契約書ファイル管理の新セオリー —フォルダ管理のデメリットを解消する「スマートキャビネット」とは
紙の契約書から電子契約に移行すると、契約書の情報をデータとして管理できるようになり、物理的な制約から解放されるメリットが生まれます。しかし、管理の対象となる契約書の件数が増えることで、かえって分類が難しくなるデメリットも。契約書ファイル管理のセオリーと、電子契約を活用した対策法を解説します。
1. 電子契約を締結した後の契約書ファイル管理はどうすべきか?
電子契約サービスを利用し始めたユーザーの皆様から、利用開始から1年ほど経過すると決まって寄せられるご相談に、「電子契約サービスを利用して締結した契約書ファイル管理はどうすべきか?」というものがあります。
なぜ、このような悩みが電子契約導入後、しばらく経ってから出てくるのでしょうか?
その理由は、契約書を紙とハンコで締結していた時代においては、取引基本契約書などの重要な契約書こそ法務部門等で集中管理していても、
- 秘密保持契約書
- 業務委託契約書
- 注文書/注文請書
このような日常的かつ大量に発生する契約文書については、実は現場任せのファイリングになっているケースが多く、すべての契約書を一元的に管理できている企業は少ない(したくてもキリがないのでできなかった)、という実態があったためです。
これが、物理的な制約や送付・移動の手間なく一元管理できる電子契約サービスを導入すると、これまで法務等管理部門では把握できていなかったような契約書までがすべて見える化されることとなり、管理対象となる契約書量の圧倒的な違いから、それまでの管理運用方法では通用しなくなるという現実に直面するわけです。
こうして、電子契約の活用をはじめた多くの企業が、導入からしばらく経って初めて、紙の契約書管理の時代には気づかなかった大量の件数が存在しているという事実に直面し、管理方法を見直すこととなります。
2. 契約書電子ファイルの管理方法と3つのセオリー
では、企業において、電子契約で締結した契約書を管理する方法として採用されているもののうち、これを採用しておけば間違いのない管理方法というのはあるのでしょうか?
以下では、企業において頻度高く採用される契約書電子ファイルの管理方法のうち、セオリーともいうべき手法トップ3を紹介します。
2.1 取引先会社名ごとに契約書をフォルダに分ける
もっともオーソドックスな分類方法が、取引先の社名ごとに契約書をフォルダに分けていくという方法です。
契約書が必要となるケースはどんな時かを考えてみると、
- 支払い条件等、内容を確認したいとき
- 相手方が義務を履行してくれない(契約を守ってくれない)とき
- 過去の取引経緯を参照し、次回以降の取引の参考にしたいとき
この3つのケースが多いわけですが、そのいずれのケースにおいても必ず把握できている情報の一つが、「対象となる取引先の会社名」だからです。そもそも、会社名の分からない相手と契約していることはありえませんし、契約書を参照しなければならないような事態が発生するときは、取引先による何らかのアクションが引き金となるという点でも、ワークフローに素直な分類方法です。
さらに、取引先ごとに契約書を分けておくことで、ある取引先との間でトラブルが発生した時に、その取引先の他の契約に影響するのかといった関係性・影響範囲も把握しやすくなるメリットもあります。
その意味で、外部インシデントに対応する際の機動性や事後のフォローアップを重視した分類方法と言えます。
2.2 担当部署ごとにフォルダに分ける
次に多くの企業で採用されている分類方法が、その案件の担当部署・担当部門ごとフォルダ分けをする、という方法です。これは、取引先ごとに担当部署を貼り付けるというよりも、プロジェクトベースで業務や成果をマネジメントする意識の強い企業で採用される契約書管理手法です。
業種・業態にもよりますが、あるプロジェクトを実行するにあたり、これを実現するためのパートナーや協力企業との契約書が複数ある場合には、取引先単位ではなく、プロジェクト単位で契約書をまとめた方が便利です。
特に、流動的なプロジェクトを並行していくつも回し、契約書に紐づけた予実管理を徹底するようなスタイルを重視しているのであれば、そのプロジェクトを実行する担当部署・部門ごとに契約書を分けていくことで、仕事をまわしやすくなるというメリットが生まれます。
また、契約書の閲覧権限を厳格にコントロールしたいケースでも、部署別のフォルダ分類が好まれる傾向があります。
2.3 あえてフォルダで分類をせず必要なときに検索する
3つめは、電子契約ならではの管理方法です。それは何かというと、ズバリ「何もしない」です。
あえてフォルダに分類せずに、いざ契約書が必要となったときに、都度「検索」でこれを取り出すということに割り切ってしまう、という方法になります。
検索のしやすさと検索結果の一覧性を重視すると、取引先会社名や担当部署ごとにフォルダに分けすぎることで、むしろ不便になります。一つのフォルダにすべての電子契約をひとまとめに保存しておくことで、検索対象と結果を一覧しやすくなるというわけです。
この方法では、電子契約を締結するたびにフォルダへの分類作業をしなくて済む、という点もメリットと言えます。細かい契約書が大量にある企業や、それほど契約書を参照するようなインシデントがほとんど発生しないような企業では、この方法がむしろ効率的、というケースも少なくありません。
3. フォルダ分類頼み・検索頼みの契約書管理の問題点とデメリット
このように、セオリーとなっている契約書管理方法はいくつかありますが、これらにはそれぞれメリットもあればデメリットもあります。
3.1 フォルダ分類作業を長期間継続して徹底し続けることが難しい
電子ファイル化された契約書をフォルダに分類し続ける作業は、長期間継続することが想定以上に大変なものです。
真面目な担当者なら、新たに締結した契約書を粛々と分類し、保管し続けるのは難しくない、そんなのやって当たり前の仕事だと思われるでしょう。しかし、企業組織というのは生き物です。
- 取引先の社名変更
- 組織変更、担当部署変更
- 担当者の異動や退職
こうしたイベントが数ヶ月ごとに発生すれば、そのたびに、それまでせっかく苦労してきれいにフォルダに分類した作業の成果も、水の泡と化します。しかもそうしたイベントは一度ではないため、何回か再分類作業の必要性にかられるうちに、挫折するのが常なのです。
3.2 分類のポリシーや判断基準が分類作業の担当者に依存する
また、分類作業を徹底して凝れば凝るほどに、そのフォルダ分類方法には作業を行っている担当者のポリシー、もっと言えば「好み」が現れてきます。分類というプロセスには、良くも悪くもその作業者の個性が出てきがちなものです。
そうしてポリシーが複雑化していくと、分類していた作業担当者自身にとっては見つけやすく完璧な整理に近づいていくのですが、その作業担当者以外の社員にとっては、作業担当者の頭の中の構造までは想像ができず、かえって欲しい情報(目当ての契約書)が見つけにくくなっていきます。
特に、プロジェクト単位で分けていくと、このようなデメリットに遭遇しがちです。
3.3 閲覧権限の割り付けがうまくいかなくなる
フォルダ分類管理を徹底して契約書を管理している企業に発生する問題として、閲覧権限の割り付けがうまくいかなくなるというものもあります。
たとえば取引先別にフォルダを分けた場合、(契約書ファイルごとに丁寧に閲覧制限をかけておかなければ)同じ取引先契約書フォルダにある情報を社内の別の部署の社員が見られることになります。しかし、これを望まないケースもあるかもしれません。
一方で担当部門別にフォルダ分類を徹底すると、あるプロジェクトのファイルについて、管理部門等他部門の関係者に閲覧権限を割り振りにくくなり、情報共有も困難になってしまいます。
3.4 検索して目当ての契約書ファイルにたどり着くまでの所要時間が長くなる
ではフォルダ分けはやめてしまい、検索一本でやり切れるかというと、これにもケースによってはデメリットが先立つこともあります。
特に、従業員数が1,000名を超えるような大企業ともなれば、検索対象となる契約書の総量がどうしても増えてしまいます。こうなると、適切なキーワードで絞りこんで目当てのファイルに辿り着くためには、高度な背景知識とスキルを身につける必要が出てきます。
4. クラウドサインのスマートキャビネット機能で契約書管理の悩みと問題を解決
以上のような、大量の契約書ファイル管理業務につきものの悩みや問題を解決したい企業におすすめするのが、2022年3月に正式リリースしたクラウドサインの「スマートキャビネット機能」です。
スマートキャビネット機能では、部署などの単位で作成された「メンバーグループ」と、分類先とする書類の格納庫である「キャビネット」を、予め紐づけておきます。その紐付けルールに基づき、締結が完了した書類が各キャビネットに自動的に分類されます。
さらに、この分類ルールとは別に、キャビネットの閲覧権限を設定することもできるため、「営業部のメンバーが締結した書類を自動的に営業部キャビネットに分類し、その書類を営業部キャビネットにアクセス可能な法務部のメンバーが閲覧する」といったことが可能になります。
もちろん、自身がアクセス可能な契約書の中から、取引先会社名で絞り込み検索をかけることも可能です。
- 取引先会社名別の分類と担当部署別の分類のいいところ取りを実現しながら
- 契約書保管作業に必要となっていたフォルダ分類の手間をなくし
- アクセスコントロール権設定のミスも防ぐ
という一石三鳥のメリットを得ることができます。電子契約導入によって管理の対象となる契約書が増えれば増えるほど、契約書管理業務が劇的に省力化効果は高まり、いっそう契約書情報の活用を図ることができるようになります。
スマートキャビネット機能は、クラウドサインのエンタープライズプランをご利用いただくお客様を対象に提供しています。以下リンク先フォームよりお問合せ・資料請求ください。
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