電子契約の運用ノウハウ

人材派遣業界で電子契約を導入するメリットとは?電子化の成功事例を交えて解説

人材派遣業とは、派遣会社が雇用する人材を企業に派遣し、派遣先の企業で仕事に従事させる業態を指します。企業における急な人員不足や必要スキルを持つ人を確保するため、近年は派遣労働者の数が急速に増加し、それに伴う労働者との雇用契約に関わる業務も増えています。

実際に、厚生労働省が2024年6月に公表した『労働者派遣事業の令和6年6月1日現在の状況(速報)』によれば、2024年6月1日時点での派遣労働者数は約191万人であり、2022年の数値(約186万人)と比べると、無期雇用派遣と有期雇用派遣の両方で、約5万人増加しています。

人材派遣業における企業間での競争に勝つためには、優れた人材とサービスを提供することはもちろん、スピーディーな事業展開を実現するための業務の効率化にも注力する必要があります。そこで近年注目されているのが、雇用契約や労働条件通知書をはじめとする書類を電子化できる電子契約です。

本記事では、人材派遣業で電子契約を導入する3つのメリットや、人材業で電子契約を導入する際の注意点を解説します。人材派遣業における電子契約の導入成功事例もあわせて解説しますので、電子契約の導入を検討している方はぜひ参考にしてください。

電子契約とは

電子契約とは、インターネット等の情報通信技術を利用し、電子ファイルに対して電子データ(電子署名・タイムスタンプ等)を記録して締結する契約を可能にするものです。

電子契約を導入すれば、従来の書面で行う契約締結業務とは異なり、ハンコによる押印なしで、パソコンやスマートフォンを使いスピーディかつ安全に当事者の合意の証を残すことができます。

人材派遣業界では、2021年1月の労働者派遣法改正により、労働者派遣契約(派遣元である人材派遣会社と労働者を派遣してもらう派遣先の間で締結される契約)の電子化が認められるようになったことで、従来の紙の書類から電子契約へ移行する企業が増えています。

電子契約について詳しく知りたい方は下記記事も参考にしてみてください。

人材派遣業における主な書類の電子化が解禁された経緯

前述の通り、2021年1月の労働者派遣法改正により、労働者派遣契約(派遣元である人材派遣会社と労働者を派遣してもらう派遣先の間で締結される契約)の電子化が認められるようになりました。

法改正以前は、労働者派遣契約書をはじめとする多くの書類が紙媒体での取り交わしが原則とされていました。

具体的には、労働者派遣法施行規則21条3項に「労働者派遣契約の当事者は、当該労働者派遣契約の締結に際し法第26条第1項の規定により定めた事項を、書面に記載しておかなければならない。」と書かれていることから、厚生労働省の需給調整課では労働者派遣契約を紙の書面で締結するという見解が示されていました。

一方で、この見解では契約書の作成自体を紙ですべきなのか電子データでの作成でも許されるのかは明確にされていなかったため、自治体によっては「印刷できる状態であれば契約書が電子化されていても問題ない」と解釈している場合もありました。

これらの解釈の混乱を解消するため、2021年に以下の法令が改正され、労働者派遣契約書における電子契約の利用が認められることとなりました。

  • 「労働者派遣法施行規則(労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律施行規則)」
  • 「e-文書省令 (厚生労働省の所管する法令の規定に基づく民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する省令)」

この労働者派遣契約書の電子化の解禁が人材派遣業に関わるさまざまな書類を電子化する後押しとなり、業務プロセスの効率化が進んでいます。

なお、労働者派遣契約書の電子化解禁の経緯をより詳しく知りたい方は下記記事もご一読ください。

人材派遣業における電子契約導入のメリット

人材派遣業において電子契約を導入することは、雇用契約や入社手続きの効率化、コスト削減、コンプライアンス強化という多岐に渡るメリットをもたらします。ここでは、それぞれのメリットについて詳しく解説します。

派遣スタッフの契約手続きを効率化できる

人材派遣業では、派遣元企業・派遣先企業・派遣スタッフの三者間で、以下の契約類型や契約関連書類の締結・確認が発生します。

  • 派遣基本契約書
  • 派遣個別契約書
  • 派遣期間抵触日の通知
  • 労働条件通知書
  • 雇用契約書
  • 各種申込書

これらの契約締結・申し込みの手続きを紙で行う場合、印刷・製本・郵送・押印といった一連の事務作業が発生していました。また、派遣スタッフには一定の雇用期間が定められているため、定期的に契約更新時の手続きに対応する必要もあります。

電子契約を導入すれば、これらの手続きはオンライン上で完結できるようになり、大幅な効率化が期待できます。

例えば、派遣先企業との契約を電子契約で行う場合、派遣元の担当者がパソコンやスマートフォンから契約内容を確認し、電子署名をするだけで契約締結手続きが完了します。派遣元企業は、契約書を印刷したり郵送したりする手間が省け、契約締結までの時間を大幅に短縮できるでしょう。

コスト削減につながる

人材派遣業において電子契約を導入することで、従来の紙の書類で契約締結した場合に比べてコスト削減が可能です。

紙の契約書を使用する場合、印刷代、紙代、インク代、郵送費など、さまざまな費用が発生します。また、契約書を保管するためのスペースや、管理にかかる人件費も無視できません。

電子契約に切り替えることで、オンライン上で瞬時に契約締結が完了するため、これらのコストを大幅に削減できます。

さらに、電子契約を導入することで、印刷・製本作業や印紙を貼る作業等の事務手続きが不要になるため、これらの事務に関わる人件費の削減にも貢献します。契約書の作成や管理にかかる手間が減ることで、従業員はよりコアな業務に集中できるようになり、生産性向上も期待できるでしょう。

リスク回避につながる

電子契約で締結した書類は、クラウド上に保管されるため、紛失のリスクがありません。必要な時にすぐにアクセスできます。「今すぐ過去の契約書を参照にしたい」という場合でも、すぐに見つけることができるため、万が一の確認依頼にも備えられます。

また、システム内で契約更新日を事前に設定しておけば、更新期限が切れる前にメール等でリマインドできるようになるため、「契約の更新を忘れてしまった」という事態も避けられるでしょう。

スピード感だけでなく、信頼性も重要視される人材派遣業界において、万が一のときに備えて電子契約を導入するのも、リスク回避策の選択肢のひとつになります。

コンプライアンス強化につながる

人材派遣業において電子契約を導入することは、コンプライアンス強化にもつながります。

紙の契約書の場合、改ざんや紛失のリスクが常に存在します。特に、複数の担当者が関わる場合、書類の所在が不明になったり、誤って破棄されたりする可能性も否定できません。また、契約内容の変更履歴を正確に把握することも困難です。

電子契約であれば、これらのリスクを軽減できます。電子署名やタイムスタンプによって、契約の真正性を証明できるため、改ざんを防止できます。

また、電子データとして記録が残るため、紛失のリスクもありません。さらに、契約内容の変更履歴もシステム上で管理できるため、透明性の高い契約管理が可能です。

派遣法をはじめとする関連法規を遵守する上で、契約情報の正確な管理は非常に重要です。電子契約を導入することで、法令遵守体制を強化し、リスク管理を徹底しましょう。

人材派遣業で電子契約を導入する際の注意点

人材派遣業で電子契約を導入する際には、いくつかの注意点があります。書類の電子化を進める前に、確認しておきましょう。

取引先も電子化に対応しているかを確認する

取引先が電子化に対応しているかをあらかじめ確認しておきましょう。電子契約を利用するためには、取引先も電子契約の利用を受け入れている必要があるためです。

取引先が電子契約を利用したことがない場合には、利用する電子契約サービスの説明資料を共有したり、電子化のメリットや具体的な方法をレクチャーしたりするなど、取引先に丁寧に説明する必要があります。

もし取引先が電子契約を利用できない場合は利用を強要するのではなく、まずは従来の紙の書類で契約締結し、将来の電子化に向けて準備を進めましょう。

利用する電子契約サービスが法令遵守しているか確認する

電子契約の導入にあたっては、関連する法令を遵守する必要があります。電子署名法や電子帳簿保存法など、電子契約に関わる法規制をしっかりと確認し、要件を満たす形で電子契約サービスを導入・運用する必要があります。

例えば、電子帳簿保存法では、電子化した書類を保管する際に下記のような要件に対応することが義務付けられています。

  • 電子化に利用するサービス・システムのマニュアル(概要所)を備え付ける
  • 検索機能を確保する
  • 全ファイルへの認定タイムスタンプの付与(または訂正削除の履歴が残るか、そもそも訂正削除ができないシステムを利用する、事務処理規程を設置する)

電子帳簿保存法で定められた書類のデータ保存要件を確認したい方は下記記事も参考にしてみてください。

就業条件明示書類の電子化には派遣スタッフの同意が必要になる

就業条件明示書とは、人材派遣会社に登録する派遣スタッフへの提供が義務化されている書類です。

この就業条件明示書等を電子化する際は、相手方の同意が必要になるため、PDFやメール、SNSなどで交付する場合は事前に派遣スタッフへ確認をとりましょう(参考:「労働基準法施行規則改正のお知らせ」|厚生労働省)。

もし派遣スタッフが紙の書面での交付を希望する場合には、希望通り書面での交付に応じてください。

人材派遣業における電子契約導入事例

当社の提供する電子契約サービス「クラウドサイン」を例に、人材派遣業で実際に電子契約を導入した企業の成功事例をご紹介します。人材派遣業におけるDX化、ペーパーレス化をご検討の方は、ぜひ自社で電子契約サービスを導入する際の参考にしてみてください。

部署ごとのニーズを見極め効果的に電子契約を導入(ランスタッド株式会社)

ランスタッド株式会社は業務効率化と契約締結の迅速化のために電子契約を導入しました。

同社では、主に以下の書類の締結業務で電子契約サービス「クラウドサイン」を活用しています。

  • 人材派遣契約書
  • 紹介予定派遣にかかわる基本契約書
  • 上記に付随する機密保持契約書
  • 派遣先の職種に応じた覚書
  • 不動産の賃貸借契約書

同社でのクラウドサイン導入にあたって、締結した契約書の情報を部署内のどこまでの範囲で共有したいかという前提条件が部署によって異なっていたため、共有範囲ごとに契約書を閲覧できる状態にするための設定を整理しました。

最終的に閲覧範囲ごとに3つのチームを導入する構成にし、営業部門、管理部門、人事部でチームを分け、それぞれのニーズに合わせた運用を目指しました。

クラウドサイン導入により得られた主な効果は次の通りです。

クラウドサイン導入により得られた主な効果
✔契約締結のスピードアップ: 紙の契約書では時間を要していた契約締結が、クラウドサイン導入後は迅速化され、場合によっては1時間以内に完了することも。
✔業務工数の削減: 紙の契約書で発生していた印刷、製本、郵送、返送の確認、回収管理簿への記載、保管などの一連の作業が不要となり、大幅な工数削減につながった。また、在宅での契約処理が可能になった。

 
「人材派遣や紹介予定派遣の事業では、できるだけすぐに派遣・紹介して業務を開始してほしい、という企業からのニーズも少なくありません。紙の契約書ではスピードを重視したサービス提供のニーズには対応しにくいですが、電子契約であれば、即座に契約を交わして健全な形で業務をスタートできるだろうという期待もありました」(ランスタッド株式会社 管理本部 リーガル&コンプライアンス本部 ビジネス法務部 部長 島野英之様)

▼ランスタッド株式会社の詳しいインタビュー内容はこちら
部署ごとのニーズを見極め効果的な導入。創業60年以上の老舗総合人材サービス企業が電子契約を推進

Salesforceとの連携を見据えて契約の電子化をスタート(シューペルブリアン株式会社)

シューペルブリアン株式会社は業務効率化とSDGsへの貢献のために電子契約サービス「クラウドサイン for Salesforce」を導入しました。

同社では、主に以下の書類の締結業務で電子契約を活用しています。

派遣スタッフと結ぶ雇用契約書
クライアント企業様と結ぶ労働者派遣契約書
機密保持契約書

電子契約導入により得られた主な効果は次の通りです。

クラウドサイン導入により得られた主な効果
✔契約締結のスピードアップ: 契約締結のスピードアップ::紙の契約では1週間から10日かかっていたものが、導入後は早ければ1日かからず完了するようになった。
✔コスト削減:半年間で送信した約1,300件の契約に基づくと、1ヶ月あたり約15万円のコスト削減が見込まれる(紙契約1件あたり730円の試算/取材日時点)。
✔業務工数の削減:封入作業や郵送の手間がなくなった。
✔営業担当者の心理的負担軽減:急いで契約したいというクライアント企業様の要望にも速やかに応えられるようになり、営業担当者の負担を軽減

 

「派遣業界はまだそこまでデジタル化が進んでいないように思います。業界の特性として、何らかの既存ツールを導入してもそのままでは使いにくかったりします。ただ、私としては同じ業界のライバルかどうかは関係なく、派遣会社のみなさんはどんどん電子契約サービスを導入してほしいと思っています」(シューペルブリアン株式会社 マーケティング担当 亀井隆幸様)

▼シューペルブリアン株式会社の詳しいインタビュー内容はこちら
人材派遣業でも進む契約の電子化。法改正に合わせてクラウドサイン Salesforce版を導入

人材派遣業の業務効率化を推進するなら電子契約サービスの検討を

人材派遣業では、クライアント企業からの「できるだけすぐに業務を開始してほしい」という要望にスピーディーに対応できるかどうかが競合との差別化にもつながります。

派遣スタッフ就業までのリードタイム短縮をはじめとする、業務効率化の課題を解決したい場合には、電子契約サービスの導入を検討してみてはいかがでしょうか。

クラウドサインは導入社数250万社以上、累計送信件数1000万件超の実績を持つ電子契約サービスです。「どのように導入するのが良いかわからない」「社内で承認を得るためにどうしたらいいかわからない」といった導入時によくいただくお悩みを解決するサポートも充実しています。

なお、クラウドサインでは契約書の電子化を検討している方に向けた資料「電子契約の始め方完全ガイド」も用意しています。電子契約を社内導入するための手順やよくある質問をまとめていますので、電子契約サービスの導入を検討している方は以下のリンクからダウンロードしてご活用ください。

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クラウドサインではこれから電子契約サービスを検討する方に向けた「電子契約の始め方完全ガイド」をご用意しました。電子契約サービスの導入を検討している方はダウンロードしてご活用ください。

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