法務省が商業登記に利用可能な電子署名サービスにクラウドサインを指定
商業登記のオンライン申請において、クラウドサインで電子署名を施した取締役会議事録や契約書面等を添付書類とすることが可能となりました。
クラウドサインの電子署名済みファイルが商業登記オンライン申請にも利用可能に
2020年6月15日付で、法務省のウェブサイトの「商業・法人登記のオンライン申請について」のページが更新されています。
このページでは、無料でダウンロードできる「申請用総合ソフト」を利用し、法務局に往訪せずにインターネットで登記申請を行う方法と、その際に必要となる電子証明書が指定されています。この度、その指定リストの中に「弁護士ドットコム株式会社が被認証者であるサイバートラスト社の電子証明書」が追加されました。
法務省より本リストに指定いただいたことで、クラウドサインをご利用いただき電子署名を施した取締役会議事録や契約書面等の電子ファイルを、登記申請の添付書類として提出していただくことが可能となります。
法務省の「商業登記オンライン申請」とは
商業登記は書面だけではなく、オンラインで行うことができます。ただし、その登記変動事項が発生したことを証明するために、商業登記法・商業登記規則の定めによって法務局から添付書類の提出を求められるケースがあります。たとえば、以下のような手続きが挙げられます(商業登記法46条2項)。
- 本店移転
- 株主名簿管理人の設置等
- 株式の発行
- 新株予約権の発行
こうした添付書類が必要となる登記申請をオンラインで行う場合には、たんに電子ファイルを添付するだけではだめで、その電子ファイルに法務省が指定する電子証明書による電子署名が必要です。そのためには会社の取締役全員が指定された電子証明書を準備しなければならず、加えて対象の電子ファイルに各人が自分で間違いなく電子署名を付与する一定のITリテラシーも必要で、その準備には多大なコストと手間がかかりました。
登記に関わる司法書士や企業法務等の専門家は、多くの登記申請をオンラインで行うようになり、近年では申請件数の約半数がオンラインで行われるようになっています。一方でなぜ残り半分がいまだに紙による申請のままなのかといえば、こうした 添付書類の電子化がスムーズにできないことが大きなボトルネックとなっていた ことが理由にあります。
今回、新たにクラウドサインおよび国内クラウド型電子署名サービス1社が、法務省の求める電子署名の要件を満たすものとして登記申請に利用可能となったことにより、クラウドサインユーザーの皆様は安心してさまざまな書類の電子化を進めていただけます。
引き続き取締役個人の実印または電子証明書提出が必要なケース
なお、法務省ウェブサイトの記載にもあるとおり、添付書面情報作成者が印鑑提出者(実印登録をする会社の代表取締役)でない場合であって、オンライン添付書面に市町村の印鑑証明書が必要とされているもの/添付書面に認証者の認証が必要とされている場合の認証者に関するものについては、これまでどおり、取締役個人の実印または個人の電子証明書提出が必要となります。
具体例としては
- 代表権を持つ取締役になる際の就任承諾書
- 代表権を持つ取締役を変更する際、新しい代表者を選任したことを証する書面
が挙げられます。類型としてはそれほど多くありませんが、詳しくは法務局または司法書士等専門家にご確認をお願いいたします。
商業登記オンライン申請利用時の留意点
なお、法務省より、クラウドサインユーザーの皆様に周知をお願いしたいこととして、以下2点をお預かりしています。ご利用の際はご留意ください。
(1) 商業登記電子証明書による電子署名を付与すること
商業登記のオンライン手続きにおいては、代表者の実印に代わるものとして、商業登記電子証明書による電子署名(以下「商業登記署名」といいます)を電子ファイルに併せて付与 する必要があります。
と言っても特に難しいことはなく、たとえば取締役会議事録であれば、代表者を含む参加取締役・監査役がクラウドサインで署名した電子ファイルに、後述する「申請用総合ソフト」を使って商業登記署名を上書きしていただくだけの作業となります。
(2)法務省指定の申請用総合ソフトを使用すること
(1)の 商業登記署名の付与を行う際は、法務省が指定する「申請用総合ソフト」(無料)を利用 して行なっていただくよう、お願いします。
Adobe Acrobat有償版と法務省が提供する「PDF署名プラグイン」を使用して電子署名を行う手法もあるのですが(クラウドサインでは検証済み)、この方法ですと登記所による電子ファイルの検証がスムーズに行えないため、とのことです。
今回の措置により、日本の商業登記実務のさらなるオンライン化・ペーパーレス化だけでなく、法律文書と手続きの電子化・オンライン化が進んだ利便性の高い社会の実現に寄与できればと考えます。引き続きのご支援をよろしくお願いいたします。
(橋詰)
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