GovTech裁判のIT化ウェビナーレポート
急きょオンライン開催となった裁判のIT化セミナーの様子と、ウェビナーの舞台裏をレポートします。ツールとして何を選ぶかといった細かな点を除けばIT化が国民の総意となりつつある今、本プロジェクトに対する裁判所の意気込みが問われるタイミングです。
zoomを利用したオンラインセミナーへ直前に変更
日本で開催されるビジネスセミナー・イベントが、新型コロナウイルスの影響ににより、ことごとく開催中止・延期する事態となっています。
SMBCクラウドサインと内閣官房の共催による今回の「GovTech 裁判のIT化セミナー」も、2月に告知してまもなく定員の集客を完了していたところでしたが、会場のhoops link tokyoが外部への貸し出しを取りやめ、一時は開催も危ぶまれました。
「裁判のIT化」をうたうセミナーだけに、ITの力でなんとか開催ができないか? そこで、経済産業省においてデジタルトランスフォーメーション(DX)を担当されている酒井様のご協力を仰ぎ、オンライン会議・カンファレンスシステムとして評判の高い「zoom(ズーム)」を利用したウェビナースタイルでの開催へと変更。
一部のお客様にはご不自由をおかけすることとなりましたが、オンライン化の結果、全国から120名近くのご参加登録をいただき無事開催 にこぎつけることができました。
Teamsを使いこなし目指すは「訴訟記録のオール電子化」
冒頭に、本ウェビナーの進行役である内閣官房日本経済再生総合事務局 参事官 川村尚永様によるご挨拶、そして共催の SMBCクラウドサイン 三嶋代表取締役のサービスご紹介からイベントがスタートし、メインのキーノートへ。
お一人目としてお迎えしたのが、法務省民事局で今回の裁判のIT化プロジェクトを担当される、大野参事官です。
世界に先駆けて電話会議やFAXの導入を認め当時は先進的であった日本の裁判実務も、いつの間にかアジアの中で後塵を拝しています。これを解消すべく、2019年の未来戦略会議において、2022年(令和4年)中の民事訴訟法改正を目指すことが決定し、現在法制審議会等で議論が進められています。
たとえば、現行制度で訴訟記録を閲覧しようとしても、当事者がその裁判所に行って書記官に請求する必要があります。フェーズ1からフェーズ3まで、現在予定している裁判のIT化の工程が順調に進んだあかつきには、「訴訟記録を全部電子化し、訴訟当事者はいつでも事件管理システムにアクセスして電子化された訴訟記録の閲覧や謄写ができるようになる」(大野様)とのこと。
ついでお二人目には、裁判のWeb会議化に採用された「Teams」を開発・運営する日本マイクロソフトの土井様がご登壇。
企業法務にたずさわるインハウスローヤーという立場から、TeamsによるIT化がどのように役立つのか、具体的な画面イメージを交えて解説をいただきました。
法改正を行わないフェーズ1でも、裁判所という場所にしばられずに争点整理手続きを行うという試み。期日前の書面提出(Teamsへのアップロード)・バージョン履歴管理・2段階認証によるセキュリティ保護・表情がきちんと読み取れる映像付きの画面など、Teamsが備える機能を紹介。
なお、この書面提出はあくまで訴訟参加者の便宜を図るためのものであって、フェーズ1においては書面提出は別途必要とのことです。このあたりは民事訴訟法の改正を伴う必要があり、致し方ないところです。
裁判IT化は国民の総意、では裁判所の「志」は?
こうしたお二人のプレゼンテーションを受けての後半は、前日本弁護士連合会事務次長 大坪弁護士と弊社取締役弁護士の田上が参加してのパネルディスカッションへ。
ここでもIT化を推進する立場から、オフラインのカンファレンスでも最近よく利用されるQ&Aシステム「Sli.do」を利用しながらの進行にチャレンジしました。
ウェビナー参加者の半数以上が弁護士等法律専門家ということもあり、ディスカッションでは、
- 弁護士や法曹界の働き方改革への影響
- オンライン紛争解決(ODR)とのすみわけ
- Teams以外のアプリケーション採用とオープン化の可能性
- ハンコレス・ペーパーレスによる変革の可能性
などの広範なテーマについて議論が行われました。
裁判のIT化という方向性そのものに対する反対意見は無い一方で、使用ツールの選定基準に対する不安の声や、ルール改正のスピードに対する不満の声が多く上がっていたようです。
弊社田上も発言していたとおり、裁判のIT化の目的は「司法アクセスの向上」にこそあり、それはSDGsでも取り上げられる人権にも関わる重要な課題 です。一般市民や企業のニーズがあることは間違いがありません。
にもかかわらず、不思議なことに裁判所自身の「志」が未だ見えない現状。民意を受け、裁判所自ら「紙」「印鑑」「FAX」前提の手続きから脱却しようという強い意志を表明していただくべきタイミング に差し掛かっています。
(橋詰)
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