印鑑証明書とは?印鑑証明書取得実務と効率化の方法
押印とセットで発生するバックオフィス業務の一つに、印鑑証明書の取得業務がある。本記事では、筆者の経験を元に、印鑑証明書の取得方法の選択肢を整理し、初めての方にもわかるよう実務を解説するだけでなく、ベテランの方向けにも役立つ効率化の方法を提案したい。
印鑑証明書とは
印鑑証明書とは、書類に付された印影が実印として登録されている印鑑であることを証明するための証明書 である。
法人の場合、典型例として以下のケースでこの印鑑証明書が必要となる。
- 取引先が契約締結の際に請求してきたとき
- 金融機関において新規口座を開設するとき
- 不動産関係の契約を締結するとき
こうした書類には、代表取締役の実印の押印が求められ、それが本物かどうかを確かめる目的である。
なお、「印影」「印鑑」「実印」等の押印にまつわる用語については、本メディアの記事「印鑑の法律知識 —契約書押印業務における頻出用語まとめ」を確認するとよいだろう。
印鑑証明書の取得実務
会社によってまちまちではあるが、印鑑証明書を取得する業務を取り扱う部署は、法務部が担当しているというケースが多い。
取得にはいくつかの方法が用意されている。以下これを全て紹介してみたい。
方法その1「窓口での請求」
1つ目の方法は、直接最寄りの法務局に行って取得する方法 である。
法務局での手続きに必要なものは以下である。
- 印鑑カード
- 現金
これを持って最寄りの法務局に着いたら、
- 申請書に必要事項を記入して収入印紙を貼り付けて窓口に提出する
- 発行機に印鑑カードを入れて会社代表者の生年月日を入力して請求し、呼び出し時に収入印紙で手数料分を支払う
このいずれかの方法で取得することになる。
これが最短で取得可能な方法であるため、その日中や翌日までに印鑑証明書が必要な場合には、そもそも選択肢がこの方法しかない。一方、法務局に行かなければならないため、時間がかかる。筆者の場合だと、法務局まで往復で45分ほどかかる。
注意点として、印鑑登録者(代表取締役等)の生年月日などの必要な情報をメモしておかなければならない点がある。筆者はこれを忘れ、往復45分の道のりを泣く泣く引き返した経験がある。
取得までにかかる時間は数時間ほど、かかるコストは収入印紙450円+法務局までの往復時間及び作業時間10分ほどの人件費である。
方法その2「郵送による請求」
2つ目の方法は、郵送により申請、法務局より返送してもらう方法 である。
- 法務局のwebページでダウンロードできる申請書
- 印鑑カード
- 返信用封筒
を法務局に郵送して申請する。そうすると、法務局から印鑑カードの返送とともに印鑑証明書が送られてくる。
注意しなければならないのは、印鑑カードが戻ってくるまでは新たな申請ができないことだ。そのため、頻繁に印鑑証明書を取得しなければならないような環境にある場合は、この方法はあまりお勧めしない。
取得までにかかる時間は5営業日ほど、かかるコストは収入印紙450円+往復郵送費740円(レターパックライトの場合)+作業時間20分ほどの人件費である。
方法その3「オンライン請求」
3つ目の方法は、「申請用総合ソフト」という法務局が提供するシステムを用いてオンライン申請する方法 である。
- 申請用総合ソフトを法務局のwebページからダウンロードする
- ソフト上で会社代表者の生年月日等の情報を入力する
- 電子証明書を付与する
- インターネットバンキング等で手数料を支払う
大雑把にはこのような流れだ。なお、取得までにかかる時間は3営業日ほど、かかるコストは手数料410円+作業時間10分ほどの人件費である。
これだけ聞くと、そう複雑ではないように思える。しかし、これには大きな2つのハードルがある。
- 電子証明書の取得が面倒
- 申請用総合ソフトでの申請が面倒
の2つだ。それぞれ、簡単に説明する。
(1)電子証明書の取得がなぜ面倒くさいのか
実施すること自体は、法務局が提供している「商業登記電子認証ソフト」をダウンロード(前述の「申請用総合ソフト」とは異なるもの)し、マニュアルに沿って進めていくだけである。
だが、その申請過程で
- 「鍵ペアファイル」
- 「使用休止届出用暗証コード」
- 「シリアル番号」
- 「電子証明書パスワード」
- 「ハッシュ値」
等々、似たようなコードやよく分からない用語が出てくるのだ。
一般的な法務担当者が実際に申請の準備ができるまでに、このシステムと少なくとも1時間ぐらいは格闘することになるだろう。
(2)申請用総合ソフトでの申請がなぜ面倒くさいのか
リーガルテック等のクラウドサービスに慣れ親しんでいると、ブラウザとは別のソフトを立ち上げる作業がまず億劫だ。
ソフト上での操作も直感的なものではなく、初めて使用する者にとっては使いづらい設計になっている。(ただし、ソフトはかなり広範な使用方法があるので、特定の用途に使用することを前提にしていないということが要因の一つではある。)
さらに、申請まで辿り着けても、その後のインターネットバンキング等での支払いに地味に時間がかかり、面倒くさいのである。
方法その4「Graffer法人証明書請求の利用」
4つ目の方法は、「Graffer法人証明書請求」という民間のサービスを利用する方法 である。
「Graffer法人証明書請求」とは、行政手続きの効率化サービスを手掛ける株式会社グラファーが提供するサービスで、印鑑証明書や登記簿謄本を取り寄せる申請がオンラインで完結する、リーガルテックやガブテック(Govtech)と呼ばれる分野のサービスだ。
簡単な流れとしては以下の3ステップになる
- Graffer法人証明書請求にアカウントを登録し、ログインする
- 必要な証明書を選択する
- 請求する
非常にシンプルである。支払方法もクレジットでの清算が可能で、アカウントに情報を登録しているため、支払いのための手間はほぼ発生しない。作業に要する時間は、なんとわずか1分である。
ただし、こちらも方法その3と同様に、電子証明書の取得が必要である。やはりあの複雑な電子証明書の取得手順を踏む必要があるのか…と落ち込んでいる方、心配しないでほしい。なんとGrafferは、複雑な電子証明書の取得手順にも希望の光となるアプローチを用意しているのだ。それが「Graffer電子証明書取得サポート」である。
簡単に言うと、最低限必要な情報を入力するだけで、Grafferが申請者に代わって法務局の専用ソフトを操作してくれるというサービスだ。申請後は法務局に提出するために必要なキットが手元に届き、それに押印して法務局に提出する。あの複雑だった商業登記電子認証ソフトによる取得方法はなんだったのかと思わせるほど、簡単でストレスを感じさせないサービスである。
取得にかかる作業時間は、実に10分。取得までにかかる時間は3営業日ほど、かかるコストは手数料1,298円(ただし請求方法により割引あり)+作業時間1分ほどの人件費である。
初めてこのサービスを使用したときは衝撃的だった。この業務はもはや行政が変わらないかぎり改善の余地は無いと思い込んでいただけに、まさかテクノロジーが解決してくれるなんて夢にも思わなかったのだ。こんなふうに民間サービスが行政を刺激し、行政自体がこれらのサービスを採用するといった流れが更に加速することを、一人の法務部員として切に願う。
電子署名が普及する日までの間、どの方法を採用すべきか
以上、印鑑証明書を取得する4つの方法を紹介した。
手間だけで見れば間違いなくGraffer法人証明書請求を利用すべきだが、コスト優先で常に大量に請求するならオンライン請求が良い。頻度が極めて少ないなら、郵送による方法でもいいだろう。会社のすぐ隣に法務局があるなら、常に窓口に行くのが合理的だ。手間を削減するために、コスト度外視で大量に取得しておくというのも一つの手だ。
いずれかの方法が常に最も優れているといったような優劣はなく、状況に応じて合理的な手段を選べるように しておきたい。
「また依頼が来たか。期限はいつだ?」
「5日後か。今日中に郵送しないと間に合わないか…。」
「印鑑カードは…貸出中か。」
「郵送では間に合わないな。」
「印鑑カードが返送されたら、直接法務局の窓口に行くか…。」
企業の法務部門では、日々こんなことが繰り返されている。筆者も例外ではない。印鑑証明書の請求を楽にしてくれるような代行サービスが出てきてくれたことは嬉しいが、根本的な解決といえるかといえばそれは違うだろう。電子署名が普及し、印鑑証明書自体が必要なくなる日まで、この業務は続き・コストは発生し続ける のである。
その間、どんな選択肢があるのかを調べずに、盲目的に過去のやり方に従い続けているのなら、是非今一度、はたしてその方法が最善なのかを検討してみてもよいだろう。
(文 あいぱる, 画像 吉野秀宏 / PIXTA)
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