電子契約の基礎知識法律・法改正・制度の解説

「電子契約サービスに関するQ&A」三省連名発表の意義

総務省・法務省・経済産業省の連名で「利用者の指示に基づきサービス提供事業者自身の署名鍵により暗号化等を行う電子契約サービスに関するQ&A」をリリース。事業者署名型のクラウドサインを電子署名法上の「電子署名」と認めた、初めての公式見解です。

事業者署名型電子契約サービスによる電子署名が法令上の要件を満たす基準が明らかに

日本にクラウドサインが生まれてから5年目を迎える2020年。この新型コロナ禍で注目を集める一方で、事業者署名型(立会人型)の電子署名法上の取扱いに疑問を呈する報道や一部事業者の独自見解に関心が集まるなど、利用者にも混乱が生じていました。

しかし、2020年7月17日、この議論にようやく終止符が打たれました。

電子署名法の主務官庁である総務省・法務省・経済産業省が、「利用者の指示に基づきサービス提供事業者自身の署名鍵により暗号化等を行う電子契約サービスに関するQ&A」を連名で発出。事業者署名型(指図型・立会人型とも呼ばれる)の電子署名も、電子署名法2条に定義される「電子署名」に該当 することにつき、公式見解を出したからです。

http://www.moj.go.jp/content/001323974.pdf 2020年7月20日最終アクセス
http://www.moj.go.jp/content/001323974.pdf 2020年7月20日最終アクセス

このQ&Aでは、事業者署名型(立会人型)電子契約サービスによる電子署名が電子署名法2条1項1号の要件を満たす基準が示されています。

・サービス提供事業者自身の署名鍵により暗号化を行うこと等によって当該文書の成立の真正性及びその後の非改変性を担保しようとするサービスであっても、技術的・機能的に見て、サービス提供事業者の意思が介在する余地がなく、利用者の意思のみに基づいて機械的に暗号化されたものであることが担保されていると認められる場合であれば、「当該措置を行った者」はサービス提供事業者ではなく、その利用者であると評価し得るものと考えられる。
・そして、上記サービスにおいて、例えば、サービス提供事業者に対して電子文書の送信を行った利用者やその日時等の情報を付随情報として確認することができるものになっているなど、当該電子文書に付された当該情報を含めての全体を1つの措置と捉え直すことよって、電子文書について行われた当該措置が利用者の意思に基づいていることが明らかになる場合には,これらを全体として1つの措置と捉え直すことにより、「当該措置を行った者(=当該利用者)の作成に係るものであることを示すためのものであること」という要件(電子署名法第2条第1項第1号)を満たす ことになるものと考えられる。

電子契約サービスの中にも、デジタル署名技術を用いないものやタイムスタンプのないものなど、様々な方式があります。

その中でもクラウドサインは、電子署名の措置を指図した者やその時刻がPDFファイルの署名パネルに記録・明示される方法を採用し、第三者からみてもわかりやすく安心なクラウド型電子契約サービスを提供してきました。もちろん、今回のQ&A公式見解にも適合する電子契約サービスとなっています。

総務省・法務省・経済産業省の三省連名文書の重み

2020年5月以降、内閣府及び規制改革推進会議のリーダーシップのもと、書面主義・押印原則・対面主義の見直しが急ピッチで進められてきました。

その過程で、クラウド型電子契約サービスが電子署名法の「電子署名」に該当するであろうと読める見解が、すでに以下のとおり複数出されています。

ところが、これまで出されたこれらの文書には、電子署名法の主務官庁の一つである総務省の名前がなぜかありませんでした。

そんな中、今回のQ&Aでは初めて総務省も加わり、電子署名法の主務官庁の三省そろい踏みで電子署名法に基づくクラウド署名の適法見解が正式に追認された 点に、大きな意義があります。

電子署名法2条1項を引用した100本を超える法令にも拡張

今回、クラウド署名が電子署名法上の「電子署名」に該当することが公式に認められたわけですが、このことは、電子署名法の解釈だけにとどまらない大きな可能性を秘めたものとなります。なぜなら、実は 本法の「電子署名」の定義が、100を超えるその他の法令に多数コピーされ使われているため です。

そのうちの象徴的な例として、国との契約を電子化するルールを定めた会計法49条の2の下位法令である契約事務取扱規則28条を引用します。

3項をご覧いただくと、紙と記名押印に代わる契約締結の方法として、電子署名法2条1項を満たす電子署名を電子ファイルに施す方法が指定されているのが、お分かりいただけると思います。

このように、電子署名法2条1項の定義をそのまま引いて作成された条文をもつ法令が、医療分野・投資分野・不動産分野など、多岐にわたる分野に存在する のです。

コロナ禍において、電子署名法に明るくない報道関係者や専門家の間では、クラウド署名に押印同様の推定効が発生するか否かという電子署名法3条の解釈論ばかり注目されていましたが、実のところ この2条をクリアすることこそが、日本の法律実務全体をデジタルトランスフォーメーションさせるための大きなポイント でした。

今回の「電子契約サービスに関するQ&A」を足掛かりに、契約書以外の法的文書を含めた日本全体のDX推進をクラウドサインでサポートできるよう、事業を推進してまいります。

画像: kash* / PIXTA(ピクスタ)

(橋詰)

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