経済産業省Startup Factory構築事業から「ものづくりスタートアップのための契約ガイドライン」公開
IoTデバイスなど、新しいものづくりをしたいスタートアップ企業と、日本の伝統的な製造業のマッチングをサポートする経産省の「Startup Factory構築事業」。この事業の成果物として作成された「試作委託契約書」のひな形および解説が、無料で一般公開されています。
経済産業省「Startup Factory構築事業」とは
日本が国家戦略として掲げる、企業や人をデータを介してをつなげ新たな付加価値を創出していく「Connected Industries」。この方針に基づいて経産省が手がける補助事業が、「Startup Factory構築事業」です。
特に、日本の伝統的な大規模製造業・町工場・職人たちに蓄積された多種多様なモノづくりのノウハウを、スタートアップ起業家たちが持つアイデアとつなげ、ものづくりにトライしやすい環境を作るためのさまざまな取り組み がなされています。
その成果物の一つとして、「ものづくりスタートアップのための契約ガイドライン」が公開され、3月14日に関係者含む200名弱を集めた報告会が開かれました。
「ものづくりスタートアップのための契約ガイドライン」の概要
今回、Startup Factory構築事業から発表された成果物の内容は、大きく以下6つで構成されています。
- 契約ガイドライン
- ものづくりプロセスの全体像
- チェックリスト
- 標準契約書
- 標準契約書の解説
- 標準契約書英語版
この成果物の中心となるのが、ものづくり各ステップの落とし穴とトラブルあるある事例、そこに陥らないための業務面・契約面のポイントについてまとめた「契約ガイドライン」です。
そもそも契約に問題意識を持つスタートアップが少ないことに加え、「Slack」でチャットする文化のスタートアップと「紙とFax」で連絡する文化の製造業とでは、コミュニケーションのスタイルからして相いれないという現実があります。
さらに、これを作成するための20社以上のヒアリングの中で、起業家の熱意ほとばしるスタートアップとものづくりが好きな職人気質の製造業とでは、お互いの熱い思いが感情的にぶつかって文字通りの「喧嘩」になるケースも少なくない傾向にあったとのこと。
こうした課題をクリアし、かつ日本のものづくりの勝負どころとなるポイントはどこか?ガイドライン検討会では、それを ものづくり初期に要件として定義しにくい部分をかたちにしていく「原理試作」と「量産試作」のステップにあると置き、それらに重点を置いたガイドラインおよび標準契約書 が作成されています。
3月14日の報告会で、検討会座長の小林茂氏は、「今回の契約ガイドラインでは、新しい商慣習を提案した。量産段階では製造コストの面で海外に勝てなくなっている中、ぼやっとしたアイデアを実際にモノにしていく試作の部分こそが日本の競争力。製造業はそこできちんとフィーを取っていくべき」との考えを示していらっしゃいました。
専門家による監修済み標準契約書も見どころ
提供されている標準契約書も、
- 東京フレックス法律事務所 伊藤 毅 弁護士
- iCraft法律事務所 内田 誠 弁護士
- 森・濱田松本法律事務所 岡田 淳 弁護士
- STORIA法律事務所 柿沼 太一 弁護士
- 株式会社メルカリ 齊藤 友紀 弁護士
- 西村あさひ法律事務所 福岡 真之介 弁護士
といった、第一線で活躍される専門家の先生方による監修 を受けた内容になっています。
まず、よくありがちなPDFでの提供ではなく、Word(.docx)ファイルでの提供になっているのは助かります。実務でそのまま使いやすいように基本契約書と個別発注書に分かれているほか、丁寧な条項解説と英文訳までついています。
細かい点ですが、ひな形としての使いやすさを追求した工夫として、基本契約上は知的財産権の帰属を原則創作者としておき、個別契約書の「チェックボックス」を選択することで発注者(スタートアップ)にすべて帰属させることもできる構造 にしているところなども、面白い工夫だと思いました。
経済産業省は、過去にもこうした法律専門家を集めて作成する契約ひな形を公開してくださっており、こうした事業が企業の生産性向上に与える影響は決して少なくないと思います。引き続き、今回のような取り組みを続けていただきたいところです。
関連記事
(橋詰)
機能や料金体系がわかる
資料ダウンロード(無料)詳しいプラン説明はこちら
今すぐ相談こちらも合わせて読む
-
法律・法改正・制度の解説
利用規約を全部読んで同意するユーザーは何%?—公正取引委員会「デジタル広告の取引実態に関する中間報告書」
利用規約 -
契約実務
利用規約の同意取得方法ベストプラクティス—米国判例にみるサインインラップ・ブラウズラップの採用リスク
利用規約プライバシーポリシー -
法律・法改正・制度の解説
法律文書作成サービスが超えてはならない一線—グレーゾーン解消制度の法務省見解
リーガルテック弁護士法グレーゾーン解消制度 -
法律・法改正・制度の解説
リーガルテックと弁護士法—AI契約審査サービスの適法性に関するグレーゾーン解消申請
法改正・政府の取り組みリーガルテック弁護士法グレーゾーン解消制度 -
法律・法改正・制度の解説
2020年個人情報保護法改正がプライバシーポリシーに与える影響
法改正・政府の取り組みプライバシーポリシー -
法律・法改正・制度の解説
プライバシーポリシーのトレンド分析—GDPRに学ぶ多言語化対応の必要性
プライバシーポリシーGDPR