レポート

一般社団法人クラウド型電子署名サービス協議会(CeSSA)2024年度コングレスレポート

一般社団法人クラウド型電子署名サービス協議会(CeSSA)による2024年度(第2回)コングレスが、同協議会の主催で2024年6月25日(火)、東京都千代田区の衆議院第一議員会館 国際会議室において行われました。

本協議会はクラウド型電子署名サービス関係事業者の全国団体として、クラウド型電子署名の認知及び理解の増進並びに個人、企業、地方公共団体及び国による利用の促進を図るとともに、会員の努力と相互の協力によるユーザーに支持されるトラストサービスの提供を支援し、もってトラストを確保した社会のデジタル化に寄与することを目的に活動しています。

今回で2回目の開催となるコングレスは、前年度の活動報告と、関係省庁による講演、来賓紹介・来賓挨拶、会員による取組等の報告、フォトセッションという構成で行われました。

当記事は、イベント当日の様子をレポートとしてお届けします。なお、一般社団法人クラウド型電子署名サービス協議会(CeSSA)について詳しく知りたい方は公式サイトをご覧ください。

冒頭 代表理事・根垣昂平(弁護士ドットコム株式会社取締役)からの挨拶・活動報告

会の冒頭、今年度からCeSSA代表理事を務める根垣昂平(弁護士ドットコム株式会社取締役)から挨拶ならびに活動報告がありました。以下に要約してご紹介します。

写真中央:CeSSA代表理事・根垣昂平(弁護士ドットコム株式会社取締役)

2023年度の電子署名業界における最も大きな話題は、やはり電子署名3条Q&A関連の動きです。2023年5月の規制改革推進会議ワーキンググループでの経済界等からの要望もあり、所管省庁での「3条Q&A」改定の検討が始まりました。これを受けて2023年6月、我々協議会はすみやかに事業者団体として「基本的な考え方」を発表しました。

電子署名法を所管するデジタル庁及び法務省が新「3条Q&A」を公表したのが、2024年1月でした。重要な改定内容は、「サービス提供事業者が電子契約サービスの利用者と電子文書の作成名義人の同一性を確認する(いわゆる利用者の身元確認を行う)ことは、電子署名法第3条の推定効の要件として必ず求められているものではない」旨がわかりやすく明記されたこと等です。

本改定作業にあたっては、当協議会もヒアリング等で意見を提出してきましたが、所管省庁においては、非常に丁寧に我々の意見を聴いて、かつ取り入れていただいたものと理解しております。

2023年度中も、さまざまな政府の検討会等に参画の機会をいただきました。先ほど説明した「3条Q&A」関連では、規制改革推進会議WGでの提言プレゼン、及びその後の所管省庁からのヒアリングに対応してまいりました。電子委任状法施行状況検討会においては、電子契約の普及を促進する観点から、ユーザーと接するサービス事業者の団体としての意見の聴取がありました。

普及啓発の取組として「処分通知等に電子署名を行う場合におけるクラウド型電子署名サービスの利用ガイド」の策定、公表を行いました。この「利用ガイド」は、地方公共団体等が住民、事業者等に交付する処分通知等に電子署名を行うに際してクラウド型電子署名サービスを利用しようとする場合に組織内での運用の参考としていただけるようになっております。

1.1版への改訂にあたっては、兵庫県庁での事例を取材させていただきました。兵庫県様からも本ガイドは「参考になる」とのご感想をお伺いしました。

ここからは、私の代表理事としての所信の表明に替えたいと思います。

まずはじめに、当協議会の運営においては、「会員満足度の向上」が最も大事な目標であると考えております。会員企業、各種イベントにご参加くださる事業の責任者様に、加盟のベネフィットを実感していただける施策を充実させてまいります。

業界としては、「さらなる付加価値の提供」をテーマとして取り組みたいと考えております。“手軽にできる電子契約プラットフォーム”にとどまらない電子署名サービスの存在意義を追求する取組を各社と切磋琢磨しながら進めていきます。

現在我々の多くのお客様は東京圏所在の企業ではないかと推測されますが、地方所在の企業へも日本全国普及させたい、また例えば高齢者にも身構えずに使えるようなサービスを提供したいと思います。行政・地方議会のDXにも貢献していきます。

業界団体としての政策活動は引き続き重要な活動と認識しております。事務局による政策動向に関する情報提供が適時適切にできるよう努力します。また、会員のニーズをお伺いする必要もあると感じております。会員各企業が感じる政策課題もぜひ共有いただければありがたいと思います。

CeSSA会員各社の紹介

続いて、CeSSAを構成している会員各社が紹介されました。CeSSA会員(2024年4月1日現在)は次の通りです。

【CeSSA会員のご紹介(全11社)】
・アドビ株式会社
・jinjer株式会社
・ドキュサイン・ジャパン株式会社
・フリー株式会社
・弁護士ドットコム株式会社
・株式会社マネーフォワード
・株式会社TeraDox
・SMBCクラウドサイン株式会社
・株式会社KENZO
・GMOグローバルサイン・ホールディングス株式会社
・株式会社ベクターホールディングス

関係省庁による講演

今回のコングレスでは、商業登記電子証明書やGビズIDといった法人IDの利便性の向上施策について、デジタル庁 デジタル社会共通機能グループ 企画官 吉田泰己(よしだひろき)氏より最近の取組や今後の見込みに関する講演が行われました。

デジタル庁 デジタル社会共通機能グループ 企画官 吉田泰己(よしだひろき)氏

講演では、事業者の行政手続きに関するシステム整備の全体像を整理した上で、認証・署名はさまざまな手続きで利用される共通機能として位置付けられることが解説されました。

また、GビズID(事業者共通認証基盤)について、2024年5月時点でアカウントの発行累計数は115万件、接続サービス数は188サービスとなっており、2020年の運用開始より利用者数と接続先サービス数を順調に伸ばしている旨の報告もありました。

講演後の質疑応答では、e-GOVとの統合についてや、代表者のマイナンバーカード署名を利用するフローを設計した背景についての質問があったほか、オンライン完結でのgBizIDプライム発行対象の拡大について意見が交わされました。

来賓紹介、来賓挨拶

続いて、来賓紹介、来賓挨拶の時間では、当日の来賓者からの祝辞のほか、デジタル庁 デジタル大臣 衆議院議員 河野太郎氏からのビデオメッセージが放映されました。

デジタル庁 デジタル大臣 衆議院議員 河野太郎氏からのビデオメッセージ放映中の様子

河野氏のビデオメッセージでは、電子署名が社会のデジタル化に寄与する重要な役割を担っていることに改めて言及した上で、今年1月に一部改定されたデジタル庁・法務省による「利用者の指示に基づきサービス提供事業者自身の署名鍵により暗号化等を行う電子契約サービスに関するQ&A(電子署名法第3条関係)」に関するヒアリングにCeSSAが協力したことへの御礼の言葉が述べられました。

また、昨年4月にデジタル庁が作成した処分通知のデジタル化に関する基本的な考え方を補足するガイドラインとして、クラウド型電子署名サービスを利用しようとしている自治体に向けて処分通知に電子署名を行う場合の利用ガイドをCeSSAが作成したことに関しても、「精力的な活動をありがたく思っており、こうした取り組みも自治体における業務のデジタル化に寄与すると考えている」と述べられており、引き続き日本のデジタル化のスピードを止めることなく進めていきたいという意思表明が行われました。

なお、当日紹介された来賓者のお名前・ご所属は次の通りです。

【紹介された来賓者】
・デジタル庁 デジタル社会共通機能グループ 参事官 杦浦維勝(すぎうらのりまさ)氏
・デジタル庁 デジタル社会共通機能グループ企画官 吉田泰己(よしだひろき)様
・法務省民事局商事課 植月結可(うえつきゆいか)氏、田中将平(たなかしょうへい)氏
・CeSSAアドバイザー/弁護士 水井大(みずいだい)氏
・CeSSAアドバイザー/弁護士 落合孝文(おちあいたかふみ)氏

会員による取組等の報告

続いて、CeSSA会員による取組等の報告として、フリー株式会社 政府渉外マネージャー 兼 人事労務プロダクトチーム プロダクトマネージャー 髙橋歩(たかはしあゆみ)氏より、「電子署名の更なる普及に向けた商業登記電子証明書の課題について」と題した講演が行われました。

フリー株式会社 政府渉外マネージャー 兼 人事労務プロダクトチーム プロダクトマネージャー 髙橋歩(たかはしあゆみ)氏

商業登記電子証明書とは、登記所(法務局)が発行している証明書で、法人の代表者名義で行う商業登記(法人登記)申請や社会保険・労働関係手続(e-Gov等)等のオンライン申請の電子署名として利用することが可能になっています。

講演冒頭ではまずCeSSA会員企業であるドキュサイン・ジャパン株式会社による「電子署名レポート2023」の引用により電子署名の普及状況を振り返りが行われました。同調査によれば、電子契約/署名サービスの使用経験があるとする回答者は7割超であることから、電子署名のプライベートでの利用シーンが増加し、日常的なサービスとして浸透してきている状況が分かりました。

さらに、本講演ではCeSSA会員企業の利用者に向けて2024年6月10日~20日の間に実施された「行政のオンライン手続きに必要な商業登記電子証明書に関するアンケート(有効回答数126名)」の結果報告が行われました。

アンケート結果から判明した商業登記電子署名に関する課題のまとめは次の通りです。

・商業登記電子証明書は、比較的DXが進んでいる電子署名・契約ユーザーにおいて認知度7割強、利用率5割弱。法人による電子での行政手続きのトラストアンカーとしての普及推進が極めて重要である

・商業登記電子証明書を既に使っているユーザーにとっての主なペインは、①申請・利用時のローカル環境構築、②商業登記電子認証ソフトのUI/UX、③証明期間が短い・登記事項変更があると失効してしまうことである

・利用を検討したが脱落してしまった層も同様のペインを抱えており、特に商業登記の電子申請をしたくても紙に切り替えてしまっているのが現状。法人ベースレジストリが適時更新できる起点となる手続きでの電子申請・完結を推進すべきである

・普段使いのクラウド型電子署名・契約サービスにおいてオールインワンで申請・利用を行いたいという一定のニーズがあり、申請・認証部分でのAPI連携等は検討の余地がある

フォトセッション

コングレスの最後では、当日現地参加された来賓の方々とCeSSA代表、アドバイザーの皆様とのフォトセッションが実施され、2024年度コングレスの幕が閉じられました。

なお、当協議会では正会員・賛助会員の募集を随時受け付けているため、ご興味をお持ちの方はこちらの公式サイトをご覧ください。

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この記事を書いたライター

弁護士ドットコム クラウドサインブログ編集部

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