電子契約サービス導入失敗リスクを最小化する方法
電子契約サービス事業者のウェブサイトには、輝かしい導入成功事例がいくつも掲載されています。一方で、電子契約導入に失敗してしまう企業がまったくないわけではありません。電子契約への移行を断念した事例から学ぶべき教訓とは。
多くの導入実績があるからこそ知りうる電子契約導入失敗事例
2020年11月4日にオンラインで開催された、BUSINESS LAWYERS主催「Legal Innovation Conference 法務のDX」。
太陽誘電佐々木様・ビズリーチ小田様・ロコガイド片岡様・AirBnB渡部様をゲストにお迎えし、法務部門としてデジタルトランスフォーメーションを推進するにあたり、リーガルテックとどのように向き合っているのか、生の声を聞くことができる貴重な機会となりました。
そんな中、リーガルテック側のHubble、LegalForce、LawFlow、Business Lawyers Libraryのみなさまに混じり、クラウドサインを代表してマーケティングチーム高橋とともに私も登壇。
民間の脱ハンコと行政のハンコ廃止が進む中、たんなる導入成功事例紹介にとどまらない、もう少し生生しいお話をということで、導入社数No.1だからこそ数多く知りうる電子契約導入「失敗」事例と、そこから得られる教訓 について、お話しする機会をいただきました。
大企業ほど社内推進でつまずく傾向あり
クラウドサインは、おかげさまで大手企業からベンチャーまで数多くのお客様にご利用いただく裾野の広いサービスとなりました。それだけに、残念ながら導入に失敗するケースにも、他の事業者よりも数多く遭遇しています。
もちろん、私たちのサービスの至らなさも原因ではあるのですが、その導入失敗の主な原因を2020年1月〜9月末までの早期解約理由から分析してみると、大企業ほど社内の事情で推進につまずき、電子契約への移行自体を見合わせる ケースが多いことがわかります。
ビジネスモデルが長期契約前提のSaaSだけに解約率自体が低いことからデータサンプルの偏りもあるかもしれません。また(成功事例とは異なり)お客様への詳細なヒアリングにも限界があり、分析の正確性を担保するのは難しい面もあります。それでも、従業員規模が増えれば増えるほど、社内の変革をうまく乗り越えられずに電子化自体を取りやめているという事実が観察できます。
カンファレンスでは、これを裏付ける個社ごとの具体的な失敗事例についてもご紹介をさせていただきました。
電子契約導入失敗リスクを最小化する技術標準「PAdES」
電子契約への移行に踏み切れない事情として、当日オンラインでいただいたご意見の中に、「電子契約サービスが乱立していて”標準”がわからず、今どれかを選ぶとなるとベンダーロックインが怖くて踏み切れない」というものがありました。確かに、クラウドサービスの一般的なリスクとして、自社のデータが文字通り囲い込まれ、他のサービスに移行しようと思ってもデータポータビリティが問題となりがちです。
この点、クラウド上でのアクセスログのみを契約締結の証拠とするタイプのサービスを選択すると、まさにこのリスクに直面することになってしまうわけですが、実は、電子署名の方式にはISOが定める「PAdES(パデス / PDF Advanced Electronic Signatures)」という国際標準規格があります。
「長期署名」ともよばれるこの PAdESに準拠した電子署名入りファイルを提供するサービスであれば、電子契約サービス間の乗り換えも容易 となります。したがって、万が一そのサービスが社内事情に合わなかったとしても、ある種の保険が効くことになるわけです。
クラウドサインはこのPAdES方式を採用していることはもちろん、他社サービスで生成されたPAdES形式のファイルをクラウドサインにアップロードし、書類情報を追加していただくことで一元管理も可能です。
2020年、法律面では長らく不明確だった電子署名法の解釈に政府から統一見解が出され、事業者署名型電子契約サービスが標準となりつつあります。2021年以降は、技術面での標準にも適合しているかどうか、各電子契約サービスの姿勢が問われることになるでしょう。
nouvelle / PIXTA(ピクスタ)
(橋詰)
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