請求書には電子印鑑の利用は可能か?利用のメリット・デメリット・注意点を解説
近年、インボイス制度の影響で急速に普及が進んでいるのが電子データによる請求書です。メール等、オンライン上でやり取りができるようにPDF等へデータ化された請求書は、紙のように倉庫やキャビネットへの保管が不要な上、検索も可能なため、昨今では請求書の電子化に取り組む企業が増えてきています。
一方で「請求書に電子印鑑を利用できるのか?」「電子印鑑にはセキュリティ面の問題はないのか?」といった疑問を持つ方も少なくありません。
本記事では、請求書における電子印鑑の利用について、法的観点と実務上の観点から詳しく解説します。また、電子印鑑を利用するメリット・デメリット・注意点もわかりやすく解説しますので、自社の状況に適した請求書の電子化を検討するためのヒントとしてご一読ください。
請求書には電子印鑑の利用は可能か?
結論から言うと、請求書に電子印鑑を使用することは可能です。ここでは、法的観点と実務上の観点それぞれから電子印鑑の利用について確認しておきましょう。
法的観点
そもそも、日本の法律では、請求書への押印は義務付けられていません。電子署名法、e-文書法、電子帳簿保存法など、電子文書に関する法整備も進んでいますが、これらの法律においても請求書に印鑑(または電子印鑑)を求める規定はないためです。
令和2年6月に内閣府・法務省・経済産業省が政府見解として連名で公開した「押印についてのQ&A」と題する文書においても、「契約書に押印をしなくても、法律違反にならないか」という質問に対し、次のような回答が記載されています。
・私法上、契約は当事者の意思の合致により成立するものであり、書面の作成及びその書面への押印は、特段の定めがある場合を除き、必要な要件とはされていない。
・特段の定めがある場合を除き、契約に当たり、押印をしなくても、契約の効力に影響は生じない。
出典:押印についてのQ&A|法務省、「押印についてのQ&A(問1)」
この考え方は電子印鑑においても同様で、電子データで作成した請求書に対して電子印鑑を押印する必要性はなく、電子印鑑が押されていなくても正式な書類として扱われます。
しかし、日本には書類への押印という行為そのものが「認証された文書である証し」として定着してきたという経緯があります。そのため、会社や組織によっては、商慣習上のルールとして請求書に印鑑(または電子印鑑)の押印が求められることもあります。
実務上の観点
法的側面からは印鑑(または電子印鑑)は不要ですが、実務上は業界の慣習や取引先との関係性も考慮する必要があります。
一部の企業では、請求書に印鑑(または電子印鑑)があることを慣習としている場合があります。また、取引先が請求書に印鑑を求めてくるケースも考えられます。
このような場合、取引先との良好な関係性を維持するために慣習に従って印鑑(または電子印鑑)を使用することも選択肢のひとつです。
また、トラブルを回避するという観点からも、印鑑(または電子印鑑)が役立つ場合があります。例えば、請求書の改ざんやなりすましを防ぐために、電子印鑑を使用することで、より確実な証拠力を確保することも手段になるでしょう。
なお、請求書に押印するメリットを確認したい方は下記記事も参考にしてみてください。
電子印鑑とは
一般的に電子印鑑とは「PCやタブレットなどで作成した電子文書に対して捺印できるようにデータ化された印鑑」のことを指しています。

Excelで作成した電子印鑑の例
PDFやWord、Excelといった電子文書に印影の画像データが貼り付けられているのを目にしたことがある方もいるかもしれませんが、それが「電子印鑑」と呼ばれるものです。
電子印鑑の作成方法としては紙の印鑑をスキャンして画像データとして取り込む方法や、専用のソフトウェアで作成する方法などが挙げられます。
電子印鑑と一口に言っても、単純に印影をスキャンし、jpgやpng等のデータにしただけの画像データの場合もあれば、印影の画像データに所有者を識別できる情報を付与したものもあります。
前者の電子印鑑の場合、「誰が」「いつ」押印したのか確認できない上、不正なコピーが容易にできてしまう懸念があります。
後者の電子印鑑は単なる印影の画像とは異なり、「誰が」「いつ」押印したのかわかる識別情報が画像データに組み込まれており、セキュリティが一定担保されるため、単純な画像データの電子印鑑よりも信頼性が高いといえるでしょう。
ただし、識別情報を組み込んだ電子印鑑を利用するには別途料金が発生するため、導入や運用のコストがかかります。請求書に電子印鑑を押印する場合には、どこまで信頼性を求めるかや、かけられるコストを踏まえた上で適切な電子印鑑を選択するのがよいでしょう。
電子印鑑を利用する場合、セキュリティ面でリスクの懸念がある上、有料の電子印鑑サービスでもサービスによってセキュリティの基準にはばらつきがあるため、どのサービスを選ぶべきかの判断が難しい側面があります。
そこで、契約書の電子化を検討している方におすすめできる選択肢のひとつが当社の提供する電子契約サービス「クラウドサイン」です。
クラウドサインは単純な印影の画像データを電子文書に施す電子印鑑とは異なり、合意締結した契約書の証拠力を担保できる電子契約サービスです。安心して長期保管していただけるよう弁護士ドットコム株式会社による電子署名に加え、認定タイムスタンプを付与することで契約書の改ざん防止を図っています。
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電子印鑑のメリット
請求書に電子印鑑を押印したい方は、そのメリットも確認しておきましょう。電子印鑑のメリットとして「業務効率化に繋がる」「コスト削減になる」という点が挙げられます。
業務効率化につながる
電子印鑑の導入により、紙の契約書で生じていた捺印作業が不要になります。その結果、契約書の印刷はもちろんのこと、インクが乾くのを待ってから郵送の準備をするなどの契約書送付に関わる各工程を省略できるため、事務作業の業務効率化につながります。
また、従来の紙の契約書の場合には捺印するために契約担当者が出社する必要がありましたが、電子印鑑の場合はPCやタブレットなどの電子機器さえ用意があればどこにいても捺印業務を行えます。「印鑑(社判・角印・ハンコ)をもらうために出社する」という工程を省ける点もメリットになるでしょう。
コスト削減になる
電子印鑑を導入した場合にはコスト削減も可能です。電子印鑑では紙の契約書を印刷する必要がないため印刷代や紙代、インク代などの諸経費はもちろん、印紙代もかかりません。
また、オンラインのやりとりで契約書の作成から契約締結までの工程を完結できるため、昨今値上がりした郵送費も削減できます。
電子印鑑のデメリット・注意点
電子印鑑のデメリットとして「セキュリティ対策が十分でない場合がある」「導入コストがかかる」という点が挙げられます。電子印鑑の導入を検討している方は各デメリットの詳細を確認しておきましょう。
セキュリティ対策が十分でない場合がある
印影を画像にしただけの電子印鑑は言うなれば単なる画像データです。簡単に複製や改ざんができてしまうためなりすましなどの不正利用は防止できず、セキュリティ対策が十分でないというデメリットがあります。
印影を画像にしただけの電子印鑑は社内回覧等での活用に留め、認印のような利用の仕方に限定するのも選択肢のひとつです。
また、利用する電子印鑑サービスによってはセキュリティレベルが異なる点にも留意する必要があります。この点では、毎回の書類締結ごとに必ず電子署名とタイムスタンプが付与される電子契約サービスを利用する方が、セキュリティ対策や信頼性担保の観点で好ましいといえるでしょう。
導入コストがかかる場合がある
具体的な費用感は電子印鑑サービスによっても異なるため、導入時に確認しておきましょう。
多くの電子印鑑サービスでは無料で利用できる試用期間を設けているため、導入しようか迷っている場合にはまずは無料で試してみるのも一手です。
電子印鑑サービスとあわせて電子契約サービスも検討している方は下記記事も参考にしてみてください。
まとめ
請求書に電子印鑑を利用することは可能です。しかし、紙であっても電子データであっても、請求書への押印は法的に義務付けられていないため必須ではありません。実務上は取引先の慣習や要望に応じて、電子印鑑が必要かどうかを確認してください。
ただし、印影を画像化した電子印鑑は単なる画像であるため容易に第三者から複製されてしまう恐れがあるため注意が必要です。単純な画像データの電子印鑑よりも信頼性が高い方法を選択したい場合には、タイムスタンプなどの識別情報が組み込まれた電子印鑑や、オンライン上で電子署名を付与できる電子契約サービスを検討してみてください。
電子印鑑の作り方や、作成時の注意点について詳しく知りたい方はこちらの記事もおすすめです。
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電子契約の導入には次のようなメリットがあります。
【電子契約のメリット】
- 収入印紙が不要になる
- 郵送費用を削減できる
- 契約が締結されるまでのリードタイム短縮につながる
- 文書管理・保管の効率化ができる
- コンプライアンスを強化できる
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【クラウド型電子署名サービスを用いた電子契約のイメージ図】
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