電子契約利用企業の実態調査で分かったハンコの使用が残る理由
電子契約サービスを利用中の方の中には、「電子契約サービスを導入したものの、社内では未だに押印手続きが残っている」「できる限りペーパーレス化を進めたいが、実際は紙と電子の契約が混在している」など、書類の電子化がなかなか進まないという方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そこで本記事では、クラウドサイン導入中の企業に実施した、紙の文書に印鑑(以下「ハンコ」)を押すという手続きに関する実態調査の結果を報告します。社外向け書類と社内向け書類、それぞれの結果から、なぜハンコ手続きが残っているのかがわかりますので、電子契約の活用を推進していきたい方はぜひご一読ください。
1.調査概要
クラウドサインを導入いただいているお客さまを対象に、2024年6月14日〜25日までを回答期間として、社内におけるハンコの使用状況を尋ねる調査を実施し、209社から回答を得ました。
調査機関:プロフェッショナルテック総研(弁護士ドットコム株式会社内)
調査方法:クラウドサイン®導入企業を対象にアンケートを実施
調査対象:クラウドサイン®導入企業209社
調査期間:2024年6月14日〜6月25日
2.社外向け書類のハンコの使用実態
2-1.社外向け書類のハンコ使用について、「ある」は8割超
この1年間の業務で、社外向け書類でハンコを使う手続きに関わった経験があるかを尋ねたところ、「ある」が84.7%となりました。
2-2.社外向けでハンコの使用頻度が高い書類1位は、「契約書」の86.4%
社外向け書類でハンコを使う手続きは、どの書類で発生したかを尋ねたところ、「契約書」が86.4%と最多を占め、次いで「公的な申請書類など」が43.5%、「注文書」が39.0%、「請求書」が32.8%などとなりました。
2-3.社外向けでハンコの使用が続いている理由は、「顧客や取引先の意向で電子化が難しいから」が65.0%
社外向け書類でなぜハンコの使用が続いているのかを尋ねたところ、「顧客や取引先の意向で電子化が難しいから」が65.0%と、顧客や取引先の意思決定による影響が大きいことがわかりました。
自由回答でも「先方都合によるもので当方ではどうにもできない」「電子印に抵抗がある顧客も未だに多く、自社で対応できても推進できないケースがある」という声がありました。
その他には、「自治体は電子契約での対応が不可でいまだにハンコ」など、デジタル化を推進しているはずの行政手続きにおいても、いまだにハンコ手続きが残っているようです。
3.社内向け書類のハンコの使用実態
3-1.社内向け書類のハンコ使用について、「ある」は7割
この1年間の業務で、社内向け書類でハンコを使う手続きに関わった経験があるかを尋ねたところ、「ある」が69.9%となりました。
3-2.社内向けでハンコの使用頻度が高い書類1位は、「各種申請書」の61.0%
社内向け書類でハンコを使う手続きは、どの書類で発生したかを尋ねたところ、「各種申請書類」が61.0%最多となり、次いで「議事録」が36.3%、「稟議書」が30.8%、「回覧文書」が30.1%などとなりました。
その他の回答には、「ISO関連の記録類」「経理書類」などがありました。
3-3.社内向けでハンコの使用が続いている理由は、「昔からの慣習で、変えることにコストがかかるから」が34.9%
社内向け書類でなぜハンコの使用が続いているのかを尋ねたところ、「昔からの慣習で、変えることにコストがかかるから」が34.9%の一方で、「使いやすい電子化のシステムを導入できていないから」が27.4%、と、よいシステムにめぐりあえれば、導入するという意思を感じられる人も一定数いることがわかりました。
その他の回答には、「回覧文書が別組織から紙媒体で提供されるため」、「導入できている手続きとできていない手続きが混在するから」など、同じ会社内でもシステム導入にばらつきがあったり、導入を進めている過程のため、完全な電子化に至っていないケースもあるようです。
自由回答では、「ハンコの押す向きで否定的な意見を持っていると上司が言い出した時は何事かと思った」「判子を曲がって押した時にやり直しを指示されるが、紙と時間、手間の無駄」「ハンコの方が丁寧という気配が残っている」などの不満を抱いている人もいました。
4.社内でのハンコの使用をやめるべきか?どうしたらなくなるのか?
4-1.社内でのハンコの使用をやめるべきか、「思う」が7割
社内でハンコの使用をやめるべきかを尋ねたところ、「思う」が69.9%となり、「思わない」の11.0%、「わからない」の19.1%を大きく上回りました。
4-2.どうしたらハンコの使用がなくなるかは、「使いやすい電子承認・契約システムが普及する」が27.4%
社内でどうしたらハンコの使用がなくなると思うかを尋ねたところ、「使いやすい電子承認・契約システムが普及する」が27.4%、「制度的に押印の必要な書類が電子化される」が23.3%、「社会全体のDXが進んで、対外的なやりとりも含めて、押印に否定的な意識が高まる」が22.6%などとなりました。
また、自由回答で、ハンコの使用について聞きました。以下のようなものです。
【世の中の意識改革が必要】
「まだまだハンコ文化が根強い、社会全体で変わらないと難しい」
「社会全体でハンコのいらない効率的な社会になるといいと思います」
【ハンコはコストが見えにくい】
「一番変えづらいのが社内議事録でして、ハンコを押す側の人間にとっては、全部お膳立てがされて、ただハンコを押すだけなので、特に手間がかかっていない現状があることが、覆すのに難しい点。経営者のような社会上位層に「物理的なハンコいらないよね」の気風が強まればいいなと思う」
「現状維持は、コストが見えない(人件費のみ)ので、保守派には有利」
【ハンコ文化を残したい】
「文化としては残すべきだと考えるので、社長名義の文書等に限るべき」
「日本の文化みたいなところがあるから、何らかの形で残ってほしい」
5.まとめ
この調査において、改めて実態を整理すると、社外書類だけでなく社内書類においても、ハンコの使用が残っていました。社内向けの書類の場合、「取引先からの要望」「行政が対応していない」などの外部要因は存在せず、あくまで自社内の課題となります。
そこで、「昔からの慣習で、変えることにコストがかかるから」というのは、まさにデジタル・トランスフォーメーションを進める上での組織的な課題と言えるでしょう。電子化だけでなく、そもそも押印が本来は不要な書類もあるはずです。それぞれの書類に本当にハンコが必要なのか、社内向けの書類も含めて見直してみてはいかがでしょうか。
クラウドサインにおいても、企業におけるデジタル・トランスメーションを推進するべく、電子契約の普及により一層力を入れていく所存です。
なお、クラウドサインではこれから電子契約サービスを比較検討する方に向けて「電子契約の始め方完全ガイド」をご用意しています。「電子契約を社内導入するための手順」や「クラウドサインの利用手順」「よくあるご質問」など、導入前に知っておきたい情報を網羅して解説しているため、導入検討時に抱いている疑問や不安を解消することが可能です。下記リンクから無料でご入手できますので、ぜひご活用ください。
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関連リンク(外部)
<電子契約利用企業の実態調査>電子契約利用企業の8割超が「今でもハンコを使用」〜契約書、公的申請書の利用が上位〜(PR TIMES)
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今すぐ相談この記事を書いたライター
弁護士ドットコム クラウドサインブログ編集部
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