リーガルテックニュース

【レポート】法律業務のAI化の限界を探る Legal Tech Forum Vol.2

3月5日に開催した「Legal Tech Forum Vol.2」。法律文書作成テック3社を迎え、実際にサービスを運営している当事者が感じるAIやテクノロジーの限界について議論しました。

「法律文書作成テックを査定せよ」

三井住友銀行様と共催するクラウドサインのオフラインイベント「Legal Tech Forum」。

クラウドサイン事業部長 橘大地
クラウドサイン事業部長 橘大地

第2回の今回は、弊社橘によるキーノートに続き、契約書・登記書類・クーリングオフ書面といった 法律文書の作成をAI・テクノロジーでかんたんにするテックサービス3社 をお迎えし、それぞれのサービスについてプレゼテーションをしていただきました。

株式会社日本法務システム研究所 「COMMONS PAL」堀口圭先生
株式会社日本法務システム研究所 「COMMONS PAL」堀口圭先生

GVA TECH株式会社 「AI-CONレビュー」「AI-CON登記」山本俊先生
GVA TECH株式会社 「AI-CONレビュー」「AI-CON登記」山本俊先生

株式会社サンプルテキスト 「Legal Script」「Legal Script Personal」杉野敦様
株式会社サンプルテキスト 「Legal Script」「Legal Script Personal」杉野敦様

テックサービス提供者の目から見たAIの限界

今回メインのパネルディスカッションでは、「査定」というタイトルのとおり、リーガルテックのいい面ばかりでなく、そう簡単に人間を代替できるようにはならないという現実 についても遠慮なくツッコみを入れ、率直な証言をもらいたいという思いがありました。

  • 法的サービスとして、瑕疵により損害を与えた場合の責任の取り方は?
  • 契約書作成の前提となる事実関係把握のために、AIチャットボット等のテクノロジーを使わないのか?相談業務をAIチャットボット化することは将来的に可能か?
  • たとえばNDAであれば、何パターンぐらいのひな形・条項サンプルがあれば「ほとんどのケースに対応できる契約書作成システム」が実現できそうか?
  • 法律文書作成の自動化について、各士業団体はどのような見解をもっているのか?
  • 行政が手続きのデジタル化・オンライン化を進める動きがあるが、これが現実のものとなれば、行政分野の民間リーガルテックは不要になってしまうのでは?

こうした答えにくい質問に苦笑いを浮かべながらも、リーガルテックに実際に取り組んでいる当事者だからこそわかる「AI・テックの限界」 について、率直にご回答をいただくことができました。

また3社ともに、リーガルテックが業界として立ち上がってまもないからだからこそ、テクノロジーの危険な部分を人間が丁寧にカバーすることによって、お客様を失望させないように事業運営をされている点が印象的でした。

契約書ビッグデータをどうやって集めるか

最後の質問、「機械学習には欠かせないビックデータを、契約の分野において誰からどう集めるか?」という論点については、専門家が集まるフォーラムならではの、非常に興味深い応答がありました。

会場からの質問に答えるお三方
会場からの質問に答えるお三方

会場参加者からの、「英文契約書をベースに和文契約書を組み立てるという発想にたてば、英語圏の契約書ビッグデータを活かせる のではないかと思うが」との提案に対し、「私も同じようなことを考えていて、今回の発表前に間に合うよう、あるアイデアについて特許出願してきた」と答えたのは、日本法務システム研究所の堀口先生。

英文契約書のデータは英米圏においては豊富に入手でき、米国ではそうしたデータを活用したAI契約レビューサービスも生まれています。また、Googleをはじめとしたグローバルカンパニーの利用規約をみても、英文版・和文版をそれぞれ独立して作成しているわけではなく、英文バージョンをベースに日本語化をはかっている実態もあります。

裁判のIT化をはじめ、日本語の法律情報のデジタル化が進む動きもありますが、それを指を加えて待つだけでなく、世界中に公開されている英文契約書のビッグデータを活かす道は、確かに現実味がありそうです。

(橋詰)

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