利用規約を全部読んで同意するユーザーは何%?—公正取引委員会「デジタル広告の取引実態に関する中間報告書」
公正取引委員会が、インターネットサービスの利用規約がどの程度読まれているか・いないかを明らかにする、興味深いアンケートを実施しています。
利用規約が読まれていない実態を定量化した貴重なアンケート
2020年4月、公正取引委員会が、検索エンジン・SNSプラットフォーマーに関する独占禁止法・競争政策上問題となるおそれのある取引慣行等の有無につき、実態調査を実施しました。
興味深いことに、この実態調査の中で「利用規約」のあり方が注目されています。消費者が、規約の存在を認識し・読み・同意するという一連のプロセスをどの程度自覚的に行なっているのか、または行なっていないのかの調査を、2000名規模のアンケートにより実施しているのです。
検索エンジンや人気SNSは、その独占的な地位を振りかざし、利用規約に強引に同意をさせているのではないか? そうした観点から、かなり細かな質問が重ねられています。
利用規約を全部読んで同意するユーザーは5.5%
その結果が、報告書の後半75ページ以降に掲載されています。
以下、LINE・Twitter・Facebook等SNSの利用規約に関するアンケート回答から、利用規約の認知度・読了度に関して象徴的な部分 をいくつか取り上げて見てみましょう。
(1)利用規約の認知
まず、消費者としてこれらSNSを利用開始する際に、利用規約があること自体を認知していたか?という質問です。
当然のように「知っている」がほとんどかと思いきや、「どこにあるのか知らない」「知らない」など、SNS利用にあたり利用規約はほとんど気にしてないという回答も、合計40%超いらっしゃるのが驚きです。
(2)利用規約を読んでいるか
次に、(1)で認知をしていると回答した消費者の中で、実際はどのくらい読んでいるのかを質問しています。
認知はしているがところどころしか読んでいないという層が、合計72%にものぼります。
(3)どの程度読んでいるか
最後に、(2)で何らか読んではいる旨回答したユーザーに対し、読みの深さを尋ねています。
読んだとしても「読み飛ばす」「見出しのみ」のユーザーがほとんどであるという、現実で見かけるとおりの実態が数字として確かめられたのは、官が行なった大規模アンケートとしては初めてではないでしょうか。
これらをまとめると、利用規約をきちんと全部読んで同意するユーザーは5.5%(2000人中110人) となります。
ほとんどのユーザーは、利用規約を認知し目は通してはいるもののせいぜい飛ばし読みしかしていない。この手のアンケート回答に上振れバイアスがかかるのは当たり前で、しかしそれですら読んでいる人(「理解している人」ではない点に注意)が10%にも満たない現状をどう捉えるべきか。
テキストコミュニケーションをベースとした契約や利用規約による合意形成は、それでも法的に有効と言えるのか が、いま問われています。
読みやすい利用規約・読みやすいプライバシーポリシー追求の必要性
今回取り上げた「デジタル広告の取引実態に関する中間報告書」のアンケート情報は、毎週木曜日12:30-12:50の時間帯にデータサインさんが開催するZoomウェビナー「ランチタイムトーク」で教えていただいたもの。
以前からのデータサイン太田社長とのご縁もあり(関連記事:あなたの知らないうちにパーソナルデータが外部送信されていないかチェックする方法)、2020年6月4日の回に私も出演をさせていただいて、読みやすいプライバシーポリシーに求められる条件 について、Zoom上でディスカッションをさせていただきました。
法的文書としての精緻さと、多く見積もっても5.5%にしか読まれない規約・プラポリをすこしでも読みやすくする努力をすること、そのバランス感覚が現代の法律家に必要なセンスです。
この均衡を実現する具体的手段としては、<緻密な法的文書パート>と<要約パート>の一体性を保ちながら多層化するLayered Notice、もっといえば過去本メディアでも取り上げたJURO社のプライバシーポリシーのようなDouble Layered Notice化が、現時点でのベストプラクティスなのではないかと考えています。
画像:9nong / PIXTA(ピクスタ)
(橋詰)
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