IT書面一括法ふたたび—政府が示す押印廃止のロードマップ
令和3年通常国会に、押印や書面交付義務の緩和を認める法案が提出されます。平成12年のIT書面一括法を上書きし、法令上も押印廃止とデジタルファーストが徹底されることになります。
内閣府が押印廃止ロードマップを公開
令和2年12月22日付規制改革推進会議において「当面の規制改革の実施要項」が定められ、決定事項に関する文書が内閣府のウェブサイトに公表されています。
本要項では、
- 押印の見直しに関する法令改正
- 行政におけるクラウド型の電子署名の活用
- 電子帳簿等保存制度の見直し
- 領収書の電子化に向けた見直し
といった 押印廃止とペーパーレスを徹底するための施策が列挙され、それぞれのタスクごとに実施期限も定められました 。
同会議が令和2年7月に公表した「規制改革推進に関する答申」で表明された項目のほとんどが期限内に実現されたことから、今回のロードマップの実現可能性も、相当に高いものであることが予想されます。
次期通常国会に「令和3年版IT書面一括法」提出か
このロードマップを読み解くと、次期国会に「令和3年版IT書面一括法」が提出されるであろうことが予想できます。
「IT書面一括法」の名前には、聞き覚えのある方もいらっしゃるかもしれません。かつて日本でIT革命が叫ばれた2000年(平成12年)、「書面の交付等に関する情報通信の技術の利用のための関係法律の整備に関する法律」(IT書面一括法)が制定され、書面による手続きを義務付けていた法令が一括で改正されました。
しかし残念なことに、平成12年当時の判断では一部書面が電子化対象から除外され、「一括」とは名ばかりの中途半端な結果に終わっていた という経緯があります。その理由について述べられていた当時の資料があります。
特に上記除外理由の①と④に該当する文書として、2000年当時に電磁的記録の採用が見送られ契約の電子化を阻害してきたのが、今回の押印廃止ロードマップにも掲載された以下4つの書面です。
- 特定商取引法の特定継続的役務提供に係る契約前後の書面
- 不動産賃貸・売買等の契約に係る書面
- 借地借家法における定期借家契約書面
- 建築士法における重要事項説明書
長い間電子化が望まれていたこれらの書面の電子化を認める法改正について、「次期通常国会に提出予定」と明記 されています。法案の可決成立から施行まで1年程度の期間を設けるとすると、早ければ2022年にも電磁的方法による提供が認められる運びとなります。
これらの分野はいままでクラウドサイン等を使った電子締結や交付をしたくてもできず(関連記事:電子化に規制が残る文書と契約類型のまとめリスト)、お客様からの期待の声も大きかった分野だけに、朗報とお感じになる方も多いのではないでしょうか。
派遣個別契約やマンション管理委託契約等着々と進む契約分野の押印廃止と電子化
本法案に先行する形で、すでに法改正による書面化義務の規制緩和も進んでいます。
一つは、すでに人材業界にとって大きなニュースとして歓迎されていますが、改正労働者派遣法施行規則の施行に伴い、2021年1月1日より派遣個別契約の電子化が認められ ました(関連記事:労働者派遣契約の完全電子化解禁へ—派遣法施行規則の令和3年1月改正)。
また、現時点では法令の公布のみで施行日については公式には発表されていませんが、関係者に取材したところ、2021年3月に改正マンション管理適正化法の73条3項を新設する改正法の施行が予定 されているとのこと。これまで書面化が必須とされていたマンション管理委託契約の締結に関する交付書面も、区分所有者等の承諾を得ることにより電子化可能となります。
2021年から2022年にかけては、国を挙げての契約分野の押印廃止と電子化が着々と進行する年となりそうです。
(橋詰)
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