契約書の作成・起案をAIがサポートする新法務エディター「LAWGUE」
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リーガルテックベンチャーの日本法務システム研究所が、AIで類似条項をレコメンドし、修正趣旨のコミュニケーションログを安全かつ見やすく残しながら契約書を作成できる、新しいクラウド型契約書エディターをリリース。早速ベータ版を試用させていただきました。
目次
契約書のレビュー(リスク評価)ではなくドラフト(作成・起案)フェーズにAIを適用
国内外の契約系リーガルテックを多数ご紹介してきた中で、「なぜこのアプローチをとるプロダクトがなかったのか」と虚をつかれたのが、今回ご紹介する「LAWGUE」です。
そのアプローチとは、AIを契約書の「レビュー(リスク評価)」ではなく「ドラフト(作成・起案)」段階で活用 しようというもの。
ユーザーインターフェースはとても直感的です。まず、ベースとなるWordのdocxファイルをアップロードするところからスタート。
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すると、LAWGUEのエディターがファイルを読み取り、契約書を自動的に条項単位のパーツに分解してくれます。ここからは、変更履歴を残しながら自由に条項順や文章を編集できるエディットモードへ。
ここで、直したい条文をターゲットし、右側にある「類似条項」ボタンを押すと、契約書データベースから ドラフティングの参考になる類似条項をAIが検索し表示 してくれます。
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もしベースとなる契約書が手近になければ、LAWGUEに収録されているサンプルを使ったり、ゼロから新規作成することもできますが、過去締結した契約書をアップロードして契約書データを蓄積すればするほど、AIで検索される類似条項のデータベースも拡充し、LAWGUEがパワーアップしていくというわけです。
コミュニケーションの記録を条項ごとに残しながら作成・修正
LAWGUEには「プロジェクト」や「組織」の概念が導入されており、プロジェクトごとに複数のメンバーから担当者をアサインして修正を加えていくことができます。
本文の編集・履歴が色分けされることはもちろん、修正趣旨に関するコメントの応酬を条項ごとに残し表示 することもできます。
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こうして作成した契約書ドラフトは、クラウド上で社内に共有できるほか、これまでどおりWordファイルに出力して送信することができます。ゲストアカウントを発行し、取引先や社外弁護士のレビューを残すことも今後可能になるとのこと。
これまで、Wordファイル上だけでこうした修正履歴とコメントを合わせて交換していると、本文中にコメントを書き加える弁護士がいたり、かと思えばWordのコメント機能で書いた社内向け内輪コメントを消さないまま相手にファイル送信して手の内がバレてしまう事故が発生しがちでした。
この点、LAWGUEであれば、最後に出力するWordファイルには残さない安全な形で、かつ見やすくコミュニケーションログを残すことができます。
なお、他の文書管理ツールでは文書のバージョン(版)ごとに修正趣旨コメントを残すものもあります。これに対してLAWGUEの場合、条項単位で狙ってコメントが管理できる点、どのポイントについてのコメントなのかが明確で行き違いが生じにくくなり、細部に渡る契約交渉の詰めに非常に向いていると言えます。
条番号ズレ修正、表記ゆれチェッカー、条項ごとの履歴巻き戻し機能なども実装した「法務のプロ」のためのツール
実はこのLAWGUE、昨年の11月に「契約書作りを『プラモデル』化するプロ向け契約書作成・管理ツール」としてご紹介したCOMMONS PALを、同社が文字通りゼロから作り直し、AIサジェスト機能やチームコミュニケーション機能を含めて開発されたもの。
ですので、COMMONS PALに実装され評判の良かった契約書エディターとしてのサポート機能、たとえば 条番号ズレを自動的に直したり「又は/または」などの表記ゆれを入力しているそばからリアルタイムに指摘したりしてくれる機能 はもちろんのこと、
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修正履歴管理についても、Wordでは不可能な条項ごとの変更履歴確認→巻き戻しができる ようになっているなど、COMMONS PALの良さも残した、かゆいところに手が届くツールにもなっています。
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契約テックの分野において、一般ビジネスパーソン向けのAIリスク判定・AIレビュー系ツールが注目を浴びる中、法務パーソンや弁護士等プロフェッショナル向けの本格的かつ現実的に使えるAIシステムがついに出てきたな、という感じです。
画像:
日本法務システム研究所ウェブサイト https://lawgue.com/ 2019年5月29日最終アクセス
(橋詰)