立会人型電子契約の導入リスク克服法—高橋郁夫ほか編『即実践‼︎電子契約』
インハウスローヤーとして電子契約導入経験を持つ弁護士らが、クラウド時代における電子契約サービス導入リスクの乗り越え方を具体的にアドバイスします。
電子契約を知り尽くした企業法務経験者らの手による解決策提供型FAQ集
第一東京弁護士会のIT法研究部会、そして電子契約ベンダー/電子契約導入ユーザー双方のインハウス経験も持つ弁護士のみなさまが共著された、導入実務に特化した電子契約本。出版社様より先行してご恵贈いただきました。
書籍情報
即実践!! 電子契約―電子契約・DX・文書管理(文書の電子化)の導入から運用まですべてを体験できる
- 著者:高橋郁夫/編集 北川祥一/編集 斎藤綾/編集 伊藤蔵人/編集 丸山修平/編集 星諒佑/編集 ほか
- 出版社:日本加除出版
- 出版年月:20200902
弊社でも何度となく電子契約セミナー・ウェビナーを開催し、その度にさまざまなご質問をいただきます。そして、真剣に電子契約導入をご検討いただいているお客様ほど、法律知識はご自身で事前に調査されているからか、質問をいただくことはそれほど多くありません。
その代わりに、私たち電子契約事業者によくいただく質問がこちらです。
「押印で回してきたいままでの業務を電子契約に移行するとしたら、どこをどう変えればいいのでしょう」
「他社はどんな工夫をしてリスクを処理しているんですか」
このうち「どこを」=電子契約導入時のつまずきポイントについては、法律誌やウェブメディア等での解説も充実し、ある程度類型化・体系化されてきたように思います。一方で難しいのは、「どう」=その企業に合った具体的な解決策の選択肢をアドバイスできるかという点です。これに関しては、実際に悩んだ経験者に聞いて回るに限ります。
本書は、電子契約の法律知識を当然カバーしつつも、この導入時の具体的ハウツー部分に特化した書籍となります。
立会人型(指図型)電子契約導入時の「そういえば、これどうするの?」をすべて解消
いつでもどこでもネットに接続して業務を行うようになった今、電子契約もクラウドを前提とした 立会人型(指図型)の電子契約が主流となっていますが、これには電子署名法が当初想定していたローカル型とは違うリスク もはらんでいます。
そこで本書は、安全だけを優先する従来型の電子契約導入シナリオに拘泥せず、
- 立会人型(指図型)電子契約に特有のリスクをどう克服すべきか
- そのリスク克服法を、実際の業務フロー・規程等・対外文書にどう落とし込んだらよいか
という疑問に応えるべく、前半の第1編では「上司の決裁を経ないまま押印された紙の契約書が500通存在している自動車部品メーカー」を舞台とした、法務部員同士の対話によるストーリー形式で実務対応策を提示します。
後半は、前半のストーリーで挙げられた法的論点と関連知識についてQ&A形式で深掘りしています。この役割分担によって、それぞれの読みやすさと読者のレベルに応じた使いわけに成功しています。
移行作業が始まらないと気づかないDX実務の困りごとを先に「体験」できる
電子契約の入門書が次々刊行されている中、独自性という意味では、やはり前半の「ストーリーで学ぶ実務」のパートが出色です。
- 画像としての印影は締結済み書面にあったほうがいいのか・むしろ無いほうがいいのか
- 契約書後文の具体的文言のバリエーション(片方が電子・片方が紙の場合など)
- 契約締結日と改変できないタイムスタンプとの関係整理
- 文書管理規程の変更ポイント
- 試験運用と効果測定の計画法
- 取引先に送付する電子契約移行に関する連絡状のサンプル
このような、担当者が移行作業に手を動かす段階になってようやく認識する細かな論点に対する対応 について、一般のDXコンサルタントでは提供できない具体的なノウハウや書式例を開陳してくださっています。
本書表紙のサブタイトルは「電子契約・DX・文書管理(文書の電子化)の導入から運用まですべてを体験できる」なのですが、この「体験」の意味とは、リアリティのあるストーリーを通じて登場人物たちの困りごとがまるで自分の身に降りかかったことのように読み進めていけるという点にあります。
冒頭にもご紹介したように、著者らが実際にインハウスローヤーとして電子契約導入プロジェクトに当事者として関わった経験を持っているからこそ、リアリティをもって書きおろすことができたものだと思います。
本書著者によるオンラインセミナーも開催
クラウドサインのような立会人型(指図型)電子契約の導入をご検討いただいている企業には、そのまま導入マニュアルとして活用できるほどのレベルに充実した本書。
現在、こちらをテキストとした有償オンラインセミナーを、出版社の日本加除出版株式会社さまと企画中 です。講師にはもちろん本書執筆陣をお迎えし、著者のご経験談を踏まえた解説をご提供できればと考えています。
開催は10月以降、複数回を予定しています。9月に入り次第、クラウドサインのメールマガジンや本メディアで詳細をお知らせいたします。
(橋詰)
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