電子契約の基礎知識

【2024年】電子契約サービスのシェアを最新の調査データから解説 

昨今、各社でデジタルトランスフォーメーション(DX)の推進が進んでいることも影響し、電子契約サービスはますます普及しています。本記事では、最新の調査データをもとに、電子契約サービスのシェアを詳しく解説します。電子契約の市場規模や、普及の背景、さらには日本国内における主要な電子契約サービスのシェアについてもご紹介します。電子契約に興味のある方やDXに携わる方は今後の事業推進・業務改善の参考にしてみてください。

電子契約の市場規模

デジタル化の進展に伴い、電子契約サービスの需要が急速に拡大しています。電子契約とは、紙の契約書に代わり、オンライン上で電子ファイルに電子署名を不要することで契約を締結する仕組みです。電子契約市場は、企業間または個人間の契約プロセスを効率化し、コストおよび時間の節約を実現するため、ますます重要性を増しています。

ITRによる市場規模予想によると、2023年度の売上金額は303億円で、前年度比31.7%増の見込みです。2026年には453億円と、2020年時点の4倍以上に拡大すると予測されており、電子契約市場は今後も持続的な成長が予測されています(出典:ITRプレスリリース(2022年10月27日))。

【ITRによる電子契約サービス市場規模推移および予測データ(2020~2026年度)】

図の出典:ITRプレスリリース(2022年10月27日)

このように、年々市場規模が拡大している電子契約ですが、普及の要因は複数考えられます。次項で電子契約が普及してきた背景を確認しておきましょう。

電子契約の普及率は企業全体の56.3%

旬刊商事法務No.2295(2022年5月25日号)」に掲載されている商事法務・経営法友会による調査結果「商業登記と企業の契約締結事務に関する質問票調査」によれば、電子契約システム普及率は企業全体の56.3%という数字が公開されています。

この数字は、自社主導の契約の場合に相手方に利用を求める電子契約システムに限定したものであり、受信者として受動的に利用する電子契約システムは含まれていないという点で、より実態に近い調査になっていると考えられます。

同調査について詳しく知りたい方は「電子契約システムの普及率とは?中立的な調査結果を比較 2023年は電子契約利用率が課題に」もご一読ください。

電子契約が普及している背景

電子契約の普及には、いくつかの要因が影響しています。まず、2020年に経済産業省がデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進するためのガイドラインである「デジタルガバナンス・コード2.0(旧 DX推進ガイドライン)」を取りまとめたことをきっかけに、自主的にデジタル化に取り組む企業が増えたという外的要因が挙げられます。

それに加えて、2020年6月19日に内閣府・法務省・経済産業省が連盟で「押印に関するQ&A」を発出し、「テレワーク推進の観点からは、必ずしも本人による押印を得ることにこだわらず、不要な押印を省略したり、「重要な文書だからハンコが必要」と考える場合であっても押印以外の手段で代替したりすることが有意義であると考えられる」と契約書への押印不要の見解を示したことも電子契約の普及を後押ししました。

さらに、2020年以降の新型コロナウイルスの感染拡大も電子契約の普及に影響しました。リモートワークやオンラインにおけるビジネスの機会が増えたことで、契約を紙で締結することが見直され、場所や時間に制約されずに契約を締結できる電子契約が注目されるようになりました。

日本国内の電子契約サービスのシェア

日本国内における電子契約サービスの市場では、いくつかの主要なサービスがシェアを競っています。

株式会社富士キメラ総研が2023年7月7日に発表した市場調査レポート※によると、電子契約ツールの2022年度実績の市場占有率(売上高)のうち弁護士ドットコムのクラウドサインが21.4%とトップという結果でした。続いて2番手のA社が17.9%、3番手のB社が15.8%と続いています。

※出典:富士キメラ総研「ソフトウェアビジネス新市場 2023年版」

【市場占有率(電子契約ツール)】

電子契約サービス運営会社 市場占有率(2022年度実績値)
弁護士ドットコム(クラウドサイン) 21.4%
A社 17.9%
B社 15.8%
C社 8.2%
D社 6.6%
E社 4.6%
その他 25.5%

出典:富士キメラ総研「ソフトウェアビジネス新市場 2023年版

電子契約サービスは、豊富な機能やセキュリティ対策、使いやすさなどの観点で競争力を持っています。また、各サービスは企業や個人のニーズに合わせたカスタマイズやサポート体制の充実にも注力してきており、今後ますます電子契約の市場は活況になると予想できます。

電子契約のメリット

2020年から広がり続けている電子契約サービスですが、導入することでどのようなメリットがあるかを改めて確認しておきましょう。電子契約のメリットとして挙げられるのは次の5点です。

  • 収入印紙が不要になる
  • 郵送費用が削減できる
  • 契約が締結されるまでの時間の短縮
  • 文書管理・保管の効率化
  • コンプライアンス強化

収入印紙が不要になる

電子契約を導入すると、紙の契約を締結する際に購入していた収入印紙が不要になります。印紙税は法令で「紙の書面に契約内容を記載して相手方に交付した時に印紙税の納税義務が発生する」旨が規定されており(印紙税法第2条および第3条)、電子契約には印紙税が課税されないためです。

郵送費用が削減できる

電子契約は紙の契約と違って物理的な送付作業が不要なため、電子契約を導入することで従来の紙の契約で必要だった郵送費用を削減できます。レターパックライトで郵送していたと仮定すると、1契約あたり370円の郵送費用削減につながります。

契約が締結されるまでの時間の短縮

電子契約は契約締結が完了するまで一貫してオンライン上のやりとりになるため、印刷や製本、袋とじ、押印、送付などの紙での契約時に発生していた一連の作業が不要になります。そのため、契約が締結されるまでのリードタイムを短縮できます。

文書管理・保管の効率化

電子契約サービスを導入することで、過去に締結した書類を確認したい場合にも書類名や契約相手の名前、締結日などから契約内容を容易に検索できます。従来の紙の書類ではキャビネットのある場所まで移動して手作業で探す必要があったことを考えると、電子契約サービスを導入することでその分の作業時間を削減できることがわかるでしょう。

コンプライアンス強化

契約内容に応じてアカウントの閲覧権限を設定できる機能を備えた電子契約サービスであれば、契約に無関係な社内のメンバーが契約内容を確認できるといった不備を避けられます。

契約書を書き換えたり、流出させたりといった不正行為も防げるため、コンプライアンスの強化を期待できます。

電子契約サービスを選ぶ際はシェアだけでなく口コミサイト等の声も参考に

電子契約サービスを選ぶ際には、市場シェアだけでなく、実際に利用したユーザーの声も重要な判断材料となります。口コミサイトやレビューサイトなどでの評価や意見を参考にすることで、各サービスの利点や課題を把握し、自社のニーズに最適な電子契約サービスを見つけることができます。

また、セキュリティやプライバシーの観点も重要な要素です。信頼性の高い運営会社が提供する電子契約サービスを選ぶことで、データの漏洩や改ざんのリスクを最小限に抑えることができます。

導入前には無料トライアルやデモを利用して、サービスの使い勝手や機能を確認しておくのも選定時の参考になるでしょう。

電子契約サービスの選び方を知りたい方は「電子契約サービスを比較する際の3つのポイント —おすすめの電子契約サービス比較サイトも紹介」もご一読ください。

電子契約サービスの普及は、ビジネスプロセスの効率化や環境への負荷軽減など、多くのメリットをもたらしています。市場シェアや口コミ評価を考慮しながら、自社のニーズに最適なサービスを選び、スムーズな契約プロセスを実現しましょう。

なお、クラウドサインでは電子契約の受け入れ状況に関する自社調査を実施し、その結果をまとめた調査レポートを用意しています。取引先から電子契約による締結を依頼された際、企業がどのように対応しているのか、そしてまだ受け入れていない企業が抱える課題とその対応策を解説しているため、電子契約の受け入れや導入を迷っている方は下記リンクから無料でダウンロードしてご活用ください。

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