日本企業のテレワークを阻む「押印」という商習慣
新型コロナウイルスの猛威により政府が非常事態宣言を発出。これまで企業のテレワークへの移行を阻んできた印鑑文化が、いよいよ変化の時を迎えています。
印鑑証明書や登記簿謄本を交付する法務局がまさかの「三密」スポットに
2020年4月7日、新型コロナウイルス感染が都市部で急速に広まっていることを受け、政府は7都府県を対象に緊急事態宣言を発出。これを受け、多くの企業が営業の自粛やテレワークへの移行をはじめるとともに、足元の資金繰りを確保すべく、助成金の申請や融資の申込みに奔走しています。
そんな中で、コロナ対策においてもっとも避けるべき 「三密(密閉・密接・密集)」スポットになってしまっているのが、そうした企業の金策に必要となる登記簿謄本や印鑑証明書を発行する法務局 です。
デジタルトランスフォーメーションの必要性が叫ばれてきた中、それでもしぶとく生き残り続けてきた「押印」制度。
この押印制度の信頼を裏付ける認証機関として、法務局が存在します。しかし皮肉にも彼らが 窓口での対面業務と書面交付にこだわってきたがために、こうした本当の非常事態においてボトルネックに なっています。
法務局自身も、「登記事項証明書・印鑑証明書の取得等について,当面の間,可能な限りオンライン申請及び郵送での申請を利用していただくようお願いいたします」と、自らの存在意義を忘れてしまったかのようなメッセージをウェブサイトに掲げるほどに、混乱をきたしています。
テレワークが徹底できない理由ナンバーワンは「押印」業務の存在
押印とそれが生む紙文書の弊害は、法務局の混雑だけではありません。
日本CFO協会が3月18日から4月3日にかけ、上場企業の財務最高責任者ら経理・財務幹部577人に「新型コロナウイルスによる経理財務業務への影響に関する調査」を実施したところ、押印業務の存在が企業のテレワークを阻んでいることが明らかに なりました。
▼ 「テレワーク中に出社」4割 経理財務の在宅勤務阻む紙の壁
出社の理由は「請求書や押印手続き、印刷など紙データの処理」が1位を占めた。さらに「会議への参加」「銀行への対応」などが続いたという。テレワーク態勢に入った企業は、社内システムのアクセスやパソコンの持ち帰り、オンライン会議のツール整備などの状況を判断して実施を決めたという。それでも「紙の書類のデジタル化に対応できている企業は36%にとどまる」と谷口氏。
(中略)同協会の中田清穂・主任研究委員は「押印のデジタル化が必要と感じていても、具体的にどの程度のコスト削減につながるか経営幹部に説明できないとするケースも少なくない」と分析する。
このような状況下にあって、電子契約への積極的な移行を図ることによってテレワークの推進を図る企業も増えています。なかでも大きな話題になっているのが、弊社の電子契約導入事例にもご登場いただいているメルカリ様が昨日発出されたプレスリリースです。
こうした時勢を受け、クラウドサインには通常の数倍量のお問合せやご相談をいただいており、お客様には順次電子契約導入のご案内をさせていただいている状況です。
印鑑への依存が生んだ思わぬ弊害
公衆衛生上安全なオフィスに日中は事務職が常に在席し、営業職が客先往訪後にそのオフィスに戻ってくるということを前提にした企業社会。
そうした社会においては、印鑑はツールとして非常に便利なものでした。なぜなら、
- 権限者自身が押印作業をしなくても、スタンプするだけでまるで権限者自身がその意思があったかのように表示をすることができた
- セキュリティの担保されたオフィスの中に印鑑(印章)を保管しておけば、誰もがその作業を代行できた
からです。
しかし、満員電車に耐えて通勤し、多数が集まり、大声を出して会話と呼吸をするオフィス自体が安全な空間とは言えなくなった今、オフィスの存在を前提として便利に扱われてきた印鑑の存在が業務のデジタル化の大きな弊害に なり、役職員の生命の安全すらも脅かしかねないものとなりました。
これまでの「業務効率化」や「生産性の向上」とはまったく違う次元の、「事業継続とそれに関わるステークホルダーの安全確保」の必要性から、印鑑文化からの脱却が日本企業に強く求められていくことになります。
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