Dropboxがクラウド型電子契約ベンチャーを買収
ファイルストレージ・共有サービスで著名なDropbox社が、電子契約サービスのHellosignを買収。新たに実装されたワークフロー機能を見ながら、その狙いや思惑を分析してみます。
クラウド型電子契約ベンチャーHellosignを2.3億ドルで買収
Dropboxは、クラウドという概念が世に広まりだした黎明期から大容量のストレージを使いやすいUIで安価に提供し、成長を続けているクラウドサービス事業者です。
2008年の創業当時、ブームとなりつつあったフリーミアムモデルをアレンジし、知人を招待するごとに使えるディスク容量が増える方式としたマーケティングの成功により、認知拡大に成功。2018年にはナスダック上場も果たし、約7.6億ドルの資金調達に成功しています。
この上場によって得た豊富な資金を何に投資するのかが注目をされていたところ、1月28日、電子契約サービスのベンチャー企業であるHellosignを2.3億ドル(日本円で約250億円)で買収。CNBCが第一報を報じています。
Dropbox said Monday that it’s acquiring electronic signature start-up HelloSign for $230 million in cash, its largest purchase ever.
The move puts Dropbox in competition with Adobe and DocuSign, and adds functionality that can potentially lure more big businesses to the company’s core file sharing and collaboration products, where it contends with Apple, Google and Microsoft.
最近のDropboxと言えば、建設業などの大容量の図面ファイルを扱う法人向けに市場を広げていたところでしたが、こうしたファイルシェアリング・コラボレーション領域に加え、AdobeやDocusignなどの競合がひしめくこのドキュメント・ワークフロー領域にも進出するということで、驚きをもって報じられています。
Dropboxにシンプルな署名付きファイル送信機能を実装
Dropboxのウェブサイトには、すでに Hellosignの電子署名機能を統合したワークフロー の利用方法が紹介されています。
Dropboxで、署名したい書類を選択。これまでのDropboxではファイルをシェアする相手を選択するのみでしたが、Hellosignを使って署名送信するためのメニューが追加されています。
Hellosignの画面に移行し、自分だけが署名するか・相手にも署名させるかを選択した後、受信者のメールアドレス(複数設定可能)や表題、メッセージを入力して送信ボタンをクリックするだけ。
現段階では、複雑なワークフロー機能は実装されていないようです。
競争が激化する米国クラウド契約サービス市場
Hellosignの特徴といえば、自らの商圏に相手を取り込もうとするのでなく、APIの提供を通じ裏方的に協業企業のシステムインテグレーションに貢献するスタンスにあったと思います。
CEO自ら、そうした中立的なスタンスがDocusign等競合との差別化要因となっていると述べていた時期もありますし、実際このメディアで紹介したサービスでも、Hellosignの署名APIが導入されているサービスがいくつかありました。
Dropboxの傘下に入ってもこうした中立的スタンスは変わらないのか、それともDropboxの優位性を示すための存在へと変わっていくのか。電子契約業界だけでなく、ドキュメントソリューション業界注目が注目するM&Aと言ってよいでしょう。
2010年創業、従業員わずか100名弱、推計ユーザー数6〜8万社、ベンチャーキャピタル等からのこれまでの調達額も1600万ドル(17.5億円)に過ぎなかったベンチャー企業が、これだけの注目企業から高い評価を受けて買収されたということで、米国のクラウド契約サービスの競争もますます激化していきそうです。
(橋詰)
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