クラウド型電子署名サービス協議会によるデジタル庁への意見提言
弁護士ドットコムも加盟する「クラウド型電子署名サービス協議会」が、デジタル庁で開催された「トラストを確保したDX推進サブワーキンググループ」で意見提言を行いました。本記事では、その発表の概要をコンパクトにまとめます。
デジタル庁「トラストを確保したDX推進サブワーキンググループ」とは
トラストを確保したDX推進サブワーキンググループとは、「データ戦略推進ワーキンググループの開催について」(令和3年9月6日デジタル社会推進会議議長決定)第4項の規定に基づき設置された、デジタルトランスフォーメーションの具体的な推進方策を検討する会議体です。
企業の現場では、DXといってもまだまだ「脱ハンコ」がようやく端緒についたばかり。国家を挙げてデジタル社会の形成に資するデータ戦略を推進しDXを成功させるためには、全体を大きく捉え幅広い議論を取りまとめていく必要があります。
そこでデジタル庁では、デジタル社会推進会議令第4条の規定に基づき、データ戦略推進ワーキンググループを設置してこの国家DXという壮大なテーマをイシューごとに分解しながらプロジェクトを進行しています。本会議「トラストを確保したDX推進サブワーキンググループ」は、そのデータ戦略推進WGにぶら下がる会議体として位置付けられています。
本サブWGで行われる議論は、大きく以下5点と定義されています。
- トラストスコープの再整理
- トラスト確保の実態調査
- ID及びトラストサービスに関するアシュアランスレベルの整理
- 技術発展やトラストサービス利用者の利便性増大が可能となる枠組みの基本的考え方
- トラスト確保に向けた国の関与の在り方
このうち、特に4をアプリケーションレイヤーで具体化する電子署名サービスを支える当事者の一人として、弁護士ドットコムも加盟する「クラウド型電子署名サービス協議会」がこのサブワーキンググループに参加しています。
クラウド型電子署名サービス協議会が行った意見提言の概要
そして2021年12月27日、この「トラストを確保したDX推進サブワーキンググループ」の第3回会合に、クラウド型電子署名サービス協議会の代表理事として弊社橘が出席し、デジタル庁が掲げる「デジタル原則」の実現を支えるクラウド型電子署名サービス普及促進の必要性について、プレゼンテーションを行いました。
当日のプレゼンでは、協議会7社合同で行った調査結果を踏まえ、以下のポイントに絞って説明を行いました。
- 企業間取引における実印/非実印使用率を契約類型ごとに分析すると、実印を用いた取引自体が少なく、デジタル庁が目指すトラストレベルが上振れしているおそれがある
- 認定認証事業に代表される厳格なトラストサービスの市場は、令和2年のコロナ禍においても限定的であり、高いトラストレベルにこだわるユーザーは多くない
- 世界的にみても、当事者署名型よりも事業者署名型の電子署名が支持を得ている
こうした事実を踏まえ、実印相当のハイレベルな電子署名のみに「お墨付き」を与えるのでなく、UI・UXと安全性がバランスしたさまざまな電子署名の選択肢を法的にも認めていくことが重要であることを述べました。
本サブWGの審議は、残念ながら非公開とされています。そのため、議事録が公開されるまではデジタル庁ウェブサイト公表資料以上の内容をお伝えできないのですが、このプレゼンテーションに対して行われた質疑応答においては、事業者署名型電子契約サービスに懐疑的な構成員からの意見や質問も寄せられました。
2022年トラスト法制度改革に向けて
クラウド型電子署名というサービスを通じて顧客が求める新しい価値を提供するためには、その障害となる法制度の改革・改善が必要です。しかし、こうしたデジタル庁における会議体に列席する方々の出身母体企業は様々であり、クラウド型電子署名サービスのような新興勢力の主張に反対する方々が少なくないのも事実です。
そうした逆風の中でこそ依って立つべきは「ユーザーの声」です。業界団体は、事業者の既得権益を維持するためでなく、ユーザーの声を正確に把握し、その声をデジタル庁をはじめとするステークホルダーにお届けするための存在であるべきと考えます。
2022年も引き続き本協議会の活動にご協力・ご支援をいただきますよう、よろしくお願いいたします。
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