上100万円未満 年26.28%
100万円以上 年21.9%
※貸主が貸金業登録をしている貸金業者の場合は年20%が上限

以上を踏まえて、遅延損害金に関しては以下のように記載しましょう。

・乙は、甲に対し、本契約に基づく債務の全部または一部の弁済を怠った場合、当該弁済日の翌日から完済に至る日までの期間につき、年⚪️⚪️%の割合による遅延損害金を支払うものとする。

期限の利益喪失条項

期限の利益とは、「定められた期間まで元本の支払いを猶予してもらえる」という、借主にとっての権利のことです。
借主が期限の利益を持っているうちは、消費貸借契約における分割払いを一度でも怠ったからといって、残債を一括で返済するように請求することはできません。

そのため、金銭消費貸借契約書には、どのような条件において借主は期限の利益を喪失するのか明記しておくべきです。

1.乙は、以下の各号のいずれかに該当する事由が発生した場合には、本契約に基づくすべての債務について、何らの催告なく当然に期限の利益を喪失し、甲に対し元本および利息の全額を返済しなければならない。
⑴ ⚪️日以上に渡り債務の弁済を怠った場合
⑶ 乙に破産等債務整理の事由が発生した場合
⑵ その他乙が本契約に基づく義務に違反した場合

連帯保証に関する条項

借主の資力がなくなった場合、貸主は利息のみならず元本のみも返してもらえないといういわゆる「貸し倒れ」が生じる可能性があります。

貸し倒れのリスクを回避するために、金銭消費貸借契約においては連帯保証人をつけるケースが多いです。

保証人と連帯保証人は立場が大きく異なり、保証人の場合は「催告および検索の抗弁権」が認められるため、貸主はまず借主に対して請求をしなくてはいけないといった制約が生じます。そのため、金銭消費貸借契約において保証人に関する条項を作成する場合は、「保証人は本契約に基づいて生じる債務について連帯して保証する」といったように、「連帯」の文言を明記することがおすすめです。

金銭消費貸借契約書締結の際の注意点

金銭消費貸借契約書を作成し契約を締結する場合は、以下の点に注意しましょう。

書面で締結する場合は収入印紙が必要

金銭消費貸借契約書を書面で締結する場合は、貸し付ける金額に応じた収入印紙の貼り付けが必要となります。電子契約で締結する場合は収入印紙は不要なので、特別な事情がない限り電子契約がおすすめです。

貸借条件などを明確化する

金銭消費貸借契約においては、利息や返済期日などをめぐってトラブルが生じやすいです。

そのため、利息や遅延損害金の計算方法、返済を怠った場合の期限の利益喪失条項など、賃借条件について明確化しておきましょう。
トラブル回避のために条件を漏れなく記載するには、テンプレートを活用すると安心です。

不利益な条項を見落とさないようにする

金銭消費貸借契約書は、基本的に貸主が作成します。借主の立場となる場合は、自分にとって不利益な条項がないかよく確認しましょう。

また、利息制限法を超えた法外な金利などに関する条項が盛り込まれていたことが後から発覚したとしても、利息の超過分のみが無効となるのみで、契約自体が無効化されることはないため注意してください。

金銭を消費貸借の対象とする場合はテンプレートを活用して漏れなく契約書作成を

金銭を消費貸借の対象とする場合は、利息や遅延損害金、返済期日、期限の利益喪失条項などについて明示しておかないとトラブルの原因となります。

書面での契約書作成では必要事項に関して漏れが生じる可能性も多く、貸付金の金額に応じて収入印紙の貼り付けも必要となります。また、よく争いになるのは、金銭の交付の部分です。争われると金銭の交付の事実を立証しないといけませんので、金銭交付の際受領証を作成しておくと安心です。

電子契約サービスを利用して金銭消費貸借契約を締結した場合には、収入印紙は不要になるため、紙の契約書から電子化に取り組むことでコスト削減も期待できます。

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この記事を書いたライター

弁護士ドットコム クラウドサインブログ編集部

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