Hotdocsで既存の契約書を“なぞる”ように対話フォーム式ひな形を作成
Wordで作成したこれまでの契約書資源を再利用し、対話入力式の契約書ひな形をかんたんに作成できるツール、Hotdocsを紹介します。
1993年リリースの最古参リーガルテック
今回は、契約書ひな形作成ツールのHotdocsを取り上げてみたいと思います。
Hotdocsは 1993年に初期バージョンがリリースされた、リーガルテックとしては最古参と言っても過言ではないプロダクト です。もともとはブリガムヤング大学のロースクール内で生まれたプロジェクトで、1999年〜2009年まではLexisNexisグループ、英国企業にバイアウトされた後、2017年に米国のSaaS企業AbacusNextに買収されています。
先日、プログラミングができなくてもスマートコントラクトを作成できるClauseという先進的なリーガルテックサービスを紹介しましたが、このHotdocsはそれとは対照的です。Wordで作成したこれまでの契約書資源を再利用し、かんたんな操作で構造化されたテンプレート(契約書ひな形)ファイルを量産して法務業務の効率化を図る、地に足の着いたツール となっています。
既存のWord契約書ファイルを“なぞる”ようにひな形をかんたん作成
Microsoft Wordに詳しい方であれば、「コンテンツコントロール」機能をご存知かもしれません。チェックボックス・テキストボックス・日付選択・ドロップダウンリストなどをテンプレートファイルにあらかじめ埋め込んでおき、このファイルを利用して文書を作成するユーザーの入力を、一定の選択肢・範囲の中でガイドする機能です。
Hotdocsは、こうしたWordの機能を使いこなせない方であっても、かんたんなマウスとキーボード操作だけで直感的に既存のWord契約書ファイルにフォームを設定しひな形化することができ、さらにフォームに入力されたデータを法務部門で一括管理できる ようになるというツールです。
たとえば、過去実際に締結した「Employment Agreement(雇用契約書)」のWordファイルを用いて、Hotdocsでひな形を作成する様子がこちら。
ユーザーに「Employee Name(従業員名)」を入力させるフィールド(スクリーンショット上で「James」と赤字になっている部分)をなぞり、画面上部のリボンメニューにある“Variable Field”ボタンをクリック。するとダイアログが立ち上がり、このフィールドに入力させたい情報種別(Textなのか、Numberなのか、Dateなのか等)を指定します。Word文書にXMLのようにデータ構造を定義していく感じです。
より高度な設定として、他のデータベースと連携したり計算式を埋め込むことも可能です。たとえば下記の画面では、「Annual Salary(年俸額)」として別途入力されたデータを12で除し、その金額を「Monthly Salary(月額給与)」としてフィールドに表示するよう指示しています。IF構文をおいて、条件に合致する当事者にだけある条項を表示する、といった条件分岐も設定可能です。
このように、ほぼ「なぞる」→「クリックして選択する」といったかんたんな作業で契約書のひな形を作成し、イントラネット上で事業部門に展開することができます。ウェビナーでは、雇用契約書のひな形フォームを10分程度で完成させていました。
ユーザーとなる事業部門の従業員は、下図のようにブラウザでアクセスする対話式のフォームに入力していくだけで契約書を作成できるようになります。他方の法務部門も、ひな形の可変部分として指定した箇所以外の契約条件を勝手に変更される心配もなくなり、かつ事業部門が入力した契約データをHotdocs上で管理することもできるようになります。
手頃な費用で確実に生産性を向上
価格については残念ながらウェブサイト等では公開されておらず、個別見積もりとなっています。
この点、公開情報から探れる範囲で販売価格を示唆するものとして、2015年8月にYoutubeに公開されたウェビナー動画の中で「本日の受講者には37USドルで」とセールスしているのが確認できました。また、LawGeexがまとめた「LegalTech Buyer’s Guide 2018」でも$マーク1つの最も低価格帯のサービスとして紹介されています。
これらを総合すると、月額数万円〜数十万円の価格帯で提供されているであろうことが推測できます。SaaS企業であるAbacusNextが買収したことから、今後サブスクリプション型の課金メニューも拡充しそうです。
Wordベースの契約書から脱却していない点で、いまどきのリーガルテックのような先進性は感じられないかもしれません。しかし、導入コンサルティング費用を含めて数百万円単位の初期費用がかかるような大手SIerの契約書ひな形管理システムと比較すれば、一ケタから二ケタ安い価格帯で手軽に利用でき、確実に生産性を向上できるツールとして、使い道はかなりありそうです。
(橋詰)
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