企業姿勢を表明する声明文としての利用規約—ジャック・ドーシーがTEDで語ったこと
広告メディアとしての経済的な面だけでなく、政治や民主主義にも強い影響力を及ぼすようになったソーシャルメディア運営企業。企業の社会的責任が強く求められる中、ユーザーとの契約文書に過ぎなかった利用規約のあり方が、大きく変わろうとしています。
フェイクニュース・ヘイトスピーチ対策にいまだ答えを出せないソーシャルメディア
インターネットサービスの運営に欠かせない契約文書としての利用規約。その未来を考えるとき、必ずと言って良いほど引き合いに出されるのが、FacebookやTwitterといったソーシャルメディアの利用規約です。
サービス利用者の多さもさることながら、私たちの生活に与える影響の大きさ、そして法的トラブル発生頻度の高さも手伝い、その文言を少しでも変更しようものなら、それ自体がニュースとなるほど人々の関心を集めます。
数年前まで、そんなソーシャルメディアの利用規約が取り沙汰される典型パターンといえば、投稿記事の著作権の帰属やその侵害に関する騒動がほとんどでした。しかし、ここ数年で問題が深刻化しているのは、フェイクニュース・ヘイトスピーチ対策 についてです。
2018年に発覚したケンブリッジ・アナリティカ事件は、その深刻さを決定的なものとしました。同事件は、特定の層をターゲットにした刺激的な発信が注目を集め、広告効果をより高めていくソーシャルメディアの構造を不正に利用し、BREXITや米国大統領選挙といった国の重要な意思決定をも左右してしまうほどの影響力を持つに至ったことを明るみにしました。
事件の当事者であるFacebook社は、米国だけでなくEUからも公聴会に召喚されるなど、そのアルゴリズムや事業運営の透明性向上について世界からプレッシャーを受け、いまも対策に追われています。しかしながら、問題を打開する有効な施策を打つには至っていないのが現状です。
こうした現状に業を煮やすオーストリアなどの一部の国では、SNS利用にあたって実名登録を法律により強制しようという法案が提出されるなど、民主主義のあり方を問う大きな問題になりはじめています。
Twitter創業者が語る言論プラットフォームとしてのSNSの責任
そんな中、Facebookとならぶもう一つの巨大ソーシャルメディア Twitterの創業者であるジャック・ドーシー氏がTEDに登壇。
聞き手を務めるTED代表 クリス・アンダーソン氏らから、民主主義を脅かすフェイクニュースやヘイトスピーチを放置し、広告収入至上主義と批判されている企業のCEOとして、その責任をどう考えるのか厳しく追求 されています。
これを受けドーシー氏は、そうした問題を後回しにしてきた態度がTwitter自身の利用規約にも現れていると、以下のように懺悔しています。
現在の利用規約にアクセスし、ページを開いて、今受けたばかりの嫌がらせ行為について利用規約に反していると報告できるかと調べるとします。ページを開いてまず目に入るのは、知的財産権についてです。下にスクロールしていくと、誹謗中傷や嫌がらせ行為など、他の事柄について書かれています。
うちの企業史でいつそうなったかは定かではないですが、人々が最も情報を求めていて行動を望んでいるものよりも上に、そういうのがきています。その順序自体が何を重んじているかを、世界に示してしまっています。
利用規約が「企業として守るべきもの」の優先順位を示す
確かに、Twitterの利用規約の変遷を辿ると、2016年1月27日に改訂されたVersion10まで、投稿による不正行為や嫌がらせなどの一切についてユーザーが自己責任で対処するものであり、社としては関知しないという態度を取っていました。
その後、2016年9月30日の利用規約Version11において、著作権を侵害する投稿の申告制度・対処責任が書き加えられ、翌年2017年10月2日に改定されたVersion 12から、誹謗中傷を含む不正行為全般について申請を受け付ける体制が構築され、その具体的方法が追記されるに至っています。
ドーシー氏は、今回のTEDトークの中で、機械学習などのテクノロジーによる誹謗中傷対策も実行しつつ、この問題に企業として高いプライオリティを置いて対応していくことを、利用規約の中で宣言すると約束しました。
順序をあるべきものに変えて、ルールも簡潔にして、普通に読んで分かるものにします。規約違反かどうかを、利用者が実際に理解できるようにしたいのです。
万が一の訴訟に備えるための誰も読まない前提だった利用規約が、企業姿勢やサービス理念を強く打ち出す声明文としての利用規約へ。その位置付けが大きく変わろうとしています。
(橋詰)
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